- 1二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 07:27:07
- 2二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 07:40:20
前スレ達
【閲注・CP注意】日車「ここは…?」|あにまん掲示板ぴちゃ、と水滴が落ちる音がする。その音が自分の額から鳴っていることに気が付いて、自分が床に転がされている状態だということを自覚した。ゆっくりと目を開く。目の前には白い、光沢感のある壁。「…ここは…?」…bbs.animanch.com【閲注・CP注意】日車「ここは…?」その2|あにまん掲示板虎杖×日車の監禁モノ安価(ときどき🎲)スレです。探索、対話、諸々の選択によってルートが変わります基本的なENDはTRUE、NORMAL、BADの3種類。その他特殊なフラグを踏むと???ENDが追加され…bbs.animanch.com【閲注・CP注意】日車「ここは…?」その3|あにまん掲示板虎杖×日車の監禁モノ安価(ときどき🎲)スレです。探索、対話、諸々の選択によってルートが変わります基本的なENDはTRUE、NORMAL、BADの3種類。その他特殊なフラグを踏むと???ENDが追加され…bbs.animanch.com【閲注・CP注意】日車「ここは…?」その4|あにまん掲示板虎杖×日車の監禁モノ安価(ときどき🎲)スレです。探索、対話、諸々の選択によってルートが変わります基本的なENDはTRUE、NORMAL、BADの3種類。その他特殊なフラグを踏むと???ENDが追加され…bbs.animanch.com〜前回までのあらすじ〜
エンディングを2つ回収した後にCONTINUE♡した前回♡色々あって虎杖視点に移行してエンディングが確定!呪物は壊されたよ♡虎杖も日車も正気に戻った筈なのに、なぜか日車の愛の暴走具合が凄かったね♡当たり前だよね虎杖の1年どころか日車はそのずっと前から虎杖に灼かれて焦がれて仕方なかったんだもん♡ずっと飲み込んでた言葉、吐き出したくもなるよね…♡♡
人間をやめてしまった虎杖!人間をやめると宣言した日車!日車へ唯ならぬ重感情を抱きながら飲み込んだアツヤ!日車の幸せと安全を大切にしてくれる優しい清水さん!清水さんとの約束は!?アツヤの気持ちは!?2人の未来と恋の行方は!?乞うご期待♡♡
- 3二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 07:41:44
[エンディングリスト]
TRUE END : ???
NORMAL END : ???
BAD END : カッコウの雛
隠しエンド
NTR END : 退けば他人
全エンディングコンプリートまで、あと2つです - 4二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 07:56:02
たておつ
- 5二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:00:45
乙です
- 6二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:18:58
たておつ!
- 7二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:20:07
スレ主ありがとう!!
あらすじの内容と♡の温度差よ - 8二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:30:22
立て乙です
- 9二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:55:20
ついにパート5か!
ほぼ確定してる現エンドを除いてあと1エンドで終わってしまうと思うと少し名残惜しいな
二人が幸せになれますよーに!!! - 10二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:56:31
とりあえず10まで保守
- 11二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:57:52
たて乙です
続きがくる!
やったー!! - 12二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 09:05:10
スレ主の♡乱舞書き込みからしか得られない栄養素があるッ!
もっとちょうだいっ!! - 13二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 16:13:23
前スレの落として割れてしまった卵、ちゃんと中に居たんだね
そして今もふたりの足元に居るんだな
コワ~…グロ~… - 14二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 16:24:39
───────2年後
「日車!久しぶり、元気してた?」
「ああ、君はどうだ」
「俺?へへ、めっちゃ元気だよ、こうやって日車にも会いに来れたしさ!」
「それは…そうだな、日下部にはまた礼をしておかなければ」
仙台駅を降りてすぐ、その凄まじい視力で俺を見つけた彼は、かつての彼と同じ…いやそれ以上の輝きを持った笑顔で俺に駆け寄った。変わったのは彼ではなく、その顔を真っ直ぐ見上げられるようになった、俺の方だった。今も時々逸らしたくなることもあるが、それよりも彼の綻んだ表情のひとつひとつを、この目に焼き付けて見つめていたいという気持ちの方が大いに勝る。
「結構早く着くようにしたから大丈夫だとは思うけど…一応もう向かっとかん?待ってるんでしょ」
「ああ、そうだな…歩きながらでも話はできる。行こうか」
俺が呪術師をやめて丁度2年、俺達は久しく、文面ではない逢瀬を遂げていた。あの一件の後、彼は俺に言った通り、司法に身を委ね罪を償おうとした…のだが、それは上層部が許さなかった。結果的に彼の罪を全て隠蔽し、馬車馬の如く働かせる材料として、弱みを握ろうとしたのだ。
「(…金にも地位にも名誉にも興味が無い彼に、俺はどうやって礼をすればいいのだろう)」
そしてまたしても、そこの帳尻を合わせてくれたのは日下部だった。本当に面倒見の良い男だ、上層部でも爆弾扱いされている虎杖の面倒を見ると、半ば押し切る形で彼の身柄を高専に繋ぎ上層部から引き剥がして、その上で裁かれたいと願う彼の想いも尊重し、本来あと2年で終了する筈であった経過観察期間を更に3年延長する事で、刑期代わりだと言ってみせた。今回の外出も本来は行えないものを、態々上に説明できるように難癖を付けて任務という形に落ち着け、外泊許可まで出してくれたのだから、本当に頭が上がらない。 - 15二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 16:26:28
「あ、来ましたよ高木さん!ほら、あそこ!」
「本当だ、話の通りに大きいねぇ。こんにちは、噂の虎杖君かな」
「は、ハイ!初めまして!えーっと、清水さんに、高木さん」
「ふふ、まさにウブって感じだ。私が高木だよ、こっちの可愛い子が清水ちゃん」
「日車さんからいつも!よーく!お話は聞いてますよ、虎杖君。清水です、日車さんがいつもお世話になってます」
「なっ、こら清水…!」
俺の身の回りの女性とはどうしてこうも、人を揶揄うのが上手なのだろう。交際している人物が居るという話は、地元に戻り暫くして、ある程度仕事の落ち着いた機を狙って2人に話した。加えて、相手が2回りも歳の離れた、同性だということも。最初は2人共開いた口が塞がらないといった様子で、清水に至っては詐欺にあっているのではと、至って真面目に心配までしてきた。そう思われるのも仕方が無い、ただ自分も本気で、紛れも無い真実なのだと真摯に伝えてみせれば、それ以上何か気にかけてくることはなかった。…否、恋バナという名目で行われる巧妙な尋問と誘導により、羞恥で度々首を絞められる思いはしたが。
これ以上店の前にたむろするのも憚られ、何より始まりそうな心底居心地の悪い話題を断ち切ってしまおうと店へ入れば、背後でくすくすと笑う声がした。君達は俺の母親か何かか?予約の確認をしている内に、背後で彼と彼女らが楽しそうに話しているのが分かる。人懐っこく、人に好かれる彼だ、すぐに打ち解けるだろうというのは確信に近いものを持っていた。席についてもそれは途絶える事なく、限りなく温和な空気が卓上に流れ続け、眺めるばかりでもつい笑みが零れる。俺の顔を見て、僅か物珍しそうに正面の2人が目を丸めたのを俺は見逃さなかった。
「…やっぱり、本当なんですね」
「何がだ?」
「いいえー?でもほら、高木さんもそう思いますよね?」
「…うん、そうだね…疑ってた訳じゃないけど、やっと実感できたって感じかな」
「?」
言葉の真意が分からないまま首を傾げれば、隣で彼もそうしていたらしい。全員揃って吹き出したところで、その話は有耶無耶になってしまった。結局最後まで真意は分からないまま食事を終え、店を出る。軽く公園で腹を休め、後々彼女達はまた仕事に戻るそうだ。清水と彼が特に親しげにしているのをベンチに座り眺めていれば、その隣に、彼女は迷い無く座ってきた。 - 16二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 17:45:34
虎杖と日車がふたり並んで外にいる…!
清水ちゃんと高木さんに岩手で会えてる…!
めちゃくちゃ穏やかであたたかな空気が流れてて本当に嬉しい
日車が虎杖を交際相手だってはっきり口にできてるのも嬉しい
くっ日下部~~~!!お前はどこまで優しい男なんだ!!
あのトンデモマンションに電話一本で日車を助けに来てくれたし、
あれだけヤバいことしたうっすら恋敵の虎杖も匿ってくれたの!?
いい男過ぎるよ日下部… - 17二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 17:54:02
「…向こうに混ざらなくていいので?」
「んん?いいや、聞きたいことがあるって顔をしてたから、聞く機会を設けてあげようかと思って。違った?」
「……いいえ」
「ふふ、当たりだね。じゃあ君が気になってること、にも心当たりがあるから、話そっか」
「…」
「あはは、そんな顔しないでよ。何年君の先輩やってると思ってるの、思ったより君って分かりやすいんだから。日車君」
あぁ、やっぱりこの人には敵わない。1度心を壊して、改めて分かったことだ。圧倒的な才とはまた別、人に寄り添い、人を考える。そういった思考を当たり前に持ち合わせて、己にも他者にも適応させられる。こういった職業でなくとも、彼女は誰かを救える人間だったのだろうと、よく思わされる人だった。彼女がかつて、同業として、先人として。俺に放った言葉を、俺は己の信念を元に突き返した。その選択は、悔いても恨んでもいない。ただ…あの時彼女が問うた言葉に、俺は上手く答えられなかった。あの時確かに、己の内側を見つめ直して、完全に折れてしまう前に僅かでも、支え木を添えられていたのなら
「君から…ってよりは、清水ちゃんが君から聞き出した話を、私はよく聞かせてもらってたんだけど」
「あぁ、虎杖君の話。私と君はあんまり会う機会がないしさ、清水ちゃんの方が詳しいんだ。聞いたら何でも教えてくれちゃって」
「あぁ……いいや…吐いたのが悪い、か…」
「ふふ、まぁそれでね?君と彼の関係が良好なのも、君が彼を愛してやまないのも、確かに聞いてたし伝わってた」
「だけどさ、百聞は一見にしかずって言うでしょ?今日の日車君、凄く幸せそうだったよ。それでやっと分かったんだ、彼が君にとって、どれだけ大切な存在なのか」 - 18二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 17:55:50
「……彼は、太陽のような子です。知っての通り、貴女が言った通り、精神を壊した私を。彼は掬いあげてくれた。私が忘れた、人の尊さをもう一度、教えてくれた」
「だからこそ、私は、弱くも気高く美しい彼を、救いたい。彼はこれまで、多くの理から追い出され、神からも見捨てられたような道程を歩いてきました。だから、今度こそ、私だけは。私が傍に居ることが彼の救いになるのなら、朽ち果ててでも」
「……変わったようで、変わってない。君はずっとそうだね、弱者救済なんて陳腐なものでもない。君のことだから、きっとまた、無理をするんだろうけど」
「それでも、今は彼を救うことが、君の救いになるんだね」
彼女はそう、暖かな笑顔を浮かべながら言った後、立ち上がった。俺は気が付かなかったが、どうやら清水に呼ばれたらしい。俺は彼女の笑みの真意が分からず、慌てて後を追った。振り返った彼女の眼鏡に映る自分の顔を見て、分かりやすいという彼女の気持ちがほんの少し、わかったような気がする。いたずらに緩められた唇が、明瞭に笑みをたたえて言った。
「ふふ、っ、あはは!もう、そんな深い意味なんてないよ」
「見返りを求めないってのは確かに立派で、君の美徳だけど…それだけじゃあ、壊れちゃうものってあるから。ただすごく、本当に心から、安心しただけ。君のいち、先輩としてね」 - 19二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 21:20:31
──────
「そんで、どーだったよ。愛しの恋人さんに久しぶりに会った感想は」
「あぁ、楽しかった。観光もしたし、知り合いにも合わせてやれた。あと牛タンも食わせた」
「おーおーそりゃ何より。アイツ泊まってったんだろ、家泊めたのか?」
「家には泊めていないな、ホテルだ」
「へぇ、んじゃ部屋一緒?ビジホとか?」
「…?い、いや…彼とは、ホテル前で別れて、俺は家に…」
「は!?なんでだよ、一緒に泊まったんじゃねぇの!?」
「なぜ確定事項のように言うんだ!別にいいだろう!」
「いやいやいや、悪いって言ってる訳じゃねーけどよ…」
東京と岩手との丁度中間地点、福島の個室居酒屋。彼は頼んだ円盤餃子の羽を箸で断ちつつ、声を荒らげた。一旦の起伏が終わったのか、らしくないと自責に呟きつつ、餃子を1つ口に放り込んでは地酒を呷る。文句を垂れる彼は、話題の中心である虎杖との岩手観光を可能にするべく、存在する権限や地位を使い走り回ってくれた、日下部篤也当人だった。勿論、他にも手を貸してくれた人物も居たそうだが…それも彼が助けを頼んでのこと。今日の飲みは、礼をとレターパックで現金を包んでいる最中、彼からかかってきた電話にて決まったことだ。手渡しの方が良いかと合流してすぐ帯付きの束を差し出したら、あまりに酷い顔をするもので笑ってしまった。
彼は今日、丁度この辺りで任務があったらしい。普段は腰に携帯している刀も、袋に入れ背中に背負われていた。虎杖と会った時は、あまりに全てが鮮明過ぎて、2年越しの懐かしさも感じられなかった程だったが…今度は襲いかかってくる、たかが2年のノスタルジーに目を焼く程心地だった。それほど、目の前に座る彼の所作はあの頃のままで、酷く居心地が良い。夜と言うには明るく暖かく、日中と言うには静かで冷たい…朝焼けや夕暮れを思わせる、ぼんやりとしたその出で立ち。丁度いい、と言っては失礼だろうが、俺にとって彼は、いつ何時もそんな相手だった。 - 20二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 21:24:01
「あぁ、そういや。虎杖には一応、まだ話してねぇんだけど…アンタには伝えとくか」
「?どうした」
「ん、いーや…重い話は早めに話しとかねぇとなって。まぁそんな重く受け止めんなよ」
思い出したように1つ呟いた後、彼は神妙な面をして、手元の携帯を操作する。何が飛び出るかも分からないと身構えていれば、すんなり画面が向けられた。そこに映っていたのは、1歳から2歳程度の、子供の写真。溢れんばかりの笑顔を振りまいて、カラフルなエプロンを付けた女性と手を繋ぎながら芝生を歩いている。……結婚、したのか?
「……おめでとう、祝儀は」
「バカバカバカちげーって!俺ァ万年独身貴族!!知ってんだろアンタ、言わせんなよ…ってそうじゃなくて!」
「キレッキレのボケツッコミだな」
「そりゃどーもね!本題入らせて!!」
ゼェハァと態とらしく息切れしたような素振りを見せる彼が、1つ咳払いをした後にまたもや神妙な顔を作る。それに習って此方も聞く姿勢を作れば、漸く彼は口を開いた。
「この子、お前らの子供ね」
「……は?」
「あーいや、厳密にはお前らのいざこざに巻き込まれて、本来死ぬ筈だったのに生き返っちまった赤子。ほら、呪物ん中入ってたろ」
「…成程」
「おーおー途端に死にそうな顔しやがって。ほら注いでやるから飲め、美味いぞ〜地酒」
無理矢理注がれた酒を条件反射で飲み込んで、口元に押し付けられる餃子を口に入れた。葱の香り高さといっぱいに広がる肉の甘みと旨み、パリパリの羽と溢れんばかりの肉汁がコントラストを奏でて…うん、美味い。表情が僅かに前向きになったのを見て安堵の息を漏らした日下部は、引き続き事務的に続きを話し始めた。できる限り俺を感情的にしないようにという、彼なりの配慮なのだろう。 - 21二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 21:35:04
高木さんはずっと日車の先輩なんだな、弁護士の先輩であり人生の先輩であり
本当に素敵な女性で、彼女を裏切ることにならなくてよかった
日下部も変わらないんだ、あの日からずっと続いてる優しさがある
今は友愛に変わったのかな、それとも秘めたまま墓場まで持っていくのかな
とか思ってたら餃子あーんで食べさせてくるし日車も何の疑いもなく食べちゃうこの距離感よ
…子供!?!? - 22二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 00:56:41
よかったねぇ日車…高木さんと清水ちゃんにも会わせられて、なにより虎杖に会えて、アツヤとも前のように酒を酌み交わすようになれて…
そっか、アツヤも結婚したんだな…月日が経つのは早いもんだな…
…と思ってたらいいいいいい虎杖と日車の子供!?!? - 23二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 08:59:07
トゥルーだと思っていたけどどうなのかわからなくなってきたー!
この子はなんの変哲もない子として産まれてこられたのだろうか - 24二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 09:23:56
卵壊すだけ壊して中身を処理しなかった(できなかった?)パターンか
ええーどっちEND? - 25二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 09:43:50
マジで虎日の子供が生まれちゃってたら内密に処分されてそうなんだよなぁ
発生のきっかけは虎日だったけど成長は他の人の呪力を使って生まれた赤子って感じ? - 26二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 10:04:05
詳細開示前なので違うかもですが
五条悟に並ぶ才能の持ち主と、羂索に作られた身体特性に御厨子と赤血操術が付与した上に半呪霊化した人物の子供とか、上層部あたりなら興味あるやろなとか、生物の理の中では生まれるはずなかったし、血ではなく呪力を引き継いでるなら、術式やらをそのまま継いで発現する可能性も高いかも?とか、暴走したり失敗したら処分すればいいしとかって考えならやりそうだなとか、思ってしまった
あと、久しぶりに会ったのに、夜一緒に過ごさないの何で?
ここに理由が無い事を願うよ - 27二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 13:50:36
「この子は、その…認知が、必要であったりするのか」
「ん〜?いや、もう既にこっちは孤児として扱ってるから要らねぇよ」
「では養育費くらいは」
「あ〜…まぁこの子の将来考えるんだったら学費くらい工面して貰ってもいいかもな、いやこの子とお前って公的な面で見たらほぼ他人なんだけど」
彼が中身の無い枝豆のさやを咥え、普段飴の棒でやってみせるよう唇で動かすのを見やり、それを取っ払ってやれば素直に離す。聞きたいことは山ほどあるがまずは彼の口から、全て概要を聞いた後に聞くのがいいのだろう。
「あの呪物は、本来生まれて来る筈無かった命…つまり人に望まれねぇで死んだ、胎児の準備が必要なんだわ。それを呪物に入れて、呪力を込めて、そんで生まれてくる」
「それは何となく彼との対話で察していたが、ではその子はやはり半呪霊の?」
「いーや、半呪霊どころか呪力すらミリも持ってねぇよ。あの呪物結構面白いもんだったらしくてな、壊したのが勿体ねぇくらい」
「あの卵を介した呪力は、まぁ勿論赤子の養分になる。だとしてもいくら養分注いだとこで、死んだ赤子には何の意味もない」
「あの呪物に籠ってたのは、同じよーに人間の思惑で殺された、赤ん坊達の積もりに積もった呪い。生きたかった、生まれてきたかったっつう、生物として当然の想いの塊だ」
「…まさか」
「そー、そのまさか。あの呪物に入れた時点で、死んでた胎児は生き返るんだ。どんなに状態が悪くても、死後長くても、綺麗に健康に」
「本来なら呪力を込められて育った赤子は半呪霊になるはずだ、でもそうはならなかった。なぜだと思う?」
あぁ、教師の彼らしい癖だ。考察に値する情報を寄越してから、残りは自分で考えさせる。俺は彼の教え子であったことはない筈だ、それでもこういった問い掛けをする時、彼は酷く楽しそうな顔をする。期待に応えてやろうと、僅かばかり思ってしまうのは失礼だろうか。 - 28二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 13:52:57
「…卵の中で蘇生された段階では、ただの人間の赤子だ。そして養分を注がれて、体内に蓄積するからこそ、半呪霊として育つ」
「うん」
「そして、あの時。俺達は子供が不完全な状態で卵を割り、養分を絶った状態で、そのまま放置した」
「呪物の目的が、中に居る胎児を無事に生まれさせることならば、どんな手管を使ってでも胎児を生き延びさせる筈だ」
「そーだなぁ」
「…だから、胎児が身体の中に貯め込んでいた呪力も、生命維持に消費した。身体の中から呪力が消えれば、それはただの赤子だ」
「ん〜まぁほぼ正解だな。実際そうやって呪力自体は消費してたんだろう。ただ高専連中がその胎児を見つけた時、まだ微量に呪力はあった」
「そんで貴重なサンプルだか言って、上が育てたがったんだよ。わざわざ人工子宮みてぇなの用意して。んで育ってく内に、段々と呪力は消えた」
「何故…」
「こっからはあくまで俺の推測でしかねぇけど、呪力の元はお前らだろ?お前らが赤子の存在を忘れた、生まれてこいっつー強い思いが、消えたから、呪力も霧散したんじゃねぇのって」
「…忘れていたことが、まさか良い方向に働くとはな」
「そ。だからお前らがまたあの子を自分の子と認識し始めたら、突発的に呪力やらなんやらに目覚めちまうかもしんねぇの。それで言うの渋ってたんだよな」
そこまで言い切って、彼はまた酒を呷った。恐らく全て言い終えたのだろう、再度餃子に手を付け始めている。
「…公的には他人、と言ったな。つまり器の変異は」
「殆ど無かったよ、入る前の状態そのまま。DNA鑑定もしたが、アンタらとは一致しなかった。つか写真見たろ、明るい茶髪。似ても似つかんでしょーが」
「そうか…今は孤児として扱っていると聞いたが」
「そりゃ当たり前にね。上も、呪力すらねぇって分かった途端興味無くしてくれたらしくてな、のびのび育ってるよ」
「……良かった」
「近頃里親も決まりそうなんだとよ、呪力も何もねぇ、ただの一般人。冥冥辺りが雇われて少し監視はするらしいが、特に何もなきゃ、こっちの世界とはおさらばって感じ」
彼も俺も、元は一般人。きっと彼も紆余曲折あり、この世界に足を踏み入れて生きているのだろう。命の危機も多い、別れも多い、そんな世界に、あの小さくか弱い命が巻き込まれずに済んだこと。言葉にはしないが、彼も安堵を覚えているのだ。 - 29二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 14:21:15
産まれることができなかった子供がそのまま生まれ直したのか、器の形を変えることなく
穏便な形で良かった
でもあの短期間で子供が生まれてこれる分の呪力がすでに注がれてたんだから怖い
十月十日呪力を注ぎ続けたBAD ENDの赤子は完全に半呪霊だったんだな
ささやかに描写される日下部と日車の淡いブロマンス表現が癖になる…! - 30二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 16:42:40
「…ま、壊れちまったけどさ。あの呪物も、生きてて欲しいって生き返らせた赤子がこんな元気に生きてて、少しは浮かばれるとこもあんじゃねぇの」
「幸せになって欲しいとか、生きてて欲しいとか。そういうのは、叶わねぇことも多いし。呪いになっちまうことだってある、無情なことにな」
「……やはり、養育費は払うことにする」
「おーおーいいじゃん、いい飯食わせてやれよ」
重い話を終えたからか、彼はどこか重荷を降ろしたように1つ息を吐いて、また普段通りの表情に戻り夜酒を再開した。話題も何気なく、昔話していたようなものばかり。彼が担任を持つ生徒達の話、近頃の知り合いの様子、互いの仕事についてや他愛も無い世間話。きっと彼は他の人間と飲む時も、この話をするのだろうと分かる程、慣れた様子で話されるその全てに懐かしさを覚えた。卓上にあった大きな円盤餃子が無くなった頃、十分出来上がった様子の日下部は勘定にと席を立った。
「日下部、上着が」
「ちょっと持っとけ、酒飲んであちーんだよ」
俺に上着を預けたのは、きっと財布を出させない為だったのだろう。自然に俺の分まで会計を終えた日下部は俺を連れて店を出て、その後上着と刀を取り上げた。夏も終わりに近く、今日は少し肌寒い。未だ騒がしい街並みを眺めつつ夜風に吹かれては、その冷たさも心地良く感じられた。その隣で日下部はタクシーを呼ぼうと携帯を弄っているようで、本当にどこまでも手際がいいというか、何というか…
「俺ももっと、君のように器用だったら良かった」
「急になんだよ、潰れたか?」
「いいや…本当は、夜も一緒に過ごしたかったんだ、先日も」
「なに、本当に酔ってんじゃん。別に言えばよかったろ、アイツなら喜んでホテルキャンセルすんぞ」
「それでも、言えなかったんだ。君ならば、まず相手がこちらに来ると分かった時点で、一緒に泊まれるようにと手配するだろう」
「まぁそうだけど…別に俺じゃなくてもやるやつはやるだろ」
「そうかもしれないが、君の器用さはもっと優しい。今だって、君は君の為にタクシーを呼ぼうとしているわけじゃないんだろう。分かるぞ、そのくらい」
「……まーね、お見事ですよ日車先生。今呼んでやったから、来たらさっさと帰んな。アンタ今結構酔ってっからな?自覚あるか知らんが」
「ん、ふふ、当たりだな、やはり優しいやつだ、日下部」
「聞いちゃいねぇなコイツ…」 - 31二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 16:44:21
なんか日下部→日車が、恋と名前がつく前の感情って感じがして切なくもあたたかいな…
- 32二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 17:02:29
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- 33二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 17:05:04
地方ではあるが、流石飲み屋街と言ったところだろうか。彼が呼んだと言ってから10分もたたずやってきたタクシーに、乗れと日下部がドアを開けて俺の荷物を車内に投げ込む。投げるなと叱るも、特に何とも思っていなさそうな謝罪が帰ってくるだけだった。乗り込んでシートベルトをつけている間、彼は運転手と話をしているようで、大人しく待っていれば話を終えた彼がこちらを向いた。
「ま、今後もどうにかお前と会わせてやれるように、アイツにはさんざ働いて貰うよ」
「あぁ…有難う日下部。本当に感謝してもしきれない」
「いーんだって。俺は、お前に…」
そこまで言いかけたところで、彼はふと言葉を止めた。日下部が、俺に?言葉の続きを強請る前に、彼は車のドアを閉めた。窓は空いているから、声は届くが…なぜ
「とりあえず、次会うときはきっちりちゃっかり、夜まで一緒に居れるよう根回しとけよ。そこまで面倒見る気ねぇからな俺」
「日下部、なぁ」
「さっき言ってたみてぇにホテルとっとくのもありかもな、まぁ上手く上には言っといてやっから」
「日下部」
誤魔化しも上手くいかないと判断したのか、彼は運転手に車を出すよう告げた。無情にも静かになり始めるエンジンの音が、物理的な別れを予期させる。もう一度問いかけようとする言葉を遮るように、彼は笑って言った。
「気にすんなよ」
「お前は何も考えず、ただ虎杖と幸せになっとけ。もう十分、頑張ったろ」
「…頼むから」 - 34二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 17:11:48
日下部~~~っっ!!
大人の秘めた恋の落日…夕暮れの男の恋の終わり…
日車は本当に気付いてなさそう、でもこの鈍感さも好きだったのかな日下部は - 35二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 17:42:42
- 36二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 19:28:18
気づいていてほしい気持ちと気づかず後ろめたい気持ち一切なく虎杖と幸せになってほしい気持ちがふたつある〜
…いややっぱり何の憂いもなく虎杖と幸せになってくれ - 37二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 20:57:05
>「幸せになって欲しいとか、生きてて欲しいとか。そういうのは、叶わねぇことも多いし。呪いになっちまうことだってある、無情なことにな」
これでアツヤ泣泣そうだよな叶わなかったんだよな妹も旦那もタケルも泣泣って思ってたら
>「お前は何も考えず、ただ虎杖と幸せになっとけ。もう十分、頑張ったろ」
>「…頼むから」
これお出しされて死ぬ 呪いになっちまうことだってあるって言ったよね!?!?その直後に幸せになれなんて呪詛吐いちゃうんすかオイオイオイオイオイオイ重いって
- 38二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 23:38:14
これはTRUEなのかなNORMALなのかな…
虎日←日下部のTRUEっぽい…?一応虎杖と日車は幸せそうだし…
日下部お前も幸せになれよな泣泣泣 - 39二次元好きの匿名さん26/06/17(水) 07:14:06
⋆
- 40二次元好きの匿名さん26/06/17(水) 16:37:56
これはTRUEでしょ、こんな全方位穏やかな展開から急に奈落に突き落とされたらもう何も信じられないよ
- 41二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 00:19:15
実は日車がどうなったのかはまだ分からないんだよな
呪術師ではないけれど人ならざるものになった可能性はまだあるんだよな
そして何をもってしてTRUE、NORMALとなるかもまだ分からない… - 42二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 07:25:35
保守
- 43二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 07:50:12
穏やかで平和なルートを辿っているはずなのになんか不穏だし日下部が…あのルート以外じゃ日下部が報われる事はないんやな…虎日だからNTR以外じゃ成立しないのは当たり前だけど「お前が…お前さえ幸せならそれでいい、たとえその隣にいるのが俺じゃなかったとしても」ってことぉ?!大好きなやつ!!!!
- 44二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 14:12:20
日下部はその言葉通り日車が幸せになれれば報われるのかもしれない…
NTRルートでも日車が幸せになれたかがとても際どいところにある悲しみ - 45二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 21:07:32
このレスは削除されています
- 46二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 00:43:30
どうしようこんな幸せなのにバームクーヘンエンドだったりしたら…嵐の前の静けさだったら立ち直れない…
- 47二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 08:00:10
保守
- 48二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 16:46:55
人類行き着く先はデッドエンドだけど幸せになって欲しい…
幸せって難しいね… - 49二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 23:42:03
保守
- 50二次元好きの匿名さん26/06/20(土) 08:21:21
今虎杖22歳の日車43歳か、ふたりの外見ってどうなってるんだろう
虎杖が老けないのは分かってるけど日車も老けなさそうなんだよなぁ、呪いとか関係なく
若々しいわけじゃなくてなんかこの人年齢止まってるように見えるな?みたいな
あののっぺりとして骨の凹凸を感じさせない頬がそう思わせるのかも知れない - 51二次元好きの匿名さん26/06/20(土) 13:20:43
- 52二次元好きの匿名さん26/06/20(土) 13:30:50
- 53二次元好きの匿名さん26/06/20(土) 20:59:21
保守
- 54二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 02:46:02
YouTubeにまた無断掲載(動画化)されてますね
- 55二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 07:13:44
本当に止めてくれマジでやめてくれ…マジで…
第三者だけど報告してきた早く消えてくれ… - 56二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 16:07:44
このスレが消えないことを祈りながら保守することしかできない
- 57二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 17:49:57
このレスは削除されています
- 58二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 23:22:44
保守
人ならざるものになる道を選んだっぽい日車はどうなるんだ、虎杖の答えは? - 59二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 08:35:09
保守
- 60二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 17:41:57
保守
スレ主をゆっくり待ってるよ - 61二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 21:20:17
このレスは削除されています
- 62二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 06:26:48
保守
- 63二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 15:17:55
ほしゅ
- 64二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 22:05:44
保守!
- 65二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 06:35:21
保守
- 66二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 12:48:00
どうか(本人視点でもいい)幸せになってくれ…
- 67二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 21:05:31
今夜も保守
台風が近付きつつありますね - 68二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 23:29:44
──────
「………──ま」
「──るま……日車!!」
焦点の合わない視界が、そこに彼の桜色が映り込んだ途端、急に明瞭に辺りを映し始める。目の前いっぱいに映る彼の顔は、罪悪感を覚えるほど心配の色を宿していた。
日下部との飲み会から、時は過ぎ去るままに1年が経過した。あの日から彼は、もう二度と、俺に弱ったような表情を見せてくれなくなった。そして、口癖のように俺の幸せを願うようになった。願うというより、祈るように。祈るというより、呪うように。呪術師である彼の言葉にそういった感想を持つのも失礼に当たるのかもしれないと口を噤んではいるが…そんなことを言う彼は全くもって普段通りの顔をしているから、口に出すのは憚られてしまっているのだ。この言葉が、彼の体裁として守っている平穏を。その境界を、彼の身を守るその領域を、壊すものであるのだと分かるから。
後も関係性は変わらず、度々虎杖と会っては健全に時を過ごし、その数日後には日下部に誘われ酒を呷る。なんて己の身の丈にも合わない息抜きを彼らから与えられ、それを食むまま、俺は至って健康にひとつ歳をとった。重ねた歳のたったひとつを見せしめるように白髪が生え始め、手指に僅かな皺が増える。だのに表情と顔に乗る色ばかりが若返って見えるのがあまりに無様で、俺が頭髪の黒に混じる異端を、己が老いた証拠を抜いて無いものとしようとするのに反し。いつも決まって、虎杖は優しくその手を宥めた。 - 69二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 23:31:28
声を掛けられるままに上げた眸に、未だ沈み切らない夕立が差して反射的に瞼を伏せる。眩し過ぎる光に眼を慣らしつつ、ゆっくりと視界を広げれば、心配そうな彼の表情は忽ち安堵に染まった。花々が花弁を落とし種子を実らせ、次の芽吹の為、葉も茎も土に還っていくように、俺は少しづつ枯れていく。彼は桜の木と同じだ。花を散らして葉をつけて、それすら枯らしても次の年には花を咲かせ、幹を太くする。生きる時が違う、別に喩えれば酷く虚しく思える差だ。彼の身体の成長は、丁度あの日。彼が20歳の時に、時を止めた。これ以上は無いのだと、神が運命を勝手に定め付けるように。
任務がこっちの方だったのだと、またもや偏った出張任務を請け負いやってきた彼。照れたように、今日も着替えを持ってきただなんて言って、俺の家に泊まり込むつもりらしい。来客用の布団も出さず、一人暮らし用の1LDKで2人食卓を囲んで、対して大きくもないベッドの上で身を寄せ合って眠る。朝目覚めた空間に、彼が居る。その事実ばかりが身体の内を幸福感で埋めつくして堪らない。…のだが。彼との帰路ですら強く塗り潰すものが、俺の脳内には存在していた。
「…虎、杖」
「もー、ボーッとせんでよ、転んじゃうだろ」
「いや、流石に転ぶなんてことは」
「いーや、前なんもないとこでつまづいてたんでしょ?清水さんから聞いちゃったよ」
「清水…!し、しかしそれとこれとは話が」
「違わない!!…最近なんか元気無いよな、連絡も少ないしさ…なんか悩み事でもある?」
20歳の時には既に、俺を見下げる程の背丈になっていた彼。普段は対等に隣へありのままに並ぶ彼だが、ひとたび俺の話を聞こうと真剣な面持ちになると、その時に限って、少し屈んでみせるのだ。俺の言葉全てを、声色に乗る感情までも拾うように、耳を寄せて。こうなると、誤魔化しようがない。否、罪の意識を覚えるのだ。大丈夫だと言う俺の言葉に返される、何故か申し訳無さそうで、無力感のような虚しさを滲ませる彼の笑顔、その表情に。
「……ない、とは言えない」
「…そっか」
「なぁ、日車。それさ、俺で力になれるなら、聞きたいんだけど…どう?」 - 70二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 23:34:05
つづきだ!!!待ってました!!
- 71二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 00:12:15
きたあああ!!!ありがとう!!!ありがとうスレ主!!!
- 72二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 00:13:09
来てるー!!嬉しい!!
ところでコレ大丈夫…ですよね?
幸せになってるんだよね…? - 73二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 04:47:16
このレスは削除されています
- 74二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 05:46:07
日下部諦めてない…?アプローチを変えた…?
幸せであれと祈るように呪う日下部いいなぁ、優しさの下に恨みにも似た思いがありそうでたまらん
幸せでなければ許さないと言わんばかりだ、しかも度々食事を共にする
一方で虎杖とも明確にくっついてるわけではないけど一緒のベッドで穏やかに眠る関係
40半ばにしてふたりの男の間で揺れる日車寛見を魔性と言わずして何と言うんだよ - 75二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 06:07:38
これさ
「俺で力になれるなら」って、別れようとしてるんじゃないかなと
虎杖と居る時間よりも、日下部と居る時間を息抜きと感じてるのに、虎杖も気付いてそう
長い時間を共に生きて共に死ぬ、エピローグ前の言葉が本当に叶うならそれはそれで虎杖も嬉しいんだろうけど
日車は、自分が期待を持たせた挙句拒絶した結果の、虎杖の行動に対しての結論に、やっぱり何処か同情や罪悪感が滲み出てて、その後一度も関係に及ばない、なんなら泊まる事さえ虎杖から言わないと流れそうな状況で、虎杖との会話もままならない
虎杖の願いも、日車の幸せだからね - 76二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 15:16:34
保守
- 77二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 15:20:31
せめて日車が老いるまでは共にって感じでお互いの時間を生きていくのかな
話し合って決めただろうに日車はその決断が正しかったのかずっと迷ってそう
だから自傷じみた行為もしちゃうんだろうし
これはノーマルエンドの予感… - 78二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 19:45:47
…これは、悩みというより、迷いだ。あの時はその場の解決や感情に任せ、彼に将来を誓ったが、今になって思い返すと思うのだ。彼は一度も、俺が人を辞め長い時を生きることを、決して願うことはしなかったと。彼は本当に、俺と生涯を共に生きて欲しいと、本気で思ってくれているのだろうかと。…いいや、きっと生涯を共にしたいという気持ちは同じ筈だ。問題は、俺を人ならざるものにしてまでか?という話で。
果たして今彼に押し付けている事が、本当に彼の為になるのか?彼の望む未来とは違う形だったら?もしも、俺のエゴばかりであるとするならば…そういった考えが、喉につかえているたったひとつを、かれこれひと月も堰き止め続けている。
「(思ってみれば、最初から手掛かりなんてものは幾らでも、手元にあったのだ)」
呪術、術式、縛り……身近で長い命を持った人物といえば、まず1番に思い付くのは天元様という呪術師だ。ただ、あの長寿は術式由来のもので、かつ術式を持つ当人も今はもう居ない。寿命を弄る、そんな力を持つ呪物や呪具も確かに存在しているのだろうが、元はと言えば他人の呪いだ。何が起こるか、どう作用するかも不明瞭で、尚且つ呪物に限ってはいい思いが無い。…では、縛りはどうだろうと。 - 79二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 22:51:05
まだ何かありそう
- 80二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 00:44:07
みんなが待ってる。2人が共に幸せになることを。
- 81二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 08:55:52
保守です
- 82二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 18:00:55
続き正座待機
- 83二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 18:03:01
おっと?日車はまた虎杖と共に長く生きることを諦めてない?
- 84二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 18:10:42
だと思うなぁ… 長く生きるって具体的にどういう方策があるんだろうと思ってたが
これはあの時のその場の勢いだけでは終わらないってことだと解釈した
人間辞めるのを虎杖は望まないだろうから、人を辞めることなく長生きするその方法とは…? - 85二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 22:49:48
縛り?続きが気になりすぎる!
- 86二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 23:51:32
さすが五条悟に並ぶ才能の原石は発想が違うぜ
正直なところ日車には人間やめてでも虎杖と一緒に生きてほしい
モジュロ見てしまった後だとさ、ね… - 87二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 00:03:56
コールドスリープなんかは選択肢にはいらないか…
- 88二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 08:47:34
羂索方式は…?虎杖は脳と魂だけになった日車でも愛してくれる…?
- 89二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 11:37:09
そう、丁度ひと月前。またいつものように日下部に福島へ呼び出された時、その酒の席で言った事だ。俺の向かいに座って砂ずりを口にしていた彼は、それを聞いた途端ふとその手を止めた。そして「漸くか」とも、「勘弁してくれ」とも読み取れる表情を浮かべた。その表情が物語る真意が何だったのかも今はもう分からない。それでも彼は、何か大罪でも吐露するかのように、彼の扱うシン・陰流、その当主と門下生の間にある縛りのについて話してくれたのだ。
門外不出の縛り、当主への絶対服従の縛り、そして当主が門下生から寿命を吸い取り、己の物とする縛り…というより、最早一方的な呪い。この3つ。最後のひとつに関しては実際存在するのかどうかも分からなかったが、それでも彼ら門下生との間では、確かに有る物と結ばれたもの。当主は本人が名乗りを上げない限り分からない、その上で当主にしか縛りは解除できない。結局、前当主はあの冥冥という呪術師が見つけ出して殺し、縛りは日下部が当主になった途端、全て解除したらしいのだが…
『当主になんか絶対なりたくねぇってあん時は思っちゃあいたが、実際なってみねぇと分からんことも、出来ねぇこともあるもんだよな』
そう、彼が当主になって分かった事柄の内のひとつが、不明瞭であった寿命に関する3つ目の縛りについて。縛りの実在と、その履行の詳細だったのだ。人の消費期限とも言えるそれを、呪いの1つで延長してみせる術。勿論、無から時間を生み出すのは暴挙だ。何かを得るには何かを犠牲に、他者から奪うことでしか、その効果は得られない。これまで実態の掴めなかったそれは、特に弱く呪力の少ない者から、多く寿命を搾取するつくりになっていたのだそう。確かに合理的だ、老衰の前に対象の命が尽きれば、吸われていた寿命など分かりようもない。高齢の門下生が複数いることにも納得がいく。…ただ、この世界の確かな実態と弱者への当たり方を改めて目にし、顔を顰めてみれば、日下部は心底苦しそうに笑っていた。 - 90二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 12:14:11
えっあれもしかしてシン陰当主に日車がなる感じ?
日下部の「幸せであれと祈るように呪う」ってそういう?
「日車が幸せになるためには虎杖とずっと一緒に生きていないといけないから」って無理やり当主を日車に変えて他人から寿命を吸い取らせてでも日車の幸せのために生き永らえさせるつもりなのか…? - 91二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 12:42:54
シリアスな展開でこれを言うのは憚られるけど横恋慕日下部は闇の虎日気ぶり勢になっちゃった…ってコト…?
でも横恋慕日下部継続っぽいんだよな
日車が選んだのなら隣は虎杖でいい、日車が望むのならシン・陰流の縛りを教えてやる
お前の望みを俺が生きている内は俺が叶えてやるって感じなのか日下部は
NTR ENDより大分ズブズブじゃん… - 92二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 13:00:13
これを聞いた時、俺は遂に手掛かりを掴んだと思った。勿論、これ以上彼に我儘を言って、彼の立場ごと縛りを奪おうとなんて気は更々ない。否、彼がそれを口にする前に、予感がして先にそれを断った。面倒が無くなると思ったのに、と悪態をついてみせたのも態とだろう、俺の罪悪感が薄れるように、なんて分かりやすいこともする。そういうのが、器用な優しさと言えるのだ。彼の人生の全ては、結局そこに回帰するのだろう。
『…多方、自分で縛りを結んでやろうってな魂胆なんだろ』
先程俺に思考を言い当てられたのを、そのままそっくり返してみせるが如く、彼は言った。
『アンタは天才ですからね、できねぇとまでは言いませんけど。相当なモンが必要になりますよ、寿命を得るには』
彼の言いたい事はよく分かる。寿命を搾取する側、される側。双方に課される縛りとは、お互いに利益が無ければ成り立たない。己に課すものだってそうだ、力を得るには相応のリスクがいる。長い寿命を得る、それと同等の物を差し出す覚悟。何だってくれてやると言うには、俺自身が虎杖の物であるという自覚が、あまりにも強すぎた。
『……まぁ、正直心配は要らねぇとは思うんだけどさ。ちょっとくらい、意地悪させてくれよ』
彼が何を危惧して、俺から何を取り上げたのかは分からない。もしそれが致命的なものだとして、俺が彼を恨む筋合いも無かった。確かに、今ここに。虎杖と添い遂げる術が存在することが分かった、分かったのだから。そして、この力を用いれば…彼の心を蝕む長すぎる時を、人生を、文字通り片方、担げるのかもしれない。柄にもなく心臓が跳ねた、激情ばかりのあの誓いから約3年も経過して、漸く得た実感に。そして肝心の危惧は冒頭に戻る。言うなれば、畏れているのだ。彼の望む何かを、俺が捧げられぬことが。まずその縛りこそが文字通り、彼を縛る事にはならないのかと。 - 93二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 13:03:18
日車がシン陰の門弟となりその天才性を遺憾無く発揮して己と当主日下部の間に結ばれた寿命の縛りについて解析、自分と虎杖の間で同じような縛りを結ぶとか?
頑張れ才能の原石! - 94二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 14:25:57
「虎杖」
「うん」
「…君は、これから生きなければならない300年程の時間が、半分に減るのだとすれば。どう思う」
「………嬉しい、とまではいかんかも。150年もあれば、結局皆、居なくなれちまうし」
「そうか…」
寿命を得ること、寿命を失うこと、双方が釣り合わない事は分かった。ならばあとは、俺に何が差し出せる?心は既に、全て捧げ切ってしまった。声も、言葉も、身体も全て、とっくに彼の物だというのに、俺にはあと何がある?分からない、分からないのなら問えばいいのだ。それくらい、理性は理解しているというのに。彼の口から述べられる答えが、恐ろしくて口を開けない。俺に求めるものなど、既に無いのだと、優しく、本心のままに、囁かれるのが。この間もずっと、彼は優しく微笑んだままだ。怖い、怖い、怖い。あの閉鎖的なバスルームに閉じ込められた時よりも、ずっと。
それでも、あの二の舞にはしてみせない。言葉に詰りどんなに心乱されようと、確かにそれを紡ぎ出して、吐露してみせようとばかりに脳を回した。黙秘、自白、否認…今の彼に何が通用するのかは分からない。ただそれでも、俺は今の心をただ正直に、包み隠さず…自白する他に、選択はなかった。
「そう、だな……烏滸がましいのだと、分かったんだ」
「え?」
「いいや、こんな事はずっと…君に出会って、底も途方も無い闇にも、空虚にも思えるあの劇場から、掬い上げられてから、今の今まで。ずっと思っていたことではあったんだ」
「……ちゃんと、聞かせてくれる?俺の納得がいくまで、伝わるまで」
彼が、感情を唾液と共に飲み下す音がする。それが何であるか、分かりなど到底しないが…どうせなら、怒気だといい。そう、みっともなく願ってしまった。 - 95二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 14:58:12
「…君の隣に、俺がいることが、果たして君に相応しいのかと。俺ばかりが求めて、結局君が何かをまた飲み込んで。苦しくなってしまうのではないのだろうかと、考えてしまって仕方がないんだ」
「っ、そんなの」
「要らぬ危惧だと君は言うのかもしれない。それでもどうしても、それが過ぎってしまう理由があるんだよ。俺は君を求め過ぎた、君に捧げ過ぎた…その末路が」
じっと、彼の目が俺の瞳を射抜く。これは、催促だ。求めるという言葉に応じてみせるよう、この喉につかえたものを吐き出して、強請って見せろという。恐怖に打ち震える身体から絞り出せたものは、それを伝わせて酷く震えていた。
「…君の人生を、文字通り半分。背負わせてほしいんだ」
「……」
「きみの…寿命を、俺に。日下部に聞いたんだ、縛りを結べば、寿命を君から奪うことができるのだと」
「ざっと、150年ほど。元よりある俺の寿命を鑑みれば、きっと君の方が早く逝ける。きみを、二度と置いていかずに済む」
「だが、150年もの寿命を君から奪うんだ。勿論、それ相応の対価が必要で…問題は、君に俺から支払えるものがあるかどうかなんだ」
「もう俺は、とっくに君のもので。心も心酔しきってしまっている。あと君が何を、俺に求めてくれるんだ?そんなもの無いのだろう、それくらい分かっている。そうだ、もう君に見合うものなんて、ないんだ俺には」
「だから、だからおれは、きみには、見合わなくて…」
目頭が、望んでもいないのに熱くなって、視界が滲む。彼と、目を合わせていられない、いいや、顔も向けられない。このままでは、彼にみっともない顔を見せてしまう。止まれ、止まれと言い聞かせど溢れるものは止まってくれない。気付かぬうちに、顔を伏せてしまっていて、当たり前に彼の表情なんて見えなくて、それがまた不安を加速させて…珠になり溢れるほどになったそれが地に落ちる直前、彼の肩口に、それは吸い込まれた。 - 96二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 15:26:36
全部捧げたからこれ以上あげられるものがない…
あまりにも愛としか言えない言葉 - 97二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 15:28:43
「……置いてかれちまうことを、1人になっちまうことを、そんな簡単に受け入れんでよ、日車」
「いた、どり」
肋が折れるのではないかと思うほど強く抱かれて、酷く心の臓が締め付けられる。それが物理的なものだけでないのだと、恋心も超えた感情が告げて、心底幸せで、息苦しい。零れる涙が彼のパーカーに染みを作って消えていく。頭上から降り掛かる彼の声が、あまりに必死で、震えていて、か細くて。思わず彼の服の裾を、指先で強く握った。
「……俺だけ生き延びて、周りが死んでって、1人になってって、本当に、めちゃくちゃ辛いんだよ」
「…あぁ」
「だから、置いていかれたくない、ってのは今も思ってる。でも、俺はそれ以上に…日車を1人に、したくない」
「…」
「俺は、日車がいい。見合わないかなんてどうでもいい、欲しいものも、やりたいことも、日車が一緒じゃなきゃ、全部ダメなんだ」
「だから、だからさ。俺と一緒に生きて、美味しいもん食べて、いっぱい寝て、沢山笑って泣いて…時々喧嘩とかさ、するかもしんないけど。それでも一緒にいて、そんで、そんでさ…」
「いちばん最後には、俺と一緒に死んで、日車。お願い」
「……もちろん」
それがきっと、縛りの合図だった。彼の寿命を受け取る、彼と共に生きて共に死ぬ。魂に刻まれたそれはきっと、婚姻よりも、間に作る愛の結晶よりも、互いを縛り付けて離さぬ契約となるのだろう。気付けば2人、僅かに目元へ涙を湛えながら、口付けを交わしていた。最後にここに触れたのは何時だったか、触れ合う唇の感触はあまりに遠い記憶とそのままで。そうして俺もたった今から、彼と同じく時が止まるのだろうと、確信にも近い幸福を前に笑った。 - 98二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 15:36:58
この一瞬のハッピーエンドがそのままトゥルーエンドに繋がっていきますように…
- 99二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 15:51:58
これからふたりだけの時間が始まるのか
分かち合ったものが呪いであったとしても、同じものを抱いて生きていけるなら幸せだと思う
迷い悩んで苦しんだ先に得た答えがこれなら、お互いに救われたんじゃないかなぁ - 100二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 16:08:40
──────
「うわ!ここら辺めっちゃ桜咲いてる!キレ〜!」
「そうだな、ついこの前までは、蕾すらなかったようにも思えるのに…」
「時間が流れるのは早いな〜って感じ?へへ、幸せだからかな」
「あぁ、きっとそうだ」
呪いの王との決着から、約14年。彼はとっくに経過観察の時期も終え、高専を飛び出し夢の同居を遂げていた。縛りも上手く機能しているらしい、あの時あの瞬間から、俺の外見は変わらずここにある。白髪も生えてこないと言えば、清水は途方もくれたような表情で、それでも少し羨ましいとごちた。桜の満ちる川沿い、時刻は午前と午後を跨ぐ頃。任務が無いのだと唐突に俺を外に連れ出して、何でもなく辺りを散歩し、何気無くも新しい発見と出会いをする。知らぬ間に住宅街にできていたパン屋で買った焼き菓子を食べながら、とっくに馴染みとなった幸福に口端を緩めた。
「なぁ、日車。清水さん達との約束全部叶えた後さ…もう一度、高専戻らん?」
「高専に?」
「そう、次世代教育っつうか、なんつーか…折角長生きするんだし。まだまだ俺達、やれることあるよなーって…いや、そりゃ日車がやりたくねーなら全然いいんだけど!」
「ふふ、君とまた働けるというのは魅力的だな」
「でしょ!俺もまた、日車と働きてぇな〜って思ってたりして。あぁでも、やっぱり無理はせんでよ?日車が呪術師について、色々思ってたのは分かるし」
「…確かに、今も昔も思うことはある。学生を命の危険に晒している所だとかな。未だに御三家や血筋においての利権も闇も、払拭し切れていない」
「だ、だよな、まぁそん時また考え」
「いいや、それでも。今度は、手ずから変えてみせたいんだ。…せっかくの長生きなのだろう?やれる事は多い、今度こそこの陳腐な才を、空費せぬようにな」
「……へへ、やっぱ日車ってかっこいいわ」
ぱくり、と半分ほど齧っていたフィナンシェを虎杖が口に放り込む。随分豪快にいくものだと、自分の手の中にある同じものへ視線を落とした。桜の花弁が1つ、綺麗な焼き色の上に乗っている。それを指先で丁寧に取り除いて、丁度吹いた春風に乗せて離せば、吹かれ飛んでいくその先に、春日和を背後にした彼の、眩しい笑顔があった。