フォルトゥナ🆚ネットワーク-北海道サッカー界の地殻変動:資本力と25年の矜持が交錯する「社会人サッカー」の最前線 【HF Press】
北海道の社会人サッカー界が、かつてない熱を帯びている。Jリーグ入りを公言し、圧倒的な資金力とブランディングで駆け上がる「北海道フォルトゥナFC」と、創立25周年を迎え、草の根から地域の絆を紡いできた「NetWork」。対照的な二つのクラブがカップ戦で激突する背景には、単なる勝敗を超えた「地方におけるスポーツ経済の在り方」という大きな問いが隠されている。
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「資本力への嫉妬」が照らし出す、地方クラブの現実
札幌のスタジオ。ネットワーク代表のシゲは、対戦相手チームへの複雑な胸中を隠さなかった。 「正直、めちゃくちゃ嫉妬しました。ジェラってました(ジェラシーを感じていた)」
その言葉は冗談めかしてはいたが、プロのスポーツ経済記者である私の目には、地方社会人チームが直面する「資本の壁」に対する本音が見えた。北海道フォルトゥナは、札幌生まれの純粋なチームとしてJリーグ入りを掲げ、元Jリーガーを次々と補強している。松本山雅FCやサガン鳥栖に在籍してきた選手、さらには北海道リーグからカテゴリーを下げて合流した元Jリーガーの石渡旭のような、異例の経歴を持つ実力者が揃う。
「(フォルトゥナは)資金力とか発信力はあるしブランディングもうまいけど、ズルはしてない。ちゃんと下から積み上げてきている」
シゲ氏の分析は冷静だ。地方において、スポーツを通じた経済活性化には「象徴」となる強いチームが不可欠である。フォルトゥナの急成長は、スポンサー企業の期待と、Jリーグという「上」を目指す明確なビジョンが結びついた結果と言える。しかし、その「フルスピード」の進撃は、地道に活動を続けてきた既存の社会人チームにとって、脅威であり、同時に強烈な羨望の対象となっている。
25年目の「選別」:ネットワークが守るべき草の根の価値
一方、シゲ氏が率いるネットワークも、単なる親睦団体ではない。25周年という節目を迎え、彼らは独自の「選別」を開始している。
「セレクションを今回3回に分けて、しっかり見据えて取った。1/3の選手しか合格していない」
この発言からは、数だけで規模を追うのではなく、志を共にする「質」の向上に舵を切ったネットワークの覚悟が読み取れる。資金力ではフォルトゥナに及ばないかもしれない。しかし、エースの南スーダン人FWケネディや、新たに獲得した高い能力を持つスイス人のジャロといった「個」の力、そして「高い能力とモチベーションを持った選手」という組織の純度で対抗しようとしている。
試合における秘策を問われたシゲ氏は、言葉を濁さず、現場の生々しい熱量をぶつけてきた。 「真っ向勝負じゃちょっと厳しい。秘策は……5バックで行く。0でしのいでPKになれば、何が起こるかわからない」
この「ジャイアントキリング」を狙う姿勢こそが、スポーツが地域社会にもたらす「希望」の源泉だ。格上の存在に、知略と団結で噛み付く。そのダイナミズムが観客を惹きつけ、地域のコミュニティを熱狂させる。
「JFLの壁」と北海道サッカーの未来像
北海道サッカー界には、長年誰も打ち破れていない「JFL(日本フットボールリーグ)への壁」が存在する。コンサドーレ札幌はJFLスタートだった。北海道から自力でこの壁を破ったチームは未だに現れていない。
「北海道全体に、JFLというのが大きな壁になっている」
フォルトゥナはこの壁を見据え、ブロックリーグでの1年を「来年昇格した際、すぐに結果を出せる体勢を作る期間」と位置づけている。この高いビジョンは、地域のスポーツ振興における「基準」を引き上げる効果を持つ。
また、北海道のアイコンである小野伸二が、道内全ての市町村を回る計画を立てているという話題も出た。 「小野さんが来る日のために、早くどっかの市町村と提携した方がいい」。冗談の中にも、スポーツを通じた地域振興の本質が突かれている。一人のスター選手、一つのチームが自治体と結びつくことで、地域経済に新たな循環が生まれる。
結びに代えて:スポーツが地域に残すもの
ネットワークは5月26日に創立25周年を迎える。「負けても得るものは本当にある」と語るシゲ氏の表情には、四半世紀にわたって札幌のサッカーシーンを支えてきた誇りが滲んでいた。
巨大な資本を背景にプロ化を目指すフォルトゥナと、25年の歴史を背負いながら、厳選された精鋭でジャイアントキリングを狙うネットワーク。この両者の対立構造は、そのまま「地方の活性化」における二つのアプローチを象徴している。
成功の尺度は、単なる勝利や昇格だけではない。そのチームが、どれだけ地域の心を動かし、次世代に何を繋ぐか。北海道の冷涼な風の中、社会人選手たちが走り続けるピッチには、地域経済と人間ドラマが交差する、熱い未来が確かに存在していた。
執筆:湯口 ユウキ(Yuki Yuguchi)
HF Press 代表 / ジャーナリスト
2002年、日韓ワールドカップの熱狂よりフットボールを追い続け、現在はサワディーゆきに/YUKINIとしてYouTubeチャンネル**『生きがいTV(登録者7,000人)』**を運営。コンサドーレサポーター目線からの本音な発信活動の軸に歩んできた実績を持つ。
2026年春、投資家としての視点とフットボールへの情熱を融合させた専門メディア『HF Press』を創刊。JFA公認D級コーチやFP3級に加え、さらなる報道の専門性と公的責任を追求すべく、米国 UoPeople にて経営学を学ぶ準備中。IFJ(国際ジャーナリスト連盟)公認の国際記者証(IPC)取得を目指して、本名での本格的なジャーナリズム活動を展開している。


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