自宅に警察「うちがサイバー攻撃の中継地点になっていた」、ネットにつながるモノを犯罪に悪用された…どういうこと?
「あなたの自宅に対する『捜索差押許可状(令状)』が出ています。何か心当たりはないですか?」――。 【表】「こんなものまで?」サイバー攻撃の踏み台やターゲットとなったもの一覧 ある朝、自宅に警察が突然やってきて、玄関先でこう切り出される。身に覚えのない人にとって、これほど不可解で恐ろしい瞬間はないだろう。 ■自宅が攻撃の「中継地点」になっていた… これに近い出来事が、実際に国内で起きている。2022年の秋、警視庁の捜査員が都内に住む30代の男性会社員のもとを訪れた。都内のある大手企業が不正アクセスを受けた疑いがあり、不正な通信の出どころをたどっていくと、この男性の自宅にたどり着いたのだという。
男性はまったく身に覚えがなかった。その企業との接点もない。それでも調べてみると、自宅でネットに接続するために使っていた機器が、知らないうちに外部から操作できる状態に改変されていた。攻撃者はこの家庭の機器を乗っ取り、企業への攻撃の「中継地点」にしていたとみられる。 被害者であるはずの住人が、知らぬ間に加害の側に立たされていたことになる。こうした捜査では、パソコンやルーター、スマートフォンがその場で押収されることもある。自宅のネット環境は使えなくなり、仕事にも日常生活にも支障が出かねない。
身に覚えのない犯罪で自宅に警察が来る。実はこれに類する出来事は過去にも起きていた。12年には、マルウェアに感染し遠隔操作されたパソコンなどから、無差別殺人予告や幼稚園・小学校への襲撃予告が次々に送られた。無関係の4人が誤認逮捕される事件に発展している。 筆者も当時、事件の真相解明に向けてマルウェア解析などで捜査に協力しており、強く記憶に残っている。あのとき狙われたのはパソコンだった。今、同じ構図がパソコンの外にまで広がっている。
先の男性の自宅で乗っ取られていたのは、各家庭にある、インターネットにつなぐための「ルーター」だった。マルウェアと聞けば、パソコンやスマートフォンに感染するものを思い浮かべる人が多い。だが攻撃者が狙う対象は、いまやパソコンだけにとどまらない。 家庭やオフィスの「ネットにつながる機器」そのものを乗っ取る攻撃が、ひそかに数を増やしている。ルーター、防犯カメラ、録画機、テレビに挿す小さな端末。まとめて「IoT」(Internet of Things=モノのインターネット)機器と呼ばれるこれらは、今ではどの家庭にもいくつかはあるだろう。