light
The Works "いぶりがっこ" is tagged "日車寛見" and "日下部篤也".
いぶりがっこ/Novel by みのじ

いぶりがっこ

1,305 character(s)2 mins

いぶりがっこ。日車と日下部(CP要素なし)。
Twitter信号六さん(@singouroku)の影響強め。

1
white
horizontal

 おつかれっしたー、お疲れ様ー、じゃまた来週。
 職場の慰労会を終えた皆が、様々な挨拶を交わしながら、店の前でバラけていく。

「おい、センセ。ちょっと飲みなおさねぇか」

 棒付き飴を咥えた日下部が、日車を呼び止める。
 歩き出そうとしていた日車が立ち止まり、下唇を突き出した仏頂面で少し考え、応える。

「…いいですが、どこで」
「ここからうち、近いんだわ。宅飲みでどうだい」

 日車が了承し、二人で歩き出す。
 二人ともネクタイを緩め、上着は小脇に抱えて鞄と一緒に下げている。

 弁護士を辞め、同じ職場に転職してきた変わり者に、日下部は興味がある。
 飄々とした態度。倫理観の塊でありながら時折見せる激しさ。じと、と人を見つめる時の、見透かそうとする目の奥。

 対した日車も、日下部に興味がある。
 のらりくらりと仕事を避けながら、自分の職はキープし、指南もこなす。普段実力を隠している理由はなんだ。
 
 この男は、何を持ち合わせているのか。
 その考えのみが、現在の二人の共通点だ。

 日下部の住むアパートの近く、深夜営業しているスーパーで酒を買うことにして、入店する。

「あー…先に言っとくが、うちの冷蔵庫、ビールと水しかねぇからな。つまみもねぇ」
「自炊はしないんですか」
「めんどくせぇ」

 はぁ、と小さくため息をつき、日車がカゴへすぐ食べれるような食材を放り込んでいく。
 後ろからはビール缶のセットを抱えた、日下部がついていく。

 日下部の部屋は、六畳一間の畳敷だった。

 敷きっぱなしだった布団をたたみ、まぁ座れと日車を促す。…意外と床に埃はなく、部屋は最低限片付いている。真ん中には小さな丸テーブル。

 買ってきたビールを二本を残して冷蔵庫にしまった日下部に、日車が皿はないかと聞く。

 差し出された丸く白い皿を受け取り、買ってきたいぶりがっこを雑に並べると、クリームチーズを割り箸で千切って乗せた。

「へぇ。センセ、料理するんだ」
「そんな大層なものじゃない」

 日車の口の端が、微かに上がる。

 缶ビールを開け、二人だけの追い飲みだ。
 酒を飲み、いぶりがっこをつまみ、話をする。
 何度目かの『センセ』に、その呼び方はやめてくれ、と日車が訂正を入れる。

 共に三本目が空く頃、日下部が切り出した。

「なんで弁護士、辞めちまったんだ」
「そこに正義がなかったからだ。…あなたはどうして、そんなにのらりくらりと逃げるんだ」
「面倒くせぇ。楽して給料が手に入るなら、それに越した事ぁねぇよ」

 お互いに聞きたいことを問い、答えを聞き、ビールと一緒に腹へ飲み込んで反芻する。

 まだ相手の底が見えない。
 ああ、この男と飲むのは、楽しい。

「…あー、日車すまん、ビール終わったわ。焼酎ならあるけど、あんた飲めるか」
「飲めるぞ。何があるんだ、芋か」
「芋だ。…意外とイケるね」
「日下部さんこそ」

 ははは、と日下部が笑い、ふふっ、と日車が小さく笑う。
 飲み仲間ぐらいにはなれそうだ。

 大人二人がお互いに新しい友を得て、夜が楽しく更けていった。

Comments

  • 多華子
    May 15th
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags