【盗撮】逮捕されるのは1割未満-盗撮が、罰されない本当の理由
「やろうと思えば、どこでも撮れます」
取材した加害者の一人が、私にそう言いました。
彼は20代後半の会社員で、3年間で200本以上の盗撮動画を撮影していました。電車、駅、商業施設、銭湯、職場——撮った場所を、まるで観光地の感想のように淡々と並べました。
「ただ、嫌だった場所はあります」
その続きを聞きたくて、私はメモを取る手を止めました。
加害者は、どこで「諦めている」のか
前回の記事では、ある匿名掲示板に44,000件以上のスレッドがあり、その中に盗撮を扱うものが推計700件以上あることをお伝えしました。
今回は、その中身に踏み込みます。
具体的には——
加害者が「撮りやすい」と感じている場所
逆に「嫌だった」と漏らした条件
なぜ逮捕に至るケースが1割未満なのか
その中で、現実的に何ができるのか
私が取材した加害者200人以上の証言と、実際の掲示板スレッドのデータを組み合わせて整理します。
確認されたスレッドが、すでに「39弾」「98弾」
調査した掲示板で、私が衝撃を受けたのはタイトルそのものより末尾の数字でした。
| スレッド | 継続数 |
|---------|--------|
| 風呂厨隔離スレ | 98弾 |
| 電車内盗撮画像 | 46弾 |
| トイレ盗撮風 | 39弾 |
| 家庭内盗撮投稿 | 14弾 |
| 妹の下着や盗撮で抜く | 7弾 |
「98弾」というのは、同じテーマで97回潰されながら、98回目を誰かが立てているということです。
加害者の一人は、こう言いました。
「捕まる人がいても、抜ける人もいる。それが普通の感覚です」
ここに、私たちが対峙している現実があります。
「一人でやる人」と「組んでやる人」では、難易度が違う
加害者の話を整理していくと、盗撮には大きく2つのスタイルがあります。
単独犯:街・電車・施設で、ほぼ何でもできる
驚いたのは、単独犯が**「撮れない」と感じている場所がほとんどない**ことでした。
街中、電車、商業施設、トイレ、銭湯——機材の小型化が進んだ今、加害者が「事前に下見をして、防犯カメラの位置を把握し、カモフラージュした機材を使う」だけで、ほとんどの場所が対象になります。
その上で、加害者本人が「ここは嫌だ」と感じた条件は3つだけでした。
女性専用エリア(更衣室・女子トイレ)への単独侵入——業者や関係者を装える立場でなければ無理
窓の近くに動体検知センサーライトがある民家——撮ろうとした瞬間に光るのが致命的
見晴らしが良すぎて、外部から目撃されやすい場所——一瞬の不審行動が周囲に丸見えになる
逆に言えば、**この3つに当てはまらない場所は、加害者にとってほぼ全て「撮影可能」**ということです。
複数犯:内部協力者を立てれば、どこでも撮れる
複数人で計画して動く盗撮グループは、さらに範囲が広がります。
特に衝撃だったのは、**銭湯の女湯への侵入も「2人いれば成立する」**という証言です。お金に困っている若い女性を雇い、内部協力者として立てる。これだけで、女性専用エリアの撮影が可能になってしまいます。
ただし複数犯にも弱点があります。
包括的に防犯カメラがある施設では、誰かの足がつく
一人が逮捕されると、グループ全員に芋づる式で捜査が及ぶ
仲間内の裏切り・チンコロ(密告)がある
つまり**「複数犯は規模で勝るが、内部から崩れやすい」**という構造です。
逮捕されるのは、実際に起きた盗撮の1割未満
ここからが、被害者にとって最も知ってほしい現実です。
警察庁の2024年データでは、盗撮関連の検挙件数は年間8,323件。しかし加害者たちは口を揃えて、「これは氷山の一角」だと言います。
実際に逮捕に至るケースが少ない理由は、加害者の証言から3つに整理できました。
理由① 被害者が、気づかない
固定式の盗撮カメラ、トイレや更衣室に仕込まれた小型機材——これらは撮影中に音もしないし、光もほぼ出ない。
被害者が気づかなければ、被害届は出ません。届がなければ、捜査も始まりません。
「一番安全な盗撮は、相手に気づかれない盗撮です」
ある加害者がそう言ったとき、私は反論する言葉を持っていませんでした。
理由② 時効まで「隠して売る」
撮影罪(2023年7月施行)の公訴時効は3年です。
つまり、3年間どこにも出さずに保管していれば、原理的にはその撮影行為自体は罪に問えなくなります。
加害者の一部はこれを利用し、撮影から数年後に海外ドメインの違法販売サイト——日本の警察が直接介入しにくい国に拠点を置くサイト——に売りに出します。
ただしこの手口にも穴はあります。被害者本人が偶然それを見つけて被害届を出すと、サイト側は多くの場合ガイドラインに従って販売者情報を開示します。そこで初めて捜査が始まり、過去の犯行ごと一気に立件される——というケースが実際にあります。
理由③ Telegram上の取引が、足跡を消す
加害者間の個別売買は、Telegramのような秘匿性の高いメッセージアプリで行われることが多い。
決済はPayPayなど、足のつきにくいサービスを経由。アカウント作成には**捨て電話番号(SMS受信専用の使い捨て番号)**を使い、取引後に削除する。
それでも完全に痕跡を消すことは不可能で、仲間内の誰かが密告した瞬間、芋づる式に発覚します。実際の摘発事例の多くは、この「内部からの綻び」がきっかけです。
「逮捕につながった事例」に、共通点がある
膨大な事例のうち、実際に逮捕まで至ったケースを見ていくと、共通したパターンがあります。
自分の「実績」を掲示板に投稿してしまった(承認欲求が命取りになる)
グループ内で共有した動画が外部に流出し、被害者本人の目に届いた
現場で挙動の不審さを誰かに見られて、現行犯逮捕
逮捕された一人のスマートフォンから、グループ全体が芋づる式に発覚
特にスカートの逆さ撮りは現行犯逮捕されやすい犯行です。逆に風呂・民家・施設内に固定設置された盗撮は、犯人にたどり着けないことがほとんどです。
ここに、被害者ができることのヒントがあります。
あなたが今日からできる、3つの実践
「常に怯えてください」と言いたいわけではありません。でも、知っているかどうかで取れる行動が変わることがあります。
実践① 近くにいる人の「不自然さ」に、気づくこと
加害者を見た目で見分ける方法はありません。それでも取材で何度も出てきた「現場での挙動の特徴」があります。
周囲をやたら気にしていて、視線が落ち着かない
女性に対して、不自然に近い距離にずっといる
立ち止まっているのに、スマホを下に向けて構えている
カバンや紙袋が、なぜかスカートのすぐ横にある
どれか一つで「この人は加害者だ」と断定はできません。でも、「なんとなく違和感がある」という直感を、無視しないこと。それ自体が、防犯の最も基本的なスキルです。
実践② 「小さな黒い穴・隙間」を、一度だけ確認する習慣
トイレの個室、更衣室、試着室、ホテルや民泊の部屋。
入ったとき、まず一度だけ周囲を見渡してください。壁・天井・棚の不自然な穴、隙間、見慣れない位置にある小物——カメラのレンズは1ミリ以下でも撮影できます。
特に**民泊(Airbnb等)**では、盗撮事案が複数報告されています。
煙感知器、時計、観葉植物、額縁、ティッシュ箱——「置かれている理由が不自然」なものに注意
スマホのインカメラ(フロントカメラ)を暗所で起動して向けると、赤外線LEDを搭載した盗撮カメラの場合、画面上に白く光るドットとして見えることがある(完全な方法ではありませんが、簡易チェックとして覚えておいて損はありません)
実践③ 自宅・宿泊先には「盗撮発見器」という選択肢がある
最も確実なのは、専用の機器を使うことです。
市販されている盗撮カメラ発見器には、主に2つのタイプがあります。
電波探知型:無線で映像を送信するタイプのカメラを検知
レンズ反射探知型:赤色LEDを照射し、カメラのレンズが反射する光を視認
数千円から購入できるものもあります。「銭湯や公共施設で堂々と使う」ものではありませんが、自宅・出張先のホテル・民泊・職場のロッカールームなど、プライベートな空間でのセルフチェックには有効です。
加害者は、対策している人を選ばない
最後に、もう一つだけ。
取材の最後、私は彼に聞きました。
「対策していても、やる気になればできるんですよね。なら、対策の意味はあるんですか?」
彼は少し考えて、こう答えました。
「やろうと思えばできる、というのと、この人を狙おうと思う、というのは別です。リスクが見える相手は、最初から選びません。撮りやすい人は、いくらでもいるので」
これが、防犯の現実です。
「完全に防ぐ」ことはできません。でも、「選ばれにくくなる」ことはできる。対策している人と、何も意識していない人。その差が、被害の境界線になります。
次回は、この調査でわかった未成年を対象としたスレッド——JS・JC・JKと呼ばれる子どもたちが対象にされている深刻な実態と、保護者・教師・子ども自身ができることをお伝えします。
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大切な方を守るための活動として2000年から非営利で盗撮犯罪を追及してきましたが、本当に現状は酷く深刻な状態です。 今年は撮影罪と迷惑防止条例等違反による盗撮事犯を合算した検挙件数は、9,237件と増加の一途でありそれでも氷山の欠片程度でしかありません。 これからの被害者とその家族の声を…