【社説】中傷動画問題 許されぬ首相の答弁回避 秘書招致にも応じよ
この社説のポイント
●中傷動画問題をめぐる高市首相の国会答弁は場当たり的で、疑念は晴れない
●答弁の訂正も発生しており、首相の言葉への信頼は損なわれた
●陳述書提出で答弁を代替できない。真相解明には秘書の参考人招致が必要だ
長広舌ではぐらかし、時に色をなして反論する。果ては、秘書の陳述書を提出するからと答弁を回避する。こんな場当たり的な対応では、とても疑念は払拭(ふっしょく)されない。問題を長引かせているのは、自らの振る舞いであることを高市早苗首相は自覚すべきだ。
説明が二転三転
首相の公設秘書が自民党総裁選や衆院選で、他候補を中傷する動画のSNS投稿に関わったのではないかという疑惑である。週刊文春が動画を作成・拡散したという男性の証言や、LINEなどで秘書と交わしたというやりとりの記録をもとに報道。共同通信もこの男性の証言を伝えた。
事実なら、民主主義の土台である選挙の公正を揺るがす重大事である。首相は自身の事務所による依頼を否定するが、秘書と男性の関係をめぐる説明は二転三転しており、納得できるものではない。
秘書と男性は「面識はない」というが、面識とは「実際に会って名刺交換をし、氏名や所属を承知していること」なのだという。言葉の解釈でごまかそうとしていると見られても仕方あるまい。
文春「有料会員」を拒否
週刊文春が秘書と男性のオンライン会議のものだとして音声を有料公開した時、「有料会員になることを拒否する」と、当初確認を拒んだのにも驚く。疑いを晴らしたいのなら、すすんで確認するのが普通だろう。音声を聞いた後も、首相は「高い声で違和感」があり人定はできない、秘書は「自分の声に似ているように思うが、確信は持てない」とあいまいなままだ。
首相が国会答弁を訂正する事態もあった。高市事務所がオンライン会議の存在を認めたとの週刊現代の報道について、首相は「内容が事実と違うと(秘書から)聞いた」と述べたが、「改めて確認したら、回答した内容だった」と言うのだ。
意図的でなくとも、確認が不十分なまま、結果として事実に反することを国会で述べた責任は重い。首相の言葉に対する信頼が損なわれたといってもいい。
陳述書は一方的、質疑が必要
中傷動画を作成したという男性は、首相の名前を冠した暗号資産(仮想通貨)「SANAE TOKEN(サナエトークン)」の発行にもかかわったとされる。首相は関与を否定しており、秘書の陳述書と併せ、関連資料を提出すると述べた。ただ、それを答弁に代えるなどという、説明責任逃れは許されない。
陳述書は一方的な説明に過ぎない。具体的に疑問点をただすやりとりが欠かせない。首相が潔白を証明したいのなら、秘書の参考人招致に堂々と応じるべきだ。
社説「digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。
この記事の続きを読むなら今がお得。初回1カ月無料+Visaギフトカードが当たる▶今すぐ登録