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カヨウサスペンスショウタイム/Novel by えんどう

カヨウサスペンスショウタイム

23,575 character(s)47 mins

最後の一人になるまで終わらないわ

ダショが楽しくちゅるりらサスペンス劇場する話。少々性格悪めのモブ君視点がふんだんに入ってます。
すごい平和な話なんですが、一応だっだっだっしてるので注意。カプ要素はないのに、どう見ても類司に見える仕様です。

その緑の目の怪物に支配された人間は、自ら視野を狭め、そして自滅していくのだっだっだ。

ツイッターやっております
twitter/wndrshooow

素敵な表紙は大好き相互様のはるささん(有馬さん)に描いて頂きました!ビッグラブすぎます、本当にありがとうございます…!
user/2113335
twitter/rkgkarm

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プロローグ
☆歌謡サスペンスショウタイム(裏)0


「神高サスペンスチューズデイ?」
「何その頭悪そうな企画……」

 それは“優雅なランチタイム”を愛するはずの司が、珍しく自ら類と寧々を強制的に屋上へと呼び出した昼休みの事だった。司が握り潰さんばかりの勢いで取り出したそのチラシは既にシワシワのクシャクシャで。類が受け取ってシワを伸ばす様子を見守る寧々の顔には、とてつもなく迷惑だという心情がありありと浮かんでいる。

「いいか類、そして寧々!! オレ達ワンダーランズ×ショウタイムもこの企画に参加するぞ!! これは座長決定だ、異論は認めん!!」
「わたしパス」
「異論は認めんと言っているだろうが!!」

 ぎゃあぎゃあ煩く騒ぐ2人を横目でにこやかに見守りながら、ひとまず類はそのチラシを読み進める事にする。

 神高サスペンスチューズデイ

 “日常にサスペンスを!”のキャッチコピーを謳うそれは、どうやら新劇同好会という団体に属する一人の生徒が立案し学校側に承認を得た企画であるらしい。
 開催期間は今日(火曜日)から3日間、開催場所は神山高校の敷地内全域。授業中を除く全ての時間が開催時間とされており、神高で流れる日常の中に最も衝撃的なサスペンスを提供し、神高生をゾワリとさせたチームが優勝という企画のようだった。優勝特典として来週の祝日火曜日に講堂でパフォーマンスをする権利が与えられ、そこには地元新聞社の記者が取材で訪れる事が決まっているらしい。演劇部の一部の部員からなるチームや、有志が集まって組んだチームなど、数チームが参加表明をしているとの事なのだが。

「へぇ、こんな企画があったなんてね。新劇同好会なんて初めて聞いたな。でも司くん、これはあまり僕達向きの企画とは言えないんじゃないかな?」
「む……」
「そうそう、司みたいなバカがサスペンスなんてやってもコメディーにしかならないでしょ。文化祭のわけわかんないロミオだらけの演目もそうだったし」
「こら寧々! 未来のスターに向かってバカとは何だ! それに『ロミオ・ザ・バトルロイヤル』は大好評だったろうが!!」
「うーん、でも僕達ワンダーランズ×ショウタイムは皆を笑顔にする明るい演目を主体に活動しているからね。もちろん将来的にはそれ一辺倒で終わるつもりはないけれど、さすがにこのサスペンスイベントへの参加は難しいと思うんだ。3日間しかない開催期間は既に今日から始まっているし、今からサスペンスをテーマにした新しい演目を作るのは少し無謀が過ぎるんじゃないかな」
「そもそも神高生じゃないえむは参加できないんだし、このイベントは諦めたら?」

 類と寧々から立て続けに反対の意を唱えられ、さすがの司もぐっと怯んだような顔を見せる。いつものパターンならここで司の頭が少し冷え、改めて冷静な話し合いが開始されるところなのだが、しかし今日の司は引かなかった。引くわけにはいかない理由が彼にはあるのだ。

「お前達の言いたい事はわかる。だがそれでもこの企画には絶対参加する。そして絶対に優勝を掻っ攫う!!」
「人の話聞いてた?」
「無謀だという事はわかっている!! だがあいつ、えむの事を馬鹿にしたんだぞ?! このまま黙って引き下がるわけにはいかんのだ!!」

 司の叫んだ言葉を聞いて、類も寧々も一気に真剣な顔になる。事情はさっぱりわからないが、どうやら自分達の大切な仲間に何かが起きているらしい。それなら話は別なのだ。

「何か事情があるみたいだね、司くん詳しく話してくれるかい」
「あぁ」

 司いわく。イベントの企画主である新劇同好会の男が、今朝えむの事を「自分達の知名度を上げるために金で観客を買い集めている傲慢な人物である」等と誹謗中傷していたのだという。
 近頃えむはシブヤにある色々な高校に出向いては、フェニックスワンダーランドの学生優待割引券付きチラシを配りながらワンダーステージの宣伝をしているのだが、それを曲解して言いがかりめいた非難をされていたのだ。
 念のため補足しておくと、それは冬休みに向けて学生を呼び込もうとフェニックスワンダーランド側が企画したキャンペーンであり、えむはバイトの一環でチラシ配りをしているに過ぎない。もちろん司達もそれを手伝っているし、ワンダーステージの宣伝はあくまで“ついで”のオマケなのだ。

「……というようにきちんと事実を相手に伝えた上でえむへの非難をやめるよう注意したのだが、“これはサスペンスイベントのパフォーマンスとしてフィクションの物語を語っているにすぎない。鳳えむなんて具体的な名も一切出していないし、何の問題もないはずだ。君も何か言いたい事があるならこの企画に参加してパフォーマンスで語るがいい”等と言って一向に止めようとしなくてな」
「っ……」「それは……」
「それだけじゃないぞ! 類の事も“危険な装置を作る事でしか人の関心を引けない可哀想なサイコパス”等と不名誉な事を言って……」
「……わかった。わたし達でボコボコにしよう」
「寧々ならそう言ってくれると信じていたぞ!」

 先程までのつれない態度から一変。控えめながらも強い意志を瞳に宿した寧々がそう宣言すると同時に、2人は固く握手を交わす。背後にメラメラと燃え盛る緑の炎は、類にだけ見える幻覚だろうか。

「寧々、司くん、気持ちはわかるけど2人とも少し落ち着いて。確かにそれは見過ごせない事態だね。でもそんな煽りに乗ってどうするんだい? 僕達が目指すのはあくまで……」
『とある遊園地ユニットの歌姫がこの神高に通っているらしいんだが、誰かその存在を知ってる奴はいるか? いないだろう! ここまで存在感がないなんて、そいつはよっぽど容姿の悪い地味か、もしくは実力の全くない女なんだろうな!』

 突如響き渡ったその声に、ぴしりと類の浮かべた柔和な笑みが固まる。どうやら例の男が校庭のど真ん中に立ち、拡声器を使ってまたも“パフォーマンス”をしているらしかった。

「あ! あいつまたっ……!! 寧々の事まで!!」
『それに何といっても座長の低レベルさには呆れかえる! 頭の出来も悪ければ、脚本のお粗末さも筆舌尽くし難い! あんな奴が座長を任されるだなんて、あのユニットはよっぽど低レベルの集団か、はたまた座長がメンバーの弱みを握って脅しているのか……華やかな遊園地の裏にあるのは闇深いこんな裏事情だ! まさしくこれぞサスペンス!!』
「……よし、僕達でボコボコにしよう」
「類ならそう言うと思ってた」
「決まりだな!!」

 メラメラと燃え盛る緑の炎の中、3人は固く握手を交わす。かくしてワンダーランズ×ショウタイムの仁義なき戦い、もとい“神高サスペンスチューズデイ”なるイベントへの参戦が決まったのであった。

「それでどうする?」
「類の言う通り、今から新しい演目を作るのは無理があるとわたしも思う」
「だが何らかの演目をやる必要はあるぞ。オレ達は正攻法であいつの“パフォーマンス”に打ち勝つ事で、ワンダーランズ×ショウタイムの実力を示すと同時にやましい事など何もないと証明せねばならんのだからな!」
「そうだね、でも開催期間は実質もう2日しか残っていない。例え今から急いで脚本を起こして練習したとしても明日には到底間に合わないだろう」
「ぐぬぬ……」
「ん……それならエチュードはどう?」
「さすが寧々だね、実は僕も同じ事を考えていたんだ。提案なんだけど明日からの2日間、僕達でエチュード(即興芝居)をして過ごすというのはどうだろう」

 エチュード、つまり台本も台詞もない即興芝居の事である。あらかじめそれぞれの役と大まかな設定や筋書きだけを決めておき、あとは役者同士のその場その場の掛け合いで臨機応変に芝居を作っていくのだが、実はこれ、役者の演技の幅を広げてアドリブ力を養ったり、役に入り込む感覚を掴むためのポピュラーな練習方法として広く知られている。ワンダーランズ×ショウタイムの練習にもよく取り入れられているため、これなら特に問題もなくパフォーマンスができるだろうと類は考えたのだ。

「なるほどエチュードか! それなら大仰な準備も必要ないし無理なくパフォーマンスができそうだな。役になりきって2日間過ごすなんて面白そうじゃないか!」
「うん、いいと思う。でもわたし、エチュードは少し苦手だし、あんまり目立ちたくないというか……」
「わかったよ寧々、それなら今回は僕と司くんを主軸にしようか。問題はどんな設定にするかだけど……」
「サスペンスか……うぅむ……そうだ! それならシェイクスピアの『オセロー』を下敷きにするのはどうだ?」
「『オセロー』か」
「ふぅん、司にしてはいいアイデアじゃん」
「“にしては”は余計だ寧々!」
「うん、僕も賛成だよ。サスペンスとして面白い題材になりそうだね」

 『オセロー』の雑すぎるあらすじはこうだ。主人公オセローと妻デズデモーナは駆け落ちの末に結ばれたラブラブな夫婦。しかしオセローに対して怨みの感情を抱いていた部下イアーゴーが「奥方は不倫している」と嘘の密告をした事をきっかけに、オセローは妻の裏切りを疑い、ついには嫉妬心に狂って妻を絞殺してしまうのだ。ちなみに本当はもっと複雑で人の感情を丁寧に描いた面白い話なのだが、尺の都合で省略させて頂く。

「主人公のオセローはオレだ!」
「はいはい、でもいくらエチュードといっても『オセロー』をそのまま演じるのは無理がない?」
「そうだね、だから大まかな設定だけを少し借りて後は僕達がアレンジしながら演じていけばいいんじゃないかな?」
「どういう事だ?」
「それぞれの役のエッセンスだけを抜き取って演じるのさ。司くんは僕の事を裏切者と疑って殺そうとしている役。そして僕はそんな司くんの疑いを晴らすべく行動する役……うぅん、それだけだと面白くないから僕は裏切りと誤解されかねない動きも積極的にしていこうかな。そんな設定ではどうだろう?」
「いいんじゃない、面白そう」
「うむ、オレも異存はないぞ!」
「では決まりだね。それからエチュードはなるべく例の彼の近くで行うようにしようか。本来なら他人のパフォーマンスを邪魔するなんて僕の主義に反するのだけど、今回ばかりはそうも言っていられない」
「あいつの近くであえてパフォーマンスをする事で観客の注意をオレ達に集め、あの言いがかりが注目されないようにするというわけだな。それなら直接的な妨害にはならないし、オレも賛成だ!」
「うん、わたしもいいと思う」
「神高生でない以上、えむくんだけ参加できないのは少々気が引けるけどね」
「うむ、それは確かにそうだな……」
「わたし、今からえむに連絡してみる……って返信早っ。“残念だよ〜みんなのエチュード観たかったぁ〜”だって」
「ならば後でえむが観られるよう撮影でもしておくか? オレの家にあるビデオカメラを持ってくれば……」
「そうだね、なら撮影係は寧々に頼もうか。そうだ、せっかくなら寧々も撮影をしながらエチュードの登場人物のように振る舞ってはくれないかい? 撮影の片手間に思わせぶりな演技や台詞を言ってくれると助かるのだけど、どうだろう?」
「それくらいなら……うん、やるだけやってみる」
「ハーッハッハ! そうと決まればこの天馬司、ワンダーランズ×ショウタイム座長の名に相応しい、おどろおどろしく鳥肌が立つようなサスペンス12000%の演技を披露して神高中をゾワリとさせてやろうじゃないか!!」
「また意味わかんないこと言ってるし……。まぁやるからにはわたしも全力でやるつもりだけど……」
「フフ、やる気があるのはいい事だね。僕も“サイコパス”の名に恥じないとびきりの新作装置をお披露目しようかな」

 ニヤニヤと笑う3人の心は明日から始めるショーへの期待でワクワクと高揚しており、その背後には緑の炎なんてもう少しだって燃えていない。きっかけがどうあれ、パフォーマンスをやると決めたからには自分達自身が全力で楽しみ、かつ観客を全力で楽しませるのが彼等流だ。復讐より笑顔を、怒りより喜びを。


 それがワンダーランズ×ショウタイムなのだ。


Comments

  • わっふー

    とても良質な勘違いもの、笑いながら読ませていただきました! きっと冬弥とか瑞希とか、他の神高組の面々も楽しくショーを観てたんだろうなと思ったりしてます

    March 16, 2025
  • にょん

    モブからみれば悲劇もワンダショからみたら喜劇

    November 17, 2024
  • ちゃうちゃうwwwアッハッハァ⤴⤴wwwwwwって爆笑しながら読ませて頂きましたwww本当に、もう笑い過ぎて腹筋が鍛えられましたwww

    August 1, 2024
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