《DARVO(ドラゴニックアベンジリバースビクトリーオーダー)》
ゲームエンドと思った瞬間やった。
「フッまだだ。私はまだ負けてはおらんよ!」
中二臭い軍服にひらひら勲章を付けた、外した年の小林幸子みたいな衣装の痔古愛が叫ぶ。
こっちはもう完全にゲームを詰めとった
場には証拠カードが三枚。《嘘の存在証明》《録音されし誹謗中傷》《日付入りのやらかしスクショ》。完全に痔古愛のサプライライフを削り切れる布陣や。
「なにい痔古愛ィ!もう終わりや、お前の罪はどう見ても確定やろ!!この状態から出せる言い訳カードはもう、、、」――そう叫んだ、まさにその瞬間やった。
「リバースカード、オープン」ヤツの出待ち粘着カードが、突如もやもやとめくれた。
「永続コンボスターターカード――《被害者ポジの簒奪/ Victim Stance》発動tッ!!」
モラハラ村、村民デュエルアリーナの空気が凍り付く。
「この効果により、相手フィールド上の証拠カードは、、、すべて『否認カード』に変換される!相手を自動的に《加害者》のポジションへ強制移動ォォ!」
なんやと!? こっちが並べた証拠が、つぎつぎとこっちの罪状に書き換えられていく、、、くそっ!これが痔古愛のDARVOデッキの本領発揮か、、、!
「気づくのが遅かったな。多偈ェ!だがこのコンボはなぁ、、、三段階で完成するんだよ、まだまだ境界を侵される恐怖はここからだ!」
ヤツの黄金の手札が、メッキみたいにキショく光る。実際単なるメッキ塗ってるだけやしな。
「まずコンボ速攻モラ魔法《否認/ Denial》で理論操作を展開ッ!!そして追加ターン宣言!」
今までの奴のすべてのモラハラ攻撃カードの履歴すらも消えていく、、、!?あれほどひどい事をしておいてまったく何もしてない事にしようというのか!?もう頭がバグりそうやで。ほんでシレっとこっちのターンを抜かそうとするな。
「ははは、この偽造レアカードに驚くのはまだ速いぞ、多偈!カバートアグレッション魔法発動!《攻撃/Attack》ふはは、どうだ、攻撃を否認したのに実際攻撃される気分は!」
もう何言ってるかさっぱり意味が分かりませんわ。驚いてるのはお前のやり口の汚さや。
「さらに複垢粘着攻撃でターン追加—―」
まだあるんかい。
「場に置いてある《カスの投影/Protection》でお前の中にオレ自身の罪をなすりつけ、お前の過去を捏造する!!さらに追加ターン要求!」
今度はやってもおらんのにこっちが攻撃をしたという話にすり替えられ始めた。なんということや、お互いにデュエルしたつもりが、こっちがずっと初めから異常攻撃ターンという事になってしまっている。なんやこれ、おい審判の腐乱紋のおっちゃーん!どこみてんねん、あれ現環境で使用可能でしたっけ?痔古愛はこっちにお構いなく攻撃を重ねる
「そして最後に《被害者と加害者の反転/Reverse Victim and Offender》で、被害者と加害者を、まるごと入れ替える! このD・A・R・V・Oコンボ、略してドラゴニッックアベンジリバースビクトリーオーダーだああ!」
否認・攻撃・反転やろ。自分で言っといて最後どんなまとめやねん。意味も無茶苦茶でドラゴン何処にも居らんやんか、しかしこっちも反論フェーズをせなあかん。
「く……っ、痔古愛ィ!今何回こっちの手番飛ばした!?まあええわ、こちらも反論カード!《冷静に証拠を再確認!》や!」
一旦否認された証拠カードをもう一度蘇らせて主張する。録音した証拠あるのに否認するってそもそも意味が分からんしな。
「ふはは無駄だ。その反論こそが、このカードの『エサ』。フィールド魔法《罪悪感の植え付け/ Guilt Induction》《トーンポリシング》発動ッ! 《そんなに怒ってやっぱりわるいの自覚してるんじゃないんですかあ??》お前が口を開くたび、お前自身の評判が削れていくぞ!」
しまった!反論すればするほど、《傷ついた被害者を青筋立てて追い詰める激怒した加害者》のイメージが乗算されていく!自己愛のぬらっと光るカードを見て村民アリーナ中のソフトヤンキーたちがざわざわし始めている。奴らにはちゃんとした事実関係を順を追って精査したりする力や、前後の言動からその人の本質を見抜くバランス能力なんかない。なんかキラキラ光ってたらそっちの方を選んでしまう習性しかないんや。ウチラやばくてぶっとんでるしー。
黙れば殴られ続けて負け、喋っても悪者にされて負け、、、くそっこれ完全な詰みデッキやないか!っていうかこれどうやったら勝てるんや。最後の希望を託してカードをドローするしかなかった。
「、、、オレのターン。ドロー」そして引いたカードを、静かにデュエルクロスに置いた。
「発動する、、、魔法カード《脱フュージョン/ Cognitive Defusion》ッ!」
「なにィ!?」
「この効果により、フィールドは『感情』と『事実』の二つのレーンに分割される! お前の《被害者性の簒奪》が干渉できるのは、、、この感情レーンだけや!」
「ば、馬鹿な、、、みんな被害者みたいに見える俺の方を支持してくれるはず!」
自己愛は焦って周りのソフトヤンキーたちに視線を送る。ソフトヤンキーたちは既に試合に飽きてスマホでショート動画を見ていた。半分くらいはアルファードでバーベキューに移動してる。そもそもやつらはあんまり長い展開についてこられんのや。これは好都合や。
「《脱フュージョン》ってのはなぁ、、、湧き上がる感情や勝手な思考と、起きた事実を、べったり癒着させずに引き剥がす技術や。お前が傷ついたかどうかとかお前が周りにどう見られてるのかどうかとか、お前がやった行為が事実かどうか、、、これらは、最初っから別のレーン、別のレイヤーの話なんや。俺がずっとお前からカードをかさねられとったのは、オレが土俵を一つやと錯覚しとったからや。分けた瞬間――」
ヤツの最強カードが、ただの紙切れに変わっていく。もともと紙切れの裏に勝手に書き込んでたものですしな。
「ただの言いがかりや!こちらも続けて速攻魔法《妥当化/ Validation》発動ッ!」
「なっ、、、攻撃カードやないやと!?」
「『お前が傷ついた、その気持ち自体は本物として受け止める』――こう宣言することで、お前の《被害者性の簒奪》は発動条件を失う!!感情を否定された時にしか、あのカードは反転効果を出せんからな。カスとは言えお前の恐怖と恥の感情は認める。やりたきゃオーディエンスはガスライティングで好きに操れ、せやけど――」
俺は手持ちのコンボカードの最後の一枚を、叩きつけた。
「事実はお前の言うとおりにうごかへんねん!《理性/Sirangana》!!関係ない事をごちゃごちゃ言われても、そんなのはなから知らんがな!」
「くそっ多偈ェ!こんなことしてタダで済むと思うなよ!俺の親父はモラハラ村の村民会の議員だという事を忘れるな!”おい、腐乱紋、何をしている!ちゃんと見ているのか?」
形勢不利になった痔古愛が審判に助けを求めるが、もう審判のおっちゃんもさっさと帰ってた。ちょっとでも不利になるとすぐあいつらいなくなるもんな。
オーディエンスもおらんし仲間もおらん、どんどんサプライ力を失ってへたり込む痔古愛、軍服っぽいわけわからん衣装がいまは重そうや。あ、今タグ見えた。やっぱりレンタルやったか、、、まあええわ。いまだ痔古愛はもやもやと匂わせ呪詛カードを握りしめていたけど、もうどうでもええわい。
余りにも憐れな痔古愛の姿に慈悲を感じ、こっから詰めるのもめんどいので、スッとドアスラムカードだけおいて、こちらもモラハラ村村民アリーナを出た。勝つ負けるやなくて、あんな奴とデュエルするだけ人生の無駄や。
あーなんやったんやろ今までのデュエル、、、腹減ったな、天気ええし犬の散歩のついでにアイス食って帰ろ。