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ロリポップキャンディー/Novel by みのじ

ロリポップキャンディー

1,139 character(s)2 mins

外、時間設定なし。
寛篤寛(※呪詛車・ノーマル篤)。
2024/12/15発刊「ScorchDrop2」に収録していた書き下ろしです。

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 じゃり、と日下部の足元で小さな瓦礫が、音を立てた。

 彼の前には、横たわる日車の姿がある。
 髪は乱れ、シャツも所々破れて血にまみれ、中でも鳩尾の二つの斬撃傷は深い。
 ……奇しくもそれは、新宿決戦で日下部が受けたのと、同じ場所だ。

 自身の役割を突き詰めた挙句、日車は姿を消し、呪詛師へと成り果てた。
 そして討伐命が日下部に下され、…それは、拒むことが、出来なかった。

 勝者は立ったまま、地に背を落とした敗者を見下ろしている。
 その表情は逆光で、かつ霞み始めた日車の眼で、見ることは出来ない。

「……アンタさ、なんで反転、使わねェの」
「……そんなことしても、無駄だろう」
「無駄じゃねェだろが」

 ふふ、と笑う日車の顔は、穏やかだ。

 日下部が納刀し、その横へしゃがみ込む。
 ポケットをごそごそと探って取り出したのは、新しい棒付き飴だ。
 ぺりぺりと小さな音を立て、薄いビニールの包装を破る。
 指先が血でぬめり、なかなかうまく開かずに苦戦する彼に、日車から声がかかる。

「くれないか」
「あ? ……これ?」
「ん」

 持ち合わせている、最後の一つ。

「なンでだよ」
「そのぐらい、いいだろう。最後の願いだ」
「その言い訳は、ずりィわ」
「君には、情に訴えるのが、効くんだ」

 日下部は、指先と棒付き飴をトレンチコートの裾で、雑に拭う。
 爪を立ててカリカリとひっかくうちに、やっと端がめくれてきた。

「なんでそんなに、生き方拗らせちまったんだよ」
「……お前に理解して貰おうなどと、思っていなかったからだ」
「俺はそんなに、頼りなかったか」
「いいや」

 少し歪な丸が、姿を現した。
 淡いパステルカラーがマーブル模様に入り交じったそれは、何味なのだろう。

 無言で手渡そうとした日下部に向け、日車はにやりと笑い、口を開けて見せる。

「自分で持てよ」
「右は無いし、左も筋が切れてる」
「すまねェ」
「ははっ」

 久しぶりに口に含んだ飴はとても甘く、所々が酸っぱい。
 そのまだらな味は、ほんの少しの期間だけ肌を重ねた事を、彼に思い起こさせた。

 あの時甘さに浸っていたのは、自分が赦せなかったからなんだ。
 喉元まで出かかった呪いを、飲み込む。

 唾がもう、出てこない。
 乾いた咥内に、甘さが張り付く。

「他に、言い残したことはなんか、無ェのか。ほら、虎杖とか」
「……日下部。俺を止めてくれるのは君だと、思っていた」
「……おい。そりゃどういう意味だよ。……ちくしょう」

 その質問に返る言葉はなく、日車の口の端は微かに上がっている。
 ようやく死が訪れた彼を前にして、日下部は小さく、やり場のない怒りを吐いた。

Comments

  • shida
    Jun 16th
  • 小夜双☆スカィWeb
    Jun 15th
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