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仮眠室/Novel by 夜船

仮眠室

2,327 character(s)4 mins

特に何でもない日常だっただろう二人の日常の一コマ(付き合ってないけど大人の関係ではあるって言う…)

多分、凶一郎が何かやるたびに灰には言わずとも知られていたんだろうなと思ったら書いてました

灰は凶一郎にとって、唯一隠し事が出来ない相手だったのかなって――
まあ、そう言う感じです(私的妄想産物)

かなり走り書きのメモみたいな感じですけど、後で手直しします(仕事があるんだ。仕事が…)

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「ねえ、凶一郎。この新しい傷跡はどうしたの?」
 灰が半ば住んでいるスパイ協会会長室に隣接している仮眠室のベッドの上で、凶一郎のジャケットを半分脱がせて緩い拘束にした灰が――スラックスから引き抜いたシャツの裾に手を入れた瞬間、感じた違和感に体を離して問うたのである。
「六美に貰った」
「六美ちゃん? 何したんだよ?
いくら六美ちゃんでも大好きなお兄ちゃんを刺したりしないだろ」
「……………太陽と結婚すると言い出したから、試しただけだ」
 しないのか? と言った顔で問い返した凶一郎に――
「試したって……………。何をしたんだよ。まだ高校生だろ? 同業者でもないのに無茶をしたんじゃないだろうね」
 呆れ顔の灰は凶一郎の乱した着衣を元に戻しながら、肩で大きく息を吐いた。
「傷口は塞がってるけど、この傷――まだ新しいだろ」
「三日経っている。傷跡も残ってないのに、まさか気づかれるとは思わなかったぞ」
 自傷と変わらない傷である。ダメージが残るような刺され方をしたわけでもない。実際、程なく塞がって傷跡が残るようなこともなく、一日も経てば完治していた。ただ鼻のきく灰には気づかれるかもしれない、と――二日開けての対面だった。
「――触ればわかるよ。凶一郎の体が特別性なのは知っているし――って、血の匂いがしなくなったから会いにきたのか」
「バレてしまったがな」
 灰が乱した服を元通りに着せてしまったので、凶一郎は身を起こした。
「凶一郎が不死身だっていうのは信じてないからね。凶一郎が普通じゃないのはよくわかってるけど、内臓に刃物が入れば痛いだろう?」
 よく言い聞かせるように、全く的外れでもないことを凶一郎に言う灰に――
「六美が俺にすることに不快感などありはしないぞ」
 凶一郎は弁解するように、けれど視線は落としながら――そんなふうに言ったのだ。
「僕を相手に、そう言うのはもういいって。君は少し極端すぎるし、普通じゃないと思わせている方が動きやすいんだろうけど、やりすぎだ。太陽って子は普通の家庭の子供なんだろ? 夜桜の掟だとか、スパイ家業とか、ついていけなくなったらどうするのさ」
 かなり無茶苦茶だった過去の自分の修行を振り返りながら――加減がわからない凶一郎を諭す灰だ。
 ベッドの上で膝を突き合わせて向き合う二人は過去を共有するなかで、普通や加減を知らない自覚のある凶一郎は――それでもこれだけは譲ってやれないのだと、真っ直ぐに灰を見つめながら――続く言葉を声にしたのだ。
「覚悟のない奴に六美はやれない。俺としては――六美の前で無様な醜態を晒し逃げ出してくれた方が清々したんだが……………」
 目の前の親友がそうであったように、夜桜の血を持たない一般人に夜桜を知る事が――どれほどの意味となるのだろうか。六美が選んだ太陽という少年が予想を超えて覚悟を見せたからこそ凶一郎は、追い詰めるのではなく気持ちを汲み――一先ずは受け入れたのだ。
「嬉しそうにしないでほしいな。でもまあ、よかったじゃないか。見込みがありそうで。六美ちゃんの可愛い初恋の相手だもんね。お兄ちゃんとしては成就させてあげたいよね」
 どうせ憎まれ役に徹するつもりの――案外と演技派な凶一郎をよく知る灰は、凶一郎の見えにくい優しさもよく知っていた。
 艶めいた空気の霧散した仮眠室で向き合って、にこにこしている灰に
「うるさいぞ。しないなら――帰っていいか? 人肌が恋しいような気がしたから来てみたのだがな」
 今日は二人で朝まで仲良く過ごしたかった凶一郎は、誘う言葉を用意もできずベッドを降りることにした。
「帰るの?」
「なんだ? するのか? 傷は既に完治している。痛みも違和感も全くないから乱暴にされたところで問題などない」
 灰の優しい手で癒されたくてきたのだ。
「――僕がいつ乱暴に触れたって?」
「されたことはないな。してくれて構わんと言うのに」
 本当は、子離(六美)離れするのが寂しかったし、六美を取られてしまうようで許したくもなかった。それでも――
 やっと好きな相手に好きだと言うことが出来たのだろう六美を思えば、出来るだけのことをしてやりたいのだと、そう思ったのも――凶一郎だった。
「僕は愛してるから大切にしたいって思うし、大切な相手は可愛がりたいって思うんだよ。凶一郎にとって僕がどんな相手でもいいけど、僕はずっと凶一郎を親友だって思っていたいし、凶一郎が恋人になってくれたらいいって願っているんだよ」
 灰のストレートな告白を聞きながら――
 胸の奥で疼いていた痛みが少しずつ優しく凪いでいくことに、凶一郎は息を吐いた。
「そうか――……………」
「なに? 嬉しそうな顔。泊まっていく予定で家を出てきたんだろ? 凶一郎は僕の抱き枕になっててよ。凶一郎の鼓動を聞いていると頭痛が消えるんだ。急いで帰らないといけないなら引き留めないけど……………」
 ベッドを離れようとした凶一郎の手を引いた。
 同じ目線で言葉のやり取りをすることは、相手を思うことが重要なのだ。

 凶一郎が準備をしていたように、灰も凶一郎とする為には薬の効果を一部打ち消す薬を飲んで待っているのだ。
 その効果が切れるまでは不調を抱えることになる。
 凶一郎は灰の両目に手をやって蓋をすると――そのまま抱き寄せて、ゆっくりと二人でベッドに転がった。
「別に、呼び戻すような連絡などない。頭がいなむなら横になれ。俺が一晩中撫でていてやる」
「ははは……………君って、ホントに――そう言うところ、優しいよね」
「……………、灰が……………俺をそうさせている、それだけだな」

Comments

  • 이믕_emuing
    May 29th
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