国立映画アーカイブがクラファンで資金募る 公費大幅減で1億円目標
映像作品を中心に収集、保存する東京・京橋の「国立映画アーカイブ」が25日、クラウドファンディングで安定的な活動を続けるための資金を募り始めた。目標額は1億円。政府が国立の美術館や博物館に自力で稼ぐよう求めるなか、法律が位置づける国立美術館の一つが施設運営のためにクラウドファンディングを実施するのは異例だ。
映画アーカイブの2026年度当初予算で国からの運営費交付金は3億5856万円。25年度の6億3665万円、24年度の6億8291万円から大幅に減った。政府が入場料などの自己収入でまかなうよう求めたことで削減されたとみられる。
そのため映画アーカイブは入場料など自前で稼ぐ自己収入目標額を25年度の約3155万円から今年度は2億4873万円に増額して予算を組んだ。だが、冨田美香学芸課長によると、「自己収入目標額はこれまでほぼ達成したことがない」。人件費などの経費を削減しても限界があり、クラウドファンディングに踏み切ったという。
フィルム9万本所蔵、唯一の映画専門機関
映画アーカイブは、独立行政法人国立美術館傘下の映画専門機関。映画など映像作品の収集や保存を中心に、公開や調査研究も手がけている。9万本以上のフィルムのほか、100万点以上に及ぶスチル写真やポスターなどの関連資料を所蔵している。
国立近代美術館(近美)が開館した1952年に映画事業部門としてスタート。米国が接収していた映画が返還されたのを機に70年に近美に「フィルムセンター」が開館し、18年に近美から独立して6番目の国立美術館になった。
栩木(とちぎ)章館長はこの日開いた会見で「活動を今後も安定的に行い、さらなる発展を目指すためにクラウドファンディングを実施したい」と述べ、「READYFOR」のサイト(https://readyfor.jp/projects/NFAJ2026)で9月23日まで受け付けるとした。
会見に参加した映画監督の諏訪敦彦さんは「学生の時にフィルムセンターに通って映画を見た体験は非常に大きかった。映画人としてのスタートに非常に大きく関わっていた場所だった」と語った。
「文化からの呼び声として受け止めるべき」
今回のクラウドファンディング開始に伴い、55人の映画人が応援メッセージを寄せた。
溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男(みきお)、黒澤明の「4大巨匠」と言われる監督の作品に出ている俳優の香川京子さんは「私たち日本の映画人にとって、国立映画アーカイブは無くてはならない大切な存在です」とメッセージを寄せた。山田洋次監督の常連俳優である倍賞千恵子さんは「先人たちが築いた長い歴史の上に日本映画の今があります」として支援を呼びかけた。
映画監督の是枝裕和さんは「自分を育ててくれた大切な場所を守りたいという気持ちで、映画アーカイブのクラウドファンディングに賛同します」とし、「本来は、100年後の映画ファンの為(ため)に、市場原理に埋没しない哲学を持って公的資金を投入するべきだと考えますので、そのような働きかけも同時に行っていきたいと思っています」とした。
濱口竜介監督は、フィルムセンター時代から通い、小津や成瀬、マキノ雅弘ら巨匠監督の回顧上映に大きな影響を受けたとし、「映画監督として活動できているのはここで見た映画のおかげだと心の底から思っている」として支援の必要性を訴えた。一方で、「私自身は『国立』と名のついた施設が、こうしてクラウドファンディングに乗り出すことを健全な事態とまったく思えない」として、こうも書いている。
「それは、これほどに充実した文化を国がほとんど蔑(ないがし)ろにしていることの証左だからだ。このことは映画の先達である、絵画や彫刻などの美術全般においても同様だろう。我々はこの事態を、単なる『資金集め』を超えた文化そのものからの呼び声として受け止めるべきだろう。それに応じるにはどうしたらいいのか。このファンディングに参加すること? 短期的にはそれもあり得る。しかし、より長期的には二度とこれを繰り返させないように各人が行動することだろう。この呼び声が、断末魔の叫びとならないように」
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