罪作りな男
自分に向けられる好意に無頓着すぎる、罪作りな男の話。
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一応メインストーリーとキーイベントは読みましたが、あまりの沼に記憶が抜けているかもしれません。広い心でお読みください。
衝動のままに書きなぐってロクにチェックができていないので、誤字やらなんやらがあるかもしれません。そのうち直します。
ニコニコ全盛期オタクの僕はただ、ミクちゃんの音ゲーがやりたかっただけなんです。なのに、こんなの、こんなの聞いてないよ~~~~!!!!!(楽しい!!!!!)
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4/7女子に人気91位に入っていたようです。ありがとうございました。
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我らがワンダーランズ×ショウタイムの演出家、神代類はめちゃくちゃモテる。
整った顔にすらりとしたスタイル、歌も踊りも演技も上手い、そんな男が役者として舞台に立っているのだ。世界的テーマパークとの提携で若い世代の来場者が増えた今、類を『推し』とするどころか、本当に恋をしてしまう女性がいることは、当然の結果だといえるだろう。
学校では「変人」とクラスメイトから奇異の目で見られることもあるが(俺自身も含めて変人ワンツーと呼ばれているのは棚に上げるが)、少しショーと演出と機械いじりが好きすぎて、授業中にぶつぶつと独り言をつぶやいてしまうだけ。同じクラスどころか他学年の女子からも、イケメンだと影でもてはやされているのを知っている。「目の保養」と遠くから見るだけで満足している者もいるが、中には類に本気で恋をしている女子だっている。
ショーの観客に女性が増え始めたという話をしたとき、観客が増えたことを純粋に喜んでいるえむが、「『ガチ恋勢』って言うんだって!すごいねぇ~!」と新しい言葉を教えてくれた。その隣では寧々が「どこで覚えるの、そんな言葉…」と呆れていたが。
しかし当の本人は、俗にいう「ガチ恋勢」を全く意に介していない。
ショーの終わり、類のことを出待ちしている女性ファンに対しては、一瞥するだけで終わり。「司くん、帰ろう」と、お前それをファンにも向けてやれよと突っ込んでしまうような笑顔で、俺を誘うのだ。
昼休みに類に声をかけようと廊下で頬を染め、友人から背中を押されている女子の横をするりと通り抜け、「司くん、ランチに行こう」と声をかけられときは、女子たちの視線が痛すぎていたたまれなかった。
その件で女子から空気を読めと散々詰られたその日の練習で、休憩中に「これ、1年生の子が作ったんだって。司くんもどうぞ」と言いながら、可愛らしくラッピングされたハート形のクッキーを半分こして差し出されたときはさすがに頭を抱えた。こいつ、いつか刺されそうで怖い。
そうして、類の「ガチ恋勢」の出待ちがいよいよ問題となり始めた。どんな理由であれショーを見に来てくれるのは純粋にありがたいが、いくら女性といえど、オレたちと同年代くらいの人たちが最前列を陣取っていれば、子供たちやお年寄りからはショーが見えにくくなってしまう。まだ明確なクレームにこそなっていないが、何件かショーについての意見が来ているとえむの兄に告げられた。
それにナイトショーの撤収が終わるような時間まで出待ちをされては、若い女性たちは帰り道が危険になってしまうだろう。何か対策をしなければ。
そう思い、類に尋ねたのだ。
「類、恋人を作る気はないのか?」
その瞬間、類の手元のペットボトルの飲み口から、スポーツドリンクが噴き出した。
「うわぁ!?な、何してるんだ類!?」
「い、いや…急に何を言い出すのかと思って」
「…」
とりあえず手元にあったタオルを類に差し出す。類はそれを受け取ると、細長い指をぬぐった。
「それで、どうなんだ?」
「聞くんだね…」
「当たり前だろう」
これはオレたちのショーに関わることだ。座長として、未来のスターとして、放っておくわけにはいかない。
それに類のそういった話に興味がないわけではない。オレと類は仲間であり友人だ。オレの自惚れでなければ、類の恋愛について話を聞くくらい、許されるはずだと思った。
ほかに他意なんてなく、ただ類の恋愛の話を聞いてみたかった、だけだったのだけれど。
「…好きな人なら、いるよ」
そう言った類の表情を見て、ひゅっ、と喉が鳴った。
類は顔を赤くして、それでもオレをじっと見つめていたのだ。
——うわ、顔が良い。
オレはそう思った。普段は飄々として余裕綽綽といった類が初めて見せる表情に、普段は自在に震えるはずの声帯が、まるで麻痺したように、動かなくなった。
同性でもこの破壊力だ。『一体どんな人なんだ?』『告白はしないのか?』『そんな顔、その好きな人とやらに見せたら一発なのではないか?』言いたいことはたくさんあったけれど、実際にオレの口からは、短い言葉がやっと出ただけだった。
「そ、そうか…」
「うん」
見合っていた視線が外される。その瞬間、忘れていた鼓動が、ど、ど、と鳴り出す。
なんだ。なんだそれ。
呼吸が止まってしまうような衝撃だった。自分からそれを聞いたくせに、オレはそれ以降も何も言えずに、ただ黙々と帰り支度を続けるしかなかった。
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ある日、類が差し出してきたのは映画のチケットだった。
類がオレを誘うのは大抵新しいマシンの実験か、たまに観劇だったから、映画なんて珍しいな、と思った。
「もとは有名なミュージカルなんだけど、映画化したんだって。今週は練習が休みだし、週末どうかな?」
「ああ、今週は何もないぞ。決めポーズの研究でもしようかと思っていたところだ」
「じゃあ決まりだね」
嬉しそうに微笑む類に、お前それを少しでも女子に向けてやれよ、と心の中で詰る。さっきも1年生だという女子が恥ずかしそうにオレに話しかけてきたぞ。そういうときは大体、類の連絡先を教えてほしいだとか、類の好きなものが知りたいだとか、類に手作りのお菓子を渡してほしいとか、そんな話に決まっている。まあ女子そっちのけで類が「司くん、練習に行こう」と話しかけてきたから、そそくさと退散してしまったが。
「お前、罪作りな男だな…」
「?司くんと一緒に出かけるのは久しぶりだね」
「…まあ、確かにそうだな。最近は休日も練習をしていたし…」
「司くん、」
類の金色の目がゆるりと細められる。数々の女性を虜にしているその整った顔が、ふわり、緩んでいた。
「デート、だね」
「…」
どくり、心臓が跳ねる。
顔がいい。同性ながら女子が騒ぐのも納得できてしまうような、整った顔をしているくせに、それこそ同性のオレにそういうことを言ってしまうんだからなあ。
「いやお前、そういうことは好きな人にやってくれ」
それは思わず声に出ていたらしい。まったく、性質の悪い冗談だ。そういうことを言うから、厄介なファンが増えるんだ。本当につくづく、罪作りな男だと、そう思う。
「…」
類の冗談に上手く返せたはずなのに、類が次に浮かべたのは、笑顔ではなく少し苦い顔だった。なぜだ。
そしてその週末、類と観にいった映画は実際良かった。
いや、良かった、なんていう一言で済ませてはいけないほど感動した。力強く魂に訴えかけるような歌声と、モニター越しでも大迫力の踊り、演出。離れ離れになってしまう恋人に、自分の殻を破って想いを伝え、そして結ばれるクライマックスのシーンなんか、感動しすぎて泣いてしまったほどだ。
ちらりと隣を見やると、類もそのシーンにくぎ付けになっていたから、多分泣いてしまったことはバレていない。格好悪いところを見られなくてよかった。
帰りに寄ったファミレスで、類と感想を言い合いながら食事をとった。オレたちはあのシーンがよかった、あの演出がよかったと話しながら、注文した料理が冷めてしまうほど、時間を忘れて語り合った。
「気に入ってくれてよかった。僕の家にも何枚かおすすめがあるんだ。観るかい?」
「そうか!類のおすすめだったら間違いないだろう、ぜひ貸してほしい!」
今日の映画があれだけ良かったのだ。素晴らしいショーが観られるだろう、そう期待して即答する。きっと類は快く貸してくれるに違いない——そう、思ったのだけれど。
「貸すんじゃなくて、観においでよ、うちに」
「…え?」
類の部屋に入ったことはある。ショーで使う機材が一人では持ちきれない量だというので、運搬を手伝いに行ったのだ。そのときは寧々もいた。いくらダンスの練習で体力がついてきたといえど、寧々は小さなロボットを一つ運ぶので息を切らしていたから、俺が行ってよかったと思ったのだ。
でも、類の家に遊びに行ったことはない。類はそういうことを嫌がるかと、オレは勝手に思っていた。実際に言われたことはないが、自分のテリトリーに人を招き入れるイメージがつかない。
しかし今日は楽しかった。素晴らしいショーを観たその熱量のままに、感想を語り合うことが、こんなに楽しいとは思わなかった。ショーの感想を咲希と話すことはあるが、語り合うというよりは、俺の話を咲希に聞いてもらうような形だ。
「…なら、お願いしよう」
だから、オレはその誘いに乗った。決して他意はない。他意はないのだ。
「決まりだね」
変わらず人好きする笑顔を浮かべている、類の頬が、少し赤らんでいる、ような気がした。
*
次の日、ステージにはオレと寧々だけがいた。えむは今日は委員会活動があり、類はまだ来ていない。類が「新作のロボットを部屋に取りに行くから、先に始めていてくれ」と言ったときは、「類の部屋」というワードに危うく反応しかけ、寸でのところでいつも通りの態度を貫いた。そこで動揺しては、まるでオレが意識しているみたいじゃないか。
そんなことを考えていたから、寧々に話しかけられていることに気づかなかった。
「ちょっと、司!」
「おわっ!?」
情けない声を上げて、思わず一歩後ずさる。寧々はオレのことをじろりと見つめ、「何回も呼んだんだけど…」と呆れた顔をした。
「最近やけに静かだけど、なんかあったの?」
「い、いや…」
「何もないわけないでしょ。いつもだったら二人で歌うパートを合わせようとか、カッコいいポーズを見ろとか、もっとうるさいんだから」
「…」
相変わらずの毒舌にたじろいでしまう。しかし言われて初めて気が付いたことだが、最近はことあるごとに類のことを考えてしまい、いつものキレがなくなっていたかもしれない。
「司も悩むことがあるんだったら、…話してほしいんだけど」
えむや類が心配するでしょ、そう言って視線を逸らされる。寧々の申し出はありがたいが、類のことを考えてしまうだなんて、そんなことを寧々に言えるか?
——と一瞬考えるが、ふと、寧々の手が震えていることに気が付いてしまった。緊張、しているのだろうか。人と関わることが苦手な寧々が、オレを心配する言葉をかけてくれることは、もしかしたら一大決心なのかもしれなかった。
「…寧々は、」
寧々が真剣に心配してくれるのなら、こちらも真剣に返さなければならないだろう。間違っても大丈夫だと笑い飛ばすとか、考えすぎだと寧々をからかうような真似はできない。
だから、オレは言ったのだ。最近の、悩み事とまではいかないが、頭を埋め尽くして離れないことを。
「類の好きな人って誰か知ってるか?」
「…………えぇ????????」
たっぷり5秒。真を開けて、寧々は目を見開いた。
「いやこの間、類が『好きな人がいる』と言っていてな…少し、気になるというか」
「…」
「類に恋人ができれば、きっと『ガチ恋』の女性たちも少しは落ち着くかと思ったんだが…」
「…それ、」
本気で言ってるの?と尋ねる寧々の顔が、あまりにも苦々しくゆがめられるものだから、オレはそれ以上何も言えなくなってしまう。そんなオレを見て、寧々ははぁと息を吐いた。
「私からは、言えないけれど」
「…」
「本人に聞いたら」
やはり、寧々は知っている。類の好きな人が誰なのか。
それになぜか、ずくりと心臓が傷んだ。
類は友人だ。類もオレも恋愛の話を好んでするタイプではないが、類が恋に悩んでいるのであれば、オレだっていくらでも相談に乗る。的確なアドバイスなどできるかは分からないが、それでも、類の秘密を共有できるくらいには、信頼されていると思っていた。
類にとって恋愛の話をするほどの友人は、オレくらいだと思っていたのだ。
「遅くなってごめんなさーい!」
制服姿のえむが、少し息を切らしながらやってくる。ここまで急いで来たのだろう。「類くんの新しいロボットがあるって聞いて、急いで来ちゃった!」と、好奇心を隠さずに笑う。
そのあとに続いて、類も見た目からして重そうなロボットを連れて、すぐにやってきた。「重くなかったの?」と寧々が尋ねると、「この子は自分で歩けるからね」と、何かの動物の形をしたロボットの頭を撫でた。
「司くん?」
類に呼ばれてはっとする。これで全員揃ったのだ。しかも今日は新しいロボットもあって、類が考えた演出を試すには絶好の機会。少しの時間だって無駄にするべきではなかった。
自分の中にある邪念を振り払う。
類は大切な仲間であり友人だ。類が何かに悩んでいるなら力になりたいし、オレが行き詰ったときは、類に助けてほしい。
それでも類が相談してくれないのなら。類にとってオレが秘密を共有するに、値しない人間なのなら。
それならばせめて、類のその手で、この恋を終わらせてほしかった。
恋人ができたんだ。そう言って、随分と大きくなってしまったこの気持ちを、深く深く刺して欲しかった。
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仕方ないだろう。だって顔が良い。
整った顔にすらりとしたスタイル、歌も踊りも演技も上手い、そんな男がオレの相棒として一緒に舞台に立っているのだ。ショーのことだけ考えて、まともに恋愛に触れたことがないようなこのオレがときめいてしまうのは、当然だといえるだろう。
学校では「変人」とクラスメイトから奇異の目で見られることもあるが、少しショーと演出と機械いじりが好きすぎて、授業中にぶつぶつと独り言をつぶやいてしまうだけ。同じクラスどころか他学年の女子からも、イケメンだと影でもてはやされているような男が、アプローチを仕掛けてくる女子を一瞥もせずにオレに話しかけてくるのに、得意にならないわけがないだろう。
手作りのハート形のクッキーを半分に割られた女子には同情する。確かにその光景を見て、さすがにオレも「こいついつか刺されるんじゃないか」なんて思ったが、そのあとに湧いてきたのは、圧倒的な優越感だった。
類と休日に映画に誘われるのも、冗談でも「デートだ」なんて言ってもらえるのも、類の部屋に誘われるのも、オレなんだ。
お前たちがどんなに一生懸命アプローチしても、オレには勝てないぞ。
類はモテる。そりゃあもう、めちゃくちゃモテる。
そんな類の恋人になりたいだなんて思わない。女を選び放題の類が、わざわざオレを選ぶ理由が思いつかない。
だから、オレは類の「それ以外」の全部が欲しかった。
相棒も、友人も、相談相手も、ぜんぶ、ぜんぶ。
恋人になりたいなんて、言わないから。
類にとっての「一番」が現れるまでは、オレが類の中の一番でありたかった。
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我らがワンダーランズ×ショウタイムの座長、天馬司はめちゃくちゃモテる。
整った顔に目を引くスタイル、歌も踊りも演技も上手い、そんな男が主役として舞台に立っているのだ。世界的テーマパークとの提携で若い世代の来場者が増えた今、司くんを『推し』とするどころか、本当に恋をしてしまう女性がいることは、当然の結果だといえるだろう。
学校では「変人」とクラスメイトから奇異の目で見られることもあるが(僕自身も含めて変人ワンツーと呼ばれているのは棚に上げるけれど)、少しショーが好きすぎて、場所なんてお構いなしにスターになる夢を叫んでしまうだけ。同じクラスどころか他学年の女子からも、イケメンだと影でもてはやされているのを知っている。「目の保養」と遠くから見るだけで満足している人もいるけれど、中には司くんに本気で恋をしている女子だっている。
それでも司くんは、自分に向けられる好意にとことん鈍かった。
僕と司くんが話しているところを、何か言いたげに見つめてくる女子は少なくない。司くんはそれに気が付くたびに「類、」と僕を引っ張ろうとするけれど、あの子が本当に用があるのは司くんのほうだ。
司くんは僕たちを見て色めき立つ女子たちや、ショーが終わった後に出待ちするようなファンが、全員僕のことを好きなんだと思っている。あれはどう見ても、半分くらいは司くんを待っている人だというのに。もう、どれだけ鈍いんだ。
そんな鈍い司くんに好意を伝えるのは、それはもう至難の業だった。
幸いにも彼はショーバカなので、彼のための演出を考える僕には好意的だった。同じショーをする仲間として、ほかの人とは一線を画するほど、彼からの好感度は高いと思う。
そんな中、休憩中に司くんが落とした爆弾が、僕を直撃した。
「類、恋人を作る気はないのか?」
———それ聞く?シンプルにそう思った。
あまりの衝撃に飲み物をこぼしてしまい、手元が濡れる。慌てたように司くんがタオルを差し出してくれたから、ありがたく受け取った。
「それで、どうなんだ?」
「聞くんだね…」
「当たり前だろう」
興味津々、といった様子で、司くんは目をキラキラさせている。全く、人の気も知らないで。君だよ、君が好きなんだよ、司くん、君が好きなんだよ!——とは、どうしても言えなくて。
「…好きな人なら、いるよ」
司くんのから視線を逸らさずに、震える声でそれだけ伝える。すると司くんは数秒固まって、そして、ぼんっと音がしてしまいそうなほど顔を真っ赤にした。
———あ、これは。
いくら鈍い司くんでも、これで思い知っただろう。そう思った。
どんなアプローチを受けても一切気が付かない彼でも、これだけ露骨に好意を露にすれば。さすがに理解できないわけがない。僕が誰を好きなのか、僕が司くんをどんな目で見ているのかを。
「そ、そうか…」
やっとのことで絞り出すように、司くんは震える声で言った。ステージに響き渡る自信満々な声はどこへやら、小動物かのように震えて、顔を真っ赤にしている。
そこでさらに畳みかければよかったのだけれど、僕のほうにそんな余裕がなかった。なんせ僕だって顔が熱くてたまらなかったし、耳の先まで焼けそうなほど熱を持っていたから。
それから、司くんが好きそうな映画を調べて、機械のパーツに消えがちなバイト代を節約して、チケットを用意した。司くんを誘おうとしたら、知らない女子が頬を染めて司くんと話していたから、少し強引に引き離してしまう。(司くんからは「罪作りな男だな」と言われてしまった。どっちが。)
意識してもらうために、デートだと、はっきりと伝えた。それでも司くんは呆れたように、「そういうのは好きな人にやってくれ」なんて言って笑うだけだった。
司くんとのデートは楽しかった。僕が誘った映画で彼はいたく感動してくれて、僕たちは食事をとるよりも先に、あふれてやまない感情を言葉にした。あそこの歌が良かった、演技が良かった、演出が良かった…ショーのことを語る司くんは、子供のようにきらきらと瞳を輝かせていて、思わず頬が緩んでしまった。
そして無事に次のデートの約束まで取り付けた。よしよし、頑張った。初めてのデートにしては上出来だ。気持ちが満たされたからか、その日の夜に作業したらなんだかとても捗って、ロボットの完成が1日早まった。
いつもは学校から直接ステージに練習しに行くけれど、今日は完成したロボットを一度自宅に取りに行ったから、到着がいつもより遅くなってしまった。
作ったばかりのクマ型ロボットを抱えてステージに上がると、寧々に呼び止められる。先ほどまで司くんと二人で練習していたはずの寧々は、なぜかとても苦い顔をしていた。
「類…」
「なんだい?」
「…」
寧々が自分の手を口元にあてて、内緒の話だ、そう伝えてくる。寧々の身長に合わせてかがむと、寧々が気まずそうに言った。
「司、類の気持ちにぜんっっっっぜん気づいてないから」
「……………えっ?」
えっ???
そんなことある???????
脳内がクエスチョンマークで埋め尽くされる。
好きな人がいるって伝えたんだって?司、本気で誰のことかわかってなかったよ。まあ、類が誰を好きなのか、かなり気にしてはいたけど。…類?おーい、類?——寧々の言葉は全く耳に入らなかった。
好きな人がいると、目を見て伝えた。それで顔を真っ赤にした、あれは何だった?司くんが女子と話すとき、強引に割り込んだことも、休日に映画を観に行ったことも、家に呼ぶ約束まで取り付けたのも、———え、なんで???
「…」
ステージの上で発声練習をしている司くんを見る。
整った顔に目を引くスタイル、歌も踊りも演技も上手い、主役として舞台に立つ輝きがある。ファンを通り越して、彼に本当に恋をしてしまう女性だけでなく、学校中の女子からも、影でもてはやされているのに、それに全く気付いていない彼は。
僕がどれだけ彼のことが好きか、ほんの少しも分かっていないらしい彼は。
「嘘だろう…?」
彼こそが、罪作りな男そのものだろう。
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かくして、鈍すぎる彼との戦いが始まったのだった。