「寝酒は睡眠の質を低下させます」
「夕食後はカフェイン摂取を控えましょう」
不眠や眠気、夜型生活など睡眠の悩みを改善するために、家庭内でできる工夫によって睡眠の質を向上させ、睡眠リズムを整える方法を「睡眠衛生指導」と呼ぶ。カフェインやアルコールなどの嗜好品との付き合い方はその代表だが、そのほかにも、運動、食事、入浴などの生活習慣、昼寝時間や就床時刻などの睡眠習慣、室温や照明、寝具などの寝室環境の調整などがある。運動、入浴、食事、昼寝と睡眠との関わりについてはこのコラムでも何度も取り上げてきた。
睡眠衛生指導の手法は数多くあるが、2026年に発表された日本人約3000人を対象にした調査で、慢性的な不眠に悩む人々が実際に抱える生活習慣が明らかになったのでご紹介しよう。皆さんが睡眠衛生指導を活用する際のヒントになると思うからだ。
今回の調査では睡眠衛生に関わる代表的な30項目の生活習慣について調査している。解析の結果、不眠のない人に比べて、慢性不眠症で悩む人が陥っていた生活習慣上の問題として浮かび上がったのは下記の11項目であった。カッコ内は頻度を表している。
1. 定期的な運動が不足している(55%)
2. ベッドの中で睡眠に関係のない活動(テレビ、読書、スマホ等)をする(46%)
3. 起床時刻が毎日一定ではない(38%)
4. ベッドの中で心配事について考える(37%)
5. 夜中に目が覚めたとき、時計を見て時間を確かめる(36%)
6. 日中に屋外の光(日光)を浴びることが不足している(36%)
7. 週末に寝だめをする(遅くまで起きている・寝坊する)(32%)
8. 寝室に睡眠と無関係な物品(仕事の道具など)が多すぎる(30%)
9. 就寝時刻が毎日一定ではない(28%)
10. 就寝前の4時間以内にカフェインを含む飲料(コーヒー、緑茶、コーラなど)を飲む(26%)
11. ベッドの中で「眠れないのではないか」と心配する(24%)
不眠を悪化させる生活習慣として知名度が高い「就寝前のアルコール(寝酒)」「就寝前の刺激物(ニコチン・タバコなど)」「空腹でベッドに入る」などの飲食行動や、「睡眠環境が明るすぎる」「寝室の湿気または乾燥、温度」「寝具が心地よくない」などの寝室環境の項目は慢性不眠症の発症や悪化とは関連がなかった。
不眠対策としてよく挙げられるカフェインや寝酒だが、この調査ではカフェインが10番目に入っているが、習慣性飲酒はランクインせず、両者とも不眠症との関連が弱いことが明らかになった。
コーヒー、お茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには確かに覚醒効果と利尿作用があり、影響が消えるまで4〜5時間かかる。また、アルコールには深いノンレム睡眠だけではなく、夢を見やすいレム睡眠を減少させる作用がある。そのため、いわゆる休肝日など飲酒しない夜にリバウンドによる不眠や悪夢が出やすく、それが理由で晩酌が止められない人もいる。
カフェインもアルコールも睡眠の質を下げる「薬物」なので、不眠がある人は控えてみる価値はある。ただし、カフェインもアルコールも不眠の有無にかかわらずよく行われている生活習慣であるほか、睡眠への影響も個人差が大きく、不眠症を強く後押しする要因として浮かび上がらなかったのだろう。
次ページ:これらはなぜNGな生活習慣なのか 不眠症治療で朗報も
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