かわいいが裏目に? 新しい図書館の緑色デザインに「見えない」の声
JR広島駅前に4月に移転・開館した広島市立中央図書館は、開館1カ月で入館者数が以前の約10倍に伸びている。その一方で、視覚に不自由のある人からは「使いづらい」との声が上がる。理由の一つとして、館の象徴である「緑」を基調としたデザインが指摘されている。
「実に見にくい。視覚に弱さのある人が来館するという意識が抜け落ちているのではないか」
広島難病団体連絡協議会会長の西河内(にしごうち)靖泰さん(72)が図書館を見学すると聞いて同行すると、開口一番こう指摘した。
西河内さんの視線の先にあるのは、入り口に掲げられたフロアマップ。緑地に白い文字で、書棚の位置などが表示されている。目当ての本にたどり着くための重要な「道しるべ」だが、「目が不自由な人にとって、ほとんど役に立たないのでは」という。
緑色の背景に白い文字「同化してぼやける」
西河内さんによると、緑地に白文字という組み合わせは、弱視や色覚多様性のある人が見ると、背景と同化して文字がぼやけやすくなる。さらに「文字が小さすぎる」と指摘する。
西河内さんは東京都荒川区の図書館に18年間勤め、滋賀県多賀町立図書館長などを歴任。現在は広島女学院大で図書館情報学を教える一方、先天性飛蚊(ひぶん)症や夜盲症などを抱える。
広島市立中央図書館は、駅前の商業施設「エールエールHIROSHIMA」の8~10階に入り、床面積は以前の1.4倍に拡大。誰もが読書を楽しみ、くつろぎながら滞在できる図書館をうたう。
だが、視覚に不自由さを抱える人にとって難点が少なくない。
館内の通路にある高さ約2.6メートルの柱に取り付けられた「矢羽根」と呼ばれる案内表示もそうだ。見上げる必要があるうえ、緑地に細い黒文字の配色で文字がにじんで見えるという。
西河内さんは「デザイン重視で機能的とは言えない。JR駅などで採用されている、床に矢印を描く手法も検討できたのでは」と言う。
日本図書館協会「図書館の自由委員会」委員長も務めた西河内さんによると、図書館には多様な色覚に配慮し、正確に情報を伝える「カラーユニバーサルデザイン」が求められる。特に緑色は識別しにくい色の一つとされ、東京都のガイドラインでも、注意が必要としている。使用する場合は、背景と文字に十分な明度差(コントラスト)を確保する必要があるという。
緑色のデザイン、原民喜の詩から着想
なぜ緑色が中央図書館で多用されているのか。
市生涯学習課によると、広島出身の詩人・作家、原民喜(1905~51)の詩「永遠のみどり」がコンセプトだという。被爆を生き延びた原が晩年に発表した作品。この作品の若葉のイメージから着想し、緑を基調に「居心地の良い空間」を演出した。
石田博嗣課長は「工事完了前に色覚への配慮について検証やテストも行った。『かっこいい』『かわいい』といった好意的な声が多い」と強調する一方、「見えづらい、文字が小さいといった意見も寄せられている。必要に応じて案内表示の追加を積極的に検討する。困った時は職員に声をかけてほしい」と話す。
西河内さんによると、館内の多文化情報コーナーに外国語表記が少ないなどの問題点もある。今後、見学を重ね、市に要望書を提出する考えだ。
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