事業者再構築補助金の交付期限(支払遅滞)とその他自主返納問題等について
本記事は、Xのスペース(https://x.com/yasasi_manasama/status/2065751029946470644?s=12)において、事業再構築補助金をはじめとする独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が交付する補助金の交付期限と履行遅滞、その他自主返納等の諸問題をテーマに対談した内容を文字起こししたものです。
1 対談者の紹介
司会:行政書士まなちゃま先生(X:@yasasi_manasama)
ゲスト:中小企業診断士白川先生(X:@j_shirakawa)
私、弁護士岸上大起(埼玉弁護士会所属)(X:@Ssu9yx)
行政書士のまなちゃま先生の司会のもと、補助金に関する法律論を弁護士の岸上が、資金繰りや補助行政の実務の現状についてを中小企業診断士の白川先生が、それぞれの立場からお話ししています。
2 補助金の交付期限
弁護士岸上:早速なんですけど、独立行政法人である中小機構が交付する補
助金の交付期限っていうのは、本当に難しい問題だと思っていて。国だったら明らかなんですよね(交付決定の翌年度の4月30日。詳細は後記3)。国だったら明らかなんですけど、独立行政法人の場合どうかみたいな。まあ、そういう話なんですけど。
弁護士岸上:これって要は、白川先生からよく聞くんですけど、実情としてはめちゃくちゃ遅れてるんですよ。
行政書士まなちゃま先生:どのぐらい遅れてるんですか。
弁護士岸上:もう2年、3年とかいうふうに、
診断士白川先生:長くて2年、3年っていうのが、一番ひどい時にはあったかなっていうところですね。
行政書士まなちゃま先生:そもそも補助金って、交付決定が出たらすぐに振り込まれると思っている方も多いと思うんですけど、実際ってお金が入るまでどういった流れなんですか。
弁護士岸上:これは私の方から説明させていただくと、少なくとも事業再構築補助金とか、新事業進出補助金もそうですし、そういった補助金だと、交付決定が出て、そこから実際に事業をやるんですね。物を買ったりとかするじゃないですか。そして、経費を支出すると。その後、実績報告っていう段階があるんですよ。「こういうふうに事業をやりました」、「こういうふうに支出しました」と報告する手続きがあるんですけど、それを受けて、事務局とか中小機構が審査をするんですね。ちゃんとやってるかどうかっていうところで。そこで「確定」っていうものがあるんですね(補助金適正化法15条)。これはまあ、交付決定の内容どおりやりましたか、っていうところを見てくる。で、その確定で「あ、大丈夫ですね」っていうふうになって、その後に補助金が払われるというのが、実際の一般的な流れです。
行政書士まなちゃま先生:なるほど。交付決定と、実際の支払いって別物なんですよね。私、この2つが混同されてる気がしていて。
弁護士岸上:そうですね、完全に別物ですね。少なくとも事業再構築については、実情としてはかなり遅滞しているところがあるので、交付決定と支払いは別物っていうふうに理解いただければと思いますね。
3 支払遅延と事業者の資金繰り
行政書士まなちゃま先生:白川先生にお聞きしたいんですけど、支払いが2、3年ずれ込んじゃうってなると、現場の事業者さんの資金繰りって結構困っちゃうと思うんですけど、実際はどんな感じになっちゃうんですかね。
診断士白川先生:一言で言うと、おっしゃったとおり本当に困っちゃうんです。現実面で言うと、基本的に補助金って、例えば2分の1支給されますって補助金だと、2000万円の投資に対して1000万円が補助金、って形ですよね。で、そこを銀行に対してどう持っていくかっていうと、要は1年で返す短期の借り入れ、手形貸付ですね。手形貸付で1000万円、あと普通の貸付で残り1000万円って形にするので、基本的に銀行の方も、補助金だから1年以内に入金されるだろうっていう前提で貸してくれるんですよね。
診断士白川先生:で、1年経ちました。そうすると何をするかっていうと、いわゆる手形のジャンプですね。「もう1回伸ばしましょう」と。支店としても、支店長が入ったり本部に確認してもらったりして、「もう1回、じゃあ補助金が入るんじゃないの」って言って伸ばしてくれます。でも、最悪のケースだと、「もうジャンプできませんよ」って言って、「手形を返してください」という形になって、1000万円きちっと補助金が入ってないのに、耳を揃えて返せってなってくるので、1000万円のお金を用意するっていうのは、かなり厳しいですね。
行政書士まなちゃま先生:資金ショートしてしまう可能性はありますね。じゃあ、補助金を当てにして設備投資した会社さんって、お金が来るまでつなぎ融資とかでしのぐことになっている現状だけど、その補助金の交付がどんどん遅れてしまうと、さらにきつくなってしまうっていうことですよね。
診断士白川先生:そういうことですね。今おっしゃった、そのお金が2年間、3年間振り込まれない。おそらく向こうとしては、慎重に慎重を期して不正がないようにっていうことで調べているのかもしれないですけれども、一般的な金融の理屈からすると、彼らも中小機構でそういったお手伝いをしているんだから、そういう事態に中小企業が陥っちゃうのは分かっているはずなんだから、迅速に正確に審査しなきゃいけないっていうのが当然だと思ってます。
行政書士まなちゃま先生:そうですよね。ただ、なかなか迅速・正確に調査がなされていないっていう現状なんですかね。
診断士白川先生:そうですね。民間企業に全部丸投げしちゃうから、そんなことになるんだと思うんですけどね。
行政書士まなちゃま先生:今って民間企業に全部丸投げしている状態なんですか。
診断士白川先生:そうですね。事業再構築補助金だと、入札して落札したのがパソナさんですし。現状の新しい新事業進出補助金であれば、博報堂ですよね。
4 国の補助金の支払期限はどの法令に?
行政書士まなちゃま先生:岸上先生に質問なんですけど、国の補助金だと翌年度の4月30日までが期限ってことですけど、これってどの法令に書いてあるんでしょうか。
弁護士岸上:要は、国の補助金だと「予算」っていう扱いになるんですよ。そうすると、財政法とか会計法令っていうものが適用されてくる。そこに規定されてくるんですね(会計年度独立の原則を定める財政法12条、精算払の期限を翌年度の4月30日とする予算決算及び会計令4条など)。そうなってくると、国の補助金は、交付決定した年の翌年度の4月30日までに払わないといけないっていう縛りが出てくるんですね。予算なので。
弁護士岸上:そういう意味で、今、白川先生がおっしゃったような問題っていうのは、国の補助金の場合には、そういう縛りがある以上、発生しない――発生しないっていうか、現実に繰り越されると細かい問題はあるんですけど、交付決定の翌年度の4月30日、これは予算に関する法令でそう決まってるから。確定、支払も、それより前までにやらなければいけないよねというような話に、国が交付する補助金については法的にそうなります。
行政書士まなちゃま先生:勉強になります。
5 中小機構が交付する事業再構築補助金等の交付期限
行政書士まなちゃま先生:ちなみに、今日のテーマの中小機構さんは独立行政法人ですけど、この4月30日ルールはそのまま当てはまらないっていうことなんでしょうか。
弁護士岸上:それがめちゃくちゃ難しい問題だと思っていて。直接的には当てはまらないんだと思うんです。やっぱり予算ではないので、国ではないから、そこは当たってこないとは思うんですけど。ただ、機構法(独立行政法人中小企業基盤整備機構法)16条っていう法律で、事業再構築補助金とか、あとは新事業進出――これから始まる、ものづくり補助金と新事業進出が合体するもの(新事業進出・ものづくり補助金)についても同じですけど――これは、国と中小機構が同一の規律に服するっていうような中小機構法になっていて、そういう観点からすると、交付決定の翌年度の4月30日が期限っていう話でいいんじゃないかと、僕は思ってるんですが。
診断士白川先生:はい。こればかりは、違う見方をすると……旧来の補助金、何年か前までのものづくり補助金とかだと、要は前の年の補正予算で決まって、翌年実行しましょうっていう形で。そうすると1年間の、要は4月30日までの期限っていう形で、皆さん一生懸命振り込みとかをするわけだったんですけど、それだと、例えばものづくり補助金が年間2回ぐらいしか公募できないんですよ。春に公募して、夏にも公募しないと。要はだいたい翌年の1月とか2月ぐらいまでに事業が完了するようなものじゃないと受け付けられなかったんですね。
診断士白川先生:それじゃあ逆に補助金の使い勝手が悪いだろうっていうことで、安倍政権の時に「基金にしよう」っていうことになって。要は基金にすると、複数年度の予算を基金という器の中に入れておくことができる、プールできるので、それをどう差配するかっていうのは、例えば中小機構の自由にしようよっていうのが、最近のこの基金化した補助金の流れなんですよね。だから逆に4回、5回とかっていう形で、事業再構築補助金だったら交付決定回があったりしたわけですよね。
診断士白川先生:それにおいて、明示的に、とはいうものの一会計年度でなんとか精算するんだっていう意識があるのかっていうと……ないのかもしれない。だから一方で、事業完了期間っていうのを、交付決定がしてから18か月、16か月、っていうのを多分決めたんだと思うんですけれども、じゃあそれも支払いと一緒かっていうと、そうではないっていうところに矛盾はあるんですけれども。向こうとしては「きちんとしているものなんだから、好きにしたっていいじゃない」っていうのが、あるかもしれない。
行政書士まなちゃま先生:はい、そうなんですね。じゃあもう、基金だから基金にしていいじゃんっていう考えがあるかもしれないということですね。
診断士白川先生:そうですね。だから逆に、今度の新事業進出補助金・ものづくり補助金なんかは、事業再構築補助金の残っている予算をそのまま新しい補助金の方の基金に入れているわけですから。ある意味、3年も4年も前に作られた国の予算を繰り越してるわけですよ。これ、国の予算の考え方だったら考えられないですよね。
行政書士まなちゃま先生:そうですよね。なかなか考えられないやり方をしてるなっていうふうに思いました。
6 補助金が支払われない場合、事業者はどのような主張ができるか
行政書士まなちゃま先生:ちなみに、2年も3年も支払われないのが許されないとすると、事業者さんは法的に何かいえるんですかね。損害金みたいなのは請求できたりするんでしょうか。
弁護士岸上:当然、できると思っていて。まず、期限がない債務なんてものはないはずなんですよ。だって、期限がないとしたら、例えば交付決定するじゃないですか。で、その後の確定処分にも、支払いにも期限がないとしたら、ずっとそのままほったらかしにしてて払わない、何年経っても払わない――ここに違法性がないかっていったら、さすがにそれはありえないわけで。どこかで期限は定まるはずだと。
弁護士岸上:期限が定まるっていうことは、その期限を過ぎても払わないって言ったら、遅延損害金が発生してくるので、そこは請求できる。専門的な話になっちゃうんですけれども、請求の方法は、2パターンあると思っていて。1つは、これは行政訴訟なんですけど、民事訴訟と似たような「実質的当事者訴訟」(行政事件訴訟法4条後段の公法上の当事者訴訟)っていうのがあって、そこで「補助金を払え」と求めるっていうのが1つ(給付請求)。もう1つは国賠ですね。「こんなふうに遅滞させていることが違法なんだ」と。要は、不当に補助金の交付を遅滞させているんだっていうような話をして、それで損害を被った、と。実際に被った損害っていうのは、本来交付すべきところからの遅延損害金みたいな話。いずれにせよ、できることはあります。
7 補助金の交付請求権とは
行政書士まなちゃま先生:ちなみに、補助金の支払いを受ける権利って、普通の売掛金みたいな債権として考えていいんでしょうか。
弁護士岸上:おっしゃるとおり、債権として考えてよくてですね。これは、交付決定と同時に発生するものです。講学上は形成的行政行為とかいわれてますけど、要は、権利関係を「交付決定」という行政行為によって作ってしまうっていう。だから、交付決定でその債権がまず発生するんですね。そういう債権です。
行政書士まなちゃま先生:そしたら、債権って、やっぱり期限があるものですよね。私も民法をちょっとだけ勉強して、債権に期限があった気がするな、とか思いながらお聞きしております。
弁護士岸上:いや、今の、まなちゃま先生のご指摘はすごく鋭くて。期限の話も、それって民法の話じゃないですか。でも、事業再構築補助金の交付決定についていえば、あくまでも行政行為で、かつ適正化法とか中小機構法っていう法律の根拠があるものなわけですよ。そこで、(中小機構と補助事業者との間の権利法律関係が)定まるものなので。いわゆる「公の関係」なんですね。そこにどのぐらい私法、つまり民法が入ってくるのかっていうのは、公私二元論というめちゃくちゃ難しい問題があって、ここも関係してくる。少なくとも、直ちに、債権だから民法が適用されて、期限を定めてなかったら期限の定めのない債務になって、請求すれば履行遅滞に陥るんだ(民法412条3項)、みたいな話にはならないんですよね。なかなかそこは難しいところがあります。
8 今後補助金の申請をする際には遅滞前提の資金計画が必要か否か
行政書士まなちゃま先生:じゃあ、これから申請書を考えている方からすると、入金は遅れる前提で資金計画を立てておいた方がいいっていうことなんですかね。
診断士白川先生:どうですかね。数百万ぐらいの補助金だったら、それでもいいと思うんですけど。やっぱり金融機関との交渉事になってくると思うんですよ、最後には。その時に、実際現場で起こってるのが、結局、事業再構築補助金にしても新事業進出補助金にしても、交付決定に時間がかかるでしょうと。さらに交付決定の後の、実績報告後の入金まで遅いでしょうと。そうすると金融機関側がすごく嫌な顔をするんですよね。ほんと優良な取引先じゃない限りは。なので、資金計画を立てようと思って、補助金になったら一般的には大丈夫だろうと思ってやっていたら、結構大間違いだったっていうのが、現場ではある話ですよね。
行政書士まなちゃま先生:そういった場合、支払いが遅い時って、事業者さん側からは督促ってできるものなのでしょうか。
弁護士岸上:一応できますけどね。この問題については、どこかで訴訟をやらないといけないなと思っていてですね。僕自身が原告になれるわけじゃないですけど、代理人ですけど、それでも、独立行政法人が交付する補助金の交付期限っていつなんだっていう話を、裁判所にご判断いただくしかない。裁判所が判断してガチッと決まれば、もうその話で進んでいくので、そうやって明らかにしていきたい。そうなれば「もう期限は決まってます」っていう話はいえますけど、現状は、白川先生のおっしゃるとおり、なかなか難しいところがあって、本当に平気で2年、3年ずれ込むっていうのが実情です。
行政書士まなちゃま先生:じゃあ、もう2、3年ずれ込んで困ってるって事業者さんは、今すぐにできることってどういったことがあるんですかね。岸上先生、白川先生に連絡っていうことですかね。
弁護士岸上:手前味噌になりますけどね。それは1つあると思いますし、変わるかなとは思っているところではありますね。
9 補助金の支払を督促するとどうなるか
行政書士まなちゃま先生:ちなみになんですけど、例えば中小機構さんが、補助金額の確定、支払が遅れてるっていう場合に、内容証明とかって送れないんですか。「早く払って」みたいな。
弁護士岸上:送れますし、送ってますね。個別の事案は当然申し上げられないんですけど、「期限はこうだから早く払えよ」ということはやってます。
行政書士まなちゃま先生:そういうのって効果ってあるんですかね、内容証明を送るっていうのは。
弁護士岸上:これも手前味噌になっちゃいますけど、明確にありますね。ここは、事業再構築補助金についての特殊な構造が関わっているところで、つまり、事務局っていうのが実質的にはいろんなことをやってるんですよ。これって中身は私企業なんですよね。中小機構は、物理的に(マンパワーの不足により)、この規模の補助金を回せないんですよ。だから、この事務局を、パソナという私企業がやってるんですけど。例えば、私が、交付期限を徒過しているので、早く確定、交付(支払)をしてください、という書面を送る先は、事務局(パソナ)に送るんじゃなくて、中小機構本体に送るわけですよ。そうすると、対応するところが切り替わるというか、中小機構がいろいろやることになるので、当然、事務局(私企業)よりも、言い方は悪いですけど、まだマシですよね。その対応が、パソナじゃなくて中小機構の本体側に移るっていう感じですね。
行政書士まなちゃま先生:それって、私がもし中小機構だったらっていうおこがましい話ですけど、さすがにめっちゃ怒ると思うんですよ。「お前、何やっとんだよ」って怒ると思うんですけど、そういうお怒りとかにはなってないんですかね。
診断士白川先生:これはですね、実際に様子を見ている限りでは、怒らないですね、彼らは。1度、情報開示請求をやって、パソナとの業務委託契約書を見せてもらったんですけど、黒塗りが多いから全体的にはよく分かんないですけども、なんとか読み取ってみた限りだと、例えば一般的な業務委託契約で、何か訴訟事があったとか、問題が発生したとか、履行が遅滞したとかっていうふうになったら、ペナルティ条項をいくつか書きますよね。しかも、この規模の業務委託ですから。それが全然なくって、そのへんに一般的に転がってるんだろうかぐらいのテンプレートで業務委託をやってるわけですよ。っていうことは、読み取れる限りペナルティがないので、パソナに対して怒りようもできないっていうのが、中小機構なんですよ。
診断士白川先生:そもそも事務局を決めた経緯っていうのも、一番最初に、これって勝手に中小企業庁が決めたんですよ。
行政書士まなちゃま先生:え、そうなんですか。
診断士白川先生:中小企業庁が決めて、入札を勝手にやって、中小機構に「あと、よろしく」ってやった、すごくイレギュラーな件なんですね。そうすると、申し訳ないですけど、中央省庁である経済産業省があって、その外局の中小企業庁があって、さらにそこから見ると中小機構は、どっかの親戚の子供みたいな感じで。「とは言うものの、うちの親(中小企業庁)がそう言ってるから、面倒見てやれって言ってるからしょうがねえよな」っていうので、強く言えないっていうのが構図ですよね。
行政書士まなちゃま先生:大変なことが起きてますね。
10 中小機構が交付する事業再構築補助金等の交付期限も国が交付する補助金と同じではないのか
弁護士岸上:期限の話にグイッと戻しちゃってもいいですか。言い足りなかったというかですね。1つ、ちゃんと見るべきところは、中小機構法16条っていうところだと思っていて。さっき、国と中小機構が同一の規律に服している、っていう話をしたと思うんですけど、もう少し実はあって。中小機構法16条には、適正化法を準用したうえで、「国の会計年度」とあるのを「中小機構の事業年度」と読み替えるものとする、っていうのが書いてあるんですよ。
弁護士岸上:で、補助金適正化法の14条っていうのは、実績報告の話ですね。「事業をやって報告します」っていう話のところの文脈で、「国の会計年度」っていうことが出てくるんですけど、ここを「中小機構の事業年度」にしてるっていうことで。実績報告(適正化法14条)と、確定(同15条)と、支払いっていうのは、密接に関連してるんですね。まさに、ものの本(適正化法解説)には、「国の補助金は翌年度の4月30日なんだ」と。「だからこそ、実績報告は4月10日までにやらなきゃいけない」っていうようなことが書いてあるんですよ。
弁護士岸上:そこで、中小機構法16条が、「国の会計年度」っていうのと、「中小機構の会計年度(事業年度)」っていうのを同じものとして読み替えいることの趣旨を考えると、僕は、同じような規律を働かせるべきだと思うし、そういうふうに法が予定してるんだと思うんです。だから、交付決定の翌年度の4月30日が期限。私はこれでいいと思ってます。
11 補助金適正化法における著作権・使用許諾の扱い(22条の財産処分制限との関係)
行政書士まなちゃま先生:ちなみに、補助金適正化法、私、岸上先生からお話を聞いてから読んでみたんですけど、あれってかなり古い法律じゃないですか。
弁護士岸上:はい、そうですね。
行政書士まなちゃま先生:例えば、著作権とかについて想定されていないというか。今、システム開発とかに関する補助金も多い中で、著作権だったり、使用許諾権だったり、そういうことについてあんまり想定されてないのかなって、読んでて思ったんですけど、そのあたりってどうなんですかね。
弁護士岸上:想定されてないですね。今のまなちゃま先生のお話って、財産処分の制限に関わってくるところだと思っていて(適正化法22条)。要は、システムっていう無形物を、補助金の交付を受けて取得した時に、どのような処分ができるのかという話ですよね。その使用許諾ってできるのか、(適正化法22条との関係で)それはダメなのかっていうのは、適正化法が作られた時にはもちろん想定されていなかったと思います。
行政書士まなちゃま先生:以前、あのスペースでお話をお聞きした時に、マシュマロ(質問)の中に、「システムか何かを作ったけど、汎用性があるっていうことで減額されてしまった」っていうのがあったと思うんですよね。そのシステムに関しては、汎用性があるって言われやすいんじゃないかなって思うんですけど、そのあたりってどうなんですか。
弁護士岸上:これは言いがかりだろうなっていう感じですね。もっと浅いところの問題というか。当然それは、単に交付決定の内容のとおり作っただけだから、「その全部を払え」っていうような話であって。本当に難しい問題の手前にあるような話な感じがします。
弁護士岸上:それよりも、補助金の交付を受けてシステム開発したとするじゃないですか。これを、例えば、完全に第三者に譲渡しちゃうというような話。これはまずいでしょうと。適正化法22条の目的外使用(財産処分の制限)に反してくるでしょうと思うんですけど、「使用許諾」っていうのはどうなのっていうのは……いいんじゃないかと僕は思うんですよ。ただ、適正化法がそれを想定してないことは、明らかで。この辺はなかなか鋭いご指摘だったと思いますね。
行政書士まなちゃま先生:そしたら、使用許諾したいとか、ライセンス契約したいっていう場合、どうしたらいいんですかね。できないんですかね。
弁護士岸上:僕はできるんだと思っています。この財産処分制限が何を規制しているのかっていう趣旨に立ち返ると、補助事業者、交付を受けた事業者が、その財産を管理できなくなる、っていうのが損失だよねと。せっかく補助金を交付したのに、ちゃんと使ってくれないのか、よくないよねっていう話なので。その本質に立ち返ると、例えばシステム開発して、それを自社で使っていきますと。それを自社で使いながら、他社に使用許諾して、使用料を取ります、と。自社で使い続けてる以上、何の問題もないと思うんですよ。だから、それは問題ないと僕は思います。
行政書士まなちゃま先生:じゃあ、自社で使いながら他に貸すっていうのがポイントなんですね。自社で使わないで他に貸すだけだと、ちょっとまずいっていう感じですかね。
弁護士岸上:そうですね。ちゃんと自分で事業を続けてるのか、っていうのが大事で。要は、補助金を交付して、財産を取得して、それを、その交付を受けた人が使い続けてるっていうことが、国の予算――国のお金を有効活用してる、って話じゃないですか。そうじゃないのが良くないっていうことなので。事業を継続しているということが非常に大事で、逆にいえば、そうしてれば大丈夫だともいえます。
行政書士まなちゃま先生:なるほど。では、白川先生がやられている事業再構築補助金により取得した財産を含む補助事業の事業譲渡も、実際に事業を続けてるから、特に問題がないっていう感じですよね。
診断士白川先生:そうですね。次の会社さんが事業を続けるっていう前提になっているので、大丈夫ってことですね。
行政書士まなちゃま先生:じゃあ、そこで廃業とかにしてしまうより、続けるっていう方が大事ですもんね。
弁護士岸上:そうですね。これは本当に、事業譲渡の話については、誰も損しないというか。国だって、それを有効活用してもらっていいし、補助金を受けた事業者の方も、続けるのが辛いんだったら、他の事業者にやってもらった方がいい。譲り受けた方も、これをうまく活用できると考えているから、事業譲渡の契約をするわけで。ですから、関係者全員にとっていいことで、これを規制する理由は本当にないと思う。すごくこれはいい試みというか、広げていきたい試みだと思ってますね。
行政書士まなちゃま先生:補助金を交付されて事業を継続しているけれども、継続するのがちょっとしんどい、という方には、ぜひ知っていただきたいサービスですよね。
診断士白川先生:そうですね、まさにそう思います。
12 交付決定後、補助金の交付が遅滞しているときにはどうするか
行政書士まなちゃま先生:今日のテーマは、補助金が実際に支払われるのが、交付決定からかなり遅れることが多いけど、そういう時どうする、ということだったと思うんですけど、実際に補助金の交付、支払が遅れて困ってる方に一言お伝えするとしたら、岸上先生、白川先生、なんてお伝えしますかね。
診断士白川先生:そうですね。一言じゃなくなっちゃうんですけども。まず、岸上先生とか僕とかは、中小機構に直接電話しちゃうんですけれども、一般の事業者さんが最初に思いつくのは、事務局のコールセンターに電話するっていうことだと思うんですよ。そうすると、さっき言ったみたいに、好き勝手やってるのはパソナなんですね。パソナがやってるコールセンターだから、そんなところに「お前のところが間違ってるから、早くお金を下ろせ」って言ったところで……「泥棒に『あなた泥棒でしょ』って言ったって、『泥棒ですけど』って答えるんでしょ」と。なので、そんな人たちに「お金ください」って言ったって、お金が下りるわけがないので。
診断士白川先生:じゃあ、最終的に誰の名前をもって意思決定をするのっていうと、これは中小機構の宮川正・理事長なわけですよ。その名前でやるわけですから。自分たちの組織の長の名前で出す書類なんだから、中小機構の職員っていうのは、1つ1つの決定した書類に対して、本当に責任を持つべきだと思ってるんですね。「そんなこと、僕が勝手にやったことなんか知りませんよ。申し訳ないけれども、違う窓口に行って電話してください」だよ、って言い放っても、そんなの通用しないですよね。
行政書士まなちゃま先生:たらい回しみたいな感じにされちゃう。
診断士白川先生:中小機構の職員って、基本的に自分ごとじゃないんですよ、全員。大企業のサラリーマンとどこか一緒で、「別に僕が何かしなくてもいいんだ」と。「なんだったら、日頃何も波風立てずに生きていきたいのに、こんな部署にたまっちゃったな」っていう人たちがいるようなもんですよ。
行政書士まなちゃま先生:それでも困りますよね。事業者さんが困っていて、「あなたたちの、役所としての仕事って何なの」っていうことを、一切理解できてないんですよね。それは本当に困るというか、どうにかしてほしいところですよね。
診断士白川先生:そうですね。これ、私はよく言うんですけれども、この人たち、診断士がいっぱいいるわけですから。全職員の3分の1が中小企業診断士ですからね、あそこ。投げたら、とりあえず診断士が当たりますから。だから、僕が電話した中にも1人ぐらいいるんだと思うんですけれども。「何のための機関であるのか」っていうのを理解してないんですね。
診断士白川先生:とはいうものの、パソナに電話するよりかは、まだマシ。なので、そこで中小機構に連絡を入れてあげたうえで、しょうがないからもう1回事務局に電話、っていうのがまず1回目のパンチだけれども、多分、全然動きません。それでも、そういうやる気のない方たちだと思ってるんで、そういう人たちにやらせたってしょうがないので、僕であったり、その後は岸上先生であったりっていうところで、書面で出していくしか。要は、証拠が残る形にしないといけないんですよね。
診断士白川先生:行政書士の先生とか、許認可を取る時とかに、相手の役所の人の名前をちゃんと聞いて、1回目にメモを取ってっていうふうにするじゃないですか。
行政書士まなちゃま先生:録音を取りますね。
診断士白川先生:録音を取ります、まさにそうですね。僕なんか食品関係をやってるんで、保健所の職員が言うことがコロコロ変わるから、「前回これ言ったじゃないか」っていう感じでやるわけですけれども、それと結構一緒だなと思っていて。「大役所に当たるんだ」っていうつもりでやらないといけないので、その時に証拠を残す、紙として残す。今、彼らが一番嫌がるところがそこなんですよ。それをやっていくっていう意味合いで言うと、弁護士さんの名前で出した内容証明っていうのは1つ効いてくるんじゃないのかなと思います。
行政書士まなちゃま先生:そこで岸上先生の内容証明ということですね。
弁護士岸上:手前味噌になりますけどね。相当の効果があると実感しています。確かに、「これじゃ確定できないよ」っていうものもあるんですけど、そんなケースの方が少ないと思います。だって、確定(適正化法15条)っていうのは、要は交付決定した内容と実際の事業の内容が合ってるかどうかを見るだけのものなんで、それって多くの事業者が既に実績報告において提出済みなんです。あとは中小機構、事務局がそれを見て、交付決定の内容に適合しているか否かを確認して、補助金の額を確定して、補助金を支払うだけの話なので。それで払わないっていうのは、本当に不当に遅滞させてるっていうもので(適正化法24条)。
弁護士岸上:先ほど白川先生がおっしゃったとおり、中小機構本体に書面で請求するっていうのが大事だと思います。それでも動かなかったら、ご連絡いただければお役に立てることは結構あるのかなと思ってるので。「交付期限は交付決定の翌年度の4月30日なのではないか」という話をしていただくと。とにかく、ずっと待たされる、なんていうことはないですから。そこはご安心いただければというかですね。現状それがまかり通っちゃってるんですけど、そこは変わってくるとは思っています。
行政書士まなちゃま先生:じゃあ、とにかく困ったことがあったら、岸上先生、白川先生にご連絡を、ということで。
弁護士岸上:そうですよね。ご一報いただければ、それなりにお役には立てるかなとは思ってはいます。
13 差し戻し・追加書類要求への対応
診断士白川先生:一応確認なんですけど、実績報告の書類を最初に出しました、と。で、向こうが小賢しいやり方でやってくるのが、2、3か月おきぐらいに差し戻しであったり、追加の書類を徴求してくるんですよね。例えば2週間とか1か月っていうぐらいだったら、向こうも忙しいので、で済むんですけど、だいたい3か月ぐらい経ってから、「ここが足りないんだけど」とか「これに対してこういう追加資料をください」っていうふうに言ってくるわけなんですよ。それはかなりイラッとしますね。
診断士白川先生:それは、結局その実績報告を、今、揃えて出してるはずなんだけど、追加で向こうが言ってくるから出す。とはいうものの、じゃあ実績報告を、今出した直後っていうふうに見なされるのか、それとも、最初に出した書類があるんだから、そこを起点にして、例えば1年なら1年なのか、みたいな。そういうところがどうなのかなと思ってて。
行政書士まなちゃま先生:そうですね。どこが起点になるのかって、確かに疑問ですよね。向こうがそういうやり方をすれば、2、3か月おきぐらいに新しい観点で何か因縁をつけてくればいいわけですよね。
診断士白川先生:はい。2、3か月経ったら、たっぷり粗探しできちゃいますもんね。年に4回、何かどうでもいいことを言えば、それを1回言えば2年間伸ばせるわけですね。
弁護士岸上:中小機構、事務局は、いろんなものを出してこいとか言ってくるんですけど、本当に出さなきゃいけないものってそんなになくて。交付決定の時に、見積書とかそういったものを出して、「それでいいですよ」と決めていると。だったら、その内容、「決定どおりにやってますね」っていうのを確認できるものって、注文書とか、実際にお金を払った履歴とか、「こんな感じで製品を作りましたよ」みたいな写真とか。本当にそういう意味で必要なものは、大抵の事業者は、ちゃんと出してるんですよ。
弁護士岸上:で、そこからすごい、重箱の隅をつつくような話をしてきて、「総勘定元帳を出せ」とか言ってくることがあるんですけど。それは、確定とか、補助金を払うっていう意味では、必要のないこと、関係のないことなんですよ。そこは事業者から言っていただいても全く問題ないですし、むしろ、主張していくべきです。それでも変わらないんだったら、白川先生にご相談とか、私にご連絡いただけると、っていう感じですかね。
診断士白川先生:はい、そうですね。実際、それが一番、しつこく追われ続けていて、もう辟易としているっていうケースが多いと思うので。「まだ出してる途中だから」っていう感覚じゃなくて。やっぱり適正化法でも、現にその機械だったり建物だったりっていうものがあって、事業が始められる状態になっているかどうかっていうのを、実地検査で確認して、それが確認できたら補助金は交付しますよ、下ろしますよ、というふうに書いたわけなんですよ。
診断士白川先生:前日から私がXで言ってる、「実績よこせ」とか、それこそ総勘定元帳の、関係のない事業年度のものまで出せ、とかっていうのがかなりあるわけなんですけど。じゃあそれって、いわゆる確定検査で求めている内容と、法律の内容と、かなりかけ離れませんか、ってことなんですよね。
診断士白川先生:枝葉だと思うんですよ。例えば、実績とか使用書とか細かいもの、それを出せっていうのは枝葉であって。枝葉の問題であって、そこに、その交付決定どおりのシステムがあるかないかっていうのとは、また別次元の話だと思ってるんですよね。そもそも、そこで枝葉なんか判断する場じゃないと思ってるんですよ。
診断士白川先生:なので、そこは事業者さんも勘違いしちゃっていて。声に出せないし、「もうやれって言われるのはやる」んだけれども、場合によっては書類があまりにも難しすぎちゃって、認定支援機関も匙を投げちゃって、手伝ってくれなくなっちゃって、「もう補助金、諦めよう」っていう方も、陰ではいるんじゃないのかなっていうふうに思ってるんですよね。
行政書士まなちゃま先生:そうかもしれないですよね。
14 中小機構や事務局と必要以上のやり取りはしない(減額決定・自主返納への誘導のおそれ)
弁護士岸上:あとは、中小機構や事務局と必要以上にやり取りをしないことが重要だと思います。例えば、事業化状況報告(事業再構築補助金交付規程25条1項)をした後に、差し戻しで「これ出せ、あれ出せ」、「こうなんじゃないか、ああなんじゃないか」っていうのを言ってくるわけですけど、そこで必要以上にやり取りをすることは、あんまり良くないと思っていて。そんなやり取りをしている中で、「それ目的外ですよ」、「目的外使用だから、返還してもらわないといけません」、「本当だったら全部取り消すけど、今回に限っては、その一部の残存簿価だけ返還してくれたらいいですよ」みたいな話になる。これ、よくある話なんですよね。
弁護士岸上:これってどこからそういう話になってくるのかって、いろんな事例ありますけど、1つは実績報告(適正化法14条)、確定(同法15条)のところで、もう1つは、先ほど話した交付された後ですね。いずれにせよ、必要以上にやり取りをしないっていうのは結構大事なのかなと。もっと早い段階でご相談いただいていれば、どうにでもなったのに……というような事案がたくさんあります。
行政書士まなちゃま先生:なるほど、ちょっと「あれ?」って思ったら、もうすぐにご連絡くださいという形ですね。
弁護士岸上:そうですね。
診断士白川先生:「前向きな行政じゃない」っていう言い方をしたらいいのかな。本来であれば補助金なので、早く給付してあげて、しかるべき形で補助金が使われる方向に、みんなで支援してあげるっていうのがあるべき姿なんですけれども。この補助金は特にそういうところじゃなくて、もう役所のメンツの問題みたいになってきてしまっているので。そういうふうになった時の役人って、ある意味どんなことやってても、自分の組織を守ろうとするので。多少の事業者さんの不利益っていうのはどうでもいいや、っていうような考え方になっちゃいますよね。
行政書士まなちゃま先生:この前あのスペースで白川先生がお話してくださった、中小機構とかとやり取りをしてると、誘導尋問的に「あれ、目的外使用ですよね、(自主的に)返還してくださいね」みたいになることもあるって、お話されるじゃないですか。それも踏まえると、やっぱり必要以上のやり取りは避けるべきとなりますかね。
診断士白川先生:そうですね。ちょっと僕、今話している中で、言うのをやめようかなと思ってやめた言葉があって。そこら辺、はっきり言っちゃうと、いろいろ差し障りはあると思うんですけど、詐欺師的な誘導尋問してくるんですよ。事業者さんがやったことのない不安な手続きに対して、「分からない」っていうことを逆手にとって、しかも金額の大きい内容のことに対して、優しく近づいていって、「こうだよね、こうだよね、やってあげるよ、そういうことでいいんだよね」っていうふうに言っていって、最後に落としていくみたいな。
行政書士まなちゃま先生:本当に怖いですね、それは。
弁護士岸上:本当に怖いですよ。慣れてますしね、当然向こうは。法的にそのへんを整理すると。先ほど、実績報告、確定っていうところで、このようなやり取りになり得るという話をしたと思いますが、例えば、実績報告をすると、「これって目的外じゃないですか」といわれるです。その後に行われるのが減額確定です。「ここの部分って目的外だから、本当は補助金は全額出ないんだけど、一部だけに限定して実績報告してくれたら、その一部相当額だったら出しますよ」みたいな話。そして、その一部相当額だけを交付する(支払う)。これが減額確定です。
弁護士岸上:もう1つが、補助金額が確定し、補助金が交付された後に、「これってダメなんじゃないですか」っていうようなやり取りをしている中で、「それ目的外(使用)ですね」と、「本当だったら全部取消しですけど、残存簿価相当額を返納してくれたら、取消しまではしませんよ」みたいな。手法は同じなんですけど、タイミングとやり方が違うっていう感じで。補助金交付後の話は、いわゆる自主返納って話になっていくんですよね。「これ、本当はダメだから。だけど、今だったら自主的にやってくれるんだったら、この段階で返してくれるだけでいいから」っていうような話をして、事業者がそれに応じて、自主的に一部返納してしまう、ということが、よくありますね。
行政書士まなちゃま先生:怖いですね。それを聞いて、自分がやられたらちょっと屈してしまいそうと思って、すごい怖かったです。
15 認定支援機関等の事業者に最も近い専門家の知見の問題
診断士白川先生:皆さん、細かいことって結局、コンサルタントとか、行政書士さん、診断士、税理士に任せちゃうんで。そうなってくると、いざ電話でやり取りすると、頭真っ白になると思うんですよ、正直。何言ってるか分かんないですから。いきなり英語でまくし立てられるっていうのと一緒ですから。
行政書士まなちゃま先生:なかなか怖いですよね。本当にまくし立てられてる感じが怖いですよね。
診断士白川先生:そうですね。一番最初は、事業者さんの周りにいる専門家、認定支援機関、それが中小企業診断士の先生なのか、税理士の先生なのか、業種によりますけど、結構相談すると思うんですよ。相談しても、でも分かんないわけですよ。ってなると、もう本当に孤立無援になっちゃって、向こうに屈するしかないっていうふうになっちゃうのが、今、いろんなところで起きている現象だと思います。
行政書士まなちゃま先生:そうですね。やっぱり、その診断士や行政書士だったりが、「自分が作ってるしな」ってなっちゃうと、「でも、そっか」ってなっちゃいますよね。やっぱり、そこで適切に、行政書士側も、診断士側も、屈しない態度というか、そういうのを持つべきだなっていうふうに思いました。
弁護士岸上:べき論で言ったら間違いなくおっしゃるとおりですね、それは白川先生がいろいろおっしゃられているとおりだと思うんです。ただ、一方の問題として、法的に難しい話が関係してくるのは間違いないので、周辺の診断士や税理士、行政書士の先生が適切に対処できないことを責めることもできないように思えます。そこはね、どうしていこうかなというかですね、もうちょっとこういうことを広く知ってもらいたいなというふうに思ってはいますけど。聞いてらっしゃる、診断士とか、弁護士の先生もいらっしゃると思いますけど、「よく分かんないことが起きてる」っていうことや、それを間接的に聞いたっていう話ってやっぱりあると思うんですよね。そしたら、ここで話していることをぜひご活用いただければ、とは思います。
行政書士まなちゃま先生:行政書士の集まりで、岸上先生から教えてもらった、「事業再構築(補助金の取消し)は処分性があるから行政訴訟で争えるらしいですよ」って言った時に、「処分性って何?」っていうふうに行政書士の先生から聞かれたことを覚えてて。私は処分性って、自分が勉強してた中で大事なワードだと思ったんで、ぱっとピンと来てはいたんですけど、それがあんまりピンとこない先生も、もしかしたらいらっしゃるのかもしれないっていうふうに思うんですよね。そうなった時に、結果として「補助金の減額とか返還請求は争える」っていうことだけは、まず認知はしてほしいですよね。
弁護士岸上:そうですね。でもこれは間違いなく、分かりやすく言うと、もう交付決定により債権は発生している(交付を受ける権利は発生している)。だから、補助金を払わないっていうことをするためには、相当なことが必要なわけですよ。権利を消滅させないといけないので。そこで、必要になるのが、取消し(適正化法17条)とか減額確定ですけど、これは、行政処分ですから。本当によほどのことがない限り、これはできないっていうことになってるので。だから、難しいですけど、返還を求められても、よほどのことがない限り返さないという姿勢で、基本的には問題ないと思いますけどね。
行政書士まなちゃま先生:返還を求められても基本的には返さない、と。
16 返還が必要なケースは極めて限定的であること(よほどのことがない限り交付決定の取消しはできない)
行政書士まなちゃま先生:返還しないといけないというようなケースって、本当に限られてますよっていうことですね。
弁護士岸上:そうですね、限られてます。
行政書士まなちゃま先生:ちなみに、その限られた場合ってどういった場合なんですかね。
弁護士岸上:例えば、事業をやってないのに「やった」と報告した場合(架空事業)など、それは本当に取り消されて全額返還される事情となります。あとは、目的外使用っていう話で行くと、補助金の交付を受けて取得した財産を担保に入れちゃいましたとか、売っちゃいましたとか、こういうのはダメだから、本当に返さなきゃいけないですけど(適正化法22条違反)。でも、こんなこと、ほとんどの事業者がしないじゃないですか。
行政書士まなちゃま先生:しないですよね。
弁護士岸上:頭を悩ませてる方って、本当に真面目な方がやっぱり多いと思うんですね。逆に、こういうことをやってる方は、結構振り切っちゃってますよ(悩まない)。だから、本当に悩んでるっていう方は、悩んでるっていうこと自体をもって、基本的には、返さなくていいのでは?と僕は思っちゃいます、本当に。本当に返さなきゃいけないのって、架空の事業をやってましたとか、売っちゃいましたみたいな、そういうことなので。なかなか、その次元の話ってないですよね。
行政書士まなちゃま先生:なかなかないですよね。
弁護士岸上:そうですね。そういうケースって、さすがに周りにいる診断士の先生とか、弁護士の先生とか、税理士の先生も言うと思うんですよ。「これはアウトでしょ」と。「というか、君と関わってたこと自体がまずいよ」と、いろいろ話になると思うんですよ。そもそも悩まない、と思うんですね。だからもう、「これどうなんだろう」って悩んでる時点で、基本的には、返還しなくていいと思いますね。交付決定の取消事由(適正化法17条1項所定)がない可能性が高いので。
行政書士まなちゃま先生:じゃあ、もう悩んでたら、今のお話のとおり「返さなくていい」と。
診断士白川先生:そうですね。で、特に私、中小企業診断士で。中小企業診断士の習う法律の範囲って、民法と会社法でしかやんないんですよね。あとは著作権とか、知的財産のところですけど。なので、こういう行政法って分かんないんですよ。「処分性」って、行政書士の先生が「ちょっと分かんないんです」って言ったら、診断士って、その10分の1ぐらいしか分かってないと思うんですよね。「行政法、習ってないから分かんない」「そういえばそんな法律ありましたね」みたいな感じですから。だから、さっきの「処分性がないと行政審査に持っていけません、行政裁判の方にも行けません」っていうのは、特に診断士は分かってなさすぎなんで。
診断士白川先生:今回こういう問題が顕在化してるっていう状況の中において、それでも新しい補助金が始まるよ、と。そういった中で、「採択をさせることが仕事だ」っていうふうに思ってるんだったら、まずやめた方がいいなと思っていて。そこから、その後の話っていうのも診断士としてアドバイスをして。基本的に診断士の仕事って、全部ワンストップでできるわけでもなければ、独占業務もないので。そういった中で、次の専門家にいかにいい形で渡せるのかっていう環境を作ってあげるのが大事だと思うんですよね。入り口で変なことを言われている事業者がいたら、とにかく間に割って入って、とりあえず止めて、次に話の分かる人に代わってもらうっていうのが一番いいと思いますよ。
行政書士まなちゃま先生:で、その話の分かる人っていうのは、やっぱり岸上先生だったり、白川先生だったりっていう感じですね。
17 返還が本当に必要な具体例(会計検査院の公開資料)
弁護士岸上:では、本当に返さないといけないケースってどのようなものか、分かりやすい具体例を会計検査院が公表してるんですよ(https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary06/pdf/fy06_tokutyou_09_02.pdf)。結構ニュースになったんですけど。「こんなケースが確認された」と。「これは取り消さないといけない」って言って、具体的な事例を列挙して、「こういうケースがあった、これはダメだからアウトだ」みたいな話を公表してて。そこで言ってるのは、先ほど私が申し上げた、架空の何かとか。そういう事例がばーっと列挙されているものがあるので。「会計検査院 事業再構築補助金 返還」みたいなふうに検索していただければ、PDFファイルが出てくるので。そこで出てくるような、そういうレベルの話です、返さなきゃいけない話っていうのは。
弁護士岸上:白川先生からお聞きすることとか、具体的に相談を受けたものに限りませんけど、もう8割、9割、返さなくていいというような話ばかりです。だから、本当に、それに尽きる。交付決定を受けてる以上、相当なことじゃない限り返さなくていいので、悩んでる時点で大丈夫だと思います。っていうのは、ずっと絶叫し続けちゃいましたけど。
行政書士まなちゃま先生:どうぞ、もっと絶叫しましょう。大絶叫。
弁護士岸上:いや、もう本当に、そう思うんですよね。
18 まとめ
行政書士まなちゃま先生:岸上先生、じゃあ締めのご挨拶をお願いします。
弁護士岸上:そうですね。元の話に戻ると、いつまでも払わなくてもよい補助金などないこと、交付決定をした以上、払わないといけないし、減額されることも、取消して返還させられることも、非常に限られたケースを除いては、ないですよっていうところです。
行政書士まなちゃま先生:今日もありがとうございました。白川先生、岸上先生、リスナーの皆さんもありがとうございました。
診断士白川先生:はい、ありがとうございます。


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