# 潰された天才科学者の「癌幹細胞治療」、NYで復活
パスツール研究所の主任研究員だった父は、ある発見をきっかけに「非常識な科学者」のレッテルを貼られ、フランス政府の軍事作戦によって研究室を破壊された。
しかしその研究は、彼の娘の手でアメリカに渡り、 今、コロンビア大学やカンザス大学医療センターなどの名門研究機関で「化学療法に抵抗する癌幹細胞を完全に消滅させる」という驚くべき成果を挙げている。
娘のシルヴィ・ベルジャンスキは当時ニューヨークで弁護士として働いていたが、父がフランス政府に逮捕されたことを皮切りに、彼女の人生は大きく変わる。
幼い頃から父は研究に没頭し、シルヴィは自分が見捨てられていると感じていた。しかし父の逮捕後、事情は一変する。彼女が知らなかったのは、父の研究がそもそも癌の常識を根底から覆すものだったという事実だ。
1996年10月9日、フランスの特殊部隊GIGNは午前6時に父の研究室を襲撃した。機械銃と犬を連れ、ヘリコプターまで出動させた軍事作戦だった。逮捕された父はあっという間に自宅軟禁下に置かれ、すべての研究資料と製品が押収された。
なぜ国家権力が一人の科学者にここまでの措置を取ったのか。その理由は、父の理論が製薬業界のビジネスモデルそのものを脅かしていたからだ。
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当時の医学常識は、癌は遺伝子の突然変異によって引き起こされるというものだった。だが父は、環境中の毒素がDNAの二重らせん構造を「開かせる」ことで癌が生じると主張した。
そして彼は、正常細胞には無害で、この不安定化したDNAを持つ癌細胞だけを選択的に殺傷する2つの植物抽出物を発見した。
アマゾン原産のパオ・ペレイラとアフリカ原産のラウウォルフィア・ボミトリアだ。特許が取れない天然物による治療法は、巨額の利益を生む製薬産業にとっては脅威でしかなかった。
さらに衝撃的なのは、この植物抽出物がフランス大統領ミッテランの命を救ったという事実だ。1990年に末期前立腺癌と診断されたミッテランは、公式の医師団からは「モルヒネで痛みを和らげるしかない」と宣告された。だが彼はこれらの抽出物を服用し、2年間の任期を全うして生きたままエリゼ宮を去った。その直後、父の研究室は潰された。
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父はその後、急性骨髄性白血病を発症し、1998年に亡くなる。死の間際、彼は娘に3つの約束を託した。裁判で闘うこと、製品を供給し続けること、そして研究を続けることだ。弁護士だったシルヴィは、父の遺産を継ぐためニューヨークでベルジャンスキ財団を設立する。
彼女はアマゾンの奥地まで出向き、先住民と交渉してパオ・ペレイラの樹皮の持続可能な供給網を築いた。フランスから押収を免れた実験機器を数千ドルで落札し、アメリカの研究機関と連携して研究を復活させた。
そして2010年代に入り、彼女の努力は実を結ぶ。カンザス大学医療センターの研究で、パオ・ペレイラとラウウォルフィアの抽出物が、化学療法に抵抗性の「癌幹細胞」を数時間で完全に消滅させることが確認されたのだ。
膵臓癌と卵巣癌、いずれも極めて難治性の癌において、この効果は一貫して再現された。マウス実験では腫瘍が70%以上縮小し、化学療法薬との併用で相乗効果も確認された。
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だが、これらの成果は製薬業界や既存の医療規制システムを動かさない。特許が取れない天然物には巨額の研究開発費を投じるインセンティブが働かず、米国ではサプリメントの健康効果に関する科学的根拠の情報提供すら「未承認医薬品の販売促進」として取り締まられる。
シルヴィは告発する。「助ける力があるとき、我々には助ける義務がある」と。
日本でも癌は国民病だ。3人に1人が生涯で癌に罹患し、治療費は年々増え続けている。それでも、ここで紹介されたような画期的な研究がほとんど知られていないのはなぜか。
選択肢を知らないまま、私たちは本当に最善の選択ができるのだろうか。
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書籍:『Winning the War on Cancer: The Epic Journey Towards a Natural Cure』(『癌との戦いに勝つ:自然治癒への壮大な旅』)2018年
著者:Sylvie Beljanski(シルヴィ・ベルジャンスキ、ベルジャンスキ財団副会長)