政治団体「NHKから国民を守る党」(NHK党)の党首、立花孝志氏が2024年の東京都知事選で、ポスター掲示板を“ジャック”したことを覚えている人はいるだろうか。この問題をめぐり、司法が踏み込んだ判断を示した。
NHK党や立花氏の代理人をつとめる福永活也弁護士が、フリージャーナリストの「選挙ウォッチャーちだい」(本名:石渡智大)さんを名誉毀損で訴えた裁判の控訴審が6月24日、東京高裁(山田真紀裁判長)であった。
山田裁判長は、一審判決を維持し、福永弁護士側の控訴を退けた。
そのうえで、2024年の都知事選で福永弁護士が自身のポスター枠を立花氏に使わせたことについて「立花氏による不法行為に加担した」と判断した。
この判決を受けて、掲示板ジャックの際にポスターで中傷を受けたと主張する政治団体「みんなでつくる党」代表の大津綾香氏は同日、福永弁護士を相手取り、330万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
ちだいさんと大津氏の代理人をつとめる石森雄一郎弁護士がこの日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、判決の内容や提訴について説明した。
一方、福永弁護士は取材に「大津氏の件は私の過失による低額の賠償が認められるかが争点で、大層な話ではないです」などと回答した。
●発端は「note」の記事 福永弁護士が名誉毀損で提訴
東京高裁の判決によると、福永弁護士は、ちだいさんが2025年4月にnoteへ投稿した記事の「自分たちが犯罪行為や不法行為を平然かつ盲目的に次々と行った結果の蓄積であり」との記述について、自身の名誉を傷つけたとして損害賠償を求めて提訴した。
一審・東京地裁は今年2月、この表現は名誉を低下させるものの、重要な部分が真実であると認められ、違法性は阻却されるとして、福永弁護士の請求を棄却。福永弁護士はこれを不服として控訴していた。
●争点となった「ポスター枠を貸した責任」
この裁判では、問題となった表現の前提となる都知事選でのポスター掲示について、福永弁護士に法的責任があるのかも争点となった。
石森弁護士は会見で「(控訴審では)中傷ポスターが貼られた掲示板の枠を貸していた人間に不法行為が成立するのかどうかが主な争点になった」と述べて「一審からかなり進んだ判断をもらえた」と評価した。
問題の発端は、2024年7月の東京都知事選だ。
立花氏率いる政治団体は、福永弁護士を含む24人の候補者を擁立した。候補者のポスター掲示枠を第三者に販売し、購入者が自由にポスターを貼れるとする、いわゆる「ポスター掲示板ジャック」を展開した。
犬や猫の写真のほか、風俗店の広告や差別を助長するようなポスターも掲示され、社会問題となった。
●大津氏への虚偽の性的中傷
会見での説明などによると、このうち立花氏は、大津氏の顔写真を無断で使用したポスターを、大津氏の自宅周辺を中心に都内で2500枚以上掲示したという。
ポスターに印刷されたQRコードを読み込むと、「大津氏が政治資金パーティーでSMプレイを披露し、その様子がYouTubeで公開された」という、事実無根の性的な虚偽内容を含むアニメーションが流れる仕組みになっていたという。
●高裁の判示「立花氏の不法行為に加担した」
高裁は、福永弁護士について「立花氏が本件ポスター枠に大津氏を中傷するポスターを掲示し、QRコードを貼り付ける行為に及んでいたことを、容易に知り得た」と認定した。
そのうえで、仮にポスター枠に大津氏を中傷するポスターやQRコードが貼り付けられた事実をまったく知らなかったとしても、候補者以外に委ねるという通常は想定されない方法で利用する以上、「どのようなポスターを掲示するのかを確認すべきだった」と指摘した。
そして、「その確認をしていなかったことになるから、立花氏による不法行為に加担したものとして、福永弁護士が不法行為責任を負うことは否定できないというべき」と結論づけた。
●判決受け、大津氏が330万円求め提訴
石森弁護士は会見で、この判決を受けて大津氏が同日、福永弁護士を相手取り、330万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたことを明らかにした。
訴状では、福永弁護士が都知事選のポスター掲示枠を立花氏側に使わせたことで、立花氏による大津氏への名誉毀損行為に加担したことが不法行為にあたると主張している。
●ほかの候補者23人にも波及か
また、問題となったポスターが大津氏に対する「人身攻撃、人格攻撃としての名誉毀損行為」にあたることは、立花氏側との別訴ですでに認定されていると指摘した。
石森弁護士は「今回の判決のロジックからすれば、ほかの候補者も不法行為の責任を負うと読み取れる内容になっている」と述べた。
福永弁護士以外の23人についても提訴するかどうかは、大津氏と協議したうえで判断するとしている。
●福永弁護士「大層な話ではない」
控訴審判決に対する見解や上告の考え、そして大津さんによる提訴について尋ねたところ、福永弁護士は6月25日、次のコメントを弁護士ドットコムニュースに寄せた。
「ハリウッドにいて、しばらく判決受領できないので、帰国したら考えます。
大津氏の件は私の過失による低額の賠償が認められるかが争点で、大層な話ではないです。
それより、自身が故意の隠匿毀損により破産管財人から何千万円もの賠償請求を受けている裁判に向き合うように。」