農水省の「秘策」
突っ込みどころ満載の食糧法改正案だが、自民党だけでなく、共産党を含む野党各党も農業票目当てから中小零細農家の保護では足並みを揃えており、今国会での成立は確実な情勢だ。
与党の日本維新の会は、主要政党の中で唯一、「コメの生産増と輸出拡大」を唱えてきたが、大阪都構想の実現や衆院定数削減などに比べて政策としてのプライオリティは格段に低い。高市内閣と事を構えてまで減反見直しを求める気配はうかがえない。
鈴木農相も農林族に負けじと、既得権益の擁護に余念がない様子だ。価格高騰の影響で消費者のコメ離れが進み、25年産米は一転して在庫がだぶついている。前年より5割近く高い価格で農家から買い付けたJA全農(全国農業協同組合連合会)は小売価格の暴落で損失が膨らむことを懸念している。
そこで鈴木農水省は、水面下でJAを救済するための秘策を検討しているとされる。念頭にあるのは、令和のコメ騒動時に放出した政府備蓄米計59万トンの買い戻しである。
思惑通りに実行できれば「コメの需給が引き締まり値崩れ防止に役立つほか、JAが高値掴みした25年産米在庫の損失の一部を国が肩代わりできると算段している」(与党筋)ようだ。
ただ、国が備蓄米を放出した時の価格は玄米60キロ当たり2万円台。それをはるかに上回る現在の相対取引価格(3万円超)で政府が買い戻せば、国民負担は大きく、「JAに対する露骨な利益誘導と批判されかねない」(農水省幹部)。
業界筋は「世論の批判を交わすため、小規模な買い戻しを繰り返すのではないか」と指摘するが、JAや農家の利益しか考えない農水省の姿勢には呆れるばかりだ。
こうした減反政策の維持に加えて、農林族とJAはさらなる予算拡大と特権維持を目論んでいる。後編記事『なぜ多くの農家は免税事業者を選ぶのか…その理由がわかった!消費税分が「益税」になる「農協特例」という「特権」』に続く。