第3話

―仙城高校 教室―


 1日の授業の全てが終わった後、俺と茜は2人きりで話していた。

 窓から差し込む夕日で灰色の長髪と白い柔肌が照らされ、全体的に神秘的な雰囲気を纏っている。

 夕日に照らされた美少女というのは存外ぞんがい絵になるものだ。

 だが、茜が少し眩しそうにしている。


「カーテン閉めますね」

「あ、ありがとう…ございます」

「どうです?馴染めそうですか?学校」

「……ちょっと、厳しい…です」

「そうですか…」


 容姿と出身が関係してか若干距離取られてるもんな……。

 少ししょんぼりとしている茜の気を逸らすために別の話題を切り出す。


「そういえば、部活って決めました?」

「まだ……です。

 お、オススメとか……ってありますか?」

「うーーん。なにか好きな事ってあります?」


 そう言うと茜は少し考えた後、口を開いた。


「…私、賑やかな雰囲気が苦手、で……1人でいるのが好き…です」

「ふむ…」


 女子に人気な部活というと吹奏楽とかだが……うちの学校の吹奏楽はもはや体育会系だからな。

 主要な運動部と吹奏楽・ダンス部あたりはダメそうか。


「美術部ってどうです?」

「その…絵はあまり自信がなくて……」

「なるほど…」

「…す、すみません。

 その…せっかく提案してもらった、のに…断ってしまって……」

「そのくらい全然構いませんよ」


 うーーーーーーん。どうしたもんか。

 もう思いつかないぞ……


 そんな感じで悩んでいると、ふと茜が話しかけてきた。


「…こ、浩一君はどの部活に入ってるんですか?」

「水泳部ですね。

 まぁ、部員が2人しかいないんで大会とかもほぼ出ませんし、碌な活動はしてませんけど…」

「そうなんです…ね」


 そう言うと茜は何かを考え始めたのか、黙り込んでしまった。

 暫く沈黙の時が流れる。

 暇なので少しボーッとしていると、茜がチラチラとこちらの様子を伺っているのが見えた。


「どうしました?」

「あっ、えっと……その」


 緊張しているのか言い出しにくそうにしながらも、茜はたどたどしく口を開いた。


「わ、私も水泳部に入部してもいいです…か?」


 顔を少し赤くしながら言ってくる。


「へ…?」


 あまりにも予想外な発言に俺は気の抜けた声を出すしかなかった。


「め、迷惑だったら全然、断ってもらっても…良いですから……!!」


 かなり焦った様子で茜はそう言ってくる。


「ああいや、断ったわけじゃないです。

 むしろ大歓迎ですよ」

「……ほ、本当に良いんですか…?」


 茜が不安そうな顔で聞いてくる。

 多分気を使われていると思っているのだろう。


「もちろんですよ。

 というか、卒業で先輩部員がかなり抜けていって廃部の危機でして……」

「よ、良かった…です」


 胸を撫で下ろした様子だ。


「一応先輩に話通してきますんでちょっと電話しますね」

「わかりました」


 そう言ってスマホを取り出し、桜庭先輩に電話する。

 数コール後、通話が繋がった。


『あ、桜庭先輩?明日プール借りられるように手配お願いできますかね? 』

『…第一声がそれですか…あなたは相変わらずですね』


 電話からは若干呆れているような声が聞こえてくる。


『良いじゃないっすか別に。俺と先輩の仲なんですから』

『そういう事ではなく…!』


 電話先からは若干怒ったような声が聞こえてくる.

 だがまあ様子から察するに本気で怒っているわけではない。

 いつも通りの桜庭先輩だ。


『……まぁ、特に予定などはありませんし構いませんよ』

『ありがとうございます。...やっぱ優しいっすね』

『このくらいは当然です。それに……』


『………あなたと一緒に居られるのは嬉しいですし…』


 小声すぎてよく聞こえなかった。

 なんだろうか?


『へ?なんて? 』

『な、なんでもありません! 』


 いきなり大声で叫ばれてしまった。

 大分焦っている様子だがどうしたのだろうか。


『しかし、いつもは大抵予定が埋まってるのに珍しいですね。なにかありました? 』

『えぇ、早朝にあなたの知り合いを名乗る1年生が入部したいと私に押しかけてきまして』


 俺の知り合い……?

 もしや……


『あー……そいつ…もしかして金髪ツインテールでした? 』

『えぇそうですが…それがどうかしましたか?』

『いえ、一人思い当たる奴がいたもので。

 それじゃあ明日、部室前で集合で』

『わかりました。待ってますからね。

 くれぐれも水着を忘れないように』

『分かってますよ。伝えときます』


 そう言って、電話を切る。


「さて、帰りましょうか」

「…わ、わかりました」


 俺たちは下駄箱へと向かった。

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