ドナルド・トランプ米大統領にとって、大国外交の最大の相手は中国の習近平国家主席だ。米国の利益を最大化するため、対中輸出を切り札にディール(取引)を仕掛ける。だが、その実利追求の先に、台湾問題や中国の覇権拡大を巡って譲歩する「危険な合意」(ワシントン外交筋)が待ち受けていないのか。ワシントンでは警戒感が消えていない。
「中国の要求をのまないか心配だ」
「大成功だった」。トランプ氏は5月15日、北京での習氏との首脳会談を振り返り、こう自慢げに語った。トランプ氏は首脳会談の一部に米企業幹部を同席させ、米ボーイング製の航空機200機や米国産農産物、原油などの売却で合意した。11月にトランプ政権への審判が下される中間選挙を前に、米国の利益拡大をアピールした格好だ。
米中関係についてトランプ氏は、両国が世界を主導していくというニュアンスのある「G2」という言葉を用いて表現した。台湾への軍事圧力を強め、ロシアやイランと連携する中国であっても、経済的利益を狙ってディールを展開する。経済と軍事で米国に迫ろうとする中国を持ち上げ、「習氏と非常に良好な関係だ」と繰り返している。
こうした姿勢に、米議会や日本政府などから「台湾問題で中国の要求をのまないか心配だ」といった懸念がやむことはない。
在任中の台湾侵攻は「ない」
一方、在ワシントンの安全保障専門家は「トランプ氏が自身の在任中に台湾有事は起きないと語っている」ことに注目する。
米中関係の戦略的安定を模索し、また「平和の創造者」を自任するトランプ氏にとり、台湾有事は対中外交の失敗を意味する。