変わる大学、大学はいま
「私立大を3分の1に」財務省主張の危うさ 地方小規模大学の価値を知ろう
2026.06.23
中小大学の奮闘や学生の成長を描く「崖っぷちの私立大学」
「定員割れ大学は潰せばいい」と簡単に主張する人たちの大半は、実際にこうした大学を訪ねたことはないだろう。表面的なデータを見ただけで、あるいは有名大で学んだ過去の体験をベースに語るケースが多い。偏差値や知名度ばかりを重視する人は見向きもしない、大切な価値を持つ小規模大を数多く取材してきた身として、広く社会に伝えていく責任があると考えていた。
また私は2018年から、朝日新聞と河合塾が共同で続ける全国大学調査「ひらく 日本の大学」の担当記者として、回答とともに寄せられる600校以上の学長らの訴えに毎年目を通してきた。「教育水準は有名大に負けていない自信があるが、広報力が弱くて地元以外に知名度がない」「地方大の現状を無視した国の政策で窮地に追い込まれた」。そんな悲鳴とも言える声を、散発的な記事だけでなく、まとめて伝える機会を作りたいと考えていた。
このため、朝日新聞「ひらく 日本の大学」取材班として今月12日、朝日新書「崖っぷちの私立大学」を発刊した。
少子化が急加速する「2035年の崖」は目前に迫る。本書ではまず、経営難などで実際に撤退を決断した大学の状況や関係者の声を示し、そうした状況に大学を追い込んだ国の政策などの変遷を振り返る。そのうえで、険しい崖を単独で、あるいは他大学や自治体と連携して乗り切ろうとしている地方大や中小大の取り組みや、目をみはるような成長を見せる各大学の学生たちのリアルな姿を紹介。さらに文科省で大学政策を進める高等教育局長や、長く内外の大学を分析してきた研究者らのインタビューも収録する。
副題は「偏差値で測れない価値をどう見抜くか」とした。最近、保護者の意向に従って進学先を決める若者が増えていると感じる。よかれと思って保護者が偏差値や知名度だけで判断して進学先を示すことで、子どもが希望する進路をあきらめていたら、大教室の片隅で学ぶ意味を見いだせずにいたら……。こうした状況では、子どもが主体的に学んだり成長したりする機会を逃すことにもなりかねない。そして、多くの人がこうした大学選びを続けていけば、結果的に、各地で小規模大の撤退が進み、地方の衰退を加速させていくだろう。
気候変動や国際情勢の悪化、生成AIまで登場し、有名大を卒業すれば安泰とは言えない時代となった。現在はまだ各地に多様な特色がある大学が存在している。まずは多くの人にこうした大学の存在を知ってもらいたいと、本書では偏差値以外で大学を選ぶ際に役立つコンテンツも紹介している。受験生が生き生きと学び、学生生活を楽しみ、成長できる大学と出会う機会となってほしい。