episode:15 外来鱒類殲滅作戦。まずはお前からだ。
Lakeside Storiesの横塚です。
今日はとても大切なお話。
奥日光を愛する釣り人ならば、この情勢変化を絶対に頭に入れておいた方がいい。
僕は、Lakeside Storiesを作って本当によかったなと、これほどまでに実感したことはありません。
今、ブルックトラウトを巡って、国レベルで起きていることを共有させてください。
この投稿自体に様々なリスクがあるので、共有すべきかどうか迷っていましたが、書きます!
他人に話したり、拡散する場合は、物事を正しく理解した上でお願いします。
1 外来鱒類を殲滅せよ
外来生物。
「人間の活動によって、他の地域から入ってきた生き物」のこと。
自分で移動してきた生き物は外来生物ではありません。
鳥とか空飛べるし、海の生き物は海で世界と繋がってますしね。
一方で、川や湖は、隔離されていることが多く、淡水魚が自力で移動することは難しい場合がある。
他の地域の魚が見つかった場合、人間の活動によって持ち込まれた可能性が自ずと高くなります。
近年、日本の外来魚の中で、最も話題となっているのはレイクトラウト。
栃木県中禅寺湖にしかいなかったはずのレイクトラウトが、山梨県本栖湖で発見されたため、本栖湖の関係者はヒメマスを守るために必死でレイクトラウトを駆除しています。
僕個人の意見をいえば、本栖湖のレイクトラウト駆除については、全く思うところはない。
僕は、本栖湖や山梨県と縁もゆかりもない部外者、いわば〝外野〟なので、何も言う資格はないと自覚している。
山梨県や本栖湖の未来は、当事者が悩み・決めることだと思う。
逆を言えば、中禅寺湖と関係がない人や、中禅寺湖愛のない人たちから、中禅寺湖のレイクトラウトのことをとやかく言われる筋合いはない。
中禅寺湖のレイクトラウトは、1966年に水産庁がカナダから移植したもので、密放流によって増えたフィールドとは、外来種の導入の経緯が全く異なっていて、今年で導入60周年を迎えています。
奥日光に棲む外来鱒類は4種類。
レイクトラウト、ブラウントラウト、ニジマス、ブルックトラウト。
レイクトラウトは水産庁が移植。
ブラウントラウトは栃木県が移植。
ニジマスは米国が寄贈。
そして、ブルックトラウトは、明治時代に西洋のフライフィッシングを奥日光に伝え、釣り文化を築いた英国の貿易商トーマス・B・グラバーが、1902年にアメリカから移植した魚。
とりわけ、湯川のブルックトラウトは、昭和初期にハンス・ハンターが主宰し、国内外の紳士的なアングラーたち「東京アングリング・エンド・カンツリー倶楽部」によって大切に守られ、西洋のトラウトフィッシングが根付いた奥日光固有の文化そのもの。
そんな奥日光と切っても切れないブルックトラウトですが、
実は今、世界に目を向けてみると、アメリカと日本の共同研究プロジェクトが始動し、ブルックトラウトを駆除するための新たな技術開発が進められています。
2 殺さなくても駆除できる新技術
外来生物の完全駆除って、めちゃくちゃ難しい。
ある程度の時間・労力・金をかけて駆除を継続すれば、生息数を減らし、低密度で管理することはできます。
でも、最後の1匹まで駆除する完全駆除は容易なことではなく、全国でもなかなか進んでいない。
【参考】日本で初めてコクチバスの完全駆除に成功したのは中禅寺湖
平成7年に中禅寺湖でコクチバスが確認されたが、中禅寺湖漁協と栃木県が連携し、完全駆除に成功。「先人達が築いた奥日光の鱒釣り文化を絶対に守り抜く」、「外来種は何でも受け入れるわけではない」という関係者のスタンスが垣間見える。
このような中、外来魚を殺すことなく、生息数を効率的に減らせる魔法のような駆除技術が開発されています。
どんな技術かというと、生まれてくる魚を全てオスにしてしまう技術です。
世代交代を繰り返すたびに、オスが増えてメスが減る。
最終的には全ての個体がオスになって、繁殖できずに寿命で死んでいく。
何とも悲しい技術。
この技術は、外来種駆除のゲームチェンジャーになり得る一手として、大変注目されています。
ここで、駆除のメカニズムを簡単に解説します。
通常、性別を決める遺伝子は、雌がXX、雄がXY。
学校の授業でなんとなく聞いたことがあるやつですね。
お母さんからは必ずXをもらいます。
そして
お父さんからXをもらうと、XXで女の子。
お父さんからYをもらうと、XYで男の子。
ここからが本題。
今回注目の新たな駆除技術の主役は、遺伝子改変された「超雄」という雄の存在。
まずY遺伝子しか持っていない、YYという特殊な雄を作ります。
このYY雄のことを、「超雄」といいます。
めっちゃ雄ってことですかね。
そして、このYYの雄を野外に放して、XXの雌と交雑すると、子供は全てXYの雄になります。
YYの超雄を野外にどんどん放流して、その子供たちを全て雄にしていく。
これを何度も繰り返していくと、雄が増えて、雌が減っていく。
雌が減るということは、卵の数が減るので、次世代の個体数がどんどん減っていきます。
最終的には、個体数が減り、残った個体は全て雄になって、寿命で全滅 The Endです☠️
上記の全部雄にする作戦に加えて、釣りや電気ショッカーで雌を捕獲していけば、より効果的な駆除が可能ですね。
アメリカのコロラド州では、すでに技術が確立され、実際の河川でブルックトラウト駆除の実証段階まで進んでいます。
このプロジェクトには、日本の研究機関も参画していて、湯川を所有し、ブルックトラウトを管理している水産庁関連の研究所「水産研究・教育機構」も参画しています。
これが現在公表されている唯一の資料です⬇️
3 湯川のブルックが心配でたまらない
日本の研究者たちは、ブルックトラウトの駆除技術をアメリカで習得し、日本に持ち帰った後、何をするのでしょうか。
フライフィッシング発祥の地・湯川を管理し続けてきた水産庁と水産研究・教育機構は、何のためにブルックトラウトの駆除技術を習得するのでしょうか。
でも、みんな心配しないでください。
日本で、奥日光で、湯川で
ブルックトラウトを駆除していくとはどこにも書いてありません。
僕が心配性なだけです。
これまで湯川のブルックトラウトを守り続けてきた水産庁と水産研究・教育機構の方々は、奥日光が誇る先人達が残してくれた魚と釣り文化をこれからも大切にしてくれると信じています。
なぜか今年の湯川は大きな雄がよく釣れているみたいです。
超雄とは関係ないはずなんだけど、なんか心配でたまらないです。
4 地域の未来は地域を愛する人が決めるべき
国という単位で物事を考えれば、日本の生態系を守るために外来鱒類を根絶する考え方は理解できる。
でも、国って、数え切れないほどの小さな地域が集まって構成されていて、地域によって、地理的条件や、文化的・歴史的背景、人々の暮らしなどその地域固有の〝実情〟が異なる。
地域には、お偉いさんが机の上で議論しただけの正論では片付けることはできない、もっともっと大切なものがある。
地域の未来は、その地域を愛してやまない人たちが決めるべきだ。
そうじゃないと、地域の集合体である国の未来がよくなるはずがない。
これほどまでに特別な歴史的背景を持つ奥日光でさえ、ブルックトラウトをはじめ、みんなの愛する鱒たちが殲滅され、釣り文化が終わる世界線があることはよく頭に入れておいた方がいい。
僕が「2100年も鱒が棲み続けられる湖へ」というビジョンを掲げたのには明確な理由がある。
美しいトラウトがたくさん生息していて、釣り人も多くて色々と賑わっている奥日光。
一見順調に見えるけど、このまま何も手を打たずに過ごしていくと、7種の鱒が棲めないフィールドになると確信したので、この大きな旗を掲げた。
自然環境の悪化や生態系バランスの変化だけでなく、人間の考え方や行動の変化によって、鱒たちの存在が危ぶまれているから。
その中のリスクの一つが外来種問題と認識していたけど、こんなにも早く、しかもその波がブルックから来るとは想像もしていなかった。
今年、クラウドファンディングに挑戦するにあたって、日光在住の画家香川大介さんに奥日光に棲む7種の鱒たちを描いていただきました。
この7種の鱒たちが共存する絵は、僕が守り抜きたい景色。
7種の鱒がみんな揃って初めて鱒釣りの聖地奥日光だから。
この先、万が一、奥日光のブルックトラウトが殲滅される未来がくるとしたら、奥日光の人々や日本中のアングラーを巻き込むかつてないほどのムーブメントを巻き起こして、絶対に釣り文化を守り抜いてやる。
もしも、その時がきたら、みんなに全力で助けを求めるから助けてください🤝
そして、この件は、Lakeside Storiesが責任を持って物事を進めていくので、今はみんな過度に騒がないでください。
Lakeside Storiesは、明治時代以降、先人達や地元の人たちが築き、守り続けてきた奥日光のトラウトフィッシングをより良いカタチで未来に繋ぐための組織です。
今年から湯川とブルックトラウトを守るためのプロジェクトを新たに立ち上げることにしました。
敵は強い方がいい。おれはやるぞ。


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