警視庁が摘発した「ジュビリーエース」や「ジェンコ」などの無登録の投資詐欺的金融関連商品をめぐり、被害に悩み自殺した女性の遺族が、勧誘者ら3人を相手取り、計約1200万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こすことが分かった。自殺にまで追い込まれた川上穂野香さん=当時(22)=が交流サイト(SNS)を通じ、大学時代の同級生だった男に「ジェンコ」への投資話を持ちかけられたのは令和2年8月末のこと。同級生から紹介された別の男からも「LINE」で説明を受けたという。
《所謂(いわゆる)マルチですかね》
《話がぼんやりとしか見えてこず仰っていることが点でしか理解できず線として繋がらないので流れが把握できないです》
LINEには、当初、警戒を示した様子が残されている。ただ、男側は《マルチとかネズミではないです》と否定。《出資者が多いほど利益率も高まる》などと甘い言葉を並べて投資を募った。LINEでのやりとりは、数日で100件を超えていた。
さらに男側は新事業が始まると称した9月1日までの入金を迫った。穂野香さんは言われるがままに消費者金融3社を回り150万円を工面、男側に託した。だが、2週間ほどが経過したところで投資案件が破綻したと分かったという。
9月30日、穂野香さんは勧誘者の男のもとを訪れて返金を申し出たが、全く取り合ってもらえなかった。「返してほしい」。こう懇願する穂野香さん側に、現金を託した男が「なんで?ハハハ」と笑いながら話す音声データも残っている。
穂野香さんは2歳の時に両親が離婚、母親の佐永子(さえこ)さん(55)とともに大阪府豊中市の市営住宅で暮らしていた。大学へも奨学金300万円を借りて進学。卒業後は教育業界へ就職し、充実した日々を送っていた。
だが、その人生は投資話で暗転した。
男に取り合ってもらえなかった穂野香さんは、10月1日に警察に、翌2日に弁護士に相談する予定だった。しかし、1日午後、佐永子さんが自宅に戻ると穂野香さんの姿はなかった。自室の机には、運転免許証や健康保険証といった身分証が置かれていた。
佐永子さんは胸騒ぎを覚え、必死に捜したが、2日未明に大阪市内のホテルで命を絶ったとの警察からの連絡が入った。
ホテルには遺書が残されていた。《お母さんへ》。冒頭にそう記された遺書には《22年間、ずっと私を育ててくれてありがとう》という母への感謝とともに《投資詐欺の件でたくさん迷惑を掛け、心配を掛けてしまってごめんなさい》との謝罪の言葉が記されていた。
「何も悪いことをしていないのに謝ってばかり。たった1人で、どんな気持ちで書いていたんだろう」と語る佐永子さんは、こう続けた。「『だまされた方が悪い』と思われるかもしれないが、本当にそれでいいのか。勧誘者に反省はなく、許せない」(宮野佳幸、塔野岡剛)