市販の学習参考書、問題集について。

 高校数学の参考書、問題集について、書評的なコメント含め色々と書いておきます。随時更新していく予定です(最終更新26.5.2)。
 
(※)最近、コメントで「○○から△△にいけますか?(○○と△△は参考書名)」という質問がとても多いのですが、この質問への返事は、一般に「個々人の知能やこれ迄の勉強度合いに依る」です。どんなにドリブルやシュートの個別練をしても、試合練だと全然出来ない人が一定数いるのと同じ事です。過去の受験生の勉強進捗の客観的なデータとかを持っている人なら、或いは統計的な一般論くらいは言えるのかも知れませんが、恐らくそんな人間はあまりいないんじゃないかと思います。若しくは、本の問題のレヴェルを或る程度評価出来る人間なら「この本からこの本ならいける人が多そう」くらいの事は言えるかもです。実際に俺も下のレヴューでそういう記述を書いていたりもします。しかしながら、俺は既に受験生の目線がほぼ失われている上に、恐らく数学の見方も一般的な受験生とはかなり違うので「俺はいけると思ってたけど、実際の受験生は全然無理」みたいな事も余裕で在ると思います。
 関連して、ネット上でどれだけ数学出来るのかもよく判らない人間が書いている``参考書ルート''みたいなのは、文字通り参考に留めておくのが無難だと思います。同じ様な事を色々な所で散発的に書いている気がしますが、結局は学習進捗の段階段階で、自分の目で見て選ぶのが1番良いと思います。本の選び方は下の方に書いているので、良かったら参考にしてください。或いは「俺は絶対に新数学演習やるんだ他の問題集は在り得ない!」みたいに盲信してそれだけに取り組むのも良いかも知れませんが、失敗のリスクも高いと思います。ほんま「参考書博士」「計画厨」は落ちる受験生の典型パターンなので、先ずは目の前の授業や本の計画だけ確り立てて、後の事は「○と△からその時に選ぶ」くらいにしておくべきだと思います(まあ不安で先の事考えたくなっちゃうの、本当によく解るのだけど、解るからこそね)。
 
(※)参考書のレヴューについては、是非、このユーチューブチャンネルも参考にしてください:中学受験!どっちがどっち!?数理教育研究会
 この各動画に出演されている畠田和幸さんという方は、「わんこら」というペンネーム(?)でウェブ上で数学関連の活動をされています。
 俺は自分が受験生だった頃から知っていて、大学生になってからも、時々、ブログを見たりしていたのですが、この人は凄いです。大学入試数学に関してコンスタントに情報発信をしている人達の中では、俺が知っている中では最も信頼出来る方だと思います。
 先ず大学院で京大のRIMSというとこの筆記試験を突破されたご経歴をお持ちなのですが、ここは恐らく国内の数学系大学院の中で入試難易度トップのとこで、筆記突破だけでも相当に凄いです。なので、(俺の専門領域を除けば)大学以降の数学に関しても、恐らく俺よりもずっと詳しいと思います(俺は院試になるとそれこそ九大数理くらいが精々で、東大京大数理の問題はまじで解けん)。
 次にご本人がブログ等で書かれている数学関連の文章について、結構昔の記憶になってはしまいますが、少なくとも受験生や大学生の頃の俺は「この人は確りしている」と思いながら読んでいた記憶があります。単にご本人の数学力が確りしているだけではなく、「知識をどういう風に理解し頭に入れておけば良いか」みたいな実践的な点についても、十分に気を払っている方だったと思います。
 んで、動画について、俺も知ってる本のレヴューを何本か観てみましたが、間違いなく確かな目で以てして、多くの本に関して俺よりもずっとちゃんと読んでレヴューされていると思います。最近はウェブ上の勉強関連の情報が増えてきた反面、質についてはまじで玉石石石石石混交みたいな感じですが、そんな中、このユーチューブチャンネルはかなり信頼出来る貴重な情報源であると言って良いと思います。
 という事で、ちゃんとした情報をご希望という事でしたら、是非、俺のレヴューだけでなく、こっちのチャンネルも観てみてください(寧ろこっちの方をより参考にした方が良いまである)。ただまあこの方達は良い意味でちゃんと大人で、強い表現はあまり使わずにレヴューされているので(それでも欠点とかは暗にはちゃんと匂わせてくれてるけど)、俺の方は強い表現もバンバン使ってるって事で、使い分けてくれると良いかも。
(※)ユーチューブチャンネルの存在はコメント欄で教えてもらいました。ありがとうございます。
 
如何判断しているか?
 当然、全ての本の全内容を詳細に読み込んでいる訳ではなく、寧ろ殆どは全体の構成や、自分が個人的に設けている“チェック項目”を満たしているかに目を通している程度です。俺の見逃し等による勘違い(「この問題が抜けている」と言っているけど実際にはちゃんと載っている、等)が在れば、コメントでお知らせいただけると嬉しいです。
 
 
書評を行う上での基本的な考え。
 俺は基本的に、数学の内容を或る程度ちゃんと理解する事に重点を置いているので、書評もこの考えを大前提に行います。つっても、少なくともこのブログで紹介する様な大学は、基本的に暗記だけで乗り切ろうとすると痛い目を見る様な問題を出す事が多いので、結局は受験の合格にも繋がると信じています。また、勿論ですが、飽く迄も多くの受験生にとって数学は「点数を取って目標を達成する為のハードル」に過ぎない事も理解しているので、「標準的/重要な問題をちゃんと押さえているか」「過度にマニアックな内容に踏み込んだりして、受験生を混乱させないか」の2点にもかなり注意を払っています。
 
 
参考書の選び方について。
 結局最後は自分で見て選ばなきゃいけないんで、その際のアドヴァイスをしておきます:
  • レイアウトが気に入るか否か:実は1番大事な事で、何処か忘れたけど海外の偉い研究チームの実験で、レイアウトが気に入るかどうかで内容定着率に最大で50%の差が生じる、みたいなデータが在った気がします。
  • 思い入れの有るポイントを幾つか決めておき、そこだけ読み込み判断:「この問題、前に解けなかった」とか「ここ授業で聞いても解らなくて苦労した」とか「何でこんなものを考えるのか解らない」みたいな自分の思い入れの有るポイントを幾つか決めておき、そこだけ読み込んでみて判断する。まあ何ヶ所か読んでその記述が自分に合って入れば、全体も気に入る可能性が高いと思います。
  • 難し過ぎるものを選ばない:これも何のデータか忘れましたが、特に問題集とかは、「手も足も出なさそうな課題が半分以上混ざっていると、モチヴェイションに大きな悪影響が出る」みたいなのが在った筈です。なんでまあ「少なくとも半分以上は、取り敢えず手は動かせそう」くらいのものを選ぶべきだと思います。初学の場合の講義型参考書とかだとこの判断基準は難しいかもですが、例えば最初の章を立ち読みして、「自分が或る程度ストレス無く読めそうか」くらいはちゃんと見極めてから買うと良いと思います。
 
 
用語の説明。
・導入:演習に入る前の定理の証明とか定義の説明とか。
・選題:文字通り問題選定。但し、例えばパターン習得の為の基礎演習段階と、非パターン問題を解ける様にする為の実践演習段階とでは、当然、選題の良し悪しの評価は異なる。ところで、俺は入試数学は旧帝大理系(てか最近は東大京大九大)しか解いていないので、選題に関連して俺が「頻出問題が抜けている」みたいな表現を使っていたとしたら、それは旧帝大理系数学の出題傾向に基いた判断であると思ってください。それ以外の入試(特に文系)については何も知らないです(まあでも同じ数学な訳だし作題してんのは同じプロの数学者な筈だから、そんなに違いは無いとは思いますけどねえ)。
・解答:文字通り問題の解答。
・解説:解答の前後や解答の欄外等に書かれた「解答の理解を助ける為の注釈」「如何アプローチするかの説明」「如何頭に入れておくべきかの指南」等の事。学習段階によってどれを重視するか異なり、つまり、例えば:
  • 基礎段階では、解答の注釈は丁寧に越した事は無い一方で、アプローチ云々を語る程複雑な問題は扱わないだろうし;
  • 実践演習の段階では、今更解答を馬鹿丁寧に注釈する必要は無いであろう一方で、何故その解答に至ったかに対する手厚いアプローチの説明が必要、
みたいな感じ。解説の丁寧さは、解答自体の丁寧さでもある程度カバー可能であると思われます。
 選題は良いに越した事は無いけど、一方で解答、解説に関しては一概に「丁寧であるに越した事は無い」とは言えないです。と言うのも:
  • 解答の理解力が高い人にとっては馬鹿丁寧な解答は反って煩わしく、シンプルでポイントを押さえた解答の方が好ましいだろうし;
  • 自力で解答の理屈を見抜けたり知識を整理出来る人には、長ったらしい解説は反って自分の考えが乱されて鬱陶しい、
みたいに、色々な事態が考えられる。っつー事で「自分はどの能力が高く、どの能力は低いか?」みたいな事をちゃんと自己分析する事も大切。
 
 
書評。
 以下、参考書や問題集を:
  • (イ)導入有の参考書;
  • (ロ)基礎問題集;
  • (ハ)自力で解く力を付ける為の参考書;
  • (ニ)実践演習、

の4種類に分け、各々、お薦めのものとそうでないものに分けて、その理由とかのコメント付きで紹介していきます。つっても、ここで「お薦めでない」としていている本でも、既に抵抗無く使えているとか、或いは半分以上解き終っている、みたいなものは、変更せずにそっちを読み込む方が効果的だと思います。世間的にある程度の定評が有るものなら、ここで文句を言われているものでもやって害になるなんて事は無いと思います。こんな顔も知らねえイキり陰キャの言う事よりも、あなた自身の感覚や、現実でちゃんとあなたの為に時間を割いてくれている先生とかの意見を信じてください。

(イ)導入有の参考書。
→定義や定理の証明等から記述されているもの。授業や教科書の代わりを想定されているものが多いけど、裏を返せば授業だけで確りと理解出来ていたり教科書が抵抗無く読めていれば必要無いかも。教科書を読んで腑に落ちない所の部分的な参照用、みたいな使い方も良いかもです。逆に勉強サボってた勢は、参考書メインならここから始めるしかないですが、そうなると後述の(ロ)と(ハ)は、時間の制約的にどっちかしか出来ない可能性が高いと思います。そこはこの段階を終えた時の接続可能性や、或いは自分の特性を基に選んでほしいです。例えば「知識さえあれば閃くのは自信ある」なら(ロ)優先だし、一方で「閃きには自信が無いけど少し難しい参考書の記述に喰らい付く自信はある」とかなら(ハ)優先ですかね(どっちも無ければ、やっぱどうしても、運、妥協、根性、浪人、とかになっちゃうと思います)。
※お薦め。
・入門問題精講
 IA, IIB, IIICの3分冊。
 「問題精講」と名乗ってはいますが、例題による演習だけでなく、各分野とも極めて懇切丁寧、且つ数学的内容を確りと理解させる為の導入が併記されています。丁寧さも筋の良さも一般的な参考書の比ではありません。かつて同著者の「定期テスト対策 数学の点数が面白いほどとれる本」っていう似たコンセプトの良著が在ったんですが、それの改良版みたいな本です。初学者時の本として、兎に角最強です。数学を真面目に勉強したい人向けに、出来るだけ親しみ易く、でも厳密性は(高校数学を逸脱しない最大限の範囲で)一切妥協しない、みたいな記述の本です。各定理の証明は、現実に問題を解く際にも応用可能な様に、技術的な部分も強調しつつ、確りと取り扱われています。著者の池田先生、指導者適性も執筆能力も最強過ぎる気がします。以下、IA, IIB, IIICに分けて書いていきます。
 先ずIAです。高校数学の最初の躓き所と言えば、二次関数のグラフの平行移動や平方完成辺りだと思うのですが、細かにステップを分けながら極めて丁寧に説明されています。又、嫌われがちな``関数記号f''を何故使うのか、納得するに十分な説明が具体例と併せ述べられています。後、「そもそも関数とは何か?」みたいな数学に真面目に取り組むに当たり不可欠な記述もシンプル且つ解り易く述べられています。次に、“不要な数学”の代表格としてしばしば槍玉に挙げられる「sincostan」も、そんなものを何故考えるのか、現実世界での測量を例に懇切丁寧に説明されています。三角比の角度の一般化や、各種公式の証明も、初学者向けに「これ以上解り易く、且つ納得のいく説明は存在しないのでは?」と思うくらいの完成度です。確率と場合の数で数える際に如何違うのか、といった初学者の躓き所への注意も確りと成されています。確率はしばしば長方形の面積による視覚化を用いた説明が行われていますが、これは(高校生は未だ知る由も無いでしょうが)大学以降で学ぶ「確率の真の定義」と照らし合わせても極めて適切です(当然、糞解り易い)。集合論理が割と後ろの方で軽めに扱われているのは個人的に残念なのですが、まあ現実の高校数学の指導と照らし合わせると仕方無いんですかねえ。平面図形は基本的にメネラウスの定理とチェバの定理が好きで、ここしか見ないんですが、どちらも証明のアイディアを他でも使える様に強調しながら述べていて良いですね。大好きです。一言、本書ではメネラウスは面積比ではなく同一直線上での線分比に帰着させて証明していますが、チェバ同様、面積比でもいけるんで、是非考えてみてください(証明の優劣を主張するものではない)。整数は互除法周辺の解説は完璧ですね。最も重要なステップである``の時''を問題形式にしているのも教育的だと思います。また、解答で集合の一致を持ち出しているのも良いですね。こういう証明に慣れていると、深い数学をする際に強いです。本書では不定方程式の問題自体は「互除法のやつ()」「範囲を絞ってしらみ潰し」「積の形に帰着」の3タイプしか扱われておらず、また問題も少ないので、これだけで上位大の記述はしんどいのですが、「他にも解法は沢山在る」という記述がちゃんと成されていて、更なる学習への布石としては十分かと思います。
(※)旧版は整数(と図形)が無かったのですが、新版になって追加されましたね。これで漸く「基礎はこの本だけで大丈夫」と薦められる様になりました!
 一方で、IIBの数列は割と駄目だと思います。先ずは「」型の漸化式の解説ですけど、これは駄目でしょう。``マジックナンバー''とか言って何か言葉だけ親しみ易そうにしていますが、要は世に言う``特性方程式''による解法です。この解法でいく場合、相当気を付けないと何でこんなもの(特性方程式)を思い付いたのかが不明な天下りな解説になってしまうのですが、残念ながらこの本もこの天下りな解説を脱却出来ていない様に思えます(少なくとも高校生の頃の俺は納得出来なかったと思う)。「別に天下りでも覚えて点数が取れればそれで良い」とかって思うかもですが、残念ながらこの解説では問題を解く上でも実害が生じ得ると思います。このタイプの漸化式の解法の心は「既知の解けるタイプ(今回なら「」への帰着」な訳ですが、この本の解説はその意図の指摘が甘く(「不思議と上手くいけました」みたいなノリ)、これでは例えば「」みたいなタイプへの応用が利きません(但し、このタイプは別に解説が有り、そっちは十分良い)。他には、とかの公式の証明も筋が悪いと思います。確かに視覚的で面白い証明だとは思いますが、これも応用が利かないですよね?この公式は矢張りの方で「はどんどん消える」「次数下げ」の2つのテクニックを強調した上で成されるべきだと思います。この証明ならへの一般化も容易ですし、てかこっちの証明を知っておかないと、例えば例の有名な東工大の93年の帰納法の問題とか解けないですよね?ただまあ、最後の「漸化式の解き方の心」みたいなところはかなり良い事が書かれていて、一概に悪いとは言えない気もします(但し、漸化式のパターン自体はそんなに多くは載っていない。例えば「分数型」とかは無い)。他にもIIB積分と面積の関係も何か態々水の量の話でやっていますけど、これ、別に解り易くも何ともなってない気がするのは俺だけですかね?てか、(体積ならまだしも)面積の話を水で置き換えるのは無理が在ると思うし、てか水みたいな変な物理量を持ち出されると、余計な事を考えてしまって寧ろ混乱の元になるんじゃないかって気もします。いや、数列で指摘した2点は前著「定期テスト対策」の時は大丈夫だったと思うんですけど(不正確な記憶)、一体如何してこうなっちゃったんですかね?
 IIBは色々言いましたが、IIICはほぼ文句無しです。先ず初っ端で「関数」をちゃんと説明しているのが素晴らしい。イメージの説明や、ここから上手に合成関数や逆関数に繋げているのもかなり良いです(但し、合成関数の微分の公式の証明は、教科書同様、矢張り不完全)。eを「指数関数を微分する際の“ミッシングリンク”」と表現しているのも、かなり好きです(因みに、“ミッシングリンク”とは、生物学に於ける「A種はB種から進化した筈だけど、形態的にかなり離れているので、“中間種”がいる筈で、でもそいつは見付かっていない(いなかった)」みたいなやつの事です(ミッシングリンク - Wikipedia))。そして、恐らく多くの高校数学関係者がちゃんと理解出来ていない「陰関数の微分」についても、かなり慎重に、しかし解り易さを損なう事無く説明が成されています(つっても大学1年生でやる内容なんですけどね)。選題やその解説についても、(標準レヴェル迄含めて)ほぼ文句無しです。唯一「3次元回転体」だけ抜けていますが、「3次元非回転体」で「断面だけ見れば良い」という事が十分に強調されているため、大きな問題は無いでしょう。導入から標準レヴェル(地方旧帝でもそれ程ビハインド無く戦えるくらい)迄、この1冊でかなりいけると思います。
 とまあ粗(IIBは数列が駄目)も在りますけど、やっぱ「分量が抑え目で読み易くて数学的に変な事を言っていない入門書」ってこれしか無いんで、矢張り数学をちゃんとやりたい初学者にはかなりお勧めです。特にIIIの完成度が高い訳ですけど、例えば新高3とか、浪人でも「IAIIBは共通テスト対策で割と確りやったけど、数IIICはあんまちゃんと理解出来ていない」みたいに、「IAIIBとIIICの理解度が乖離している」みたいな状況は割と在る気がするんで「IAIIBは後述の「(ロ)基礎問題集」から始め、IIICだけ入門問題精講」なんて使い方も悪くないと思います。IAIIBの候補としては「技」「入試数学の基礎徹底」辺りが良い気がします。
 
・白チャート
 形式的には所謂「網羅系」ですが、各分野の導入が、シンプルさと解り易さが両立していて、この段階の本としてもかなり良いと思います。漸化式が解ける仕組みとか、内積の意味とか、初学段階で躓きそうなとこの説明が充実しているのもポイント高いです。
 例題も最低限のものは揃っています。地方国立とか多分これで十分だし(過去問あんま見た事無いから知らんけど)、地方旧帝でも(ロ)の段階の半分位迄はいけそうな気がする。但し、数Ⅲは問題選定が一段弱く、導入書としてしか使えないと思います。章末問題とかは例題の繰り返しが殆どなので怠いし解かないで良いと思います。導入用と割り切って、導入部分を理解した上で、例題だけ目を通せば十分だと思います(例題だけだと次解けるか不安な場合とかは、下の演習もやると良いかも)。
 「言葉の説明よりも例や演習で慣れたい」みたいな人には、入門問題精講よりも合うのかも知れません。
 
・教科書ネクスト
 分野毎の本ですが、その分野が三角比、図形と方程式、数列、ベクトルの4分野だけなので、ここで紹介こそしましたが、上記の様な導入書としては使い難いです。教科書学習後、イメージが掴めない分野の補強って感じでしょうか。
 所謂「大数」の本です。数学的にもある程度確りしていますが、定義や公式の図形的な意味や直観的な理解等、イメージを豊かにする記述って感じです。また、独習数学の説明でも書きましたが「教科書とか普通の参考書の説明よりこっちの方が良いっしょ」みたいな説明が多いです(て言うか、知名度的には寧ろ独習数学の方が「大数っぽい」と言うべきでしょう)。
 詳しく知りたい分野がマッチし、且つ記述が合うなら凄くお薦めです。
 
※個人的に上より少し微妙だけど、気に入れば使って良いと思う。
・最短でマスターする数学/独習数学
 1冊で全分野。なので三角比と三角関数の分断や、微積の数II数IIIの分断、みたいな下らない事が起きていないです。
 懇切丁寧って言うよりは、簡潔さで勝負って感じです。「教科書だとだらだらと説明してるけど、絶対こう説明した方がシンプルで解り易いだろ」みたいな説明。
 序盤の図形で数IIの図形と方程式の円の式表示が出てきたり、確率で数列のΣが出てきたり、挟み撃ちの原理って言葉が中々出てこなかったりと、用語の前後関係はかなり粗いです。教科書代わりって言うよりは、復習向け(「高3で地方旧帝大志望。テスト勉強は真面目にしてきたけど教科書ちょいちょい忘れてるかも。でも教科書からとか怠い」みたいな人向けかな)。
 演習もちょいちょい載っているけど、整数はディオファントス方程式と剰余類以外が明確に弱い、漸化式の他分野への応用無、ベクトルのパターン問題が甘い(三角形の五心とか、初等幾何っぽい事実への応用ばかり)、数IIIの体積弱過ぎ等、弱点が多く(ロ)の段階は必須(この事は著者本人も序文で弁明しているが、それにしても確率漸化式無とかは正直理解不能)。「東大京大」と鼻高々だけど、先の様に演習面の弱点が東大京大の頻出分野と尽く被っていて、東大京大用としては微妙過ぎ。地方旧帝には悪くないと思います。
 とまあ以前は結構褒めてたんですけど、の公式の証明、何でじゃなくてとかしてるんですかね?(☆)これじゃ部分分数分解でやるとかとの類似が見えないですよね?ここはちょっと書いた人の能力に関わる記述な気がするので、少し「うーん」とはなりました。ただ、コンセプト的には良い本だと思います。
(☆)あー解ったわ。こっちだと1次の項が消えて、の公式を使わずに済むのか。いやでもその為に``2個ずれ''を許容するか?しかもこれだとの公式を帰納法で導けるって話の帰納法の式変形がちょいちょいややこしくなるし。うーん。やっぱ筋が悪い。ただ、これ言ったら入門問題精講も数列の正に同じ公式の記述が微妙だし、こんなもんなのかなあ...
(※)「最短でマスターする数学」という新しい版になったっぽいです。新課程の項目を足しただけっぽいですが、詳しく比較はしてないです。
 
・マセマ初めから始める/元気が出る
 前は「教科書も難しい方向け」って事でお薦めしてたんですけど、後発書を買わせる為に、基礎例題を意図的に省いているっぽいのが微妙で、分冊の量が多いが金銭的にうざい(かと言って、全部揃えてもそんなに質が高い訳じゃない)。後、口調が偉そうってかこっちを舐めている感じがするのも、個人的にあんま好きじゃないです。
 ただ「数学の内容をそれなりにちゃんと理解したいけど、入門問題精講もしんどい」みたいな方には、もうこの「初めから始める」しか無い気もします。上での批判、数学の内容ではなく「お金」「口調」なので、こういうのが気にならないなら、寧ろ全然使って良い本だと思います。
 
・きさらぎやさしい高校数学
 記述に癖の無い下記の坂田面白いほどって感じです。でも坂田さんの様に記述が鼻に付く感じは無いです。
 証明が載っていない定理が少なくないので、自分のスタンス的にお勧めとは言い難いのですが「理系だから仕方無く数学が必要、出来るだけ易しく」となると、消去法でこれかも知れません。兎に角、学生を迷子にさせないという気概はかなり感じられ、高専生の数学も見ている今となっては「こう書きたい気持ちめっちゃ解るわ。必要悪よね~」って感じです。本当に本当に数学苦手な子は、この本かな。
 
※お薦めでない。
・坂田面白いほど
 定理の証明が無かったり、定義も理解させるんじゃなくて計算させまくって慣れさせるって感じで、数学ちゃんとしたい人には個人的にあんまお薦め出来ないです。
 
・理解しやすい/これでわかる
 どっちも導入としては白より優先する理由が個人的に無いし、(ロ)の本としても問題選定が微妙。
 
 
 
(ロ)基礎問題集。
→教科書、或いは上の導入有の参考書の学習後、各分野の定石的なテクニックを覚える為の問題集。分野毎に導入とこの段階を行っても、或いは先に全分野導入をしてからこの段階に入っても、どっちでもお好みで良いと思います。世に「網羅系」と呼ばれる問題集の多くもここでの利用がメインとなる気がします。分量的に、この段階の問題集を2冊するのは、個人的にお勧めしない。また、予備校の本科の授業や「スタンダード~」みたいな名前の単科の授業は、大体、このレベルの知識習得を目的としていると思われるので、これ等を受講していれば態々本で勉強する必要も無い気もします(俺もそうだった)。
 参考までに、世に言う“暗記数学”は、この段階でのメソッドです。暗記と言っても、当然、単に覚えるだけではなく、「理解して丸暗記」です。この「理解して丸暗記」は、イメージとしては「九九」が解り易いと思います。つまり、俺等は8×7=56という計算について、必要ならば7を1つずつ足していくなり8個のミカンが入った箱の絵を7個描くなりして説明出来る、つまりこの計算が成立する事を理解していますが、その上で当然、計算結果自体は丸暗記しています。流石に九九程徹底する事は難しいですが、この段階の学習のイメージは、概ねこんな感じです。後は、九九ってやっぱ先ずは覚えなきゃいけない訳で、この演習段階でも同様に、問題文を読んで数分考えてもさっぱり解らなそうなら、さっさと解答を読んでそれを理解して覚えてください(自力で考える練習は、次の段階でする)。覚え方は、解答を一言一句丸暗記するのではなく「何を押さえておけば、次から自力でこの問題が解けるか」というのをよく自問して、その自分なりのポイントを覚える様にしてください。そして復習で、そのポイントさえ覚えていれば、実際にちゃんと正答を復元出来る事を確認するんです。また、当たり前の事ですが、特に自力で出来ずに解答を見た問題は、少なくとも1度は「何も見ずに1から解答を作る」という事をやってください。解答だけ読んで「あーできるわ」で終るの、本当に良くないです。
 ところで、この段階の学習に関連して、よく``青チャートを全部覚えれば東大に受かる''なんて言われますが、これについては、俺は「人による」としか言えないと思います。と言うのも、この段階を終えれば、東大数学を解く上で必要な知識自体は大体揃いますが、知識を持っている事と、その知識を試験場で実際に引っ張り出して使えるかは、全然別の話であり、それは個々人の頭の良さに依るからです。頭が良い人ならこの段階を終えれば東大数学も解ける様になるのでしょうが、残念ながら(俺の様な)凡人は、後述(ハ)以降の学習が必要だと思います。
※お薦め。 
・技216数学IA, 技284数学IIB
 IA, IIBの分冊。驚きました。これは本当に本当に極めて良い本です。IIICが無いのが心の底から悔やまれる。
 教科書に近いけど、技術的な視点から微妙に整理し直されたテーマ配列がされています。これは数学的にはかなり筋が良いとは思うのですが、一方でIAにIIBの知識を使う問題とかも入っているので、学校の授業との併用は少ししずらいかな。
 次に問題の難易度について、教科書学習直後の計算の反復、みたいなものはあんま無いので、その意味でも、やはり授業直後に取り組むのは難しいと思います。一方で、初歩的であったり、逆に少し難しくてもテーマとして重要なものは、かなり妥協無く掲載されています。「入試数学的に重要なテーマの網羅性」という観点では、かなり優秀です。 
 また、レイアウトが極めて優れています。各テーマに4問の問題が付いており、「先ず左ページに4つの問題が問題文だけ羅列。右ページに「Theme分析」と称して、その4問全てに関連する基本的な記述。そして次ページ以降、今度は4問が改めてチャートの例題的なレイアウトで問題文→navigate(問題を解く前のポイント解説)→解答→skill up(問題を解いた後のポイント解説)」という流れで記述されています。このレイアウトが相当に良い。と言うのも、この(ロ)の段階の学習って「初期段階だと、直ぐに解答を見られるチャートの例題的な記述が良い気がする。でもチャートみたいなレイアウトだと、下の解答が見えてしまう。一方で、問題演習段階だと、問題だけ羅列されている方が良いけど、でも一々後ろの解答をめくるのは怠いし、別冊解答だと今度は机の面積を取る」みたいな、色々な技術的に怠い点が生じるのですが、この本のこのレイアウトは、これ等の弱点を全て完全に解決しています。学習者目線の細かな気遣いが相当に素晴らしい。これは俺も本当に見習って参考にしないといけないと思いました。
 んで、数学的な記述の最大の特徴ですが、「Theme分析」のところで、後述の(ハ)の本の「解法整理」に関する基本的な記述が、かなりちゃんと書かれています:
  • 最大最小の解法整理が、全体に渡って本当に素晴らしい。
  • 場合の数、確率で「直接数える、余事象、漸化式」という大きめの整理をしているの、俺以外で初めて見ました。
  • ディオファントス方程式(不定方程式)、(ハ)の本に必ず書かれている解法整理を、この本もちゃんと外していませんね。
  • 不等式の証明の解法整理も完璧です。
  • 通過領域もこの段階の本としても文句無しです。
  • 漸化式のパターン、勿論、まともな本にはちゃんと纏まっていますが、これがちゃんと1ページに収まっているのがかなり良い。
恐らく著者の情報整理能力がかなり高い。
 んで、解法整理が書かれていないTheme分析のとこでは「この定理はこう押さえておくべき」みたいなポイントとか、斜交座標みたいな高度な豆知識とかが代わりに書いてあり、これ等もかなり筋が良いものばかりです。大数とか好きな生意気系の高校生の期待にも十分に応えられると思います。
 最後に記述の特徴ですが、ここは「懇切丁寧」と言うよりは、「ポイントを確り押さえて、シンプルさで勝負」って感じです。(イ)の段階を終えた方にとっては極めて学習効果が高い書き方だと思うのですが、この意味でも、やっぱ授業と併用ではなく、全分野一通り通した後に使うべき教材ですかね。
 いやこれまでレヴューしてなかったのが申し訳ないくらい、本当に良い本です。個人的には入門問題精講とかなり相性が良い気がします。入門問題精講は「数学的に十分適切な導入+基本的な計算」で、この本は「実際に問題を解く為の解法整理とお得な知識+重要問題の網羅」なので、この2種類で、相補的に過去問を解く前に必要な高校数学の学習を全て行う事が出来ます。学校の授業が十分良かったり、或いは予備校でちゃんと良い授業取っていれば、この本だけでも大丈夫な気もします。到達度について、普通の国公立なら、これだけで十分いけると思います。何なら北大東北大九大でも、「難しくない年で標準問題をちゃんと取り切る」くらいなら、これで十分な気がします。北大東北大九大とかで難化した年でも安定させたいとか、名大阪大京大もこの本から更に狙いたいなら、もう一段階、追加する事も検討しても良いかもです。後述(ハ)の段階がかなり行けた段階になると思うので、(ハ)に行くよりは(ニ)に行った方が良いかもね。スタ演とか。んで、IIICが無いのが本当に悔やまれますが、ここは勇者で良いと思います。
 俺の時代から比べて、ちゃんと工夫された良い本が増えたと思います。その分、雑多な情報が溢れかえっていたり、共テとか馬鹿難しくなったりもしていて、今の受験生は本当に大変だとも思いますが。いやてかこれは重版や改訂が続いてIIICも出てほしいのですが、恐らく結構マイナーですよね?買って買って!
 
・Sure Study
 IA, IIB, IIIの3分冊。
 構成ってかレイアウトは「シンプルな導入→例題→(例題直下に)考え方やヒント→解答は別冊」と少し珍しい気がします。一寸違いますが、有名どころだとチェクリピに近いかも知れません(後述の通りチェクリピより断然こっちを勧めますけど)。
 選題が最強です。多過ぎず、でもよく見るタイプは一切の漏れ無く、しかも問題数も充実させていて、かなり強いです。証明込の導入もシンプル且つ解り易くてかなり強いです(ひょっとしたら(イ)の段階も兼ねられるかも)。証明のポイントとか公式を如何頭に入れておくか、みたいな教育的配慮に富んだ記述も沢山です。「授業ちょいちょい忘れてるけど、でも今更、入門問題精講から始めるのもなあ」みたいな層に、かなり刺さるんじゃないかと思います。
 問題数が比較的抑えられている(確か各々200題前後位)のと合わせて、教科書くらいは解っている高3/浪人が取り組むってのもいけると思います。この段階の本として自分理系学生に先ず薦めるのはこの本ですかねえ。
 実は著者の1人の土田先生は、俺が浪人時代に1番お世話になった先生です。自分専用に問題選んでくれたりして、本当に良い先生でした(しかし色眼鏡無でまじ糞みたいに良い本です)。
 但し、1つ苦言を呈しておけば、この本を「の関数」っつってるんですよねえ。通常、「の関数」っつったら、の値に対して唯1つの値が決まらないといけないのですが、先のに対してと値が2つ出てくるため、関数と言うべきではありません。高校生には重箱の隅を突く様な指摘だと思われるかも知れませんが、この「関数」(つーか「写像」)って概念は数学をちゃんとする上では本当に大切な概念で、このミスは(たとえ、大学入試での点数には直接の関係は無かったとしても)数学をしている者として看過出来ません。値が1つに定まらないものを関数なんて呼んだら、大学の演習の授業とかだと先生にぶち切れられます(まあ「多価関数」という概念も無くはないのですが、そこまで考えてこの言葉遣いしてるのかな?)。
 まあでもその上で、先に述べた通り、飽く迄大学入試向けの高校数学の問題集としては、非常に完成度が高いです。
(※)ただこの本、新課程用に改訂されてないから、IIBの統計が入ってねえんだよなあ(いやそれ言ったら新課程用でも実力強化みたいに統計入ってない本、幾らでもあるし、この本だけの問題じゃねーけど)。いや別にIIBの統計、数学ではないので(統計自体は恐らく数学に出来る(大学時代、ここサボっちゃったので知らんけど) )、俺的には気にしないのだが、受験生にはやっぱ実質的な問題が生じるよねえ。マイナー本だから改訂はされないだろうし、何なら大きく指導要領変わった段階とかで廃版やろうなあ(まじ刷られ続けてほしい!)。
 
・入試数学「実力強化」問題集
 本屋で1時間くらい立ち読みしてきました。間違い無く良い本です(シュアスタ越えある)。特徴を先に述べ、その後、レヴェルや使い方について書きましょうか。
 構成は基本的にオーソドックスな傍用問題集形式です。ずらーっと問題が並んでいて、後ろに纏めて解答が書かれています。解答は丁寧と言うよりは解り易さを損なわない最大限の範囲で簡潔にしている感じで「途中式全部書いてくれないと解んないよ~」みたいな人はしんどいかもです。裏を返せば、それなりに頭が良かったり基礎が固まっていたりな人は寧ろ読み易いと思います(大数とか天空への理系数学に近い)。簡潔にするに当たっての「削る部分、残す部分」の選択が相当に筋が良いと思いました。これは完全にプロの犯行です。また、各問、解答の後に一言二言の解説が書かれているのですが、これもかなりのクオリティだと思います。大数っぽい(つまり生意気な学生が喜びそうな)テクニックもかなり漏れ無く書かれている様に見えました。後、この本の特徴として、問題とその解答とは独立に、講義パートっぽい部分が在ります(駿台のホムペでは「要項集」って書かれてますね)。ここもかなり切れ味良く纏まって、教科書学習が一通り済んでいる学生は、基礎事項の復習は教科書ではなくここを繰り返し読むと良いんじゃないかと思います。ここでも「内積の意味」「斜交座標」みたいな生意気な知識含め、かなりシンプル且つ筋良く纏まってします。帰納法の説明とかもかなり好きです。ですが全体的には、数学的にかっちり書く事よりはイメージに訴えて印象付ける事を主眼に置いた説明ですかね。「確かに嘘は言ってないけど、これは一寸危ないな」みたいな説明もちょいちょいありました(「が収束ならば」の説明なんか、中々怖い気がします)。殆どの学生はこっちの方が好きだと思いますが、数学科向きの細々した事を気にしてしまう学生とかは、少し注意が必要かもです。
 次に問題の内容についてです。先ず、選題については(俺が見た限りでは)文句無しです。「定石習得」という意味での網羅性は完璧です。問題数は1292題らしく、本のサイズ感も手伝って相当重そうに見えますが、1/3~1/2は``軽い問題''であり、そいつ等は大体、2~3問合わせて1題分くらいの重さな気がするので、実際には1000題強くらいの分量だと思って良いと思います。しかしこの``軽い問題''がこの本の選題の最大の特徴になっています。入試問題を解いていると「色んな問題でよく使うテクニックだけど、それ単体で問題になっているのは見た事無いな」みたいなものがよく在るのですが、この本はそういうテクニックの部分だけを上手く単体の問題として取り出し「1問」として扱っています。こういうテクニック、他にも色々とやる事がある重めの標準問題の中で登場しても中々印象に残らなかったりしちゃうのですが、本書はそれを見事に解消しています。先の``軽い問題''は主にこの「標準問題中のあるあるテクニック」により構成されています。その他の大きな特徴としては、通過領域の基本問題みたいな「考え方が大きく異なる解き方が複数在り、しかもどの方法も重要(つまり、どれか1つの方法でしか解けない/しんどい問題を作り得る)」みたいな問題に対して「3通りで解け」みたいな出題の仕方をしている問題が多数見られ、単に解答パートで別解を並べておくのよりもずっと教育的だと思いました。また、定理や公式の証明の内、入試でたまに見掛ける系ものを問題形式で扱っているのも良いですね(どんなに「証明は大事だ」つっても問題ばっか解こうとする学生って必ずいるから、最早こうして問題として扱っちゃった方が教育的だと思います)。後は、教科書読んでてふと気になっちゃう系の反例をちゃんと問題形式で挙げさせたりするのも、これまた教育的だと思います(特に極限周り)。
 この様に、1問1問細切れにされていたりもするので、単問の重さだと青チャートとかの平均的な例題よりも軽いものも多いですけど、最終的に得られる知識量は青チャート(の例題だけ)よりもずっとハイレヴェルだと思います。勿論、シュアスタよりも上でしょうね。っつー事でまじでびっくりするくらい完璧な問題集なんですが、3点、使用上の注意を書いておくと:
  1. 先も述べた通り、基本的に簡潔さで勝負の本なので、本当に数学苦手な人は恐らくしんどい。
  2. 軽い問題も多いとは言ったが、そうは言っても中々の分量なので、ニューアクションレジェンドみたいな網羅系をやった後に加えるのは止めた方が良い(量もそうだが内容的な重複も多過ぎる)。
  3. 例えば数Aの確率のとこに数Bの数列の知識を使う問題が混ざっていたりと、配列については少しテキトーなのかも知れない(他あんま細かくチェックしてないすまんこ)。なので、学校の授業と併用する場合は気を付けた方が良いかも(「これは今は解けない」みたいなチェックを自分でしないといけないかも)。
って感じです。例えば、中高一貫の進学校で高1で全範囲終るとこに通っている人なんかは、高2の1年でこの本を徹底的にやり込んだりすると、かなり強いと思います(最後の1年で掌握と過去問やり込めば東大東工大数学でもかなり戦えるんじゃね?)。一方で網羅系同様、浪人の1年でこの本使うのは一寸慎重になった方が良いかもです。自己管理能力にかなり自信が有るでもない限り、俺ならお薦めしないかな。よくいる「持ち歩いてる参考書だけ立派で結局偏差値60とかで終っちゃう系カス浪人生」になっちゃう気がします(まあそういう人ってかつての俺様みたいな優秀な浪人生の優越感の肥やしになるという意味で、とても社会貢献度は高いと思いますけどね☆)。つまり、基本的には網羅系参考書です。
 著者は駿台の杉山さんって人ですね。京大の本が微妙で俺の中で一寸微妙な人だったんですが、この本は文句無しで素晴らしい。これはガチプロです。何なら「このプロは高校数学をどういう風に分解して整理しているか」を表す、或る種の思想書まである。こういう本書いてくれる人がいる事は、大変に喜ばしい限りです。
 
・藤原基本問題演習
 駿台文庫の本です。IA, IIBだけです。
 元々は「ここからはじめる受験数学」という本だったのですが、2022/2023年に改訂されました。
 先ず、基本的に中々に良い問題集です。形式は、別冊の薄い方に問題がずらーっと並んでいて、本文に解答解説が書かれたよく在る問題集タイプです。問題は各分野毎に基礎問題と応用問題に分かれています。問題数はIA, IIBの2冊で500題強とまあまあ手頃で、の割に基本的な問題にほぼ抜けが無い様に見えます。小問集合として小テーマが纏まったりしているのがかなり良いですね(例えば不定方程式の解法が1つの大問の中で一纏まりになっています)。また、重要な解答が複数在るタイプの問題については、それがかなり強調されてながら別解として並べられていて、これも良いですね。俺的に「お手頃版実力強化問題集」みたいな感じがするのですが(結構、良い例えだと思う)、実力強化の様に技術毎に問題が細切れにされてはおらず、何なら応用問題の方にはリード文が少し長い入試問題とかもまんま載ってたりしています。解説は実力強化問題集よりはフレンドリーに見えます。
 難易度的には、授業で教科書の内容が確りと消化出来てさえいれば、恐らく多くの人がその後直ぐに取り組めるんじゃないかと思います。でもこれについては、俺は既に受験生の感覚を殆ど忘れてしまっているので、検討される方はちゃんと自分の目で確かめてください。例えばSure studyと比較すると、問題数が多い分、矢張り終った時の到達度は少しSure studyの方が高いとは思うのですが、一方でこっちの応用問題はSure studyに比して、若干、やや見た目がイレギュラーなものを意図的に選んでいる気がするので、こっちの方が頭は良くなるかも知れないです(特に図形の問題が、正多面体の問題とか、例の東大の円周率が3.05より大きい事を示すやつとか載ってます)。使い方としては、例えば「IAIIBが学校の授業と試験勉強でそれなりに通せてて、高3の春からIIICは入門問題精講で先取り、IAIIBはこの本で受験対策開始」みたいにすると、中々良いと思います。
(※)改訂されたの、コメントで教えてもらいました。ありがとうございます。
 
・新・解き方がわかる数学
 IA, IIB, IIICの3分冊。比較的少ない問題数で、各問題毎に解説と言うか一寸した導入と言うかみたいな記述も在り、Sure Studyを更に薄くした感じですかねえ。スタート地点は大して差は無い気がしますが、問題が少ない分、到達点は技やSure Studyよりも結構低くなってしまうとは思います。「厚い本は心理的に嫌」とか「時間が無い」とかいう場合は、こっち優先で良いと思います。例題に対しほぼ同じ反復問題が付いているので、その辺はSure Studyより初心者向けな気がします。解答は中々に丁寧だと思います。
 IA, IIBは基本的な問題や欲しい解説に抜けが見当たらなくて完璧に近いです(高度めの標準問題がどうしても少し手薄にはなっているけど)。またIIICも基本的には悪くないです。積分の典型問題とか、問題数は少ないのに一切の抜けが無く、流石な感じです。しかしながら、以下の3点が若干不満です:
1. 極限の公式周辺が若干弱い。から派生する公式は、載ってはいるけど解説や証明が一切無いです。また、三角関数関連の極限もだけなのが若干不満です(上位大だと知識不足になる可能性大)。まあでもこんなの直ぐに解説出来るので、下に書いておきます。これ覚えてくれれば大丈夫です。
2. 繰り返しの操作で定まる図形(格好良く言うと「フラクタル」ってやつ)に関する極限の問題が見当たらない。これ入試でよく見る気がするので、明確にマイナスですかね。まあでも別に「知っておかないと解けない」みたいな問題でもない気もするんで、まあ気にしなくても良いですかねえ?
3. 方程式の解の個数への微分の応用の記述が若干弱い。「グラフの交点に帰着」ってのが強調されているのはかなり良いのですが、ここでは所謂「文字定数は分離せよ」にも少しは触れてほしかった(前者の強調が十分なので、害は少ないか)。
[参考:指数三角の極限の公式]
1.
これは以下の通り少し複雑なので覚えてしまっても良いと思う(式変形の勉強にはなると思う)。と置くと、上記右辺はとなり、ここで更にと置くと、と確かになっている。
2.
の定義及び上記1の各々でと置く。その後、改めてに書き直す。
3.
1の公式で辺々を取る。
4.
2の公式を分母分子ひっくり返してと置く。辺々の右肩に乗っけるとである事に注意する。その後、改めてに書き直す。
5.
に注意すれば、よりに帰着される。
6.
(※)最初は上記1無しで2をいきなり書いていていて(1が無いと、2のの場合をカヴァー出来ない)、それは「1は結構長いし、そもそも高校数学では「ならば(★)」を証明しないから、気にせんで良いかな」と思ったからなのですが、やっぱちゃんと書く事にしました。(★)については、例えばとかすると、はプラスマイナスを交互に変えながらに近付くので、の守備範囲から外れます。
 
・東京出版 入試数学の基礎徹底
 薄い本です。えっちではないです。
 IAIIBだけなのは一寸残念な気がしますが、寧ろIIICに入る前の或る程度優秀な現役生が直前の長期休暇にそれ迄の復習っつー事でばーっと回したりするのに使えそうです。まあ後は同一用途で浪人初めの春とかでしょうか。
 各章公式の証明や例題の載ったシンプルな導入が有り、その後演習です。導入は易しい記述ではありますが、正に大数って感じです。授業で納得出来なかった人の中には刺さる人も多いと思います。例題と演習を合わせれば選題も中々です。
 
・1対1対応の演習
 問題選定も解説も何だかんだ良いですが、解答は丁寧ではなくシンプルさと筋の良さで勝負って感じで、これが読めないとつらいです。でも読めるならこれ読んどきゃ間違い無いですよ多分。
 ただまあ、“問題選定も1対1”で、例えば確率漸化式なんか頻出かつ最初は習得に時間が掛かると思うのですが、1題(下の類題合わせれば2題)しか無いです。
 よく「難しい」と言われますが、個人的にそんな感じはしなくて、多分多少気の利いた理系生なら普通に教科書の直後でもいけると思います(但し、その教科書学習は証明も例題もかなり確り読み込む必要はあると思います)。
 
・標準問題精講IA/IIB
 よく「1対1と同レベル」みたいに言われる本ですが、何故か科目毎に著者がばらばらで、各々別書レヴェルで毛色が違うので、別々に説明します。
 IAはやや薄目で、問題のレベルも1対1より抑え目ですが、兎に角少ない問題数で、基礎から標準レベルのテクニックを漏れ無く無駄無く丁寧に叩き込んでくれる、素晴らしい選題です。特に場合の数、確率の数え上げテクニックの纏まりは見事です。
 IIBは打って変って中々の重量級で、普通に1対1より重いと思います。しかし選題はIA同様素晴らしいです(但し、こっちは意図的に“一見非パターンっぽいパターン問題”を選んでいる感じが散見されます。これはこの段階としては少し微妙な気がします)。解答はあっさり気味で、丁寧さより切れ味で勝負って感じです。解説(本書では「精講」と呼んでいる)も数学的にはとても良い事が書かれていると思うのですが、何か若干、日本語的に舌足らずな感じがして、読解力ってか空気を読む力ってかが必要かも知れないです。
 
・勇者を育てる数学III
 数III(とベクトル以外のC)だけですけど、選題がこの段階としては最強です。解説も定石習得段階としての「如何頭に入れておくべきか」の説明がかなり最強です。但し、解答はシンプル過ぎてきつい人にはきついかも(丁寧ではないけど、ポイントは鋭く抑えた解答)。つっても俺でも数IIIの1冊目の問題集として問題無く使えたんで、まあまあの国立理系を志望する様な人なら、普通に使いこなせると思います(俺は「新しい分野を初めて学ぶ能力」は、進学校の理系学生の中では、多分、良くて平均くらいの学生でした)。
 著者の荻野先生は、俺が浪人している時に世話になった先生の1人です。ネットだとイロモノ扱いの先生ですけど、実際に会ってみると、とてもまともで誠実な先生で、個人的にめっちゃ好きでした(まあでもだからこの書評は思い出補正入ってるかも)。てか、新課程版になって童話が無くなっちゃったんですね。荻野先生の人となりが判って、個人的に好きだったんですけどねえ。
 
※以下は引き続き良い本ではあるけど、所謂“網羅系”で糞分厚く、計画遂行能力に確たる自信が有る人以外にはお薦め出来ない。
・ニューアクションレジェンド
 間違い無く現状の網羅系参考書の中では1番完成度が高いです。
 概念の説明や定理の証明込みの導入が付いていますが、中々に筋が良く纏まっていると思います。少し鋭い学生なんかが気になりがちな概念も、コラムとして纏まっているのが良いですね(帰納法のアルゴリズムの変更とか``逆像法''とか外積とか正射影ベクトルとかオイラー数の出所とか)。但し、(これは赤チャートにも言えるけど)やっぱこの本の最初だけで教科書の代わりにするには、少し頭の良さが必要な気がします。授業の復習も兼ねた確認に使うなら、かなり良いんじゃないんですかね。数学的な内容に幾つかケチを付けておくと、先ずは内積の``定義''をにしていてこれに説明が無いのは、個人的にかなり嫌ですねえ。大学で線型代数を勉強すると解るのですが、内積とは本来、``空間''に``角度''の概念を導入する為のものなので、その定義にが混ざっているものを採用するのは、単なる趣味の問題ではなくて、明確に筋が悪いです(この本だけではなくて、教科書を含む多くの高校数学関連の書籍への苦言)。後は、型の漸化式を特性方程式で解説しているのも一瞬、気に食わなかったのですが、これは解説が(入門問題精講等と違って)十分良さそうなので、恐らく学生も抵抗無く読めると思います。数IIIの逆関数とか``陰関数''の記述は全然駄目駄目ですが、まあこれはもうこの本に限った話ではないので、仕方無いですかねえ(ここちゃんと書けているの、入門問題精講IIICしか知らない)。内積もそうですが、矢張り大学初年度の数学って高校数学関係者はあんま身に付いてないんですかねえ💩
 問題の解答解説について、先ずは別解が割と豊富ですね。しかも生意気な学生が「こっちで解けば良いじゃんw」みたいに言いそうな解法(つまり``大数っぽい''解法)が割とよく載っています。後は、前にIAだけレヴューした時には「後述(ハ)の内容の``解法整理''``もっと根本的な手詰まり時の対処法''の両方が書かれてそう」つってたんですが、買ってちゃんと読んだら、前者はほぼ無かったねえ(IAのディオファントス方程式のとこだけ、この視点の解説が載っているけど、ここだけ)。なので、万全の基礎を固めるには、矢張り掌握やリアル入試数学を追加した方が良い気がしています(使い方については、最後に詳しく述べます)。一方で、後者(一部の人には「解法の突破口の内容」って言った方が解り易いかも)は各分冊の最後の方に申し分無いクオリティで纏まっており、これがこの本の最大のセールスポイントかと思われます。「定義に戻る」みたいなのとか、本当に大切ですし、個人的にも大好きです。もうちょい踏み込んだ内容について言えば、IIBで確率漸化式等の漸化式の応用に1章割かれているのは中々良いです。解説のとこに「繰り返し構造には漸化式」とちゃんと一般化されて説明されているのも悪くない。しかし、何故か「確率は最後の一手で場合分け、場合の数は最初の一手で場合分け」とも取れる解説が書かれていますが、これは明確に駄目です。所謂``破産の確率''と呼ばれる確率漸化式の問題は最初の一手で場合分けしますし(後は15の東大理系2とか)、一方で平面を直線で分割するみたいな場合の数は、最後の一手で場合分けして漸化式を立てます。いや、何か一部の大学入試数学関係者の中でこういう何の根拠も無い誤った認識が蔓延しているみたいなんですけど、これは出所は何処なんですかね?まじ勘弁して欲しいです。ここは明確に減点。また、所謂``文字定数分離''の問題の解説も、肝心の「分離」のとこがやや曖昧な書き方である様な気もしましたが、うーん如何なのだろう?別にそんな事も無いのかも知れません。``接点T''の解説は、最早完全に荻野先生ですね。てか、各例題の「○○の場合は△△せよ」みたいな格言めいた言い回しも、凄く荻野先生の雰囲気に似ています。ひょっとしたら執筆チームの中に教え子がいたりするのかも知れませんねえ。
 問題選定は基本的にはかなり強いのですが、これも完璧ではなくて、例えば、東大頻出の「図形の一部分(例えば線分)の通過領域」だけ抜けています。でも、確率漸化式や``3次元求積''等の頻出項目が(量的に)手厚いのとかかなり好きです(この辺も荻野先生の「天空への理系数学」っぽい)。``3次元求積''なんか「複雑な立体の体積」って名前で丸々章立てされていますし、解説もかなり良いです。
 以上、探せば粗が見付からない訳ではないですが、総じて中々の力作です。(イ)の後半、(ロ)、そして(ハ)の``手詰まり時対処法''がこの1冊で出来そうです。この本を使うなら:
1. 授業受けて復習はこの本の導入パート;
2. 例題と下の練習で(ロ)の定石暗記;
3. 各分冊の最後の方の``手詰まり時の対処法''を学び、また「真・解法への道」か「セオリー」か「ニューグローバルプレミアムレジェンド(1章)」で``解法整理''を学ぶ;
4. ``解法整理''を勉強した上で、この本の例題の復習,
って感じですかねえ。ただまあ、やっぱ``解法整理''ももっと意識してほしかった(全称特称最大最小不等式の証明くらいは)。期待通りの``完全無欠''ではなかったですが、それでも「この本(と過去問)だけで受験勉強を終らせ得る」という意味で、大変に強力な本です。
※あーてかここを補う為の「ニューグローバルプレミアムレジェンド」なんですかね?(下記参照) ニューグローバルプレミアムレジェンドの1章と合わせれば、過去問に入る前の基礎固めはほぼ完璧です。
 
※個人的に上より少し微妙だけど、気に入れば使って良いと思う。
・赤チャート
 導入が良いので、(イ)の本としても使えます。ハイレベル版白チャートって感じです。但し、本質的な丁寧さは白チャートに見劣りしませんが、証明の記述等は数学書然としていて、抵抗を感じる人も多いと思います。青/黄より問題選定も解説もずっと良い気がします。
 しかしながら、悪い本ではないのですが、正直、ニューアクションレジェンドに優先してお薦めする理由が無いです。気に入っているとか、既に結構使っているとかなら、そのまま使うべきですが(網羅系の切り替え、本当にタイパ悪い)、そうじゃない「高2とかでこれから買う」みたいな方は、網羅系で行くならレジェンド買っとけば良いと思います。
 
・チェック&リピート
 解説は中々で、ページをまたぐ感じのレイアウトも個人的に悪くないと思うのですが、微妙なのは選題です。先ずIIBで漸化式の応用問題が確率漸化式しか無く、あたかも漸化式はこれしか応用が無いって印象を受けるのが個人的にかなり嫌です。漸化式は、繰り返しの操作や、もっと言えば離散変数が登場する問題全てで使われ得るテクニックです。後、IIICの体積は体積が致命的に弱いです。三次元回転体は一切無く、てかそもそも断面考察がポイントになる様な問題(自分は3次元求積と呼んでいます)が下手すれば1問も無いです。後は、右ページの解説も、Sure Studyよりも少し強調して欲しい部分が強調不足な感じがします。
 悪い本ではない気がしますが、Sure Studyに比して優先してお薦めする理由は無いですかねえ。
 
・標準問題精講IIIC
 IIBに比して分量こそ抑え目ですが、問題のレベルは更に上です。先ず問題選定について、レベルはIIBの基礎レベルをごっそり抜いて、+αレベルの問題が少し足されたって感じで、分量が抑え目なのはこれによります。基礎問題をごっそり削っているため、セクションの1問目から中々えぐい問題って事もしばしばです。又、選題も矢張り数学的興味によるものが散見されます。この様に、全体的に数学的興味にもかなり重点が置かれているため、数学好きには悪くないとは思うのですが、そうでない人は読んでいてつらいかも知れません。そして何より薦めにくい理由が、旧帝で頻出の3次元回転体(空間で図形を回す)が手薄です(線分の回転体しか無い)。このタイプの問題って類題経験が無いと厳しいと思うので、ここは入試向けの問題集としては大きな減点ポイントです。
 著者の木村さんって方は、予備校講師の身でありながら数学で博士号を取った相当に気合いが入った方みたいで、また以前は「探求と演習」という、同著者のIAIIBの本があったので、数理系志望の方向けには、標準問題精講として揃えるのではなく、「探求と演習+標準問題精講IIIC」という形で以前は薦めていたのですが、探求と演習が売られていない今、IIICだけこの本を薦めるってのは中々しづれえなあ。
 
※お薦めでない。
・基礎問題精講
 有名な本で、解答解説は非常に丁寧なのですが、問題選定が正直かなり微妙で(通過領域や3次元回転体みたいな高度なテーマがごっそり抜けている)、レベルや網羅性が他の本より数段落ちる感じです。なんでこの本だけではこの段階を終える事が出来ず、他に本を足すなりする必要が在りますが、不足が有るのを初めから判っている問題集を薦める気にはなれません。
 まあ「基礎」っつってるんだから意図的に高度なテーマは省いてるんでしょうけど、つっても入試で必ず出る問題の解説を放棄するってのは、矢張り一寸…
 
・駿台BASIC
 チェクリピ同様、漸化式の応用が確率しか載っていないのと、何よりⅢの方程式の解の個数を数える問題での重要テク「文字定数分離」が(このテーマの問題を載せているのにも関わらず)一切触れられていないです。こういう絶対必須の解説を外した本は、個人的にお薦め出来ん。
 
・チョイス
 選題、解答は良いですが、河合名物解説一切無で、要は問題の質が良いだけの傍用問題集です。解説無でも知識の整理を自力で出来る気の利いた人なら使っても良いかも知れないですが、それだけ頭が良ければもっと問題のレベルが上の本を使えば良い気もします。
 
・青チャート/黄チャート
 これだけアホみたいに量が有るのに、東大頻出の三次元求積に抜けが有るし、導入も白赤と違って無機質で文字の羅列って感じで、他に優先してお勧めする理由が無いです。
(※)青は今は導入付いてるみたいですね。赤同様、既に使っているなら使えば良いと思います。
 
・フォーカスゴールド
 これも赤チャートと違い導入は無いし、でもこれだけ分厚いくせに線分の通過領域、最初の一手で場合分け、定積分と極限の融合、みたいな東大頻出分野が抜けています。
 まあ悪い本ではないと思うのですけど、所々に在るコラムみたいなのが説教臭くて、個人的に好きじゃねえ。
 
・総合的研究
 コンセプト的には教科書の代わりも兼ねようとしているみたいですが、名前負けしていてほぼ只の網羅系です。
 まあ選題は悪くないですが、兎に角、長岡さんは大した事ない記述に対して、一々``本質本質''と大袈裟です。導入は言葉だけ難しいものを使っていますが、肝心の内容は教科書と指して変わらない気がする。
 てか今売ってないですね。
 
・数研Super Quick
 界隈で絶賛されていたので、買ってざっと読んでみたのですが、理由が判らん。
 IAはまだそこそこ良い気がします。まあでも、そもそもIA単体の出題ってあんま無いので、基本的な部分を一通り浚えていれば問題無いかと(ただまあ、数珠順列、無いですね。あんま見ないけど、知らないと中々出来ないので、俺なら円順列と一緒に入れたい寄りかな)。
 ただ、IIBがもうだいぶ駄目な気がします。先ず図形の通過領域が無い!この時点で、もう旧帝大だと基礎固めにも使えません( (ロ)の段階を2種類やるなら話は別だが、俺は絶対に推奨しない)。後は、確率漸化式が1題(+類題)だけで最低限のパターンも網羅出来ておらず、また解答も「全確率の和は1」を全然強調出来てないです。この程度の問題だけならこれで良いのですが、難関大ではこんな問題を解けるだけでは話になりません。帰納法のアルゴリズムも全然載ってない。後は3項間漸化式、確かに俺もこっちの方法で教えるのだけど、でもなら「って式は自分で準備しないといけない」という事には絶対に言及すべきですが、書いてない。本当「学生は実際に試験場でどういうものを解けなきゃいけないか」という視点が欠落している気がしてならない。
 いやごめん。俺が逆張りおじさんかつ数研アンチなので、色眼鏡で見てる説もあるけど、レイアウトが小綺麗な以外、まじで薦める理由が無い。IIICも無いし。
 
・解法のエウレカ
 レヴュー頼まれたので取り敢えずアマゾンで見られるとこだけ見てみたのですが、それだけでもあんまお薦めじゃないです。
 解答は技みたいな筋の良さは無い極々平凡なものの割に、別に丁寧ってわけでもないです。また、後半にある「実践問題」を一貫して「Goal→why→how」という流れで解説しようと試みているのですが、これ等が「思考ではなく理解→暗記」で処理すべき程度の当たり前の内容だったり、この形式に態々当てはめようとして却って解かり難くなっていたり、みたいに感じました。加えて、選題についても、目次を見る限りでも通過領域や確率漸化式が軽視されていて、の割には入門問題精講や白茶の様に基本的な部分からフォローしてくれているわけでもないので、(イ)の本としては使えず、でも(ロ)の本として使おうとしても問題集の追加が必要になってしまいます。基礎問題精講やスーパークイックと同じ弱点です。
 以上、(マイナーだけど)同レベル帯が対象と思われる「解き方がわかる数学」に優先する理由が見付からなかったので、まあお薦めとは言い難いです。IAの最初の因数分解のとこでは解法整理っぽい事が書かれていて、一瞬、良い本に見えたのですが、ただこれってうちの高専の教科書にも書かれているので、最近では特徴とは言い難い常識になっているのだと思います。
 
 
 
(ハ)「自力で解く力」を身に付ける為の参考書。
→世に“横割り”等と称されることも多いタイプですが、個人的に:
  • (ロ)の知識を実戦で使える様に整理(解法整理)するタイプ;
  • もっと根本的な、手詰まりの時等に何をすべきかを指南するタイプ、
の2種類が在ると思っています(最近はこの区別に意識が向いた本が徐々に増えてきました。時代が俺様に追い付いてきたな(笑))。素の頭が本当に良い人や、或いは既に確立された自分の思考回路を持っている人には必要無いと思います。って言うか、高い才能や確立された思考回路に他人の方法論が介入するのは、寧ろ有害かも知れないです。後、この段階も塾やら予備校やらでその手の授業が有るならそっちに任せてしまっても良いと思いますが、こういう視点専用の授業ってあんま存在しない気がします。ノウハウの有る先生でも、講座やカリキュラムの制約のせいで、大抵は自分の担当授業の中で技術を摘まみ食い的に紹介する事しか出来ないでしょうし。
 後は、この段階は根本的な数学力を上げて数学の点数を安定させたいなら是非やって欲しいのですが、一方で、地方旧帝大とかその他の国公立くらいなら、後述の「(ニ)標準演習」とかで兎に角パターン暗記とかをやった方が、案外即効性は高いのかも知れません(特に地頭が一定以上良いタイプ)。うーん、如何した方が良いんですかねえ。
※お薦め。
・入試数学の掌握
 3分冊。俺に「数学得意かも」と勘違いさせ、結果的に人生を変えてくれやがった本です。「解法整理」を前面に押し出した本です。また、それに基づいて問題を解く際の、著者の泥臭い思考過程や、それでも詰まった時の根本的な問題への向き合い方、みたいな記述も、大変に充実しています。以下「解法整理」について解説します。例えば「~が存在する事を示せ」という問題への解法は:
  • 具体的に~の例を1つ見付ける。
  • 存在を保証してくれる各定理(鳩ノ巣原理、中間値の定理、平均値の定理等)の利用。
  • 各種論法(背理法、数学的帰納法)
等が考えられます。だけどこういう知識って、教科書学習時だと数I~数IIIに渡って散っていますよね。本書は、これを「問題を解く時はこうやって再リスト化して、ここから考えるんだよ」という形で「鉄則」として提示し、それを基に東大京大等の問題をやっつける、というのを繰り返しています。
 という事でこの本は、既に学んだ標準的な知識を整理する為の本なので、そもそもその「整理する知識」が無いと話になりません。具体的には、上記の(ロ)の本を確実に身に付けて初めて取り組める本です。加えて、著者が恐らくは上位受験生メインの塾文化に染まった人間なので、(ロ)の中でも、特に大数とか駿台系ものと相性が良い気がします。実力強化とか1対1とかですかね。
 さて、こうして問題に対峙した時に使うべき知識が整理されていると、「使うべき知識を思い出せない」という類の事故の発生率がめっちゃ減ります。もうちょい解り易く言うと、例えば模試を受けて解けなかった問題で、その後、解答を見て「あー知ってたのに!何で解けなかったのだろう?」ってなるの、恐らく殆どの人が経験した事があると思います。この種の事態に対する一般的な対策は「兎に角、(ロ)の段階や後述の(ニ)の段階の演習を繰り返し、基礎知識の定着を強固にする」というものだと思います。勿論、これは1つの真っ当な勉強法ですが、しかしながら、それでも「ありがちな問題から少し外した問い方をしている」とか、或いは「他の分野と融合させている」みたいに少し捻られると、やっぱり使うべき知識を引っ張り出せるか否かは、頭の良さやその日の体調にどうしても依存しがちです。一方で、この本の様に「問題文の特徴(存在を問われている)に注目し、それに対して解法が整理する」という勉強をしていると、知っている知識を引っ張り出せないという事故が、原理的には解消されます。
 ところでこの本、よくネットでは``天才向け''みたいに言われていますが、俺はこの本は寧ろ「青チャートを覚えたのに東大5完安定しない」みたいな凡人が、それでも上位大の問題に喰らい付いていく為の本だと思ます。つまり、凡人向けの本です。本当に天才なら、教科書+チャートとかでさっさと受験数学は満点取れば良いだけです。
 という事で、上記だけ見ればやらない理由が無いまでありそうなこの本ですが、ただその上で、理科III類志望や京大医志望も含め、今は一般的な受験生には必ずしも薦めません。理由は以下の3つです:
  • 現行過程外の「行列」が含まれた問題が何問か含まれている。
  • 今は後述の「真・解法への道」「解法のセオリー」「ニューグローバルレジェンドプレミアム」といった、一般的な受験生には使い易い代替本が増えた。掌握は凡人向けの本ではありますが、それでも「基本知識に対する理解の広さと深さ」や「問題の構造に踏み込んだ長い文章に付き合う能力」は、かなり要求してきます。
  • 「それなりに高度なお約束問題(後述(ニ)の内容)も或る程度カバーする」という気遣いが皆無。勿論、これは掌握の意図するところではないのは解っているのですが、それでも現実問題として、受験生には「限られた時間の中で他教科も含め勉強する」という時間的制約があるため、掌握から更に(ニ)の本を足すのは、現実的でない場合が多いと思います。解法への道、セオリー、ニュグロレでは、こちらにもそれなりに気が払われている。
という事で、取り組む際のハードルの低さとか、問題の網羅性や纏まりを考えると、どうしても使い易さ的には後発書を薦めたくなります。
 それでも、記述の数学的な筋の良さや、思考過程の言語化度合いの生々しさは、2026年現在でも最強だと思います(解法整理について初等的なところからカバーしてくれている本(技、解法への道、セオリー)が出てきた今、この「解法選択だけで終らない思考過程の生々しい実況中継」こそが、掌握の大きな価値な気がしてきた)。寧ろこの本は、(大学でも数学と向き合う必要がある)数学科志望ガチ勢にこそ、読んでみてほしいと思います。恐らく著者本人は全く意図してはいなかっただろうけれど、個人的には研究者養成力もかなり高い本だと思っています。大学入試数学をちゃんと攻略対象として捉えた上で、結果的にちゃんと数学の本にもなっている。こういう記述を書いた方が、非数学系の塾講師だというのが、本当に信じられないです。著者は「大学入試数学指導」という世界に於いて、間違いなく1つの頂点に到達した方だと思います。「大学入試数学に本当に誠実に向き合った方」という印象です。まじ尊敬。
 という事で、一般の受験生に対するお薦め度は今となっては少し下がってしまいましたが、それでも俺が(ハ)の本として最初に紹介する本は、今も昔も掌握です(付き合わせてごめんなさい)。
 最後に、掌握に対してよくある批判を読み解くと「網羅性」と「鉄則の汎用性」の2点に集約されると思います。先ずこの2点に難がある事については、俺も全く以てその通りだと思います。しかしながら、その上で、俺はこれ等の欠点は掌握の価値を何ら下げないとも思います。というのも、俺は、掌握はこれだけで完結する本ではなく「この本を基に、この本の鉄則をカスタマイズしたり、或いはこの本で網羅されていない基本的な内容の鉄則を自分で作る為の道標的な本」であると、個人的に思っているからです。要するに俺は掌握を「自身の数学観をカスタマイズして、新たに数学を続けていく為の切っ掛けとなる本」だと思っています。まあだからその意味でも、普通の受験生に積極的に薦めるものではないかなあ(普通の受験生は、入試数学は「単に効率良く攻略するだけの対象」として消費すべきです。俺が理科に対してそうした様に、です)。
 
・真・解法への道
 IAIIBC(ベクトル)とIIICの分冊。これは割と良い本です。内容の大枠だけ見ると「一般層向けに整理し直した現代版の掌握+下記(二)の内容」って感じの本です。章立ては掌握と違って教科書の分野割りに近い感じになっていて、後述(ニ)の本で演習を通して扱う様な「少し高度なお約束問題」もかなりちゃんと扱われています(そしてそれらの解説も、何なら(ニ)の各演習書よりも格段に良い)。各問題の解答の前に講義調の記述が在り、ここに知識の整理に関する記述や、教科書よりも深い各分野の解説とかが載っています(勿論、基礎が固まっている受験生向けの記述であり、恐らく教科書代わりに使える類いのものではない)。解説は口語調で、ちょっと思想強め(後述)。
 先ず横割り(ハ)の本としての内容についてですが、IAIIBは解法整理に関する記述が基本的なものを中心に結構丁寧に扱われています(特に不等式と図形が良い。整数は俺から見たら少し甘く見える)。ただ、前述の通り、章立てが教科書の分野割りに近いものになっているので、掌握よりも俯瞰感はかなり弱いです。解法整理の強調度合いも、明確に掌握より弱いです。またIIICは、分野の特性上、当然っちゃあ当然ですが、解法整理よりも高度な標準手法の網羅側に更に意識が寄っています。加えて「もっと根本的な手詰まり時の手法(「解法の突破口」的な)」も、問題個々の解説の中に記述が散ってしまっています(これは掌握もだけど。ちゃんと個別に纏まって書いてはあったりする(論証のとことか))。加えて、京大の三角比の問題で「対称性を崩す」が強調されていないのは、ここに対する明確な意識の低さを感じます(これも論証のとこではちゃんと書いてあるのに、一貫性が無い)。
 一方で、今度は教科書的な配置だからこそだと思うのですが、「等面4面体」「完全順列」みたいな、``高級な豆知識''が取り入れられており、この意味でも、下記(ニ)の内容を同時に勉強出来る本になっている気がします。ただ、入試で使える有名な豆知識が網羅されているかと言うと、微妙かも。これは俺も網羅的には把握してないから何ともなのだけど、(以下、専門用語は気にしないで)例えば26の九大4の最小多項式周りの話は書いてないし、IIICの最後も、テイラーは書くなら誤差項をランダウにして極限への応用も書いた方が良いと思うし、微分方程式ならお約束の水の問題(06京大理系後期5、03北大理系3)も書いておいてほしかった。入試に役立つ範囲でεδに踏み込もうとする意欲も好きだし、その題材に10東北大理系後期4を使うのも中々に筋が良いとは思いますが、肝心のεδの教え方は、よくある挫折率高めの大学生向けの微積の本の域を出ていないかなあ。後は、折角チェザロ平均に触れるなら、14東大理系2とか15東工大1とかも扱ってほしかったです。
 という事で、良く言えば(ハ)(ニ)の両方の内容が出来るめっちゃお得な本、悪く言えばどっち付かずで少しだけ中途半端な本、って感じですかね。ただ、掌握よりはスタートの敷居がかなり低く、より多くの受験生が取り組める本だと思います(掌握は地頭の良さはあんま要求してこないけど、知識と根気はかなり必要とする)。
 問題のレヴェルについては俺は何とも言えないのですが(受験生の視点が失われてしまった)、俺が上記(ロ)で挙げたものをちゃんと身につけていれば、無理無く入れる人が多いんじゃないですかねえ。特にニューアクションレジェンドはこの本が不足している「もっと根本的な手詰まり時の手法」も纏まっている本なので、かなり相性が良い気がします。高2で数III迄終る系の学校の子がそれに合わせてレジェンド終らせて、受験年でこの本に取り組んだりすると、ちゃんと東大京大数学に太刀打ち出来る受験生になれそうな気がします。一方で、量が量なので、基礎が固まっておらずやる事が沢山有る浪人生や、部活終って慌てて受験勉強開始した系の秋の現役生とかにはお薦め出来ないです。
 最後に、「思想強め」についてです。先ず全体に渡ってかなり話口調です。それだけなら掌握とかもなのだけど、この「話口調」が、良くも悪くも中々に自意識強い系です。先ず、論理を1番初めに扱っていて(とても良い)、そこの講義パートのとこに在る、論理軽視系の``数学指導者''に対する批判がパンチが効いています。これは好感度高いです。一方で、同じ論理のところ(p.41)の「同値記号」の使い方に``伝統的ではない''と述べ、かなり煽り気味の記述があるのは、正直、いただけません。と言うのも、等式、例えば「」は「は等しい」という歴とした条件(数学の文章)であり、そして「同値記号」等の論理記号は、文章と文章を繋ぐものだからです。従って、インフォーマルな使い方としては何ら批判を受けるものではありません。厳密な事を言えば、変数の範囲が明記されていなかったり、或いは全称命題か存在命題かが明記されていない、といった問題点が無くはないですが、普段の数学関係者()の間のやり取りでは、多くの場面でこれらは文脈依存で通りますし、それを言ったらこの本でも連立方程式を繋ぐ際等にこれらに対しては一切の注意が成されていません。また、確かに(一部の基礎論系を除いた?)分野の論文では、こういった論理記号を使う事自体がそもそもあまり好まれないのも事実ですが、同様の理由でこの批判にも当たりません。確かに「何も考えずにとか使うくらいなら、使うべきではない」という主張はその通りですが、この意見を補強する為の根拠として、この記述はあまりに雑です。数学に携わる人間なら、特にこういう強い主張をする時は、もう少し言葉遣いにも気を払ってほしいです。更に加えて、定理とかテクニックに独自の名前を付けている事が時々あるのですが、こっちは明確に痛いです。``神の部分積分''とか痛いし、``安田の定理''とか、信者臭がしてきしょいです。んで、痛いだけなら良いのですが(何なら俺も授業でやる)、明確な問題が2つ在ります:
  • ``奇跡の合コン''は完全にアウト。と言うのも、これは「全単射」という正式名称があるからです。専門用語の上書きは、何ならトンデモ臭すらします(流石に無いとは思うが、まさか物理出身だから知らない?)。
  • 自己流の言葉遣いである事の強調の仕方が斜め上。「くだらない」「印象付けるため」と弁明はしているのですが、ここで1番必要な注意は「独自言語なので記述の答案では使うな」です(つっても俺も授業ではしてるけどこのブログではしてねえな💩)。
 という事で、かなり批判的な事を書きましたが、それでも「横割り(ハ)の本としての役割を十分に果たせている」「解答解説が十分良くて詳しい」「高度なお約束手法の網羅性と、期待される到達度も十分高そう」という3点を満たしているという意味で、26年現在、他の選択肢が無いんですよね。直下の「セオリー」が、扱っている問題のレヴェルがもう少し高く、かつIIICまであれば、迷わずぞっちを薦めるのですが、現実問題として、旧帝や早慶で数学で勝負したい学生には、消去法的に解法への道が優勢ですかねえ。
 
・解法のセオリー
 2026年現在、IAIIBのみ。2025年出版の新しい本で、かなりお薦めです。
 役割的には「簡易版 真・解法への道」って感じのポジションになるとは思いますが、見た感じの雰囲気は結構違います。先ず単純なボリュームが解法への道よりも少ないです。んで、解法への道は記述は口語調で少し思想強めですが、こっちは体裁自体はチャート式みたいな「問題→直下に解答解説」って感じで、かなり普通です。
 内容に関する重要な違いとして、解法の道は知識問題が高級寄りでしたが、こっちは知識問題は「(ロ)な内容の内、特に重要なものの見直し」くらいのものが多い印象です。解法整理の記述の充実度は、ぱっと見は解法への道とトントンですごめんなさい。初めはこの通り「トントン」と書いていましたが、提示する整理はセオリーの方がかなり多い気がします。解法整理自体は寧ろ掌握よりも丁寧で、でも「それを自分でも出来る様に」みたいな意識は、掌握よりも明確に下かな。その他の特徴として、セオリーは重要な解説や記述が、問題毎に何度も繰り返し述べられていたりします。教育的です。
 という事で、到達度は解法への道より低いですが、標準問題のフォローや取り組む為のハードルの低さという意味で「部活が終ったばかりの進学校の現役生」とか「浪人してやっと本気出した」みたいな、基礎と時間に自信無い勢にとっては、解法への道よりも明確に優先されると思います。記述の癖が少ないのも、個人的にはポイント高いですね(解法への道は若干説教臭くて、個人的には少し鼻に付く)。
 到達度だけで考えるなら、地方旧帝や早慶理工の平均程度ならセオリー、東大京大や医学科(旧帝や医学科専用問題を出すとこ)なら解法への道が優先ですかねえ。ただ、別に東大京大医学科志望でもセオリーの方が気に入り、その後で(ニ)の本や解説詳しい系の過去問集をちゃんとやれるなら、セオリーでも全然大丈夫だと思います(個人的にはセオリーの方が「構成がシンプル」「特に解法整理について丁寧に作り込まれている」「何より説教臭くない」という意味で明確に好きなのですが、到達度はどうしても解法への道に軍配が上がりそう。しかも現状、IIIC無いし)。
 
・ニューグローバル×LEGEND プレミアム版
 IAIIBのみ。ご大層な名前っすね笑。
 恐らく国内で只2つの「解法整理」と「もっと根本的な、手詰まりの時に何をすべきか」の2つを明確に区別し、この2つを或る程度の纏まりを以て同列に扱っている本です(もう1冊は後述の「青茶活用30」)。解法整理の部分については、掌握よりも明確に基本的な知識に振っています(最大最小とか不等式とか不定方程式とか)。ここの部分(1章)が、前述「ニューアクションレジェンド」の欠けたピースを補う内容って事で作られているんだと思います。そして「手詰まり時の対処法」の方が上記3冊に比べ明確にちゃんと纏まっているのもポイント高いですね。
 こう書くと、解法への道、セオリーより明確に優先して良さそうな本に感じますが、しかしながら、問題1つ1つに対する洞察の深さや問題の質が、明確に上記3冊よりは劣る気がします(決して低くはない。(ロ)(ニ)でお薦めしている本の平均レベルくらいはある。上記3冊の著者の力量が特別に高いだけ)。やっぱこういう教科書系の出版社だと、どうしても良い尖った部分が削られる方向性で編集されちゃうのかなあ、とか邪推しちゃいます。
 という事で「内容の纏まりは解法への道とセオリーより優れている」「数学的な記述の良さは2冊より下」という感じです。後はこの段階の本を選ぶ段階で、何を優先したいかとかを基に、自分の目で判断してほしいです。
 
・リアル入試数学 
 知識の整理に関する解説がかなり良いです(特に整数と図形)。章立てもかなり良い。量やレベルも掌握よりずっと押さえられていて、地方旧帝にも使えます。但し、関西の先生みたいで、問題選定の意識が京大阪大の出題傾向をかなり意識している様に見えます。途中途中の対話形式は、好みが分かれるかもですねえ(俺はまあ嫌いじゃない)。
 という事で、以前は掌握に次いでお薦めしていたのですが、しかしながら2026年現在、正直、解法の体系化の質だけで判断すると、解法への道やセオリーより優先する意義が少し減っちゃいました。ただ、対話形式なのは人によってはめっちゃ好きだと思うし、後は京大阪大志望なら問題のマッチ具合はセオリーよりは高いと思うので、人によってはこういった理由で解法への道やセオリーより優先する事もあると思います。十分、良い本だと思います。
(※)でも京大阪大だと、今度は池谷さんの「世界一わかりやすい京大/阪大の理系数学合格講座」があるんですよね。大学別の本なので紹介してないですが、こいつらは良い本です。薄められてはいますが、寧ろ解法への道とかよりもずっと掌握の後継書と言って良い気がします。
 
※個人的に上より少し微妙だけど、気に入れば使って良いと思う。
・青チャートを活用する大学入試数学テーマ30
 前半で知識の整理、後半が「もっと根本的な、手詰まり時に何をすべきか」の解説にはっきりと分かれています。この違いを確りと強調している本は、俺の知る限りはこの本とニューグローバルレジェンドプレミアムだけなのですが、個人的に完成度がこっちの方が低い気がして、こちらを優先的にお薦めする理由が無いです。
 先ず、前半パートがちょっと微妙です。例えば何で確率じゃなくて場合の数なのか理解に苦しみますし、その場合の数も数Aの事しか書いてない。他にも、俺がブログで書いている様なフローチャート化が載っていますが、どれも纏まりが明確に甘いです。「いやちゃんと問題を自力で解く事を考えていたらもう一寸書き方があるだろ」みたいに思わされる点も多いです。
 チャートに愛着があるとか、レイアウトがこっちの方が気に入るとかない限り(こっちはチャートと同じ例題形式。ニューグローバルレジェンドプレミアムは問題が先に纏まっている)、俺はニューグローバルレジェンドプレミアムの方をお薦めするかなあ。
 
・駿台ハイレベル数学の完全攻略
 解答解説は結構良いのですが、横割りの本として考えると、解法整理とか手詰まり時の対応みたいな記述が地の文の中にかなり散っちゃっています。要はレイアウトが良くない。また、実用性は掌握より低いし、敷居はセオリー、リアルとかより高いです。後、この本とは必ずしも関係は無いかもですが、共著者の杉山さんって人が別に出している本(京大の過去問)で結構駄目な解説をしていて(対称性のとこで、対称性を活かす事しか解説していない。京大向けの本として、これは在り得ない)、このレベルの問題に対する解説にあんま信用が置けない(実力強化は素晴らしいんだけどね)。って事で、お薦め本に優先してお薦めする理由が無いかなあ。
 因みに、共著者の米村さんって方、実は俺が落ちた時の駿台の採用試験の面接の面接官の1人です。面接中「この人、妙に鋭い事聞いてくるな」とか思っていたのですが、関西駿台のボスであったと後から知りました。恨みとかは一切無くて、あの時の俺の模擬授業は、完全に不採用レヴェルでした💩(人前でどう話すかとか、未だ全然、考えてなかった時期です。)
 
・突破口
 解法整理ではなく「もっと根本的な、手詰まり時に何をすべきか」メインの本です。いや多分悪い本ではないと思うのですが、しかし掌握に優先する理由が無い気がします(掌握より敷居が高いくせに、得られるものは少なく、また問題の実用性も掌握の方がずっと上な気がします)。
 著者が2人とも頭が良い事で有名らしく、同じく頭が良い人はこっちの方が好きだったりもするかもです。
 
・佐々木 数学の発想力が1冊でしっかり身につく本
 改訂されたみたいですが、内容はあまり変わってなさそうです(ごめんなさい。中経出版から出ていた前身の「面白いほど」を持っていないので、細部までは判りません)。
 この手の本としては敷居が低そうではありますが、相変わらず、何か問題選定や解説があんま筋が良くない感じがするんですよねえ。選択した解法が「それはねえだろ」みたいな再現性に疑問が有るものだったりします(最初の問題とか、等差数列なんて態々持ち出さず、連比みたいに「複数の等しいものは纏めてkと置け」「変数を減らせ(統一しろ)」みたいに押さえておいた方が応用が利くと思います)。他の記述も、全体的に「俯瞰しよう」という認識が薄く、場当たり的なものに終始している気がします(いや、結局は難しい問題に対してはその問題個別に考察しなきゃいけないので、その意味では寧ろ真っ当と言えなくもない気もするけど...)。高度なお約束問題にも気を払ってくれている、解法への道やセオリーに優先する理由が無い気がするなあ。解法選択的な事も書いてくれてはいますが、お薦めの本に比べ、質も量も強調度合いも劣ります。
 まあでも、以前は「お薦めでない」としていたのですが、見返すと少なくとも読んで害があるわけではないと思うし、「気に入ったら読んでも良いんじゃね?」くらいの感じの本な気がします。
(※)「面白いほど」では、多項式関数を``整関数''(もっと広い関数を表す専門用語)と呼んでいたのですが、そこは恐らく修正されてそうです。
 
 
 
(ニ)実践演習。
→(ハ)の段階の定着をチェックする為の演習、或いは(ロ)よりも高度なテクニックの習得が目的の段階ですが、つっても前者に関しては別に過去問でも良い気がしますし、後者に関しても(ロ)の段階である程度高度な本を使っていれば必要無い気がします。あんま無理に本ばっか沢山買っても仕方が無いですし、要らない気もする段階です。
※お薦め。
・上級問題精講
 高度なパターン問題集としても思考力チェックとしてもいけそう(後者として使うには、章立てが教科書的な分野別になっているのがやや微妙だけど)。
 選題解答解説全て文句無です。著者の長崎先生は予備校講師と大学での研究者を兼任されていた方で(つまりどっかの誰かさんみたいななんちゃって研究者ではなく、ちゃんと論文の執筆活動をされていた方)、入試テクにも数学的記述にも信頼が置けます。
 
・新数学スタンダード演習/数学IIIスタンダード演習
 これも高度なパターン問題集としても思考力チェックとしてもいけそうで、でも章立て的に前者向きなのも上級問題精講同様です。
 選題解説も文句無です(解答はさっぱり寄り)。各問の解答前の短いコメントも中々に筋が良いです。
 レベル的には上級問題精講よりもやや基礎側が手厚いって感じっすかねえ。
 
・新数学演習
 本当にざーっとしか見てないけど、新・解法への道とかやって、それでも何かやりたいならこれじゃないですかね。スタ演だと難易度的な被りが多そうですし。
 
・CanPass III
 IIIは選題解答解説、全部めっちゃ強いです。問題数が少ない問題数(60題)のは、長所とも短所とも言えます。
 
・理系数学の良問プラチカ IAIIB
 パターン問題が多いです。本当に良問(i.e., 選題が最強)なのですが、解説が一切無く、解答も詳しくはありますが極めて平凡です(セオリー除く河合塾の本全般の特徴)。なので、この辺を自力でフォロー出来る土台固まってるか頭良い人向け。
 
・チャート式難問集100
 所謂「黒チャート」ってやつです。
 前半は高度な知識の纏めと演習になっているのですが、教科書系出版社の本にしては珍しく、その分野チョイスのセンスがかなり良い気がします。このパートは高度なパターン習得用(但し、上記の本と違い網羅性は無いです)。
 後半はえぐそうな問題が並んでいますが、アマゾンレヴューで散々書かれている様な“捨て問”だとは自分は思わないです。どの問題も「あーこういうの難しい問題だとたまに見かけるわ」みたいなテクニックが含まれてそうですし、難化した年の東大京大なら1, 2題はこんなレベルの問題が出ると思います。このパートはもう完全に思考力チェック用ですね。
 
・医学部攻略の数学
 コメント欄で教えてもらった本です。良い本です。IAIIBとIIIの分冊で、医学部に限らず理系全般に薦められる内容です(1冊1700円と一寸高いのが残念)。
 抑え気味の量(例題だけならIAIIB合わせて120題前後。演習同数)の中で、やや高度なお約束問題を一通り押さえてくれています。背景的な数学の話題を主にした問題も多く、その意味でも、医学部よりも寧ろ数物系志望の子の方が好きそうな感じがします。選題、解答解説の丁寧さ、共に良いです。取り組む上でのハードルとしては、例えば網羅系の例題や傍用問題集を確りやってないと結構しんどい気はします(例えば不定方程式の基本的な解法は纏まっていないし、「文字定数は分離せよ」は「接点T」と一緒に出てきます)。入門問題精講から接続するには、それなりに地頭の良さが必要な気がします(高校生の頃の俺だったらいけたかは微妙)。
 「予備校の難関大向けクラスの質が高いテキスト」みたいな感じです。質が良く量は少ないので「がんがん復習して回す」みたいな使い方が良いと思います。お薦めの本に追加。
(※)ごめんなさい。この本、コメント欄の2020年くらいの極初期のコメで``名前は知ってるけど記憶に残ってないので多分その程度の本''みたいなディスりコメをしちゃっていますが、これは確実に当時の俺の誤認です。良い本なので、安心して使ってください。
 
※個人的に上より少し微妙だけど、気に入れば使って良いと思う。
・森本将英の理系数学
 150題。
 少ない問題にちょっとした解法整理的な記述(つまり(ハ)の本的な記述)やちょっとした高級知識(バウムクーヘン分割とか)を含む十分良い解説を付けた本で、夏まで部活やったとかで時間の無い地方旧帝志望の現役生とかなら、選択肢としてありだと思います。解説は詳しいですが、冗長ではなく、切れ味もある感じです。
 ただ昔、同著者の「マスト160」という本があったのですが、それと比べ、微妙に解説の厚さが減り(その分、切れ味は良くなったかも)、また問題も10問減った分、俺的に必須と思う問題に見当たらないものがあります(直線以外の通過領域、全段仮定の帰納法、見ずらい絵で定義された立体の3次元求積等)。今回もそこそこ良い本だとは思うのですが、マスト160の完全なる後継とはいかない気がします(ごめんなさい。マスト160を持ってなくて見比べたわけではないので、ひょっとしたらマスト160の時点でこういう弱点があったのかも)。
 
・CanPass IAIIB
 IAIIBも悪くは無いのですが、整数が弱いのは痛いですね。同じ著者が書いているらしいのに何故こうもクオリティに差が…
 解説がもう少し充実していれば、もっと高評価なんですが…
 
※お薦めでない。
・理系数学の良問プラチカIII
 選題が終ってます(頻出問題を外しまくっているのと、変に大学に知識を見せびらかす様な問題が混ざっている)。
 
・やさしい/ハイレベル理系数学
 著者が2冊両方読む事を前提にしている感が在って、各々に頻出問題の抜けがちょいちょい有る気がします。でも2冊やるのは量的に厳しいと思うんです。で、解答解説の方は至って平凡で、このマイナス評価を覆すだけのプラスポイントが無いです。別解の豊富さがプラスポイントとして良く上げられますが、この解説だけで別解だけ沢山与えられても使いこなせる人は限られるだろうし、それが出来る人はさっさと東大京大なりの過去問をすれば良いです。
 
・入試の核心標準編
 解答解説はかなり良いけど、選題が残念過ぎです。
 
・上記以外の数研の各種入試問題集
 他にも色々在りますが、良いものを見た事が無いです(ごめんなさい。以前は「これだけ70」はお薦めとしていたのですが、今見ると何を薦めていたのが全く理由が判らなかったです(必須問題の抜けが多過ぎる)。ランダムなのは直前期には悪くないと思うのですが、でもそれは過去問とか模試の問題を使った方が良いと思う)。
 
 
 
(ホ)その他。
・分野別標準問題精講 方程式・図形・関数からとらえる数学の基礎
 入門問題精講の池田さんの本です。ごめんなさい。未だざっと見ただけで、今後、追記すると思いますが、これは良い本です。入門問題精講同様、教科書的な癖のない記述スタイルに、大変筋の良い説明が追記される形で、論理と集合・写像の基礎が飽く迄も入試数学に役立つ形で一通り述べられています。
 数学系志望の高校生に、ぜひ、高2辺りから読んでおいてほしい感じです。ぶっちゃけ、癖が無い分、俺は後述の真髄より好き。何かでも、こういう良いマイナー寄りの本、直ぐに絶版になりそうで嫌だなあ。
 
数学の真髄 論理・写像
 これは良い本です。数学科物理学科情報系みたいな大学入ってからもがっつり数学使う系のとこ志望の人、ほぼ全てにお薦めします。内容は数Aの集合と論理、そしてそれを使って数IIの図形と方程式を扱う本です。この分野、通常はオマケみたいにしか扱われませんが、実はちゃんと数学する為の共通言語的な分野です、高校数学でも、例えば図形と方程式やガチめの複素平面の問題(19九大理系5とか最近の東大のやばい系の問題とか)は、この知識がちゃんとしていないとまともな答案を書けないです。同じ内容を扱う本として、掌握2巻や上で紹介した2冊や他に長岡さんの本も有るのですが、取っ付き易さはこの本が断トツだと思います。思想も比較的薄くて、ここも万人受けし易いかと(特に古賀さんの本とか少々思想が強い。まあそこが良いとこなんだろうけど)。問題もそこそこ載っていますが、レヴェルはそこ迄、高くはないです(恐らく入門問題精講の直後とかでも大丈夫)。だけど、寧ろそこが好感度高くて、特に数学科志望の人は、下手に難しい問題に手を出すのも結構な事ですが、それと同時にこういう「ちゃんとした基礎問題」も是非じっくりとやってほしいですね。
 さて、内容を簡単に紹介します(以下、まあまあ専門用語を使うので、高校生は雰囲気だけ感じてくれれば)。先ず、数学の文章には、大きく「」みたいな変数を含まないもの(命題)と「」みたいな変数を含んでいてそいつに数字とかを代入すると命題になるもの(述語 or 命題関数)が在り、本書も(教科書や多くの本同様)先ずは命題の解説から入ります。ですが初っ端、命題の解説のところで集合の「ド・モルガンの法則」を持ち出しているんですよね。飽く迄「似ていますよね」くらいの感じなのですが、実際に集合のドモルガンに対応するのは命題ではなく述語のドモルガンであり、ここで持ち出すのは、少々、不適切な気がします。この様な「命題と述語をごっちゃに扱う」ってのは、高校数学の本にありがちな「(個人的に)良くないなあ」って思う典型的な記述であり、読み始めた直後は「なんだよいつもの糞本かよ」とか思ったのですが、ところがどっこい、寧ろこの本はこの「命題と述語の区別」に(解り易さを損なわない範囲で)最大限注意を払った、とても良いものでした。例えば、p(x)とq(x)を述語とした時「p(x)ならばq(x)」という文章は、文脈によって述語の場合と(全称)命題の場合が考えられるのですが、本書はその違いを強調した上で、矢印の形を変える事でこの2つを区別しています(論理学とかでも時々、この区別の仕方見る)。更に「この様な記号の使い分けは一般的なものではない」みたいな注意もちゃんと書かれていて、数学的にも誠実です。著者の青木さんって方、初めて聞いたのですが、この辺の書き方から察するに、結構ちゃんとした数学畑出身の方な気がします。更に幾つか内容の特徴を挙げると:
  1. 真理値と呼ばれる概念で論理を確りと扱っているのが良い(数学科の集合論の1番最初の内容。これ使わないと論理をちゃんと扱えない(気がする)。長岡も確か書いているけど、こっちの方がずっと易しく書けている気がする)。
  2. 真理集合(ある述語を真にする要素全体の集合)の文脈で、グラフの平行移動や拡大縮小をちゃんと扱っているのが良い(数Iの二次関数のグラフの平行移動の一般論。これで二次曲線とかも一網打尽)。
  3. 「全ての否定は否定の存在」(例えば「このクラスの学生は、全員マッチョ」の否定は「このクラスにはマッチョでない学生が存在する」)が強調されているのも良い。これ、まじで九大数学科の学生も過半数が解ってないんですよねえ。
  4. 章丸々使って式や集合の同値変形を簡単な問題形式で大量に扱っているのが素晴らしい。正に「理解して丸暗記」って感じ!
  5. 最大値の求め方って沢山在りますが、それを「身長が1番高い人を見付ける」という遊びを例に易しく纏め切っているのが良い。上記(ハ)のとこで言っていた「解法選択」の1番簡単な例です。
  6. 上記に関連して、軌跡領域の問題の導入を、先ずは最大値最小値の問題から入っているのが良い(これ等は``1次元か2次元か''という違い以外はほぼ同じ問題です)。ここは掌握2巻よりも初心者向けという意味では優れていると思います。
  7. 上記に関連して「軌跡領域と最大最小を同じものとして扱う」という文脈から「写像」(関数の一般化(人によっては区別しないけど))を導入しているのが良い。これは数学科の数学の1番基本的な概念の1つです。
って感じですかね。通過領域の解法(の1つ)に``逆像法''って用語を使うのは(恐らく)不適切なのですが(これは単に和集合の定義)、まあそんなに実害は無いし、まあ仕方無いですかねえ。
 っつー事で、改めてお薦めです。こういう内容をここ迄ハードルを下げて書いてくれるのは、中々に有り難い気がします。例えば、上記の古賀さんの本のとこで「高校生の頃の俺は読めなかったと思う」みたいな事を書きましたが、こっちならいけたと思います。
 但し、(上の2冊もそうだけど)この本は「数学の基本の部分を掘り下げる」って話を扱っているだけで、難関大のパズル的な問題の崩し方みたいな事はあんま書いていなので、入試数学の点数を取りたいのなら、(地頭が良い人以外は)上の掌握みたいな(ハ)の本が必要です。数物系志望じゃないなら、そっち優先なんじゃないかなあ。一方でまじの数学科志望の人とかは、こういう論理の話もそうですけど、個人的には「群」「位相空間」みたいな「集合に抽象的な構造が入っている」という対象に適性が有るか、ってのも入学前にチェックしてほしいんですよねえ(これに適性無くて脱落する高校数学自慢の数学科生、まじで多いんすよ)。位相空間はともかく、群くらいなら合同式とかと上手く絡めれば、入試数学にもちゃんと役立つ形で高校生に教えられる気がするんですよねえ(前にそういう講義ノート作ろうとした事有ったんですけど、飽きて止めちゃいました)。古賀さんとかこういう事情も解ってそうだし、何か作ってくれると嬉しいんですけどねえ。とまあ以上の意味で「非数学科向けとしては優先度落ちるけど、一方で数学科向けとしては(入学後の事も考えると)不十分」って感じで、何かどっち付かずな本(達)な気もしてきました(いや普通に内容は素晴らしいので、安心して使ってくれて良いんですけど)。
追記:
気合入った後輩が教えてくれたんですが、元ネタは東進の講座らしいっす:
数学の真髄-基本原理追究編-文理共通 PART1/PART2

理系用も在るみたいです:

数学の真髄-基本原理追究編-理系

親がお金出してくれる人は、こっちを検討しても良いかもですね。上の入門問題精講のとこに書いた「高校数学での``陰関数''の扱い」にちゃんと文句言っている人らしいので(「じゃあ本人は如何扱っているのか」は知らんけど)、数学的に信頼して良い人なのかも知れません。

(※)という事で結構褒めてましたが、以下を見逃していました:

https://x.com/Shirahoshi_Fuu/status/2021103169460371749

いや言いたい事は解るんだが、不器用過ぎだし解り難過ぎ。こういう初等的な部分の(間違ってはいないけど人には通じない)自己流理解を広めちゃうのって、俺みたいな2流以下の学部生だった奴あるあるで、ただ普通は院生とか続けていく内に矯正されていくものなのですけどねえ。うーん、解り難い以上の害は無い様な、混乱させ得る様な、微妙なラインですね。でもちょっとお薦め度は下がったかも。

 

・総合的研究 記述式答案の書き方

 題名の通り「答案の書き方」の本です。兎に角「数学の文章の型」とか「人に伝わる文章の書き方」みたいなものを凄くちゃんと書いてある本です。後者は数学力ってかもっと極根本的な知能(コミュニケイション能力とか)の問題だと思うんですけど、学部生の答案とか見てると、本当、低い人多いですよね(例えば、九大数学科だと8~9割の学生が該当しています)。入試の採点者も人間なんで、幾ら自分では解けているつもりでも、採点者に伝わらないと、どんどん点数引かれていきます。文章の書き方について一度でも注意された経験が有る人は、是非、本屋で目を通してみてください。ただまあ、やっぱ先ずは定石とか発想法を身に付けないとそもそも書く文章が出てこないんで、その後ですかねえ。或る程度知能が高ければ、定石とかのお勉強と同時に身に付く能力な気がしますけど、さっきも言った通り、例えば九大数学科なら9割近くはアウトです(この数字には経験則に基づくそれなりに定量的な根拠が有る)。

 後は「定義の正確な理解」みたいな、根本的な数学力の向上にも寄与すると思います。ただまあ、その定義の理解に関しては、著者も少々筋が悪い部分が有ります。例えば「軌跡を決定するための議論」のとこの最初の記述とか、結構ぎこちないですよね。これは矢張り「集合の一致の定義」を前面に押し出した説明をすべきかと思います(好みの問題かなあ)。一寸厳し目の事を書きましたが、一般的な入試数学関係者と比べたら、遥かに数学出来る人達だと思います。
 ところでこの本、或る後輩に「目を通してくれ」っつわれて読んだんですけど、そいつまじでちゃんとした数学の文章を書く奴なんで(1~2割の方の人。その世代の九大数理で多分一番確りしている)、若しそいつがこの本のお陰でああいう文章を書ける様になったってんなら、まじで効果有るんだと思います。
(※)良い本だったですが、絶版ですねえ。
 
総合的研究 問題文の読み取り方
 ユーチューブで有名な元京大数学科院生の古賀さんの本です。先ず素晴らしい力作である事は間違い無いと思うのですが、かなり癖が強く、読者を選ぶ本だと思います。
 この本は基本的には「数学の文章を1行1行意味を確りと理解しながら読み取る為の本」です。つまり、(地方旧帝や早慶の数学科の学生ですら大半が出来ていないであろう)「数学科的な文章読解法」を身に付ける為の本です。ですが俺にはこれが必ずしも全ての理系学生に必要な能力だとは思えんのです。と言うのも、殆どの理系生にとって(数学を含む)理系科目は、本人が尤もらしい説明や直観的なイメージによって納得し、実際にその知識を使いこなせさえすれば充分だと思うからです。この本が提示する方法は基本的にそういう「これ迄の解り易さ」を一旦排除し、一言一句の意味を固く理解していく事を目標にしています。なので下手をすれば「折角、個々人が持っていた数学に対する(厳密ではないかもだけど、かと言って普通に理工系で数学する分には決して悪くはない)イメージみたいなものがぶち壊され、数学が如何いう科目なのか却って解らなくなってしまう」みたいな事が起こり得る気がします。つまりこの本は「読者の頭の使い方に積極的に介入しようとする系の本」です。合う人には合うだろうけど、結構、劇物系な気がします。
 一方で、数学科の学生はこういう文章の読み方も出来る様になんなきゃいけない気がするんですけど、今度は数学者を目指す様な人ならこの本で書かれている様な事は全部、数学を勉強する過程で自然に身に付けちゃうと思うんですよね(※)。んで、こういうものは自分の言葉で付けられるならそれに越した事は無い気がするのです。っつー事で対象読者は必然的に「数学者を目指す程ではないけど、数物系の学科に行ってそれなりに数学頑張りたいかな」みたいな学生に限られる気がしてきます。高校数学の先生目指している人なんかにはとても良いと思います。恐らく教員生活の中で自分よりポテンシャルが上の数学科志望の学生の相手をしなきゃいけない時なんかも有る筈なので、そういう時の為にですかねえ(繰り返しになりますが、全ての理系生を対象とする指導方法では決してないと思います)。
 いや本当に力作だとは思います。昔、俺も、こういう数学科的な基礎をかっちり書いたpdfを作りたいと思った事が有ります(仮に当時の俺が実行したとしても、この本よりもずっとクオリティ低かったと思うけど)。例え話の挟み方とかにも凄く共感を覚えます。ただ、上記の通り手放しに誰にでも薦める本ではないです(刺さる人には本当に刺さると思います)。後は矢張り全体的に細かく書き過ぎな感じもします。勿論、ちゃんと数学を伝えようとすると(少なくとも俺も)こうして細かく書く事しか思い付かないのですが、一方で例えば高校生の頃の俺が読めたかと言うと、まあしんどかったんじゃないかなあ、って気もします。気持ちとしては「英文法を勉強するのに、いきなりジーニアス英文法を1から読み始める」みたいなのに近い気がしますかねえ。
(※)いやこう書いたけどやっぱ数学者になりたいですみたいな人にも結構薦めて良い本な気がしてきました。いやこう書いた理由は勿論「俺は自力で身に付けて、んで俺は数学者志望の人間の中で恐らく知能は最低レヴェルで、だから俺が出来る事は他の数学者志望も出来るだろうから」なのですが、最近、特に学部レヴェルの内容に関しては、この考えは必ずしも正しくは無いんじゃないかという説も俺の中で在ります。後は、自称数学者志望さんで、知能が結構トンデモさんに近い人の話とかも聞くんで、そういう人もやっぱり先ずは数学のマナーを(自力では多分身に付かないんで)こういう本に頼るべきな気がします。いやすいません、俺自身が数学者としては4流も良いとこなんで、こういう「数学者志望一般論」みたいなのは、言えないし言う資格も無いです。
(※)良い本だったですが、絶版ですねえ。

 

・至極の有名問題240

 感想頼まれた本です。俺も時々お世話になっている気がするサイトの管理人が著者の様です。解答も詳しくやれば確実に力が付くとは思いますが、個人的には一寸お薦めしたくない様な気がする本です。以下、理由をば。

 この本が言う「有名問題」ってのは、大学入試でよく出る、俺が「高度なパターン問題」って言っているものよりは、どちらかと言うと(ポリアの壺とかアステロイドみたいな)「各分野の小話として有名な知識問題」みたいな感じです。勿論、知っていて害が在るものではなく、それこそ俺も受験生の頃にこういうの好きで調べては自作ノートに纏めたりしていました。しかしながら俺が一寸嫌に思うのは、こういう本って「大学に入るとこういう数学を勉強するのかあ」みたいな誤解を生みかねないという懸念が有るからです。何か上手く言語化出来ないのですが、大学(てか理学部数学科?)で習う数学は、こういう「計算や論述のテクニックの巧みさ」みたいなものではなく、何かもっと「捉え方の抽象化」とか「気に仕方の厳密化」みたいな感じなんですよね。んで恐らくこういう勘違いからくる``大学数学''への期待を抱いて入学してきた子達が、早々にイプシロンデルタや線型空間といった概念の前に討ち死にしていくのです。大学以降の数学を見据えるって意味では、掌握や直ぐ上で紹介した古賀さんや青木さんの本とかの方がずっと役に立つ気がします。っつー事で、こういう「面白数学小話」みたいなのって、毎年、全国の理学部数学科で生まれる無数の悲劇の責任の一端である気がしてならないので、俺的にあんまり好きでないです。

 ただまあ以上は別に大学数学とか知らねえみたいな層には一切関係無い気がするので、そういう方向けのお話をしておくと、最初にも言った通り大学入試向けの問題集としては力は付くだろうし悪くないとは思うのですが、それでも矢張り先ずは上の(ニ)のとこで紹介している本で、受験数学的な意味での「高度なパターン問題」を押さえる事が優先だと思いますねえ。

  • るる

    医学部攻略の数学はどうですか?
    医学部だけでなく東大生で使ってた人もいたので気になります。

  • おかざき (id:okazar1992)

    るるさん
    >医学部攻略の数学はどうですか?
    名前を知っている本なんで前に立ち読みした筈なんですが、記録してないし記憶にも無いんで、その程度の本だったんだと思います。
    如何してもってんなら次本屋行く時に見てきますが、如何しますか?

  • 東工大志望

    東工大志望の高3生です。いつも的を射た記事を拝見し大変参考にさせていただいております。ありがとうございます。さて参考書についてご相談があります。現在完全マスターが大体クリアできつつある状況です。1A2Bはこの後リアル入試を考えていますが、数学Ⅲについてcanpassと学研の部分点をねらえで迷っています。いいアドバイスありましたらお願いいたします。

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