「クソ客」と「ブラック経営者」ばかりが増長!? 性売買を罰しない「非犯罪化」で見えた“負の側面”
消えない売春への根強いスティグマ
性売買の規制モデルは、いずれも売春を”労働”と見るか”性暴力”と見るかの違いによって賛否が大きく分かれる。売春を「労働/職業」として捉えるセックスワーカーの権利運動の中では、非犯罪化モデルが理想的なゴールとされているが、現在の日本にはそぐわないのではないだろうか。日本では”売春は一般の性道徳に反している”とされており、強いスティグマがある。そのため、マッサージや介護などといった普通の労働と同様に扱うのは無理があるのだ。 また、非犯罪化モデルを導入することによって「性風俗産業に特化した規制を無くす」ことは、売春防止法も風営法も無くすということである。すると街中に性風俗店があふれ、性風俗店を作ろうとする業者と近隣住民との間でトラブルが頻発するだろう。 ベルギーでは大きな駅の近くに売春街があり「東京駅の前に赤線地帯がある」ような感じになっているという。近所のマンションの一室にデリヘルの事務所ができて大問題になっている今の日本で、特区制度(ゾーニング)を無くすことは”夢幻(ゆめまぼろし)”でしかない。 また1998年にデリヘルが合法化した理由は、実態の分からない派遣型違法風俗(ホテトル)に手を焼いた当局がこういった店を管理下に置くためである。これから許認可制度(ライセンシング)を取りやめて、野放しだった頃のように戻すことはありえない。国は非犯罪化に後ろ向きなスタンスを取ることは間違いないだろう。 非犯罪化をするには”労働者の権利が守られる”という社会的な基盤が必要だ。だが、そもそも他の仕事でも労働基準法があやふやになっている日本の現状では、非犯罪化は”机上の空論”でしかない。合法化以上に実現は難しいところだ。 〔参考文献〕 『セックスワーク・スタディーズ』SWASH(編)、日本評論社、2018年 『<性の自己決定>原論』宮台真司、速水由紀子、山本直英、宮淑子、藤井誠二、平野広朗、金住典子、平野裕二、紀伊國屋書店、1998年 『性売買のブラックホール』シンパク・ジニョン、ころから、2022年 この他、多数の書籍、ネット媒体などを参照しました。 取材・文・写真:生駒明
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