第5話

―仙城高校 屋内プール―


 青い水面に白く塗られた壁、ガラス張りの天井からは光が差し込む。

 どうやら一番早く着替え終わったようで、まだプールサイドには誰もいない、


「にしても、部員が減ったなぁ」


 元々人気はなかったものの、4年の先輩が一気に卒業して、この部活も一気に活気がなくなった気がする。


「…まぁ、更衣室を独り占めできるってのも悪い気分ではないが」


 そんな事を考えていると、向こうも着替え終わったらしくガラガラとドアの開く音がした。


「お待たせしてしまって申し訳ありません」


 声に反応して振り向く。

 すると、そこには3人のスクール水着姿があった。


 桜庭先輩は貧相なスタイルと若干の身長の低さから、どこか少し子供っぽくも見える。

 だが、元々の色素の薄さと体の細さも関係してか、かなり幻想的な印象を受ける。

 楓はまあ平均的な女子高校生と同じだが、普通に血色も肉付きも良く、変わらず明るい印象だ。

 茜は……抜群のプロポーションをくっきりと型取った輪郭に、水着特有のテカリがそれをさらに強調している。

 胸の谷間もその一端を見せており、薄い髪色と青い眼も相まって、どこか大人びた雰囲気を纏っている。


 桜庭先輩と楓は元から水泳部所属なため、まあ平然としている様子だ。

 だが、茜はどこか恥ずかしそうに若干俯いている。


「おぉ……」


 こんな近くで女性の水着姿を見る機会などそうそうないのだが……正直言って目のやり場に困る。

 キラキラしてて眩しい。


「どうっすか?

 あたし達の水着姿は」


 微妙に目を逸らしているのがバレたらしく、薄ら笑いを浮かべながらじりじりとこちらに近寄ってきた。


「…何か言ったらセクハラになりそうだから言わない」

「えぇ~……」


 納得いかないらしくむすっとした顔になってしまった。


「さて、雑談もこのあたりにして部活を始めましょうか」


 パンと手を叩いて、桜庭先輩は場を引き締めた。


「水泳が苦手だったりあまり経験がない人はいますか?」


 茜がおずおずと手を上げて話始めた。


「あ、その………私、部活に縁があまりなかったもので…」


 それを聞いた桜庭先輩は少しの間考える様子を見せ、そして口を開いた。


「では、中川くんが色々教えてあげてください」

「俺っすか?」


 まさか指名されるとは予想しておらず、思わず聞き返してしまった。


「えぇ。

 あなたが連れて来たのですから、きちんとサポートしてあげるべきですよ」

「それもそうですね。わかりました。

 1コース借りますね!

 じゃあ、行きましょうか」


 茜の手を取って引っ張って行く。


「わ、わかりました…!」


―――――――


「色々やる前に聞いておきたいんですけど、茜さんってどのくらい泳げます?」

「…25mプールは、なんとか泳げ、ます」

「……もしかして運動苦手ですか?」

「…す、少しですが」


 うーむ。

 どうしたものか。

 まあ、見てみないことにはわからないか。


「わかりました。じゃあ一回泳いでみてください。何かわかるかもしれません」

「は、はい...!」


―――――――


 プールサイドで息切れしている茜に声をかける。


「お疲れ様です。大丈夫ですか?」

「な、なんとか…大丈夫……です」


 荒い息遣いで肩を上下させている。

 おそらくは運動不足からきた体力の低下によるものだろう。

 落ち着くまで待ってあげよう。


「……あ、ありがとうこざいます。

 わざわざ待っていただいて……」

「いえいえ、これくらい当然ですよ」


 濡れた水着のテカリが目にちらつく。

 同時に非常に高いスタイルも目に入ってくる。


 あまりにも色っぽい。

 目のやり場がない……。


「……?」


 どうやら若干目を逸らしているのに気がついたのか、茜が不思議そうにしている。

 理由は勘付かれていなさそうで良かった。


「…では、泳ぎを見て感じた事を述べますね」


 と言っても、どこから指摘したものか。


「今の主な課題はフォームなどの基礎と体力面ですね。

 まずはそのあたりを固めていきましょうか」

「よ、よろしくお願い…します」


―――――――


―仙城高校 体育館―


 部活終わり、茜が話しかけてきた。


「…こ、浩一君。今日は色々ありがとうございました」

「いえいえ、これくらい当然ですよ。

 というか、今日は大丈夫でした?」

「た、大変でしたが頑張り…ます!」


 強い決意を感じる。

 非常に健気で大変可愛らしい。


 そんなことを考えていると、茜が何か言いたげにこちらを見ていた。


「?」

「…あ、その」

「はい」

「えっと……」

「何でしょうか?」

「……わ、私の家まで来ていただけません…か?」

「?!」


 予想外の言葉に少々驚いていると、焦ったように茜は言葉を付け足した。


「お、お礼も兼ねて…なので、その…厳しいようでしたら大丈夫ですから…!」

「僕自身は平気なんですが……その、茜さんは大丈夫なんですか?」

「……?」

「知り合ったばかりの人を家に招くってことですよ…?」

「こ、浩一君なら大丈夫…です」


 言い切られてしまった。


「では、お言葉に甘えてお伺いしましょうか」


 そんなこんなで、俺は茜の家に招かれる事となった。

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