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経済建設スローガンと《1211高地》

朝鮮の風景を見渡してみると、工場でも学校でも軍隊でも、そして街中でもスローガンが掲げられている。
その中でも特に工場や農場など生産現場に掲げられている
スローガンは朝鮮労働党第8次大会や第6次細胞秘書大会以降、様々な変化を遂げた。

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(上写真)『将軍様に従い千万里』が一般的だったが『党中央に従い千万里』というスローガンが登場した

2021年2月、労働党8次大会では党規約が改定された。「先軍政治」などといった単語が削除されるとともに「共産主義」などの懐かしい単語が復活した。

懐古的なスローガン

今春以降よく目につくのが「一つは全体のために、全体はひとつのために」。

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この語の起源はアレクサンドル・デュマの小説「三銃士」だとか、それ以前から存在するだとか諸説ある。
マルクスなどの共産主義・社会主義者たちにも愛用された。
朝鮮でも戦後の千里馬建設時代から集団主義(≠全体主義)のスローガンとして使われていた。

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スローガン『ここは社会主義経済建設の《1211高地》、思想と信念の対決場』

タイトルの写真は黄海(ファンへ)製鉄聯合企業所のスローガンだ。
そのほか、興南(フンナム)肥料工場でも『興南は化学工業の《1211高地》』というスローガンが掲げられ、それは韓国のメディアでも報道された。

《1211高地》とは何か。
それは日本海側、江原道(カンウォンド)のDMZ付近に位置し、朝鮮戦争では最も苛烈な戦闘が行われた高地の一つであったと言われている。

朝鮮戦争《1211高地》の戦い

1051年9月〜10月30日。
膠着する東部戦線、韓国軍・国連軍に押され気味だった朝鮮にとって《1211高地》の防衛は決死を分つ正念場であった。
《1211高地》を失うことは金剛山地区や元山(ウォンサン、日本海側の重要な港湾)までも失うことを意味していた。
最高司令官・金日成将軍は同年9月に現地を視察し「生命を以って死守せよ」と命令をくだす。
韓国・国連軍の猛烈な迫撃砲の砲撃によって「高地の標高は1mも下がった(※)」と言われている。
※朝鮮側資料参照

《1211高地》は李寿福(リ・スボク)英雄を生んだ。
彼は高地を奪還するために自ら犠牲となった。敵軍の火点を己の身体で塞ぎ戦死した。1952年4月に共和国英雄称号を授与され、現在は平壌にある「愛国烈士稜」に眠る。
彼の名前を知らずとも「戦勝記念塔」の彼の銅像を見たことがある人は多いのではないか。

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これは《1211高地》防衛の戦士たちの像であり、中央は李寿福英雄だ。
戦争において英雄を立てる行為は(本人の意思とは関係なくとも)友軍と国民の士気を盛り上げるためによく行われる手段だ。
スターリングラードの戦闘における狙撃手ザイツェフのように、来たる東京五輪における復活の象徴として闘病からカムバックした水泳選手にスポットを当てるように。
このように《1211高地》と李寿福英雄は朝鮮の英雄神話として現在も輝き(輝かされ)続ける。

スローガンとしての《1211高地》

《1211高地》というキーワードは、朝鮮戦争の戦士たちが首領の命令を生命を賭して死守したことから「必ず達成されるべき目標」という意味で使用される。
かつて、1990年代後半から2000年代までの食糧難《苦難の行軍》時代には1998年には『農業戦線は社会主義経済建設の《1211高地》』というスローガンが掲げられた。
そして第8次党大会以降は重工業、化学工学部門にてそのキーワードが使われている。

金日成主席が率いた抗日パルチザンの革命活動と朝鮮戦争における「戦勝」の偉勲は現在の指導体制を正当化する。
そういったワードが社会主義経済建設のための宣伝活動にたびたび登場するのは過去の輝ける栄光で人民を鼓舞する目的とともに指導体制の地盤を固め直す狙いがある。

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(写真)生産現場に設置された様々な直観扇動掲示物

おまけ 《金日成高地》韓国側の記録

韓国ソウルにある戦争記念館にて配布されていた書籍『6.25戦争1129日』(李重根 編著)より抜粋引用。
韓国では《1211高地》を《金日成高地》とも呼んでいる。

1951.9.14 金曜日 曇・雨 447日次
戦況:金城以東戦線、熾烈な攻防戦

9.17 月曜日 曇 450日時
戦況:インジェ東北方盆地帯 小陽江渓谷に国連軍、12.8km進出し重要高地を奪還
リッジウェイ国連軍司令官、休戦会談再開を提案

10.30 火曜日 晴 493日次
戦況:国連軍 東部戦線、共産軍高地を攻撃して、土木火點40箇所撃破
海外:米原子力委員会、第3次原子爆弾実験を実施

10.31 水曜日 晴 494日次
戦況:国連軍、金城東南方で共産軍200名の攻撃を撃退

参考資料

주체110(2021)년 3월 17일 《우리 민족끼리》
금속, 화학공업부문에서 생산성과 계속 확대
http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=cgisas&mtype=view&no=1207385
일심단결의 나라
4) 민주의 요람을 지켜
  2《미국놈들이 조선사람을 잘못 보았소》
http://uriminzokkiri.com/index.php?ptype=cbooks&stype=0&page=26&mtype=view&no=2528&pn=9
우정문고 요약본 6.25전쟁 1129일 이중근 편저

草思社 若き将軍の朝鮮戦争 - 白善燁回顧録

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北朝鮮文化ウォッチャー。 平壌にある金元均名称音楽綜合大学専門部民族器楽学科を通信受講生として修了。音楽や文化を通じて北朝鮮の政治情勢や人々の暮らしを紹介している。いまの関心事は北朝鮮のエネルギー事情。趣味はサイクリングと旅行と中国茶。JAPAN MENSA会員。
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