愛してるのは、あなただけ
博愛主義(?)の類とそれを信じちゃってる司がすれ違いまくる話
【attention】
・誤字脱字
・駄文
・改ページで視点変わります
・ちょっとだけモブ出ます
・最後のページ別に読まなくても支障はないです
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神代類は博愛主義なのだと、誰かから聞いたことがある。来る者拒まず去る者追わず。告白をされれば全て受け入れてしまう。
彼は彼女が途切れたことはないらしいが、一人の女性と長続きしたこともないらしい。それは交際相手以外にも分け隔てなく優しいため、不満を抱かれてしまうことが理由なのだが、そのことを承知で類に告白した女性も、ショーのことばかり考えていてあまり構ってくれない彼と付き合っていることに耐えられなくなり、結局別れを告げてしまう。
しかし類は容姿も整っているし、高身長、頭脳明晰で女性に対しては基本的に紳士的だ。変人ワンツーフィニッシュなどという不名誉なレッテルがついているにも関わらず、告白が後を絶たない。
そして、天馬司も神代類に想いを寄せる多くの人間のうちの一人だった。
特定の人物を愛することのない類だ、まして同性である司の恋が報われることはない。そう分かってはいた。しかしもうこの膨らみすぎた想いを自分の中だけに留めておくのは限界だった。
もう類とショーを作ることが出来なくなってしまうかもしれない不安、自分の恋が成就するかもしれないという僅かな可能性。二つの思いがせめぎ合っている。とうとう司は耐えきれなくなって、当たって砕けろの精神で類に告白した。
「類!!オレはお前が好きだ!!」
司の大声とともに、セカイの空にかかっていた雲が一斉に晴れていった。
穏やかな陽光がさす。
近くで司と類を見守っていたカイトが集まっていたぬいぐるみたちを連れて離れていった。気を使ってくれたのだろう。
突然喉から飛び出した気持ち。類に伝えたことに後悔はなかったが、もう少しタイミングと周りの状況を見ればよかったと反省する。ここにえむや寧々がいなくてよかった。えむからはいつもにも増してハイテンションで突進されるだろうし、寧々からはドン引きの目を向けられただろう。
目をぱちくりと瞬かせ、しばらく黙っている類に司はだんだん恥ずかしくなってきた。
「あっ、えーっと…無理に応えてくれと言うつもりはないんだ!ただ、オレの気持ちを知っていてほしかっただけというか…」
類の表情が読めない。何を考えているのだろう。
恥ずかしさと不安が司の心を占領する。司の思いで出来たこのセカイにも影響し始めていた。
先程晴れたはずの雲はまた集まり、ほんの少しだけこのセカイを暗くする。
本当は今すぐ逃げ出したい。しかし司の元来の性格が、彼の足をその場に留めていた。
沈黙が痛くて、司は思わず声を上げた。
「あ、あの、類」
「うん、僕も好きだよ」
「うぇ…?」
予想もしていなかった言葉に、司の口からは言葉にならなかった音が零れた。
今、類はなんと言っただろうか。司の聞き間違いでなければ、「僕も好き」と聞こえたはずだ。
好き、好き。好き…?
類が、自分を好きだと言ったか?
「えぇぇぇぇぇ!?」
ここ一年でいちばんの大声が出た。
近くの木にとまっていた小鳥がバサバサと音を立てて飛び立つ様子が視界の端にうつった。
「ほ、本当か?言葉の意味が分かってるか?」
「そりゃあ日本人だからね。日本語くらい分かるさ」
「友達としてとかじゃないぞ!?」
「うん、僕と付き合いたいって意味だよね?」
信じがたくて物凄い剣幕で類に詰め寄った司だったが、改めて「付き合いたい」と言葉にされると急に実感を帯びてきた。
司の顔に熱が集まり、耳まで赤く染まった。
「…うん」
先程の大声とは正反対。今まで聞いたことがないような、蚊の鳴くような声で返事をした。
我ながらまったく極端な声帯だ、とこの状況で冷静に考えていた。
ちらりと見上げれば、そこにはいつものように飄々とした笑みを浮かべている類がいた。
「じゃあ、今日から僕たちは恋人同士だね」
それが耳に入った瞬間、セカイには季節を無視した花が一斉に咲き乱れ、眩しすぎるほどの太陽が顔を覗かせた。
・
まさか自分の告白を受け入れてくれるとは思ってもいなかった司は、胸の高まりを抑えられないまま夜を迎えた。
ずっと欲しかった類の「恋人」の地位。それが手に入った今、ベッドに入り、部屋の明かりを消しても眠気なんてやってこない。頭を占めるのは類のことばかりだ。他のことは考えられなかった。
しかし人間というものは不思議なもので、目を閉じてしばらく経つと勝手に眠気はやってくる。睡魔に逆らうこともせず、司はそのまま眠りの世界へと誘われていった。
ふと、類の声が聞こえた。司と類はいつものように中庭で昼食をとりながらショーの構成を練っている。
どこかふわふわとした感覚に、司はこれが夢なのだと悟った。
恋人になった類は変わらず優しくて、司の「好き」は積み重なるばかり。
どうせ夢なのだからなにをしても構わない。そう思って司は類の肩にそっと頭を寄せ、甘える素振りを見せた。現実世界では、自分は座長であり、学級委員であり、兄だ。甘えられる場所はほとんどないと言っても過言ではない。ただ夢の中ならば、恋人にならば存分に甘えられる。
擦り寄ってきた司を拒否することもなく、類は司の頭を優しく撫でた。
ああ、心地いい。
オレは自分の頭を撫でられる感覚をじっと味わっていた。
その瞬間、景色がふっと変わった。隣にあった類の温もりは感じられなくなり、自分が学校の廊下に立っていることに気がついた。
ふと目に映った教室の扉。中を覗いてみれば、そこには類と一人の女子生徒。
会話は聞こえない。明らかに類に好意を持っているであろう彼女と、笑顔で話す類。類のその笑顔は、ひどく優しいものだった。そして司は気づいてしまう。
恋人に向ける笑顔と、同じではないか…
ズキズキと心臓が痛み、類に向かって手を伸ばす。
「類、オレを見てくれ…」
目を覚ました時、時計の短針は五を少し過ぎたところを指していた。
背中にはじっとりと汗をかき、頬には涙が伝っている。最悪の目覚めだ。
嫌な夢だった。すごく。しかしその夢は現実にも起こりうることで。今までの類の彼女も、今の司と同じ思いをしていたのだろう。
「彼女たちが類に別れを告げた理由が分かるな…」
ひとりごちた台詞は、まだ薄暗い部屋の中へ溶けていった。
・
あの夢を見てから決めたことが二つある。
一つは、執着しないこと。もう一つは、期待しないこと。
男の自分が、類の恋人という位置に収まっていられること自体が奇跡。何も高望みはしない。他の人と同じでも、特別扱いしてくれなくても、恋人でいてくれることが幸せなのだ。
類は皆平等に優しい。それを縛り付けるつもりは毛頭ない。類は類のままでいてくれればいい。たとえ、本当の意味で自分を好きになってくれなくても、隣に置いてくれるだけで十分だ。
そう考えておけば、いろいろと楽になった。周りを気にしなくて済む、ほんの些細なことにも喜びを感じることが出来る。
類が自分を恋人扱いしてくれなくても、自分が恋人として類に尽くしているだけで十分楽しかった。
これでいい、これが「幸せ」だから。
・
自分が恋人として出来ることはなんだろう。そう自問しながら、司は類の喜びそうなことを片っ端から試した。
類の好きな菓子を差し入れたり、類が作業に集中しやすい状況をつくるために気を回したり、類のお願いも司に出来る範囲ならば全て応えた。その度に類が嬉しそうに礼を言ってくれるのが嬉しかった。
時々類は司の頭を撫でてくれる。兄として、先輩として、咲希や冬弥の頭を撫でてやることが多かった司だ、自分が撫でられる側に立つのは新鮮で、純粋に喜べた。
自惚れかもしれないが、以前彼女と一緒にいたときに見た類の表情よりも、今の方が断然穏やかに感じる。
類が少しでも自分を好きになってくれるように。少しでも自分の隣を居心地よく思ってもらえるように。
束縛しない、欲張らない。
それが最善だ。
愛してます(迷惑な読者でごめんなさい。他意は無いです。ファンです。)