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とある2人へ感傷、干渉。/Novel by 灰咲 流

とある2人へ感傷、干渉。

6,149 character(s)12 mins

2020.4/19萌ちゃんHappyBirthday!!
というわけで去年の真下さん誕生日から、それとなく続くお祝いです!単体でも読めます。
真下さん、八敷さんの両片想い。
八←萌風味?(真下さんには敵わないし二人に幸せになって欲しいけど、萌ちゃんも八敷さんを大事に思ってるんだよ的表現です)
自己満足感強いので苦手と感じられましたらブラウザバックを。

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今日はとんでもなく珍しい事が起きた。
もう、事件だ。
あ、ページ飛んでませんよ?いつかの出だしと同じだけど。
私がダッシュしているのも同じだけど。
そう体育でもないのに走っている理由はひとつ。
おじさんに呼び出されたから。
3限目の途中で届いていたメールには「学校が終わったら来て欲しい」という文と場所の指定があった。今回は真下さんの誕生日もないし、絶対オカルト絡みの話に違いない。おじさんの家じゃないのが何よりの証拠だ。そのまま調査をするか、そこでしか出来ない説明があるのかも。
HRが終わった瞬間。先生よりも早く教室を飛び出した。廊下は走らない、なんて聞いてられない。まだ誰も居ない下駄箱を駆け抜けて、約束の場所までノンストップ。
ほんと連絡が来てからの残り3時間は地獄だった。一分一秒でも早く過ぎないかと生霊飛ばしそうだったもんね。実際飛んでたかもしれない。おじさんに会ったら先に私が来てなかったか聞いてみよう。ものすごい顔になってたみたいで周りからも先生からも心配されたりして。
ずざざざっと地面が埃を上げるくらい滑り込んで止まる。危ない、行き過ぎるとこだった。いまの止まり方カッコ良かったよね、我ながら。じゃなくて。おじさんを探さなきゃ。
メールに書かれてたのはこの公園であってるはず。公園と言っても、ここは自然公園だ。遊具が置いてある子供向けの公園とは違う。木もたくさんあるし、けっこう広いからパッと見じゃ見つけられない。
私はポケットからケータイを取り出すと、おじさんにかけた。
脇腹痛い…。学校からそんなに遠くなくても全力でダッシュすればこうなるか…。

《萌か?》
「ぁ、お、おじさんっ?」

よかった。出てくれた。基本的におじさんはケータイを携帯しない。携帯電話なのに。それで何度か怒られてるのを見たこともある。でも今日はちゃんと持っててくれたみたいだ。

《…息切れしてるが、大丈夫か?》
「あっ、うん、平気っ…ちょっと走ってきた、だけだからっ」
《急がせてしまったか?》
「ううん、大丈夫っ!それより、どこにいるの?」
《公園の奥の方に桜の木が沢山ある場所は分かるか?》

あんまりこの公園には詳しくない、けど、近くに地図を発見した。多分、ピンク色で分かりやすく塗られている所がおじさんの言ってるポイントかな。

「あー、と…うん、わかった!そこに行けばいいんだね?」
《あぁ。一人で平気か?》
「うん、そこで待ってて!」

行き違いになっても困るよね。それに話してるうちに息切れも治ったから大丈夫。
電話を切って、おじさんの待ってるとこまで早歩き。まだちょっとギシギシする脇腹は今は走ったらすぐ痛みがぶり返しそうだから。
それにしてもめっちゃ良い声でしたな…。生声も相当だけど電話越しもヤバい。距離が近い分、破壊力が増す。これは真下さんが色々理由を作って電話するわけだ。おじさんの家にお邪魔してる時にかかってくる電話で真下さんじゃなかった事なんてない。専用なのかなって思ったくらいだ。
ちなみに内容は仕事関係の時もあれば、世間話で終わる時もあるらしい。前に「館に来れないくらい忙しいなら他愛のない話をするよりも、その時間で少しでも休んで欲しい」っておじさん言ってたっけ。中途半端な休憩より、これが真下さんの気力回復に繋がってるなんて気付いてないんだろうな…。前途多難、ってやつですか。おじさんの誕生日デート、かなり良い雰囲気になってたと思ったのに。いつになったら進展するのやら。

「あんまりグダグダしてたら私、かっさらっちゃいますよー」

何を隠そう知的で年上の男性が好みは初期設定からなんだから。
なんて。
うっ…なんか悪寒が。
冗談!冗談ですって!どうして想像の中でも人殺せそうな眼力っ!?
あわてて浮かんだ鬼の形相を振り払う。ここに居なくてよかった。あぁ、もし居たとしても「取れるものなら取ってみろ」くらい言いそうかな、不敵に笑っちゃってさ。うん。そっちの方があの人らしいや。
でも一応真下さんも当てはまると言えば当てはまらないでもない。いや、ないけどねっ!
それにしても桜かー。桜の噂話なんてあったけ?最近の噂や怪異が絡んでそうな事件のスクラップ、持ってくればよかった。でも家に取りに戻ってる場合じゃなかったしなぁ。
とかなんとか。考えてる間に…みつけた!

「おじさーん!」

手を振って足を速める。
あれ、待ってたのはおじさんだけじゃなかった。
すずちゃんと栄太さんが地面に敷かれたレジャーシートに座ってる。その二人に愛ちゃん、クリスティさんがビニール袋から取り出したパックなんかを渡してた。
ありゃ、もしやオカルト絡みではない…?

「学校、お疲れ様。」
「おつかれさまでーす…えと、お花見?」

にしては遅れてるような。だって満開の時期は過ぎて、ちらほら葉っぱが見え始めてるから。

「…いや、」
「当たらずとも遠からず、じゃな。ほい、渡辺ちゃん。」
「わっ?え、なんで?」

答えようとしたおじさんの横から、ぬっと人影が突き出す。驚いて仰け反った私に花束が差し出された。突然出現したバン爺(おじさんがバンシー爺さんと呼んでたので)から咄嗟に受け取っちゃったけど。なんで私に?
しかもこれ多分道に咲いてたの摘んだやつだよね?片手で収まるくらいで可愛い。お花屋さんとかで見かける包装紙じゃなく、長い草で器用に縛られてる。ちょっと地味で…でも綺麗。
わけの分からないまま、とにかくお礼を言うとバン爺は満足そうに笑って離れていった。それから、すずちゃん達がシートに並べている食べ物に早速飛びついてる。

「えぇっと?」
「萌ちゃん、こっちこっち!」

困った顔で笑うおじさんと花を交互に見る私に今度は愛ちゃんが手招きした。おじさんと一緒に皆の方へ近寄る。

「今日は何の日でしょーうか?」
「え、」

なんの日?
愛ちゃんの問題にクエスチョンが浮かぶ。
あー、なんだっけ?始業式はもっと前にやった。花見の日?なんて、ないよね。
皆、立ち上がって私を見てる。楽しそうな、ワクワクした感じで。

「あー…なんか約束してたっけ?」
「ほら、やっぱりあの男わかってないわね。」
「あの男?」
「いや、萌なら絶対押しかけてくると真下が言ってたんだが。」

クリスティさんが肩をすくめて見せると、私の隣でおじさんがまた眉を下げて笑った。苦笑ってやつ。そんなおじさんに日付を聞かれてハッとする。
予想してた怪談じゃなかったガッカリで吹き飛んでた。

「誕生日!」
「そう、誰の?」
「私の!」
「ピンポーン!おめでとう!!」
「おめでとうございます」
「おめでとさん!」
「おめでとう、萌。」
「ケーキもあるから沢山食べてね!」
「えへへ、ありがとう!」

おめでとうを皆から貰えてニヤケちゃう。お花の理由をわかって改めてバン爺にお礼を言うと、モゴモゴと食べ物で頬っぺたを膨らませたまま頷いてくれた。食べ切られちゃう前に私も急いで食べなくちゃ。

「はい、萌ちゃん!」
「え?」
「今度発売のアルバム私のサイン入りと、トートバッグだよー♪」
「サイン入り羨ましいっ!!ぼ、僕からはこれ!お料理の本!最近お料理してるって、すずちゃんから聞いたからっ」
「私からはエプロンです、栄太お兄ちゃんと一緒に買いに行きました。」
「私からはお弁当箱のセットよ、ミニバッグの中に一式入ってるの。学校で使ってね。」

レジャーシートに上がった私にカラフルな包みが手渡される。これは…お、お誕生日プレゼント!
サプライズを仕組むのは得意だけど、される側は慣れてない。私の誕生日期待してます、なんて言ったけど軽口みたいなもので本気じゃなかったし。あわあわと受け取る私を優しい目が見守っている。
家庭科で作ったクッキーをおじさんに持ってきた日から実はハマってたんだけど覚えててくれたんだ!料理の腕前はまぁ、日によって調子が変わるとお伝えしときマス。

「ここまでして貰えるなんて照れちゃうよー!ホントにありがとうございます!」
「萌、来られなかった皆からも預かっているんだ。」
「え!まだあるの?!」
「えぇ、そこの袋よ。」

クリスティさんが指した袋をおじさんが広げてくれる。中から取り出しながら誰がくれた何なのかを説明してくれるみたい。
うわ、なんか、本…多くない?

「翔からはペンケース、つかさはシャーペンだそうだ。しっかり勉強しろ、と言っていた。」
「つかさくんはともかく、長嶋くんは人の事言えないじゃんっ」
「広尾からは英文辞典と参考書、自分が勉強する時に一番分かりやすかったやつらしい。大門からは学生時代に読んでおくと良さそうなお勧めの本。」
「本ェ…」
「勉強頑張って、だそうだ。」
「デスヨネー…このお二人には何も言えない…」

というかどれだけ学力心配されてるんだ、私。

「それから、」
「それは?」
「電子辞書だ。俺は本を渡そうと考えていたんだが、最近はこっちの方がいいんじゃないかと…」
「へぇ、誰のアドバイス?」

で、電子辞書とか。かなり、お高いのでは?なんか、すごい高そうなラッピングというか箱に入ってるんだけど…!便利に使えるなら金額は構わないでいいとか、おじさん!そういうとこだよ!
でもクリスティさんが料理を取り分けながら聞いたのが私も気になった。自分で言ったように、おじさんは紙派だ。きっとそのアドバイスが無かったら今ごろ本で窒息死してたかも。私のプレゼントが重量級になるのを押しとどめた救世主にぜひともお礼がしたい!一人を除いて、ここに居ない全員の名前が出たけど、あの人は違うはず。だって真下さんが私にお祝いだなんて天地がひっくり返っても

「真下が」
「なん、ですって…?」

天地がひっくり返った。
クリスティさんが有り得ないくらい驚いてる。もちろん私もだ。ビックリしすぎで「え」のまま動けない。

「広尾の贈り物を知らなかったから、辞書を何種類が贈ろうと思っていたんだが流石に量が多いと困っていてな。そうしたら真下が近頃の学生には電子辞書の方が軽い上に調べやすいから良いんじゃないか、と。」
「…そんな気遣いが出来るなんて。」
「私の誕生日プレゼントって言ってないよね?」
「言ってしまったが…まずかったか?」
「いや!有り得ないよ!あの真下さんが私へのプレゼントと知っていながら優しさを見せるなんて!」
「いや、萌の中で真下はどんな人間なんだ…。そんなに酷い奴じゃないぞ?今回のプレゼントも二人で選んだんだ。」

なんだろ…喜ぶとこなのに。素直に喜べない。
だめだ!…悪魔な私が…
それ二人でデートしたかっただけでは?
しかもなんか、二人からってあれでしょ。夫婦が子供に二人で考えてプレゼント渡す的な。
嫁が「あの子のプレゼントどうしましょう?」
って言ったのに対して
旦那が「電子辞書とかどうだ?俺からと言うと受け取らんかもしれんから、お前が渡してやれ。」

嫁が「それじゃ私と貴方からにしましょう、あの子も今は難しい年頃ですけど本当は喜んでるんですよ。」
みたいな。
反抗期の娘に対するやつじゃん!
夫婦じゃん!なんでまだ付き合ってないの?!
って叫んでる!ごめん!おじさん!

「ふ、二人で買ったの?」
「あぁ、俺と真下からだ。」
「ありがとう」

複雑すぎる。
…でも、二人とも時間使って買いに行ってくれたんだよね。忙しいって言ってた真下さんも。そう考えると嬉しい。次会った時にお礼言わなきゃ。

「持って帰れるか?」
「うん!教科書置いてきたから!」
「オキベン、はダメなんですよ?」
「うっ、すずちゃんに言われるとダメージが3倍に…!」

純粋な目での攻撃はハートにダイレクトにくる。
ここまで走ってくるために出来るだけ身軽にしたかったのと、調査でなにか入れるかもって考えての策略的行動なのに。おじさんの鞄には負けちゃうけど、学生鞄の収納力をなめてもらっちゃ困るんだな、これが!まっすぐ見つめてくるすずちゃんには言い訳できないけどね!

「はい、萌ちゃんの分!早く食べないとなくなっちゃうよー」
「わ、ホントだ!ほとんどない!」
「いつの間に?!」
「バンシー食べ過ぎだ、萌が主役だぞ。」
「モゴモゴ…」

くすくす笑う私達の間、ざぁっと風が吹きつける。舞い上がった桜に引き寄せられて思わず顔を上げた。

「綺麗だな…」

ふわっと穏やかな声が耳に入った。
ワイワイしてる皆の中で、でもハッキリ聞こえる声。そっちを振り返ると。隣に座ったおじさんも同じように空を向いている。眩しそうに目を細めて。そこに何か追い求めるものがあるみたいに。
それっきり低い声は何も言わなくて。なんだか不安になった。無意識に深い緑を探してしまう。こういう所があるから、あの人をおじさんの傍に置いときたいって思っちゃうんだよね。

「ねぇ、おじさん。」
「ん?」
「ありがとうね。」

真下さんの誕生日、事前にそれとなく欲しいものをリサーチした事があった。あの時、適当に私の質問をはぐらかしてた真下さんは「八敷からは何も要らない」ってだけはハッキリ答えたんだけど。てっきり、おじさんが祝ってくれるだけで嬉しいとか、そういう理由だと思ってた。
でも違ったんだ。いまやっと意味が分かった気がする。
形になる物を渡したら、いつか、それだけを残して行っちゃいそうだって。あの人は貰う前から知ってたんだね。だから今回も二人からのプレゼントにしたのかもしれない。なんて、そこまで深読みしても、どうせ「そんなわけあるか」って答えは教えてくれなさそう。
どっちにしてもデートの出しに使われたのは変わらないんだけどねっ!しかもこれ、ようするに残していくなら二人で残していくからっていう、遠回しな牽制じゃございません?
おじさんもおじさんだよ、ここまで真下さんがこじらせてるのによく気付かないよね。

「ちょっと可哀そうになってきた…」

私のちょっと寂しい想像は、おじさんには分かってもらえない。この瞬間も桜と飛んでっちゃいそうだ。唯一わかってそうな人は今は居ない。
見たいおじさんの笑顔を出せるのが私じゃないのは不本意だけど。でもそれが一番なのを知ってる。隣を歩くのはあの人の役目なら、繋ぐのは私の役目。
だからここは私が止めなくちゃ。
最高の時間を今回限りで終わりにしないために。貰ったプレゼントは全部嬉しくて宝物だけど、それ以上に大事にしたいものがある。

「それで、どうだったの?」
「なにがだ?」
「真下さんとのプレゼント選びという名のデートの感想だよ!」
「…萌っ!」

それに…なんて言ったって、
おじさんのこの顔は私だけが引き出せるんだもんね!
これだけは真下さんにも譲れない私の専売特許なのです!
だから
来年もまた、おめでとうって言ってほしいな。

それから。やっぱ早く、くっついてください。




fin.


rh.





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