国内旅行の参加率はすでに5割を下回り、海外旅行を「したくない」人は過半数に達した。日本人はいつから観光に価値を見出さなくなったのか。データが映し出す「観光離れ」の現在地を考える。
話題の新刊 山口誠著『観光を忘れた日本』(6月18日発売)では、日本で起きている深刻な「観光離れ」という社会問題を、観光の歴史をひもとくことで考察していく。
※本記事は、『観光を忘れた日本』より一部を抜粋・編集したものです。
コロナ禍のせいではなかった
日本観光振興協会による別の経年調査によれば、過去1年以内に「宿泊をともなう国内旅行」へ参加した人の割合(参加率)は、2017年度に49.0%を記録したという。つまりコロナ禍の3年ほど前から、1年間に1回も「宿泊する国内旅行」に行かない人が過半数に達していたことになる。翌2018年度の「参加率」は50.1%に回復し、かろうじて半数を超えたものの、その翌年の2019年度から2024年度までの5年間は、50%を切った「参加率」で推移している。
この「参加率」と合わせて、「参加希望率(出かける意向の割合)」の調査結果も公表されている(下図 1-7)。
国内旅行の「参加希望率」は、東日本大震災の2011年度にピークを打ち、同年の81.9%から年々下降していった。そして2017年度から、急減といえるほどの右肩下がりを示し、コロナ禍の影響が深刻化する直前の2019年度で、すでに61.1%まで下降していた。その後の「参加希望率」は5割を下回ってはいないものの、しかし2024年度には53.1%まで低下した。あと少しで半数を割るところまできている。
こうして2014年度から2024年度までの10年間で、およそ20ポイントも国内旅行への「参加希望率」が減少したことは、もっと知られてもよい社会的傾向である。
たしかに正月やお盆になると、帰省ラッシュのニュースが流れ、道路の渋滞や新幹線の混雑などが必ず報道される。そこに日本を訪れる外国人たちの「インバウンド・ブーム」や過剰な混雑(オーバー・ツーリズム)などをめぐるニュースが加われば、まるで日本中が観光に沸いているような印象を抱くかもしれない。
しかし日本の現状を正確に理解するためには、印象ではなく実証が必要である。すでに日本社会では、国内旅行の「参加率」は5割を切って久しく、「参加希望率」も減少し続けている。また海外旅行は「したくない人」が過半数に達し、他方で海外旅行を「したい人」と回答した人は21.5%に留まっている。
驚くべきことに、異なる組織による、異なる調査であるにもかかわらず、2024年における「海外旅行をしたい人」の割合である21.5%(日本観光振興協会の調査)は、「パスポート保有率」の17.5%(外務省の統計)と、じつに4ポイントの差しかない。こうして、8割あまりの日本人が海外旅行に行かない、むしろ行きたくない、と回答する21世紀の日本社会の傾向が、はっきりと浮かび上がってくる。