任天堂株主総会レポート 2026

任天堂株主総会への参加は今回で12回目となる。もはやライフワークだ。
12回目ともなると、なんかいい感じの冒頭文を書くのも面倒になってくる。

株主総会は2026年6月26日。その前日25日はなんの日だろうか?
そう、Switch2ソフト『スターフォックス』の発売日だ。
ソフト同時発売のスリッピーぬいぐるみをニンテンドーフクオカで購入した。

彼を今回の株主総会のお供として連れて行くことにした。
とてもかわいい。

悪天候の中での開催

スリッピーが台風を呼んだのか、天候は荒れに荒れた。
このカエルやろう。

開場時間よりだいぶ前に余裕を持って現地に到着したが、明らかに普段よりも行列が短い。
悪天候で株主たちの足も遠のいたのだろう。ワールドカップの観戦を優先した人もいるかも知れない。

自分が並んだのとちょうど同じタイミングで毎年会っている株主総会友達が来たので開会までの間、有価証券報告書などを読んで任天堂の置かれている状況を確認し合った。

株価が低迷した時期はあったが、この10年はほぼ右肩上がりを続けており、昨年の株主総会ではその時点での上場来最高値を更新していた。
しかし、今年は初めて昨年を大幅に下回りほぼ半値になっている。
この状況下では、今日の天気のように株主総会も荒れるかもしれないですね、と話していた。
先日のSwitch2値上げと、その原因であるメモリの価格高騰も突かれると痛い部分だという話もしていた。

受付前に手荷物検査が行われているが、今年は検査スペースが広くなりスムーズに入場することができた。

開会から質疑応答まで

時間通り、10時に古川社長の挨拶から株主総会は始まった。
昨年は壇上にいた社外取締役のクリス・メレダンドリ氏(映画会社イルミネーションのCEO)は、欠席されていた。

事業報告後に株主との質疑応答が始まる。

毎年お決まりの注意書きだが聞き取りミスやメモの漏れなどで細かい間違いが含まれる可能性があることはご容赦頂きたい。また、正式な議事録は後日任天堂のサイト内に掲載されるのでそちらを参考にしてほしい。
今回は19名の指名があった。

いくつか主要な質問を選んで要点を紹介する。

人材育成と教育について

質問:これから新しい技術開発棟を建築されるが、社員数もかなり増えている。
新たに入社された方に宮本さんが指導されていたり、ニンテンドーミュージアムも研修に使っていると聞く。
具体的には他にどういう取り組みをしているか。今後どのような強化をするか聞きたい。

古川:人材育成については、仕事の上の経験が大事と考えている。個人の技術向上なども重要だが、それ以上に先輩や上司、チームと協働することが重要だという価値観を持っている。
任天堂ならではのユニークな娯楽を実現するための独創・柔軟・誠実の任天堂DNAを重視している。
日々の仕事の中で任天堂DNAを感じながら経験を積むことが大事だと思っている。
開発力強化のために人員が増加しているが、任天堂DNAが確実に引き継がれるように様々な働きかけをしていて、指摘の通り宮本にも指導してもらっている。

年々社員数が増えていく中で、彼らがちゃんと任天堂の理念に従った働きをしないと段々と任天堂が変わっていってしまう。
きちんと任天堂が何を目指している会社なのかを示したうえで育てていくのは重要なことだ。
この取り組みのお陰で、任天堂が”ブレない”のだろう。

新規顧客獲得策

質問:IPのファンの拡大の観点から、まだゲームに触れられない幼い子どもや、その親に対してのアプローチについて聞きたい。
親がゲームを遊んでいない家庭では子どもたちが任天堂IPに触れる機会が少ない。
ゲームのプロモーション以外の映像がYoutubeなどで配信されれば、IPに触れる機会が生まれると考えるがそのような施策はあるか。

古川:大きな課題と考えている。昨年8月からマイマリオという新しい取り組みをしている。ゲームを遊ぶ前の世代のお子様にもIPに触れられる機会となっている。
また、映像に関しては、ニンテンドーピクチャーズがピクミンの映像を作っている。
IP拡大についての取り組みを紹介する映像をご覧ください。

映像:マリオギャラクシームービーの出演キャストたちのコメント。
ユニバーサルスタジオジャパンのグリーティングの様子。
マリオ40周年×日本プロ野球。
ニンテンドーミュージアムのライトアップ
マリオ40周年京都マラソン2026

後の質問でも出てくるが、任天堂のIPを拡大するための施策はかなり重要視しているようで、最近は他社コラボイベントが非常に多い。
福岡でもニンテンドーフクオカが入居する博多駅ビル全体で長期にわたりマリオのデコレーションが施されている。
マリオなどのキャラに日常的に触れる機会が、以前と比べて格段に多くなっていると感じている。

ちなみに、宮本さんは笑顔でこの映像を見ていました。

株価対策と株主優待

質問:最近の株価についてどのように考えているか。株価対策として株主優待は考えていないのか?

古川:昨年8月に上場来最高値をつけたあと、半値以下になっていて、心配をおかけしていると認識している。
現在の株価は、様々な外部的な要因もあるが、Switch2の価格改定を行ったことに対して市場の皆様から厳しい目が向けられていると考えている。
経営陣としては、Switch2プラットフォームを普及させて、ファンの拡大と長期的な関係の構築を通して株価に反映させたい。

優待については、法人株主などさまざまな株主に還元するには平等性に問題がある。
ニンテンドーミュージアムの入場抽選やSwitch2の抽選販売など優先の要望が株主からあると認識している。
適切な還元方法は研究している。

やはり、株価の低迷については指摘があった。
ただ、厳しい指摘ではなくファン目線で不安を感じているというようなニュアンスだった。
古川社長の回答としても、今まで通りの理念で経営を続けて結果を出したいというふわっとした回答で具体性に欠いており、積極的に株価対策をするようには思えない回答だった。

ただ、株主優待に対しては以前から何度も質問に上がっている内容で、毎回「不公平だからやらないよ」という突き放すような回答だったのに対し、「各種抽選に対する優先」という非常に具体的な要望があることをわざわざ提示してきたので、一歩前進と言えるかもしれない。

リズム天国とアクセシビリティ

質問:アクセシビリティとリズム天国について。
先日リズム天国の体験版が提供されたが、ゲームの状況やUIの操作方法まで読み上げてくれる機能があった。
視覚障害をお持ちの方も感動レベルだと表現されていた。
これはアクセシビリティへの取り組みの結果だと思う。
・リズム天国の開発においてアクセシビリティをどういう位置づけだったか
・どのように開発体制に組み入れたのか
・そこで得られた知見をどのように他のタイトルに反映させるか
教えてほしい。

古川:Switch2では本体機能として様々なサポートをする機能を盛り込み、アクセシビリティの対応をしている。個々の機能については公式サイトをご覧いただきたい。
リズム天国については高橋から。

高橋:リズム天国は過去作でも視覚障害者にも楽しんでいただいていた。
それを踏まえて、今作は開発中からより楽しんでもらえるように取り組んだ。
アクセシビリティに限った話ではなく、世界のいろんな方々に楽しんでもらいたいというゲーム開発に対する取り組みの一つと捉えている。

「アクセシビリティ対応はやらないといけないからやっている」ではなく、「リズム天国は視覚障害者も楽しんでいるから、より楽しめるようにする」という視点で対応されたようだ。
そうなると、「もともと視覚障害者が楽しめない内容のゲームであれば取り組みの優先度は低くなる」と解釈することもできる。

それは、ここ数年株主総会のたびにアクセシビリティについて言及してきた自分としてはある意味残念だなと少し思った。

だが、例えば「絵心教室」のように視覚情報に強く依存したゲームに視覚障害サポート機能を充実させたり、リズム天国を聴覚障害者向けに作り変えたりしても労力の割に実利は少ないので「より効果のあるところからアクセシビリティを取り組んでいく」という現実路線の対応と言えるかもしれない。

あらゆるソフトであらゆる障害に対応するある意味理想論のような方法とは異なるアプローチではあるが、具体性を持って実際に楽しんでいるユーザをより喜ばせるやり方は、現実的で、効果的で、実際に当事者に喜ばれるものだった。これが任天堂が導き出した答えなのだろう。自分は現実が見えていなかったと反省している。

IP戦略と宮本さんの考え

質問:古川社長と宮本さんに尋ねたい。
経営方針として任天堂IPに触れる人口拡大を掲げている。
宮本さんにはこれまでの振り返りを、古川社長にはこれからどう進んでいくのかを聞きたい。

古川:基本戦略として任天堂IPに触れる人口の拡大を掲げている。
これはSwitch2の世代でも変わらない。
一方で、この10年での環境変化があった。
様々な安価な娯楽があふれる時代になった。
我々独自のユニークで、安心して家族で遊べる娯楽を提供しないと選んでもらえない。
これまでの延長線上で続けていきたい。

宮本:雨の中ありがとうございます。
すごい大きな質問をされた。
岩田と15年以上前から、これの任天堂をどうしていこうかと話をしていた。
自分は「モバイル向けソフトは出すべきではない、キャラクタはゲームのために作ったものだから、他で使うと自由にキャラが使えなくなるから嫌だ」と言った。

Wiiで遊んでくれる人は、Wiiを売った数次第でそれ以上には広がらない。
モバイル端末はたくさんあるし、映画で任天堂のハードでは届かないところまで届いた。

任天堂のゲームがない国に売るにはどうしたらいいか?「安いので買ってください」「こんな機能があるから買ってください」
そうではなくて、皆さんもそうだと思うが「このゲームが遊べるから」「マリオが遊べるから」「ゼルダが遊べるから」それが一番ゲーム機を買ってもらえる理由。
ゲームが届いてない地域にも任天堂のキャラクタを知ってもらうのが、ゲームの売上のためにも重要だと岩田と話し合った。
それで方針を変えた。
ゲーム機ビジネスが任天堂の売上をほとんどを占めているが、IPが売上として機能すれば、事業として成り立つと考えた。

今日は、(事業報告で)売上などのいろんな数字が出てきた。
IP関連は売上と言ってますが、あれはほぼ利益。
それ以外は利益率30%ぐらい。
なので、事業として育ってきている。

……まだ喋っていいですか?(会場笑い)
宣伝したい。ピクミンの話。
ナイアンテックとやっているピクミンブルームがかなり世界中に展開できている。
特にアジアではけっこうなことになってまして、韓国では日本並みのブームになった。
去年は台湾でもブームになった。10人に1人がダウンロードしたと言われている。
いまは世界中で種をまいている状態。
ピクミンイベントをすると、子供からおじさんまでピクミンの帽子を被ってくれる。
映像もいろいろと手掛けていますし、今後もIPを拡大していけたと考えている。
(会場拍手)

宮本さんめっちゃ喋る。

いま、映像作品の制作で積極的に世界中に飛び回っている宮本さんからすると信じられないが、任天堂のIP推進戦略に対して反対の立場だったとのことだった。
IPライセンス供与は監修コストはかかるだろうが、ほぼ利益になるようだ。そりゃ強い。

宮本さんは毎年のようにピクミンの話をしているような気がするが、海外で大ヒットしているのは正直知らなかった。そうなんだ。

手塚さんの退任挨拶

質問:手塚卓志さんが本日退任される。
なぜ退任されるのか。
よろしければ一言いただければ。

手塚:この度、任期満了で退任する。
42年間をふりかえってみて「楽しい仕事だったな」と感じた。
最初は開発環境がない中で、自分たちで遊びを手作りしていた。
いまでは大規模になって、多くの人で知恵を集めて作っていく楽しさがある。
3Dや立体視、モーションキャプチャーなどの新しい技術があって飽きなくて楽しかった。

任天堂での仕事は、世の中の人達が楽しんでくれる商品を開発して届けていくもの。
それを会社全体で考えて柔軟に作っていくもの。
私は、ほんとうにこの会社に勤めて良かったと思う。

今後も、制作プロデューサとして任天堂に関わっていく。
挨拶させて頂く機会をもうけていただきありがとうございます。
(今回の総会で最大拍手)

完全に質問じゃなくてファンサービス目的。
こういうのは本当は良くないのだけど、手塚さんの最後の挨拶を引き出せたので正直ありがたい。

役員としては任期満了ではあるものの、任天堂の仕事は続けていくとのことで安心できた。
何度も何度も任天堂のゲームのエンドクレジットでお名前を見かけた手塚さんが、任天堂の仕事は楽しかった、この会社に勤めて良かったと言ってくれたことが本当に嬉しい。

ありがとうございました。これからも任天堂を支えてください。

半導体とメモリの高騰

質問:半導体の不足、メモリの高騰が発生している。
Switch2の値上げとして反映された。
今後、メモリの価格上昇が止まらないと予想されるが、どのように対策を取られるか。

古川:取引先と長期的な視点で協議を続けている。
生産数に関しては、十分確保できているが不確実性があり注視している。
価格面に関しては、指摘の通り高騰している。
前期は影響が少なかったが、当期は影響が出ている。来期以降も影響が出る。
宮本からも話があったが、価格が上がってもソフトが欲しいからハードを買っていただくという状態を続けていきたい。

いまの状況がヤバいことは認識しているけどどうしようもない部分だし、ソフトで魅了を訴えるしかないよねというふわっとした回答。
まあ、しょうがないかなというところではあるが、そのうち高騰が解消して一気に好転する可能性も当然あるわけで、なんとも言えないところではある。

質疑応答まとめ

そんなこんなで株主総会終了。
開会前に懸念していた株価下落とメモリ高騰は当然のように質疑応答の中で出てきた。
どちらもふわっとした回答で、具体性に乏しいものだったが、総会が荒れるようなことはなかった。

まあ、具体的にこういう事を考えてます!みたいなことをサプライズ発表するような場でもないので予想通りではある。
来年は株価持ち直しているといいな。

楽しい京都観光

株主総会が終わると、毎年恒例の株主総会友達との食事会が行われる。
あの質問は良かったね、あれはまずかったねと話し合う。
全体としては「今年の株主総会は良かったね」というのが総意であった。

食事会のあと、次の予定まで時間があったのでニンテンドーキョウトに行った。
そこで事件が起きる。

ニンテンドーキョウト店員「あの、あれっくすさんですよね」
私「あ、はい」

まあ、名前付きのキーホルダーをカバンにつけて、わかりやすく全身任天堂コーデで株主総会直後に店内うろついてたら声かけてくださいと言ってるようなもんだ。

昨日スリッピーのぬいぐるみを購入して写真をTwitterに掲載していたのを把握されていて、声をかけたとのこと。スリッピーのせいじゃん。このカエルやろう。

しばらく談笑したあと、22,000円のニンテンドーキョウト限定の帆布かばんを勧められ「これ本当に良いもので」「いやー、ほしいんだけど値段が……」「ここでしか売ってませんよ」と話が弾み、レジに向かうのであった。

いや、ほんとに良いものだったので満足してます。ほんとです。
おすすめいただき、ありがとうございます。

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