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閑話⑤ 【1/31更新】/Novel by 00/ついった内活動中

閑話⑤ 【1/31更新】

94,586 character(s)3 hrs 9 mins

【6/9②更新】【11/2③更新】【1/31④~⑦更新】篤寛現代俳優パロシリーズの番外編 思いついたおまけ話をここに投下していくことになると思います ①ゆうたくんの宿儺チャレンジ中になんやかんやあって五+乙+寛がホストに挑戦することになった話 ②七と寛がBLドラマで共演することになった話 ③②のしばらく後に篤寛、七、猪の飲み会で迅を呼んだ話 ④羂索監督のクソヤバい映画を撮ることになった話 ⑤虎杖家の長兄と次兄が末っ子のストーカーする話 ⑥五+乙+寛が別のホスクラで大暴れする話 ⑦篤寛のほのぼのライフ   ※④以降は『BROKEN TETRAGON』後に書いた話なのでそちらを先に読んだ方が解像度は上がるかもしれません。俳優パロネタはこれで以上になります。多分。相変わらずキャラ崩壊クソギャグてんこ盛りなので何でも許せる方向け(特に⑥)

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宿儺チャレンジに挑む乙骨憂太の主演映画作品『純愛』の主題歌を九十九由基に依頼すると何故か乙骨五条日車の三人が疑似ホストクラブで九十九をもてなし満足させたらOKというイカレた条件を持ち出されてしまった為に彼らはハリウッドから日本へと一時帰国し現役ホストからの指導を得る目的で歌舞伎町内トップのホストクラブに足を運んでいた。
「どうもこんにちは、私が『エンジェル』オーナーのショウです。今日はよろしくお願いします。で、五条さんは?」
「すいません……なんか、気付いたらどっか行っちゃってて……『用事片付けてからそっち行くね』ってメールは来てたんですけど……」
「そちらも業務で忙しいだろうにすまないな、今日はよろしく頼む」
「いえいえ、芸能界の大スターにお会いできて光栄です。こちらこそよろしくお願いします」
美しく整った容貌に完璧な笑顔を浮かべながら、そわそわと落ち着かない様子の青年と無表情な中年という不思議な組み合わせを目の当たりにしていた。
現在午後三時。店内では新人ホストやボーイが開店準備を行っている。そして奥の会議室にてショウが乙骨と日車の二人にホストクラブの基礎知識を教えていた。
「お二人ともホストクラブは初めてなんですよね?」
「はい、だからこういうお店のことも全然分からなくて……」
「ははは。そう気負わないで下さい。ホストはお酒の席でお客様をもてなす場です、ホスト自身も楽しまないと。大丈夫ですから、もっと肩の力を抜いて下さい」
そう告げながらショウはテーブル上に設置された果物バケットから林檎とナイフを拾い上げる。
「ホストの役割は接待のみに留まりません。指名ホストのサポート全般を行います。トークの盛り上げ、配膳、テーブル上の整理、店内掃除など多岐に渡ります。それら全てを一晩で習得するのは不可能でしょうから、今日はホストクラブの雰囲気を学んで下さい」
手慣れた手つきでナイフを操り、林檎の皮を綺麗な螺旋状にカットし、果実と含めそれ自体が一つの芸術作品であるかのように、皿の上に美しく盛りつけた。
「私ほど経歴が長いとこのような特技も身に付きますよ。どうです、楽しそうでしょう?」
シャリシャリシャリシャリ。
「おお、流石早いな乙骨。やはりこの種の模倣は君の方が優れているな」
「まぁこれくらいなら別に……」
ショウの目の前で乙骨と日車が全く同じ様に林檎の皮を剝いていて、会話が終了するのとほぼ同じタイミングで乙骨作の林檎が同じ皿に置かれてしまった。間も無く、ほぼ同一の林檎が三個並べられるという光景が完成し、ショウはしばし無言で見下ろしていた。
「……はっはっは、素晴らしいですね。さすが世界的名俳優……」
自分で言いながら果たしてこれは俳優的なスキルだと一括りにしていいのか? と疑問を抱きつつ胸ポケットから煙草を取り出した、その時。ジャストのタイミングでライターの火を差し出された。
「…………」
「ん? どうした、こうするものなんだろう」
「あ、そっかー。お客さんが煙草吸う時も気を遣わないといけないですね。日車さんやったことあるんですか?」
「いいや、知識として知っているだけだ」
妙にペースを崩されてしまうな……と心の中で呟いた。正直言って、相当やりにくい。


開店時間を迎えても五条は現れなかったため、ひとまず二人はボーイに扮して店内を見学することとなった。正体がバレると大騒動必須の状況の中、乙骨はマスクで顔半分を隠し、店の隅でじっと佇んでいた。
もぉー……五条さんったら、どこで何してるんだろー……五条さんが言い出しっぺなのに……居心地悪いし、気まずいなぁ……
まさか生涯のうちで自分がホストクラブにお邪魔するとは思っていなかった乙骨はそれはもう、おおいにビビッていた。どこを見ても華やかなルックスと服装を纏ったホストがいて、女性客と和気藹々と賑やかなトークを繰り広げていた。自分のタイプとは真逆の空間である。正直言って、既に帰りたい気持ちでいっぱいである。
「こちらの席へどうぞ」
そんな心境だったのでボーイの格好をしたまま普通に来店客を席に案内していた日車の姿を目撃して眼球が飛び出そうな程に驚愕した。即座に彼を捕まえて店の隅に連行する。
「ちょっとー……っ! 何してるんですか日車さんー……!」
「仕事の手伝いをしているだけだが」
「何すっぴんで歩き回ってるんですかー……! お客さんにバレちゃいますってー……! せめて五条さんが来るまでは騒ぎを起こさずに……!」
「彼らの厚意で此処にいさせてもらっているのだから、何もしない訳にもいかないだろう。俺はこうした状況で存在がバレたことは一度もない」
「すいませーん日車さーん、キッチンの方手伝ってもらえますー?」
「ああ」
「いやちょっと、待っ……」
スタッフから思い切り名指しで呼ばれているにも関わらず誰にも存在を知らされないまま平然と店内を闊歩しまくっている日車の背中を、信じられない物を見るかのような眼差しで凝視する乙骨。そんな彼の元へオーナーのショウが歩み寄っていく。
「どうですか、まだ緊張します?」
「はぁ……すいません、やっぱりこういうお店、どうにも慣れなくって……」
「ははは。誰でも最初はそうですよ。それにしても大変ですね……両面宿儺からの試練に命懸けで挑まねばならず、その上ホストとして九十九様を持て成さなければならないとは……心労をお察しします」
「あはは、ありがとうございます……僕もなんで自分がここにいるのか、だんだん分かんなくなっちゃいそうで……」
「ホストはお客様に癒しをお届けする場です。よろしければ乙骨さんも是非遊ばれて下さい。我々が心よりおもてなし致しますので」
「あー、はい……とりあえず、五条さんが戻ってくるの、待っときますー……」

明らかに畏縮しきっている乙骨と、逆に場に溶け込みまくっている日車を観察しつつ、ショウは本心では嘲笑を浮かべていた。
この冷やかし共が……お前らがホストだぁ? 出来るわけないだろ、ホストを舐めてんじゃねぇよ。こいつは面は悪くないけど客を盛り上がらせるってタイプじゃ全然ないし、向こうに至ってはドすっぴんでも全然バレないレベルの存在感の薄さ、見た目もどこにでーもいるような普通のオッサンでオーラゼロ。論外だろ。素質があるの五条悟ぐらいだぜ、たっく、クソだりぃ……さっきの林檎剥きとライターにはちょっとだけビビらされたけど、そんな小手先のテクニックだけでどうにかなるほどホストクラブは甘くねぇんだよ。精々足掻いて恥を掻きやがれ。


午後七時に差し掛かった頃、ようやく五条が戻ってきたので裏口から合流した。
「お待たせー! まだおっぱじめてないの? え? ボーイで雑用? ウケるー」
「どこで道草を食っていたんだ五条、店側も迷惑しているぞ」
「だって戦闘服がないと話にならないでしょ? というわけで、じゃーん。僕が直々にチョイスして買ってきてあげたよー」
サングラスをかけた五条が三つ分の紙袋を持ち上げながらニコニコと笑っている。
「え……? これ、僕が着るんですか……? 噓でしょう……?」
「憂太はこういう路線でいった方が絶対バカウケするから!」
「俺はどのようなスタンスでいけばいい」
「服見ればそんくらい分かるでしょ? それ着て僕のサポートして」
「了解した」
「はーいそんじゃお着換えしに行きましょうねー。憂太も行くよー」
「うぅ……やだなぁ……」


三回目の来店で未だ指名ホストを決めていない状況であった女性客が、ボーイからの説明を聞いて首を傾げていた。
「今日だけ限定のスペシャルホスト? ふーん……どうする?」
「折角だし試してみよっかー。微妙だったらチェンジOKみたいだし」
二十代後半ほどの女性客二名が、とりあえずスペシャル枠を指名してみた。すると、間も無くテーブルに現れたのは。
「初めましてー! 僕ユウタって言います! 今日はよろしくお願いしまーす!」
なんと。ハリウッドで活動中の乙骨憂太に激似の、というか乙骨憂太にしか見えない中性的な顔立ちの青年が、伸びた前髪をヘアピンでまとめて、クマのキャラクターに小さなリボンがたくさんついたポップなオーバーサイズパーカーを纏って現れたのである。実に可愛らしい満点の笑顔で。
「えーっと、真ん中に座ってもいいですかぁ?」
「え、あ、はい、どうぞ……」
「やった! 失礼しまーす」
無邪気な表情と口調のまま、厚底ブーツで歩み寄り真ん中にすっぽりと収まってしまう。
「これがメニューですかぁ? うわー、お酒たくさん載ってるー。お姉さんはどれにします?」
「えっと、とりあえず、檸檬サワーで……」
「私も……」
「じゃあ僕もそれにしてみます!」
なんで、此処に、乙骨憂太が……? と深い困惑と混乱に陥っていた女性二人の中間で、ユウタは赤く火照った顔をぱたぱたと両手で扇いでいた。
「はー、よかったぁ、僕実はこういうお店って初めてで、すっごく緊張してたんですけど……お姉さん達がとっても優しそうですごく安心しました!」
あまりにも可愛すぎる笑顔に、きゅぅうん、と強く胸を締め付けられる。
「ちょっと待って今のナシナシ! ユウタくんホストクラブ初めて!?」
「うん、実はお酒のこともあまり詳しくなくってぇ……」
「大丈夫! 私達が教えてあげるから! ユウタくんどんな飲み物が好き!?」
「炭酸系のしゅわしゅわーってしてサッパリした感じの飲み物が好きですー」
「よし! シャンパンいこ!」
「いこういこう!」
「え、いいんですかぁ? 結構高そうだけど……」
「大丈夫お姉さん達たくさん稼いでるから! 任せて!」
「わーいやったぁー! かっこいいー! ありがとうございますー!」


一方。別のテーブルでは五条悟が本日限定スペシャルホストとして参戦しているという噂を嗅ぎ取った女性客が忙しなく足を強請りながらその時を待っていた。
あーもう! 早く来てよ悟ー! ヘルプとかマジどうでもいいから! 悟の前座なんてどうせ誰にも務まりっこないんだからさぁ!
安いカクテルで乾いた唇を潤しながら緊張と興奮に切迫されていた彼女の視界に、高級な革靴が入り込む。視線を持ち上げてゆくと、縦に細いストライプの入った黒の高級スーツ、ワインレッドのシャツ、ネクタイ、そして、テレビで何度も目にしたことのある顔貌が見えた。
「初めまして、ヘルプのヒロミです」
オールバックの黒髪。大人の落ち着きと色気に満ちた、完璧な微笑。その眼差しを真正面から受けてしまった女の思考が、一瞬の間、完全停止させられてしまう。
明らかに日車寛見であるはずなのにテレビで見た彼とは表情も雰囲気も何もかもが異なる姿を前に、完全に狼狽していた。自然と頬が熱くなってしまう。落ち着いた仕草で隣に腰かけ、メニュー表を差し出し注文を尋ねられても、何も返答することが出来ずに。
「どうかしましたか」
「え……えっと……」
「緊張してる?」
言葉が何も出てこない。そんな彼女を前にして、ヒロミはくすりと微笑んだ。あまりにも温厚な愛情に満ちた眼差しで彼女の瞳を射止めたまま。
「可愛い」
数秒前まで五条悟以外の存在が全てどうでもいいと断言していた彼女の心を完全掌握するにはそれだけで事足りた。


「え、もう次の席行かないといけないんですか?」
「えー? もう行っちゃうのユウタくん」
「うーん、どうしよぉ……お姉さんの席すっごく居心地いいから、離れたくないなぁ……」
口元に指を押し当てつつしょんぼりと眉を下げるユウタのリアクションに本日三十回目の胸キュンを喰らう。
「大丈夫だよユウタくん! 私達まだここにいるから!」
「ほんとにぃ……? 僕のこと待っててくれますぅ……?」
「いつまでも待ってるよ! だから頑張ってねユウタくん! 応援してるから!」
「……はい! ありがとうございます、元気出てきました!」
にっこりと満開の笑顔を浮かべながら立ち上がり。
「じゃあ行ってきまーす!」
と愛嬌全開のスマイルを撒き散らしながらトタトタと去ってゆくあまりにも可愛すぎるユウタの背中を熱心に見送った後。
「涼子! 次ユウタくん戻ってきたらオリシャン入れよ!」
「おう! ユウタくんの為に超頑張るわ私!」


そして別卓ではヒロミに可愛いとか綺麗とか色っぽい口調でひたすら褒められまくっていた女性が顔面沸騰状態になっていた。
「顔が赤いですね……体調が優れないですか?」
不意に掌をぴとりと額に押し当てられただけで「ひぇっ」と短い悲鳴を上げてしまう。
「あ、あの……ヒロミさんって、実物だと、すごくカッコいいんですね……スーツもすごく似合ってるし、ネクタイも……」
ホスト通い慣れしているはずなのに緊張しすぎてろくに喋れない異常事態に陥りながらも、かろうじて会話を繋ごうとしたが。
「解いてみます……?」
大人の色気全開スマイルでそんな甘言をぶちまけられてしまったので再び悲鳴を上げてしまった。
「やっほー! 盛り上がってるー?」
そしてヒロミと自分の間に割り込むようにいきなり座り込んできた五条悟の所為で思考が完全ショートした。
「君結構可愛いねー! どこから来たの? とりあえず飲もっか! おーいこの店で一番高い酒持ってきてー! 僕が驕るから! という訳でヒロミよろしくぅ!」
「全く……相変わらず人遣いが荒い奴だ」
唇も鼻筋も肌も銀色の睫毛も蒼い瞳も何もかもが美し過ぎる五条が随分と派手なスーツではしゃいでいて。そしてヒロミが溜息混じりにどこからかマイクを取り出してきて。
パチン! と指を鳴らした。
「集合ー!」
ヒロミがマイクでシャウトした次の瞬間。店内のスピーカーから派手なBGMが流れ出し続々と従業員が集結し始めた。
「今宵限りのスぺシャルナイト! 世界が誇る我らがカリスマホスト・サトルから高級シャンパン頂きましたー!」ワッショーイ!
「イケメン!」イケメン!
「カリスマ!」カリスマ!
「GOJO!」GOJO!
「そんなカリスマホスト・サトルから可愛すぎる姫へと捧げるメッセージまでー! 3、2、1、Q!」
ヒロミからの完璧なシャンパンコールを受けた五条がソファに土足で立ち上がり。
「一晩で歌舞伎町の伝説になっちゃうんでヨロシクゥー!」ヨロシクゥー!
登場僅か一分で空間全てを掌握し大いに沸騰させてみせたのであった。


………………え………………?
そして。そんな異質極まりない光景の一部始終を見届けていた元No.1カリスマホストのオーナー・ショウは完全に絶句していた。
え……? えっ? なに……? なにが、起きて、いる……?
一つずつ整理していくけど、乙骨、どうした? 少し前まで完全場違いですオーラを自分から出してきてたじゃん? それが、なに? そのキャラどこから引っ張り出してきた? お前があまりにも可愛い雰囲気出しまくってるからお姉さん達めちゃくちゃ頑張ろうとしちゃってんじゃん? え? これ意図的にやってんの? だとしたらめちゃくちゃ怖いんですけど? かつて数多の女を誑かせまくってNo.1の座を勝ち取った俺ですら畏怖を覚えるレベルなんですけど?
そして日車もどうした? 存在感薄すぎてスッピンでボーイしてても誰にも身バレしてなかった少し前までのお前はどこにいった? お前も完全に別人じゃん? ド級のセクシーホストが爆誕しちゃってんじゃん? グラス拭きとか注文とかライターとか全てのタイミングが完璧すぎる所も俺としては怖いんだけど、とりあえず最大の問題としてお前そのコールどこで習得してきた? それに関しては俺一回も教えてないよな? えっ、ひょっとしてさっきボーイやってた時に裏の方でちょろっと新人の奴らに聞いてたのってコールのやり方だったの? カンペみたいなの見せてもらってたけどそれって10パターンの全コールリスト? 三分くらいしか眺めてなかったはずだけどそれで全部覚えちゃったの? 一番簡単なのその場で一回通してもらっただけなのにそれで全パターンを感覚で掴んじゃったってこと? えっちょっと、意味不明すぎるんで勘弁してもらってもいいですか?
「僕の前座乙ー。もうどっか行っていーよー」
「俺の姫を退屈させるなよ」
「わーってるってー。で、何の話する?」
指名ホストの為にコールも含めて全面サポートする上に頃合いが来たら客に冷たく思われないよう尚且つしつこすぎずさらっと身を引くこの絶妙な対応……! この男……ヘルプとしてあまりに優秀過ぎる……!
そして五条……五条ー! もうシンプルに顔面の暴力! 自ら最高級シャンパンを購入することで全客の財布を強制的に緩めにいく強引にも程がある手法! 顔と金で容赦なく殴りまくってくる! こういうホストが一番恐ろしい!


「わー! すっごーい綺麗ー! これお姉さんがいつも頼んでるオススメシャンパンなんですかぁ? カッコいー!」
「ユウタくんにすごく似合ってるよ!」
「かわいー! 写真撮ってあげる! こっち見てー!」
テディベア型飾りボトルを顔の近くまで持ち上げながらにっこりと笑うユウタ。
「わーすごいなーホストクラブってこんなにも楽しいんだー」
「ユウタくんが笑ってくれると私達も楽しくなるよー」
「僕が楽しめるのはお姉さん達が優しくしてくれるからですよ、ありがとうございます! 大好きです!」
絶対心の底じゃそんな風に思ってねぇー! 元々の態度知っちゃってる分この男の恐ろしさをひしひしと実感してしまうー!

「いつになったら悟くんのぉ? あんたと喋ってる暇とかないし、さっさと悟出してきてほしいんだけどぉ」
歌舞伎町内の各店舗で要注意人物リストに名を刻まれる程の厄介な女性客を相手にしていたヒロミ。
「私は貴方とのひと時を大切にしたいと思っているのですが」
「はぁ? 知らんし。お前みたいな奴マジで興味ねーし、さっさと失せろよ」
「せめて目だけでも合わせて頂けませんか? ひょっとして、照れ臭いですか?」
カチンときた。あくまで紳士的な口調ではあるが、それは一種の挑発にも思えた。癪だと思ったので言われた通りに、仕方なく横目で視線を向けてやった。すると、ふわりと微笑みかけられた。大人らしく落ち着いた温厚な微笑みを向けられて、ほんの少し、どきりとした。そんな自分の反応を認めたくなくて、ぷいと顔ごと視線を背けてやった。
すると。不意に顎を掴まれて、強制的に顔を振り向かせられて。
「本当に可愛いな、お前」
一秒前と表情も声色も何もかもが異なる男に、挑発的な笑みで、一層低い声で、蠱惑的な眼差しで、あまりにも容易く意識を奪われてしまって。急激に顔が熱くなってゆくのを自覚してしまった。
「何か飲むか?」
「…………ドンペリ」
「良い子だ」
パチン!
悩・殺!
そうした一部始終もショウはがっつり見ていた。
ヘルプが高級ボトル入れたー! 完っ全に落としにかかってきたぁー! 俺らでも手を焼きまくってるクレーマー女を最短で陥落させたー! そうなんだよなぁー大人な紳士に見せかけといて裏の本性をお前だけに見せてやるぜ的な演出に女って本当弱いんだよなぁー! 完全に熟知しちゃってんじゃん! 完全に乙女顔になっちまってんじゃん! あいつのあんな顔俺も初めて見たわ! T大法学部では人心掌握術の講義もなさっていらっしゃる!?

「えー? マジそいつウザくねー? 悟子的にもその男マジないわぁー」
お前は一番何をしているー!?
いつの間にかミニスカセーラー服で接客していた五条を視界に入れた瞬間に心の中で大絶叫した。流石に看過できなかったので五条をスタッフルームまで連行した。
「ちょっとぉー急に邪魔してくるとか何様ー? 悟子激おこー」
「なんで!? 俺が今まで見ていたカリスマイケメンホストは!?」
「だってぇーノーマル悟だったら皆ビビっちゃうじゃーん。悟子的にはこっちの方がバリバリ盛り上がれると思うんだよねぇー」
「俺の店で勝手なことしないでもらえます!?」
「そういう常識の枠に収まるっていうの? 悟子らしくないと思うんだよねぇーマジでー」
「いやだから……もぉぉおお!」
は!? 悩殺おじさんの次にコレが来るの!? 温度の落差で客に風邪引かせるつもりか!? がっつり鍛えてるイケメンゴリラの癖に顔が良いから妙に似合うのが余計にムカつくとかもう色々と言いたいことが山の如しなんだけどただ一つはっきり言えることはこいつの空間だけ明らかにホストクラブじゃねぇ!


「んー! おいしー!」
「これも美味しいよユウター! はい、あーん」
「あーん、もぐもぐ」
なんかこいつの卓やたら食い物多いな! というか、これ、ホストっていうよりなんか、偶に家に遊びに来る可愛い親戚の世話をしている感じに近くない!? とんだ年上キラーだわ!

「それはお辛かったですね……我慢なんてしないで、好きなだけ泣いていいんですよ? 貴方の涙を受け止める為に、私が此処にいるのですから……」

「パーリラー! パリラパーリラー!」ハイハイ!

「なんだお前、まだいたのか?」
「別に、お前待ちじゃないっつーの……」
「強がるなよ」
こいつに関しても本当何なんだよ! もう百戦錬磨のホストって面構えじゃん! 一回もホストクラブ行ったことないですって奴がやっていい動きじゃねーんだよ!
「おーいそこの女の子結構可愛いじゃーん! そんなつまんねー男とじゃなくてこっちで一緒に飲もーぜ!」
「やめろ五条! この子は俺の大切な姫だ、穢れた手で彼女に触るな!」
しかも別のホストと不仲を装い三角関係での女の取り合いを演出することで客の心を更にわし掴みにいくという高等スキルまで駆使しているー! 今までどんだけの数の女泣かせてきたらこんな芸当が出来るんだよぉ!

「他の席が全然盛り上がってないんでボトル五本入れちゃいましたぁー! お通夜ですかぁー? クソザコエセホストはくだばってくださぁーい」
すげぇ口悪いな悟子!
「はー? 何そんな安酒チョイスしようとしてんの? 二十万円からじゃないと話にならないんですけどぉー我悟子ぞ?」
客に対してもすげぇ口悪い!
「アルマンドいけんの? やるじゃーん!」
上から喋んな腹立つわ!
「いえー! 悟子スペシャルライブはじめちゃうぞぉー!」
勝手に爆音カラオケ始まったー!
「あーなーたーとわーたしさくらんぼー!」
いや、こいつ……っ、完全にただの酔っ払いじゃねぇかー!


一日限定スペシャルホストによる多大な影響により未だかつてない程大量のボトルが放出される事態となっていた。ユウタや悟子の席で、ほぼ同時に高級ボトルが入ったことで、ヒロミが接客していた若い女性客が焦燥を浮かべていた。
「どうしよう、私のせいでヒロミさんの卓だけ貧相になっちゃって……私も何か入れないと」
表情を曇らせながらメニュー表を開いた彼女のその手を、ヒロミが制止するように、手を重ねてくる。
「お金なんていりません」
とても優しく、柔らかな声色で、囁いて。
「金銭だなんて、貴方との時間を独占できることへの喜びに比べれば、些末なものです。私と貴方の関係に、そんなものは不必要でしょう?」
ふわりと微笑んだ年上男性の言葉に、心を奪われてしまって。

「こちらの姫からオリシャン頂きましたー!」ワッショーイ!
なんでだ。
大熱量のシャンパンコールを浴びながら日車は心の底からのツッコミを脳内で吐き出していた。
俺は要らないって言ったよな? なんでここの客はどいつもこいつも人の話を聞かずに馬鹿みたいにボトルを入れてくるんだ? 全員言語中枢がイカレているのか? そもそも一本当たりの値段設定が明らかにおかしいだろ、これ一本で十万円とかふざけているのか? 正気を失い過ぎだろ。
「イケメンホスト・ヒロミから可愛すぎる姫へのメッセージまで3・2・1・Q!」
おい! やめろ! これ以上余計なことを言うんじゃない、俺!
「今夜は帰したくない……」ヨイショー!
うぁ――!

「わぁーすっごーい! クマさんがたっくさーん! かわいいー!」
いやいくらなんでも多過ぎでしょ! なんで僕の卓って飾りボトルですぐに埋め尽くされちゃうの!? これ本当に飾るだけ!? 飲まない癖に何十万もかけるとかどう考えてもおかしすぎるよぉ!
「わーい! 高いお酒がたっくさーん! 悟子高いお酒大好きー!」


伝説に残る程の大盛況を湧き起こしたホストクラブ『エンジェル』今宵限りのスペシャルナイトがようやく幕を下ろし。
完敗だ……
元No.1カリスマホスト・ショウは完全に屈服していた。
「……ありがとうございます……こんなにも、店の売り上げに貢献して頂いて……もう私から皆さんにお伝えすることは何も……」
「ホスト怖い……」
「ってアレー!?」
神級プレイヤーとして大活躍していたはずの乙骨と日車が完全に蒼白しきった様子で佇んでいたので大驚愕させられた。
「いやいやいや! なんでお二人がめちゃくちゃ盛り下がってんですか!?」
「なんだ、このトチ狂った異空間は……こっちが全く望んでもいないのに有り得ない額の酒を次から次へと……こんな店が存在するから都内の女性が水商売に走ったり自己破産に陥ったりするのでは……? 一刻も早く解体するべきでは……」
「それだけはやめて!?」
「歌舞伎町の人達って皆こうなんですか? お金でマウント取り合う怖い女の人しかいないんですか? こんなことにお金使うくらいなら親孝行してあげればいいのに……親の悲しむ顔とか浮かばないんですか?」
「悪しき文化だ……!」
「どの口が言うかぁ!」
酔っ払いハイテンションなままの五条が男性用スーツに着替えた後にやってきて。
「ねぇねぇねぇ、僕今から客二十人くらい連れて二次会行くけど二人も行かなーい?」
「絶対に嫌です」
「疲れた……」
「ノリ悪いなー。あ、指導とか諸々ありがとねー、僕らが稼いだ金全部店の売り上げにしちゃっていいから。じゃあねー」
「はぁ……」
「乙骨、腹は減ってないか」
「色んな人に沢山食べさせられたんで……」
「そうか、俺はこれからうどんでも食べに行こうと思っているんだが」
「あー、それいいなー……僕も付いてっていいですか……?」
そうして再び夜の街に消えていった怪物クラスの俳優三人の背中を見送ったショウは、疲労感のあまりガックリとその場に座り込んでしまった。


ズルズル、と客の少ない深夜のうどん店のカウンター席に並びながら麺を啜っている。互いに疲労が溜まり過ぎていた所為で完全に無言のまま。天井付近に設置されたテレビから流れる深夜バラエティ番組の音声だけがBGMとなっていた。
「……心境はどうだ」
思い立ったように、久しぶりに日車が口を開いた。
「んー……僕は五条さんや日車さんみたいに、演奏とか、編集とか、出来ないし……僕の役割はほとんど終わっていて、後はもう、待つしかないので」
「怖くはないか」
「そりゃあ、全くないって言ったら嘘になるし、偶に寝付けない時だってありましたけど……今は意外と、そうでもなくって」
ちゅるん、と小サイズの器から麺を吸い上げる。
「始める前はもっと、孤独なものだと思っていたので」
日車の視線が乙骨の横顔へと静かに向けられる。
「日車さんみたいに三日で準備して一人で演じるってことになっていたら、恐ろし過ぎてどうにかなっちゃってたかもしれないですけど……」
「俺も孤独ではなかったさ」
箸で暗い色の液体を回す。照明の光と掻き混ぜるように。
「色んな人間に支えられてきたからこそ今の俺があって、今日まで生き長らえている」
「僕もそうです」
「乙骨はどうしてハリウッドに居続けるんだ。家族や友人が恋しい時もあるだろうに」
「少しでも上にいけるよう、頑張り続けたくて。使命だとか、そんな高尚な理由じゃないけど」
乙骨の口元が少しだけ、柔らかく緩んで。
「横に並ぶのは不可能かもしれないけれど、五条さんの立っている所に、少しでも近づきたくて。高い所に一人だけで立っているなんて、寂しそうじゃないですか」
「……君らしい理由だな」
「そうですか?」
『五条悟に次ぐ現代の異能』と謳われる乙骨が、日車の横顔を見つめて。
「五条さんもですけど、日車さんがいてくれて、本当に助かってます」
思いもがけない言葉に、嘘偽りがないと確信させられる程に真っ直ぐな言葉に、細やかな驚愕を抱いた。
「俺は君の技能や苦労に比べれば、さほど大したことはしていない」
「いや全然そんなことないですから。というか、そういうの抜きにしても有難いですよ。日車さんって落ち着いてるし安定感があるし、一緒に頑張ってくれるだけで僕は安心するんです。五条さんもすごく有難いのは有難いんですけど落ち着いてはいないし結構とんでもないことして振り回してくるから……」
「それは確かにな……」
「日車さんこそ、なんでここまで僕に協力してくれるんですか」
「両面宿儺の恐怖を嫌という程思い知らされてしまったからな」
「日車さんらしいですね」
「そうか」
残りの油揚げを口の中に放り込んだ。
「君は狗巻の家に泊まるのか」
「そうですね、明日は真希さんとパンダくんとも一緒に遊びに行く予定です。日車さんは日下部先生と?」
「明日は虎杖と会う約束をしている」
ちょうどそのタイミングで、日車の携帯にメッセージが届いた。
「……あぁ、虎杖からホストクラブの時に何故呼んでくれなかったんだと文句を言われてしまった」
「ふふ」
自然な笑みが乙骨の口から零れた。


そうして九十九由基を持て成す一大ホストイベントが今まさに幕を開けようとしていた。
店内を完全貸し切り状態にし全従業員を配備し終えていたショウは、成功を確信していた。五条乙骨日車というバケモノ三人衆が集結している状況だ。もはや何も怖いものなどない。
「それでは皆さん、本日はよろしくお願いします!」
「僕達に任せて! 僕と憂太がメインで日車さんは僕らのアシスト! 他は全員酒と料理とコール係!」
「頑張ります!」
「ヘパリーゼ三本飲んできた」
「OK! 意気込み上々! 僕らの映画が成功するかどうかはこの一晩にかかっている! 大成功ぶちかまして宿儺の野郎に一泡吹かせてやろうぜ!」
オー! と気合いの声を上げる一同。開店直前のホストクラブは未だかつてない程の熱気に包まれていた。
そして、ついに。高級リムジンから歌舞伎町へと降り立った世界的大女優、九十九由基が。美しいドレスを身に纏いながら扉を潜ったのであった。
「いらっしゃいませ由基様!」
「おーし! とりまシャンパン二十本!」


五時間後。
九十九が待ち合わせ場所に到着すると鼻のタトゥーとツインテールが特徴的な友人が眠たそうな表情で目をぱちぱちとさせていた。
「お待たせー! 遅くなってごめんね脹相」
「ちょうど弟も眠った頃だし、そんなに待っていない……酒臭いな、どこかで飲んでいたのか?」
「ちょっとねー。私以外全員潰れちゃったから店出てきちゃった。まぁ頑張った方じゃない? 少しくらいなら手伝ってやってもいいかなーってところだね」
「ん……? よく分からんが、まぁいい」
「駄目元で誘ってみたら本当に会いに来てくれるんだもんお兄ちゃん。優しすぎじゃない?」
「俺だって九十九に会いたかった」
「このこのー! 可愛い奴めー!」
「首が痛い」
がっしがっしと頭を力強く撫で回す九十九とそのパワーにより頭部を前後左右に回される脹相が、二人きりで賑やかな夜の街に溶け込んでいった。

Comments

  • narrプロフ必読1\1加筆。

    11/2加筆分読ませていただきました。七……哀れ……、てかだれとでも気合なく話せる迅の素晴らしすぎる。てかひろみ罪作りすぎるよあなた。どんだけ人たぶらかしたら気がすむんだお前は……と篤思ってるでしょうね。ありがとうございますm(_ _)m

    November 25, 2024
  • narrプロフ必読1\1加筆。

    加筆の七と寛のBLドラマ編読ませていただきました。篤との温度差よ笑笑笑 虎君の次棘君もかぁと思っていたら今度は七が落ちた笑 そして七がキレた笑 笑っちゃいけないのに大爆笑させていただきました! ありがとうございますm(_ _)m!!!

    June 10, 2024
  • narrプロフ必読1\1加筆。

    あとご本とても萌えました!!! カニバのお話で寛が完全にこれ楽しんでるな君?! という感じだけど開き直っちゃったか〜と納得笑 今後のご活躍も願いつつ篤寛増えろと念じておりますm(_ _)m

    June 4, 2024
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