ことね「現を抜かす、あたしたちの話」
正夢にちなんで、密かに書きたかったエピローグです。
何より今年は―――へび年なので、書き始めにはちょうどいいカナーって。
始めましての方は、初めまして。是非一話からご覧ください。
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注意書き
・この話はことね「現を抜かす、あたしとプロデューサーの一つ目の話」の続きです。
読んでいない方はよければそちらからお進みください。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22810395
その上で先を見たくなったときはこのページをお進みください。
・読んでいる最中に解釈違いを起こした場合、
ご自身のために、速やかにブラウザバックをお願いいたします。
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―――エピローグ。
―――IF藤田ことねSide。
「.............あれ......どこ、ここ?」
気づいたらあたしは―――いつのまにか、見知らぬ街の雑踏の中にいた。
スマホのゲームをポチポチして遊びながら、仕事終わりのプロデューサーを待ってたら......あたしも信じられないけど、周りの景色がガラッと変わってた。もたれかかってた街灯ですら、色が黒から白に塗り替わってる。その先を追いかけて見上げて、変装用の帽子の唾を持ち上げながら、辺りを見渡すと曇り空が映るガラス張りのビル並ぶ風景。
まぁ、都内の何処かなんだろうなーって思いながら、スマホのマップアプリを起動して―――
「......げっ、電波が届かない。壊れちゃったかな......」
地図はまるで曇り空に隠れたような灰色で埋め尽くされてた。
こんな街中なのに電波通じないとかあるんだ。電波障害ってやつかな......困ったなぁ。プロデューサーと待ち合わせしてるからあんまり動きたくないし......そもそも、本当に元居た待ち合わせ場所なのかも怪しいケド。こーゆー時ってゲームだと散策とかして、周りのモノとかからヒントをもらうんだっけ。新聞で日付見て、聞き込みとか......したら、騒ぎになりそうだからやめとこーっと......。
「とりま、コンビニいくかぁ。少しお腹空いたし......」
そうやって、歩き始めたあたしに―――突然、横からドンって何かがぶつかった。
「ぐびゃっ」ってカワいくない悲鳴がお腹の底から飛び出て、危うく倒れそうになったのを鍛え直したバランス感覚で持ち堪える。
「いたたぁ............」
「あっぶなぁ............ありゃ。だいじょうぶかー、チビすけ」
「う、うん......おねえちゃん、ごめんなさい」
「いいよ。気にすんなし。それよりも怪我とかない?」
「だ、だいじょうぶ......」
―――うっわぁーー!!かっわいぃぃーーー!!
ぶつかって来たのは、あたしと同じ金色の髪の毛をした、小さい女の子だった!しかも、めっちゃかわいい!!ぶつかった時に転んじゃってちょっと涙目なのがまた、姉心をくすぐられるナ~............まぁ、もうお姉ちゃんじゃないんだケド。家族の縁、プッツンしちゃったし......って、そんなことはどうでもいいんだった。
「ほら、立てる?」
「うん......おねえちゃん、ありがとうございます」
「いーの、いーの!」
ごめんなさいって謝れて、ありがとうってお礼を言える。
な、なんてできた子なのぉ......きっとパパとママは神様のような人に違いない。普段は優しいけど怒る時はちゃんと怒って、その後は「よくできましたぁ」ってごほーびにあめをくれる。つらいことがあっても、「なんでもないよ」って不安を見せないんだろーなぁ............なーんて、勝手につらつらと妄想を膨らませながら、チビすけの頭を撫でてたら―――
「すいませーん!!ごめんなさい、うちのチビ.......が............」
「あ、この子のママさん?いやぁ、この子、良い子です―――ネ?」
駆けよって来たチビのママさんが、目を見開いてグイっと近寄ってくる。
うわぁ、めっちゃ美人さん............モデルさんかな......引退したアイドルっていうのもありそう。それぐらい顔立ちが整ってる。あたしよりも少し身長が高くて、帽子から伸びるなっがーいウェーブロングの髪が太陽みたいに眩しい......って、
「......ん?」
よく見たら、目の色もあたしと同じゴールド。顔つきも、どことなく似ているような............え、ももも、もしかしてあたしの知らない四人目の生き別れた妹、とか?それにしては、成長が早すぎる気がするし......それよりも可能性が高いのは、このママさんがあたしの大ファンで、髪染めてカラコンつけて似せてるそっくりさん......ってことは、あたしが藤田ことねだって、バレ......た?
―――や、やっばいかもっ............!?
「............そ、それじゃあ、あたしはこの辺で......」
「待って!」
肩をグイっと掴まれて、強引にママさんと向き合わされる。
そんで、鮮やかな手つきで―――丸眼鏡を、あっという間に外された。
他人の眼鏡を外すの上手な人なんているのぉー!?って叫びが、ポカンと開いた口から出そうになる。
「あ、あのさ.............もしかして......」
「ひ、人違いじゃないですかねぇ~?」
「や、まだ何も言ってないんですけど.......その目を逸らす癖、前髪の黒いメッシュ!やっぱり―――未来のあたしだ......!」
「....................................へ?」
待って、予想外過ぎる答えきちゃった。
な、なに......?チビのお母さん、ちょっと関わっちゃマズい系の人?もうこれほぼ美人局じゃない?
............逃げよ、そう思ってすぐに踵をサッと返したあたしだったけど、
「あ、一万円落ちてる」
「うぇっ!?どこどこ!?―――あっ」
諭吉さんなんてどこにもなくて、あたしの手首をガッチリ掴んだ、チビのお母さんのむっふっふーって得意げな顔だけがそこにあった―――。
「ちょっと、そこの喫茶店に入ろっか♪」
「............ういっす」
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さて、世の中には信じられないような出来事がた~くさんある。
動画サイトのそういうショート動画見てると、夢中になって気づいたら寝る時間が過ぎて、翌日寝不足になることがあるんだけど......今、正に目の前でそれが起きてる。具体的には―――初星学園の学生証が二つ、並んでる。まったく同じやつ。これだけなら、まだ複製されたのかなーってなるんだけど......。
「お、お財布に入れてるものもほぼ全部一緒かよ............」
プロデューサーと二人で取ったプリクラ。初めてやったライブのチケット。ちびどもからもらったメダル......は、あたしはもう捨てちゃったけど、このママさんが持ってるのは間違いなく、あいつらの作ったものだ。それ以外にもプロデューサーと旅行でペアで買ったものとか、ライブの思い出に残したチケットとか。怖いのは、世界に二つと存在しない同じ番号だったり、イニシャルが入ったオリジナルのものがあったりすること。
つまり―――この人は、もう一人の藤田ことねっていう可能性がかなーり高い。信じられないことに。ドッキリにしては、あまりに凝りすぎてる。
「ママがふたりいる?」
「誤解を生むからその発言はやめよーねぇ......いや、あながち間違ってないケド」
チビにケーキを奢ったら、口にホイップクリームつけておいしそーに食べちゃって......仕方ないから、紙ナプキンで口を拭いてあげると、娘を持つのってこんなあったかい気持ちなんだって柄にもなく感じちゃう。
初めはプロデューサーの名字に変わった別のあたしの運転免許証みて椅子から転げ落ちそうになったけど、ここまで揃っちゃうと......もう、信じるしかない。目の前にいるのが、もう一人のあたしだって。
でも............一つ気になることがある。
あたしは一目でわからなかったのに、どうしてママになったあたしは分かったんだろう。変装もしてたし......。
「あー、それはねぇ......あなたの夢を見たから......って言ったら、信じてくれる?」
「さも当然のように心読まないで。心臓に悪いから............で、夢?何それ?」
「話すと長いんだけど............まぁ―――いっか!パパには少しまってもらおーっと」
そうして、もう一人のあたしは―――それはそれは、夢みたいな本当の話を語り始めた。
あたしとプロデューサーしか知らないような場面の話を、夢で立て続けに見たこと。そして、過去のプロデューサーも同じ夢を見たこと。それがキッカケで―――順風満帆な人生を送っていること。名実ともにトップアイドルになって、引退して、結婚して、今は戸建てのマイホームまで建てちゃってる。
いいなぁ......羨ましくて、微笑ましい。
話を聞いてると、横にいるチビの笑顔がどれだけ尊いのか、身に染みる。
「ずっと......お礼が言いたかった。未来のあたしに―――ありがとうって」
「うえっ、な、なんでぇ?あたしが特別なんかしたわけじゃないのに」
「............あたしの努力を横から盗んでズルい、とか......そんな幸せな話をしてイヤみのつもり、とか......言わないんだね」
「―――」
あぁ......だから話してる間、もう一人のあたしは、ずっともやもやする顔をしてたんだ。
ようやく分かった気がする。もうひとりのあたしと、出会った理由が。夢現の垣根を超えてまで、抱き続けた願いがきっと―――一途で、強かったからだ。幸せになればなるほど、強くなる。お礼を言いたいっていう、それだけの願いが。
それと、負い目も感じてる。あたしの過去も見たんだとしたら、知ってるはず。どれだけ悲しい目にあったのかを。でも、それを知った上で、それでも前に進むことを選んだのは―――もうひとりのあたしが、強かったからだ。もちろん、プロデューサーが傍にいたおかげなのもあるだろーけど、あたしは知ってる............プロデューサーにも、できないことはあるんだって。
だから―――もうひとりのあたしは、未来のあたしを追い抜かしていったんだ。
なら、あたしがすべきことも―――簡単だ。
「............あたしなら、分かるでしょ。そんなこと、言うはずないって」
「―――っ」
「それでも不安なら......いいよ―――とびっきり特別なファンサ、してあげる♡」
両手でハートの合図を作って、心の底から思い出し笑いをする。
これまで大変なことがたくさんあった。それで―――楽しいこともた~.....くさん!数えきれないくらいあった!
その楽しかった全部を込めて!生きててよかったぁって思った、あたしの気持ち!
頑張ったもうひとりのあたしに―――さいっこうのご褒美として、届けたい!
「もしこれが夢なら、目が覚めても.......忘れないでね!」
もうひとりのあたしっていうファンに、そしてライバルに―――
「―――どういたしましてぇ!」
―――あたしのほうが幸せだよって伝えた。
―――もうひとりのあたしを、追い越すように。
行きつけのラーメンみたいな美味い文章でした ┏○)) アザース