詐欺は今や世界規模の「違法産業」だ。世界の詐欺被害額は年間60兆~150兆円とも試算される。
詐欺の産業化に、日本も無縁ではいられない。各国と連携し、果敢な摘発が必要だ。
カンボジアで不動産やカジノ、金融事業を営むコングロマリット「太子集団(プリンス・グループ)」の最高幹部とみられる容疑者を、警視庁が日本で逮捕した。
プリンス・グループは裏で特殊詐欺や資金洗浄など犯罪組織を統括しているとして、米国が中国出身の創業者を身柄未拘束のまま起訴し、グループに経済制裁を科した。英国も制裁を科した。カンボジア当局が創業者を逮捕して中国に引き渡し、中国は裁判に付している。世界規模で追及がなされている。
米当局の発表などでは、プリンス・グループはカンボジアに設けた10カ所以上の「詐欺工場」で、騙(だま)して連れてきた人々に投資詐欺を強要していた。欧米、中国に向けて組織的に詐欺を行っていた。日本も標的になっていた可能性がある。詐欺労働者の中には日本人もいるとみられ、「アジア最大級の犯罪集団」と認定されている。
警視庁が逮捕したのは同グループ最高幹部とみられるキプロス国籍の中国出身者だ。この容疑者が代表の会社が3年前に東京に設立され、グループの関連会社も複数創業された。容疑者の住所はロンドン、東京都港区、大阪府吹田市などと転々とし、不可解な動きだった。
警視庁は監視を続け、居住実体がないのに中央区に転入届を出したとの容疑で逮捕した。的確な動向監視と摘発を評価する。これを突破口に、グループの日本での活動実態や容疑者の動きを解明してもらいたい。
日本政府はプリンス・グループを制裁対象にしていない。だがそれに乗じ、国際犯罪者に日本を「逃げ場」とさせてはならない。捜査・外務当局は毅然(きぜん)と対応しなければいけない。
東南アジアにはプリンス・グループと同様の犯罪集団が拠点を設け、中国系組織による統治が目立つ。地政学的懸念として、日本にも組織のネットワークや人員が流入し、地下活動を展開している恐れがある。
日本の当局は中国をはじめ各国の捜査・治安当局と情報を共有し、連携を深めることで、国際犯罪組織を追い詰めたい。