「クソ客」と「ブラック経営者」ばかりが増長!? 性売買を罰しない「非犯罪化」で見えた“負の側面”
非犯罪化したベルギーの事情
売春防止法の見直しがすすめられるなかで、世界各国の性売買規制の実態について取材した風俗ジャーナリスト・生駒明氏の連載第3回。後編では「第3の道」とも言われる非犯罪化モデルへの批判について取り上げる。 【写真】「つわものどもが夢のあと」…かつて密集していたちょんの間が現在は跡形もない歓楽街 ’22年に欧州で初めて非犯罪化モデルを取り入れたのがベルギーである。法務大臣はこれを「歴史的」と呼び、「セックスワーカーがもはやスティグマ化されず、搾取されず、他人に依存させられないことを保証する」と自画自賛した。 ’24年には、セックスワーカーが正式な雇用契約を結ぶことを認めて、病休、産休、年金などを保障する法律を施行し、他の職業と同等の社会保障を受けられるようにした。保障の内容には失業保険、健康保険、家族手当、有給休暇などもあるほか、顧客を拒否する権利も含まれる。 雇用主は性的暴行、人身取引、詐欺などの前科がないことが条件とされ、「清潔で衛生的な職場環境の提供」「緊急用ボタンの設置」を義務づけられるとともに、「顧客拒否や行為拒否を理由に解雇してはならない」とされた。 このようにベルギーの新法はセックスワーカーを「犯罪者」ではなく「合法的に働ける労働者」として、社会保障や労働権を全面的に付与した。これにより、セックスワークの業界全体の安全性と人権保護が大きく前進することになったという。 だが、非犯罪化への反発の声も強い。それはセックスワークだけでなく、性売買の斡旋行為、性風俗店の経営、買春もすべて非犯罪化することを意味しているからだ。「この法律は買春客と性売買業者による性的搾取を合法化、正当化し、女性の権利にとって真の後退を覆い隠すものである」という指摘も出ている。 また、「セックスワーカーたちが客を断ったり性行為を拒否するなどの新しい権利を行使すれば、売り上げが減ったという理由で性売買業者に罰せられる」可能性が見過ごされているという。 理論上は客を拒否したり、意に反する性的行為を中止したりできても、実際はセックスワーカーにとって客を怒らせることはボスを怒らせることを意味する。不安定で弱い立場にあるセックスワーカーたちが、こうした権限を行使することは考えづらい。