九四
九四。棟隆。吉。有它吝。
○九四。棟(むなぎ)隆(たか)し。吉(きつ)。它(た)有(あ)れば吝(りん)。
九四は陽爻陰位で剛に過ぎることなく、陰爻陽位の初六に応じて調和している。撓(たわ)む棟(むなぎ)を隆起(りゅうき)させ家屋倒壊の恐れはない。安心するがよい。
二心を抱いて初六を疑い、剛に偏(かたよ)れば恥辱(ちじょく)を受ける。
象曰、棟隆之吉、不橈乎下也。
○棟(むなぎ)隆(たか)きの吉(きつ)なるは、下(した)に橈(たわ)まざるなり。
家屋倒壊の恐れはない。安心するがよい。初六が下で支えてくれるのである。
(占)英邁にして仁德のある人物。抜擢されて盛運を招く。小人に親しむことなく、言行一致に務め、大義を守って、天下の公益を図るべきである。大きな事を実現する力がある。
小利に目が眩(くら)めば、無残な結果となって、名前を汚すことになる。慎まなければならない。
○耐え難い艱難辛苦を乗り越えれば、何をやっても成就する。
(占例)甲乙という二つの同業会社があって、事業を競い合っていた。ある日、甲社の社長がやって来て、次のように言った。
「市場規模を考えると、この市場において、甲乙両者が共存することは難しい。どちらかが倒産することになるであろう。そこで、事前にどちらが生き残るかを知っておき、覚悟を決めておきたいので、占ってほしい」と。
そこで、占筮したところ、大過の四爻を得たのである。
易斷は次のような判断であった。
大過の卦は、陽爻が陰爻を圧倒していて、正に甲乙両者が争っている状況と同じである。今、甲乙両者が争っていることを大過の卦に例えると、三爻と四爻が争っているのである。
三爻に該当する乙社は陽爻陽位ゆえ、社長に資産と財力があるけれども、応ずる相手が上爻だから、常に社長の助けを受けるばかりで、社長の力とはならない。
四爻に該当する甲社は、陽爻陰位だから、資産と財力は甲社には及ばないが、応ずる相手が初爻ゆえ、株主として甲社を支援するので、乙社との戦いに勝って、隆盛となる。
このことを「棟(むなぎ)隆(たか)し。吉(きつ)」と言う。「它(た)有(あ)れば吝(りん)」とは、事業を営むに中っては、初志を貫徹しなければならないということである。
すなわち、志を貫いてこそ事業は成就するのである。
その後、果たして甲は生き残って乙は倒産したのである。