「有休は欠勤扱い、診断書出せ」と強要、団交拒否…JR東海“労使10年紛争”が最高裁で決着、組合“完全勝利”宣言
最高裁は2026年6月12日、JR東海(東海旅客鉄道)が労働組合の団体交渉の申し入れに応じなかったことを巡る行政訴訟で、国(中央労働委員会)側の上告を棄却する決定(※)を出した。会社の団交拒否を不当労働行為と認めた二審・東京高裁判決が確定した。
※上告に理由がないことが明らかであるため、口頭弁論を開かず、書面審理のみで棄却する方式(民事訴訟法317条2項参照)
発端は、1人の組合員が手術のため年次有給休暇(年休)を取った際、会社の助役から「診断書」の提出を求められたことだった。「年休に診断書はいらないだろう」――。その一言から始まった争いは、決着まで10年近くを要した。
提訴したJR東海労働組合(JR東海労)は6月24日、都内で記者会見を開き、「完全勝利」を宣言した。淵上利和(ふちがみ・としかず)中央執行委員長は「最高裁で(JR東海による不当労働行為を認める内容の)決定が(2006年6月以降の約20年間に)12件も出されていること自体が異常だ。この異常さをぜひ伝えてほしい」と訴えた。
会社側「年休も『欠勤』に当たる」と主張
事の起こりは2016年9月にさかのぼる。組合員のAさんは、手術に伴う入院のため合計7日間の年休を申請した。これが付与された後、会社の助役がAさんに対し、診断書の提出を求めた。
Aさんは「年休の取得に理由は不要だ」と主張し、納得できないとして会社の制度にのっとり苦情を申し立てた。しかしこの申告は却下され、苦情処理会議は開かれなかった。
会社側の根拠は、労使で結んだ基本協約や就業規則の規定にあった。
そこには「傷病により継続して5日を超えて欠勤する場合には休養見込期間を記載した医師の診断書を添えて届け出る」(基本協約37条2項など)との定めがあり、会社は「年休もこの『欠勤』に当たる」として診断書が必要だと主張。組合側は「『欠勤』に年休は含まれない」と反論し、解釈は真っ向から対立した。
団体交渉の申し入れを4回拒否
組合は2016年11月1日を皮切りに、12月19日、翌2017年2月3日、3月9日と計4回にわたり、この規定の解釈・適用について団体交渉(団交)を申し入れた。団交とは労働組合が使用者と労働条件などを交渉することで、使用者は正当な理由なく拒めないとされる。
しかし会社は、基本協約250条が定める6項目の団交事項に該当しないとして、いずれの申し入れにも応じなかった。
組合は2017年7月、東京都労働委員会に救済を申し立てた。都労委は2019年7月、団交拒否を不当労働行為と認定し、会社に対し、新聞紙2頁大の白紙に謝罪文を墨書して10日間掲示するよう命じる救済命令を発した。
ところが会社の再審査申し立てを受けた中労委は2021年12月、「幹事間折衝は実質的に機能しており、会社の対応は労使慣行に従ったものだ」として救済命令を取り消した。
組合側はこれを不服とし、2022年7月、中労委命令の取り消しを求めて東京地裁に提訴。地裁は2024年11月に中労委命令を取り消し、東京高裁も2025年10月、一審判決を維持して国の控訴を棄却した。そして今回、国の上告も退けられた。
会社側の説明に“食い違い”
裁判で組合側が突いたのは、会社解釈の変遷だった。
会社側は1988年(昭和63年)に作成した“解説書”で「年次有給休暇は欠勤には当たらない」としていた。ところが後に「『欠勤』には年休が含まれる」と解釈を変えたという。
幹事間折衝で組合側の業務部長がこの食い違いをただしたのに対し、会社の人事部勤労課・X課長は、解説書は過去の就業規則についてのものだとして「過去の資料を基に議論をする考えはない」と回答。現在の解釈の論拠については「部内用の解釈資料は存在するが、詳細について明らかにする考えはない」と述べるにとどめたとされる。
都労委はこうした会社解釈を「文理から離れたもの」と評価していた。高裁も、「欠勤」という語の一般の用例や規定の文理に沿わないと言及したうえで、幹事間折衝での会社の対応を「誠実さを欠く」と判断。団交と同程度の実質的な協議が行われたとは認められないと結論づけた。
組合側はこの高裁判断を画期的だと位置づける。淵上委員長は会見で、高裁が組合の申し入れを義務的団交事項と認めた一審判断を支持したうえ、さらに踏み込んだと説明。「JR東海労の申し入れは、基本協約250条6号の『この協約の改訂に関する事項』に該当する。つまり基本協約があっても団体交渉は拒否できないと明確に打ち出した」と述べた。
「会社の姿勢を転換させたい」
組合によれば、今回の決定でJR東海が不当労働行為と認定されたのは11件目となる。さらに、淵上委員長が原告として争った名誉毀損訴訟での最高裁勝利を加えると、会社との間の最高裁での勝利決定は12件に上るという。
組合は最高裁決定を受け、6月18日にJR東海に申し入れを行った。都労委が命じた謝罪文の早急な掲示などを求める内容だが、JR東海労側によると、会社からは「国(労働委員会)の考え方がはっきりしないので、何とも申し上げられない」との回答にとどまり、団体交渉の場も設定されていないという。
淵上委員長は「会社は最高裁の判断が間違っているという姿勢を崩していない」と批判。「労使間の労働組合を弾圧する、軽視するという異常な会社の姿勢を転換させたい」と述べた。
なお、弁護士JPニュース編集部の取材に対し「会社の主張が認められなかったのは残念である。今後も法令順守に努めていく」と回答した。
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