東京都杉並区長選、現職の岸本聡子氏が再選 自民推薦の前区議ら破る
東京都杉並区長選が29日に開票され、現職の岸本聡子氏(51)が、いずれも無所属で前区議の大和田伸氏(45)=自民推薦=、地域政党「再生の道」が推薦する国際ビジネスコンサルタントの増田義彦氏(68)、前区長の田中良氏(65)を破って再選を果たした。
再選を決めた岸本氏は、支援者らと抱き合うなどして喜びを分かち合った。「4年前より多くの信任を得られた。これまでの4年間を区民の皆さんが見ていてくれた。本当にうれしいこと」と話した。そのうえで2期目に向け、「次の4年間はもっともっと創造的で前向きな政策を広げたい」と意気込みを語った。
選挙戦では、岸本氏が進めてきた「対話の区政」のあり方などが争点となった。
岸本氏は、対話の継続を訴えるとともに、児童館の整備や小中学校の給食費の無償化、同性カップルを支える「区パートナーシップ制度」の制定などの実績を強調。「挑戦はまだ終わっていない」と区政の継続を訴えていた。
政党からの推薦や支持を受けず、支援する市民団体がフル稼働した。選挙戦でYouTube広告を使わないと宣言する一方、X(旧ツイッター)やインスタグラムなどで自身の政策や区内外の支援者の応援メッセージを展開するなど、SNSを積極的に活用して浸透を図った。
投票率は42・54%(前回37・52%)、当日有権者数は47万8530人だった。
確定得票
当選 106,487 岸本 聡子 51 無現
46,250 大和田 伸 45 無新
33,259 田中 良 65 無前
15,877 増田 義彦 68 無新
杉並区長選、自民が全力「セット」戦 区議補選に岸田元首相の愛弟子
28日に投票された杉並区長選で、自民党は27年ぶりに推薦候補を擁立したが、現職の岸本聡子氏(51)に及ばなかった。各地の地方選挙で自民推薦候補の苦戦が続いており、杉並区長選でもその流れを止められなかった。
9人が立候補した区議補選(被選挙数2)には岸田文雄元首相の元秘書で30歳の新顔を立てた。岸田氏が2度も応援に入るなど、自民色を前面に出した組織戦を展開した。
選挙戦終盤の25日夜、雨が降るJR荻窪駅前で、選挙カーから岸田元首相が現れた。自民公認で区議補選に立候補している杉浦岳志氏(30)の応援に駆けつけた。自身の秘書を6年間務めた「まな弟子」とはいえ、元首相が区議補選の応援に入るのは異例だ。
マイクを握った岸田氏は「(杉浦氏は)間違いなく杉並区にとって大きな力になると確信している」と力を込めた。
杉並区出身の杉浦氏は大学卒業後、岸田氏の事務所で秘書として働いた。岸田氏は、6月7日にあった杉浦氏の決起集会にも姿を見せ「事務所をあげて一生懸命、応援させてもらっている」と宣言。「杉浦君の最大の特徴は人柄。今日も多くの秘書仲間が駆けつけてくれた」と持ち上げた。
さらに「大和田さんは杉浦君の恩人。ぜひ大和田さんにも力をいただきたい」と呼びかけた。岸田氏が名前を挙げたのは、杉並区長選の自民推薦候補、大和田伸氏(45)だ。
自民は、大和田氏と杉浦氏を「若い2人」というセットで押し出す戦略を描いた。杉浦氏の知名度不足を、区議を15年務めた大和田氏と活動をともにすることで補う狙いもあった。
告示日の21日。阿佐ケ谷駅前での第一声の場面でも、2人は並んでいた。
杉浦氏が「私がつくりたい杉並を実現するには、大和田さんがリーダーでなければならない」と話せば、大和田氏は「杉浦と大和田、若い力が杉並を変えていく。新たな区政をつくろう」と呼応した。
選挙期間中も街頭演説を合同で行い、お互いに投票を呼びかけた。告示日の応援に入った複数の自民議員から「街頭の反応はかなりいい」と手応えを語る声も聞かれた。
ただ、自民の組織をあげた「セット戦略」には、危機感もにじんだ。
複数の関係者によると、昨秋、区長選をみすえ、自民側と前職の田中良氏(65)側で、現職の岸本氏に対抗するため候補者を一本化する動きがあったという。
自民が支持層として期待する地元の経済団体や自民の元区議らが田中氏の応援に回ると見込まれ、「保守票」が割れる懸念があったためだ。だが、交渉はまとまらなかった。
さらに、公明党が区長選での自主投票を決めたことで、票の行方が見通せなくなった。公明都議が「個人的に」田中陣営を訪れて激励する姿を横目に、自民関係者は「区長選だけでなく、区議補選もわからなくなってきた」と漏らした。
関係者によると、選挙戦中盤には「区長選は現職の岸本氏が優勢」との情勢が共有され、自民の選対会議では有権者への電話かけなどの活動を強めるよう呼びかけがあったという。
さらに、最終盤になって大和田氏は、物価高対策として、デジタル地域通貨による「1世帯あたり最大10万円のポイント給付」を打ち出す。こうした政策を強調するシールをポスターに貼っていった。自民の萩生田光一・幹事長代行が激励する内容の動画を公開するなど、無所属ながら、自民色をさらに強く打ち出していった。
自民にとって、区長選での推薦候補の擁立は悲願だった。
前々区長の山田宏氏、前区長の田中氏と、非自民ながら保守的な区長が続き、対抗馬の擁立には至らなかった。
22年の前回区長選ではリベラル系の岸本氏が初当選。23年の区議選で自民の議席は半減した。分裂していた会派をまとめる際に掲げた目標が、区長選で推薦候補を擁立することだったという。
杉並区での自民の苦境は、国政ともリンクした。
21年秋の衆院選では、杉並区の大部分を占める東京8区で、自民重鎮だった石原伸晃氏が立憲新顔の吉田晴美氏に敗れた。24年の衆院選でも後継の門寛子氏が落選した。
今年2月の衆院選で、自民は地滑り的な勝利を挙げ、門氏も初当選した。SNSに「区長選で勝つまで私の戦いは終わりません」と投稿し、その言葉通り、区長選で門氏は大和田氏とともに連日、街頭に立った。
一方、区議補選には杉浦氏のほか、都民ファーストの会や国民民主党なども候補者を立てた。
共産党から立候補した野垣暁子氏(45)は「岸本区政を支える」と距離の近さをアピール。自民関係者は「共産が票をまとめるのでは」と焦りを口にした。終盤、杉浦氏は「自民党公認」の文字を大きくしたポスターに貼り替えた。
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