研究力強化や教育の充実にはつながっていない
複数の教員によれば、大学の本部事務機構が助成金の使途を明らかにしていないために、財務が本当にショートや逼迫しているのかは分からないという。本稿で関係者が指摘した内容が、本当に要因になっているのかどうかも、本部が明らかにしない以上推測の域を出ない。
しかし、少なくとも大学ファンドによる巨額の助成金が、現場の研究や教育のために使われている形跡は見当たらないと言わざるを得ない。既存の教員の研究力強化にもつながっていないようだし、博士課程の学生や留学生の支援も削られるなど、学生の教育支援は後退している。
この連載の2回目で大学院生は、「国際卓越研究大学に認定されたメリットは、他大学から書籍のコピーなどを取り寄せる際のコピー代と送料が無料になったことだけだ」と話していた。教員にも感じているメリットを聞くと、「論文掲載に本部が金を出すこと」を挙げた。
「無料で読むことができるオープンアクセスの学術誌に論文を掲載する際、掲載する側が費用を払わねばならず、高いもので数十万円の費用がかかります。なぜなら無料で読めることで、引用率が上がるからです。そこで東北大では、オープンアクセスの学術誌に論文を出す場合には、本部が費用を出すようになりました」
引用率が上がることで、Top10%論文になる可能性も上がる。これも評価をカネで買うようなものかもしれない。この教員は、現状を次のように憂慮した。
「国際卓越研究大学に認定されたのに、研究力を高めるには何をすればいいのかを知らない人が采配を握っている感じがします。論文数をカネで買うこと自体おかしいですし、たとえカネの力で論文を増やすことができたとしても、限界がある。東北大が掲げた『25年後に大学全体で2万4000本の論文を書く』なんて絶対無理ですよ。本当の意味で世界最高水準の研究大学を目指す取り組みをしていかなければならないのに、現状には強い危機感を持っています」
関係者によると、2026年4月の部局長連絡会議では、人事院勧告への対応を本部と部局で折半にすること、今後着任する国際卓越関連の高給の教員人件費も,本部と部局で折半にすることを決定した。しかし元々、部局にはそうした予算がないため、部局の教員を減らして拠出することになる。これが東北大学の現状だ。国際卓越研究大学制度が掲げる研究力の強化とは方向が異なると言えるのではないか。
それにしても、なぜ東北大では大学ファンド助成金の使い道が不透明になっているのか。次回は東北大のガバナンスについて考えてみたい。
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