強豪校の監督と「打倒私学」を掲げた息子 最後のライバル対決の先は
(27日、第108回全国高校野球選手権南北海道大会2回戦 北照8―0小樽潮陵) 小学生で野球チームに入る前から、父とキャッチボールしていた。今でもたまに、試合の話をしたり、投げ方を教わったりする。幼い頃から変わらず、優しい父だ。 【写真】北照―小樽潮陵 小樽潮陵の上林遼真選手=エムデジ桜ケ丘、中村有紀子撮影 だが、この日はライバルだった。父が率いる強豪北照に挑む最後の戦いだ。 小樽潮陵のエース、上林遼真投手(3年)は遅い球、様々なアングルから投げる球など、多様な球種を織り交ぜ、相手を翻弄(ほんろう)した。走者を背負いながらも、本塁にはかえさない。 父のことは、特に意識しなかった。「相手と向き合うことだけを考えていた」 同じ小樽地区にある両校はなぜか、公式戦でよく当たった。上林投手が入部した24年春から公式戦7大会中6大会で対戦してきた。その全てで、北照が勝利している。この日が、7回目だった。 北照は甲子園に春夏計11回出場している。しかし、あえて進学先には選ばなかった。「公立高校で進学を見据えつつ、仲間と打倒私学でやりたかった」。チームには高校から野球を始めた選手もいた。 一度は北照に勝ちたい――。アンダースローのピッチャーが北照を抑えていたことを知り、昨秋からアンダースローの練習を始めた。 試合は0―8の7回コールド。五回までは1点しか与えなかった。 「自分の実力が足りていなかった」と話す。それでも、「途中まで競り合う試合ができて、気持ちも入っていた。みんな応援に来てくれて、思い出に残る試合だった」と振り返った。 「最後に北照と試合することができて、すごくうれしかった。1年生の時から何度も対戦して、今日が一番の試合だった」 目指す進学先は北大。大学に入っても野球を続けるつもりだ。 父である北照の上林弘樹監督(46)も息子を褒める。「成長を感じたと言うか、前半は、変化球をうまく使われ、なかなか打てなかった。本当にナイスピッチングだったと思います」 息子の試合は、ほとんど見に行けなかった。だが、この2年半、グラウンドで対峙(たいじ)してきた。「高校野球の一番良いとき、グラウンドでプレー姿を見られて恵まれていた」と言う。 六回、小樽潮陵の攻撃。邪飛に倒れ、ベンチに戻る上林投手の後ろ姿を、少しほほえみをたたえて、いつまでも目で追っていた。 「2年半、勉強と野球を一生懸命やってきた姿を見ているので、親としては本当に良かった」 上林投手が生まれてから、北照は甲子園に8回出場した。今年の選抜も息子が応援に来てくれた。「また、甲子園につれていきたい。たぶん、北照ファン歴は長いと思うので」(中村有紀子、中沢滋人)
朝日新聞社