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ここから先は放送事故なのでカットでお願いします!/Novel by 皓

ここから先は放送事故なのでカットでお願いします!

4,050 character(s)8 mins

ワンダーランズ×ショウタイムがモニタリング番組に取り上げられた!しかしとんでもないタイミングで類司がお茶の間に流され放送事故となってしまうお話をモブ視点でお届け。SSです。
※直接的な表現はありませんが、類司の事後のような表現あり。そのほかのカップリング要素は一切ありません。
書いておきたかったモブがでしゃばって推しカプ事情を知ってしまう話。

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局アナとして入社して一年。

朝早くからの仕事へ向かう道中、数日前から渡されていた台本へとタクシーの中で目を通していく。
タクシーの後部座席の窓に映る自分の顔は未だ化粧をしていないすっぴんだからか、なんとも辛気臭い。華の20代前半、といっても加齢には抗えない肌荒れや治りにくいニキビ。
それに今足を運んでいるこれからの仕事のことを考えると、このままでいいのかと早朝から自問自答してしまう。

「いやいや、今日の仕事だって数字取れればいいんだから……」

声に出さないと消えてしまいそうなモチベーションを無理矢理あげ、バッグに入れていたサプリメントを数種類取り出してエナジードリンクで流し込む。
そうして自分に喝を入れた私にとって、本命の報道への配属は叶わずしかし夢の女子アナの肩書を得たばかりの新人アナウンサーとしての初仕事が始まろうとしていた。


『オレたちの密着放送か! 面白そうだな、いいだろう』
『ふふ、僕たちの普段の様子を皆さんにお届けできるなんて光栄だ』
『類くん類くん! 寧々ロボちゃんにびゅびゅーって登場してもらうのはどうかなあ!?』
『そ、そんなことテレビでしたらどうなるかわからないでしょ……』
『とにもかくにも! この天馬司が座長を務める我がワンダーランズ×ショウタイムを余すことなく知ってもらう良い機会だ! 撮れ高は保証されているぞ! はーっはっはっはっは!』

『……と、いう内容から始まる今話題の若手に注目したモニタリング番組ですが……今回は都心に位置する遊園地をメインにショーを行っている、ワンダーランズ×ショウタイムの皆さんということで既にSNSでも楽しみとの声が多いですね。確か今回は座長の天馬司くんへの寝起きどっきりでしたよね?』


スタジオから現場の私へ求められるだろうコメントに対し、事前の打ち合わせの台本通りに答えていく。
この番組の司会を務めるお笑い芸人は進行もスムーズだし、適当なタイミングで笑いを取るコメントもとってくれるので私としても助かっていた。だから今回もきっと大丈夫だろう。

「そうなんです。ステージの上ではいつもきめきめで、未来のスター!とおっしゃっているあの天馬司さんがターゲットです。今回は皆さんが地方公演で訪れているというホテルに特別にお邪魔しているのですが……」

今日訪れているのはあのワンダーランズ×ショウタイムがプロモーション活動の為に訪れている地方のホテルだった。

ワンダーランズ×ショウタイムと言えば、先ほどのVTRにもあったように高校二年生の天馬司という彼が座長を務めているショーユニット。
正直私も今回の企画がなければ知ることはなかっただろう。
しかし事前に映像などでそのステージパフォーマンスを目にすると、本当にこれだけのことをあの高校生四人が作り上げているのかと驚いた。
前振りのVではみんなをまとめあげる天馬司の様子が映っていたが、今回はそんな彼の寝起き突撃をするという何とも古典的などっきり。
寝起きなんて当日に部屋に行けばいいし、コストもかからないから局としては嬉しい限りだがさすがに早朝五時という早さだとこちらとしても体力を持っていかれそうになる。
いくら20代前半といえどもこんなに早く起きて化粧をしてしまえば肌がかわいそうだなと、やや他人事に想いながらADが部屋のドアに鍵を差し込むとかちゃりと音が響いた。

寝起きどっきりと言っても、高校生なのだからあっと驚くようなことは無いはずなのに。
半ば白けた気持ちで室内へと進んでいく。
未だ外も明るくない時間なので部屋の中は薄暗く、足元を見ながら進まないと荷物にぶつかってしまいそうだった。
しかし部屋の中はキレイに使用されており、彼の几帳面な性格が伝わってくる。
高校生にしては立派な部屋を与えられているなと思いながら進むとベッドが見えてきた。
布団がこんもりとまあるくなっているのがうかがえる。ベッドの下にはスリッパが二組揃えておかれており、ここでも思わず感心して……え、二組?

見間違えかと思ったが、しっかりと二組のスリッパが外側を向いて置かれていた。一組はきっちり揃えられているが、もう一組はつま先が反対の方向を向いている。
自分でも状況が理解できず、咄嗟にカメラさんに視線を送ると特に気にしていない様子を見せていた。片手では親指と人差し指をくっつけてオーケーオーケーって、いや、全然OKではないと思うのだけれど。

おかしいでしょ。
だって、今回の公演では一人ひとり部屋をとっていると聞いていたのだから。

もしかして誰か女の子を連れ込んでいるとか……?

そう、天馬司率いるワンダーランズ×ショウタイムのメンバーには二人女の子がいる。
鳳えむちゃんと、草薙寧々ちゃん。
どちらもとても可愛らしく、一見年齢相応な女子高生に見えるがステージの上でのパフォーマンスを見るとなかなか普通の女子高生、という枠には収まらない存在だ。

それはそれで番組的には盛り上がるけど彼にとっては相当まずいことなのではないのか?
いくら男子高校生だからって、さすがにこれがお茶の間に流れるのは……と思考を巡らせていくが、さらにその先にある「視聴率」という単語を思い出した。

そうだった。
この世界はいくら企画が強くても、出演タレントに力を入れていても視聴率という数字によって大きく変わってしまう。
もし、ここで彼が女の子を連れ込んでいたら。
この番組が動画サイトにアップロードされて、番組を担当している私にスポットライトが当たるかもしれない。
そうすればもっと大きなバラエティにも出られるし、いずれはスポーツ……ううん、念願の報道にいける日がくるかもしれない!

これは一世一代のチャンスなのだ!
そうともなればこの布団を捲った先に私の輝かしい未来が待っていると言っても過言ではない。
ADから視線を送られ、カメラが布団をクローズアップして映した。
編集点は十分作られているし、いつまで経っても布団を捲らないで私がもたもたしていることに痺れを切らしたらしい。

仕方ない。

まるで自分の秘密が暴かれる直前のようにドキドキと鼓動が早くなり、布団を握る手は心なしか汗でしっとりしている気もする。
この後の流れも、台本をしっかり頭に叩き込んだはずなのにどこか曖昧になっていく感覚に襲われた。

「それでは……寝起きどっきり、いきたいと思います……」

心の中でゆっくり5から数字をかぞえ、3、2……

来いっ! 視聴率30パーセント!

「えいっ!」

ばさりと、布団が捲れる音がしてシーツがふわりと舞った。そうしてはらりとゆっくり降りていくシーツが視界を覆い、未だに納まらない緊張感のまま視線を下向ける。

ぱっとライトに照らされてベッドの上に寝転がるのは、女の子を連れ込んだ天馬司……ではなかった。
いや、もしかしたら見知らぬ女の子を連れ込んでいる方がまだよかったのかもしれない。

「……へ?」

だって、布団を捲って出てきたのは彼と同じショーユニットメンバーの神代類だったのだから。

「へ……何これ」

思わず自分の目を疑った。疑っての、二度見。
今朝も朝早かったから、脳が未だ起きていないのかもしれないと瞬きをゆっくり2回繰り返して注視する。

逸らせることの出来ない私の視線の先では、神代類がまるで天馬司を抱き込むように身体を寄せており、その腕の中で彼はすやすやとこちらの撮影班にはまったく気づかずに眠っていた。
その表情は安心しきっているようで、いや、それにしても何この状況?
私だって彼氏にこうして抱きしめられながら眠ったことなんか最近ないというのに。
というかこれが一般的な男子高校生の距離なのか? これが普通? 今ってこういうものなの?
だって、彼が着ているパーカーなんて絶対にサイズが合っていないのが私から見てわかる。
それに事前に目を通していた資料用の映像でこのパーカーは神代類が身に着けていたのだから。
その下はというと、これはまあ男子高校生ならあり得るかと思える下着一枚。

しかしそこがまた問題で、筋肉が程よくついた天馬司の太ももの内側には小さい鬱血したような跡がひとつ、ふたつ、見えるだけで10近くはついている。
ところどころに散ったそれがキスマークだということはすぐに理解した。
首は、と顔へ視線を送ると恐らく洋服で隠れる場所を中心につけられているのが分かる。

「…………ええと」

生々しいまでの『事後』感。
そのあとすぐにベッド脇のごみ箱に視線を送ってしまった自分が穢れた大人だと自覚した。
ちなみに、ごみ箱の中は、まあ、想像通りなわけでして。

ここに漂う色気というか、いやらしさというかそういった雰囲気はきっとモニターを通して番組を観ている人間にも伝わるに違いない。
けっして放送できるものとは思えないのだけれど。

さすがにそこに長く視線を向けておくのは後ろめたさもあってすぐに逸らし、周囲のスタッフへと視線を送った。
この状況は私一人でどうにか出来るものではない。
頭の中で目の前の光景をどう処理していいかわからずにいると、小さく「ん」と声を漏らした天馬司が目を擦り始める。
しかし次の瞬間、もぞりと身体を丸めると「類、」と呟いてまた丸まってしまった。
確かに小さく呼んだ名前は、くっついて眠る神代類のもの。恐らくマイクもその音を拾っていることだろう。
猫が丸まるようなその様子に思わず母性が沸いてくるが、今はそんな場合ではない。

せめて、せめて起きてくれ。
起きて「寒かったからこいつが布団にもぐり込んできただけですよ」とかなんとか適当に言ってくれ。
そうすれば未だ間に合う!


どうしよう。
こんな状況今にも後にも無いだろう。
さあ、どうなる視聴率30パーセント。

「す、スタジオにお返ししまーす!」

Comments

  • 15

    スタッフになりたい人生だった………

    November 6, 2025
  • 碧生
    November 1, 2021
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