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学パロ/Novel by なゆた

学パロ

13,485 character(s)26 mins
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「日下部さん」
 廊下で見かけた一個上の先輩である日下部に駆け寄り、声をかけた。
「おう、どうした?」
 日車の存在に気づき、ピタリと足を止め、向き直った。
「この間勧めていただいた書物で分からない所があるので教えていただきたい。」
「お前に教えられる事なんざねぇよ…」
 ゲッ、と面倒そうな表情を浮かべ、小さく息をつくと今日の予定を思い出す。今日は、特に任務等は入っていなかったはずだ。座学が終われば、放課後は特に何もないことに気づき、日車を見下ろした。
「放課後でいいか?」
「はい。」
 表情は相変わらず乏しいが、心なしかパッと明るくさせた。そんな日車の変化に笑みを溢しつつ、手を振って、次の講義が行われる教室へ向かった。
 小さくなる日下部の背中を見送り、自分も次の講義の行われる場所へ行こうと足を踏み出した時だった。後ろから二人の男が近づき、楽し気に日車の肩に手を回した。
「なーに可愛い子ぶってんだ?」
「寛見ちゃん良かったねぇ!」
 ニヤニヤと小憎たらしい笑みを浮かべる甚爾と髙羽。揶揄われたことに不満げな表情を浮かべ、二人の手を払いながら、じとりと睨め付けた。
「…別に可愛い子ぶってなどいないが。」
 二人に向かってそう告げれば、二人は顔を見合わせ、驚いたような表情をした。
「あ?気付いてねぇの?」
「寛見ちゃん、日下部先輩といる時だけ目がキラッキラしてるよ!?」
「…?」
 二人の言っている事を理解できず、小首を傾げた。そんな日車の様子に、甚爾は呆れたようにため息をついた。
「ダメだ。何も分かってねぇ顔してる。」
 放課後、軽く自身の部屋を片付け、日下部が訪ねて来るのを待った。扉の方から、コンコンと控えめな音が鳴る。すかさず扉へ向かい、開ければ日下部が立っていた。
「悪い。ラストの授業が長引いた。」
「問題ない。上がってくれ。」
 初めて日車の部屋に訪れた日下部は物珍し気に周りをキョロキョロと見まわした。
「本当にここで生活してんの?」
「?当然だろう。」
「…生活感ねぇな。モデルルームみてぇ。」
 そんなお世辞とも皮肉とも取れない評価をもらいつつ、日下部が座れるよう座布団を敷いた。向かい合うように座ってしまえば、同じ書物を一緒に読むことが難しいと判断し、二人は隣に並び座った。日下部にピッタリとくっついて座った日車。パーソナルスペースが以外にも狭い、という日車の新たな一面を知りつつ、日車が指さす箇所を一緒になって覗き見た。
 日車が投げかける高度な疑問に対し、丁寧かつ分かりやすい説明が返って来る。何を訪ねても当然のように返答を貰える事が嬉しかった。無意識のうちに居心地の良さを感じ、自分でも気づかぬうちに自然と頬が緩んでいた。日下部はそれに気づき、目を丸くした。そんな日下部の様子に気づかず、ページをめくるべく、手を伸ばした。
 その瞬間、部屋にピコンと音が鳴り響いた。書物に伸ばした手を引っ込め、音のした方に視線をやる。ポケットに入れていた携帯電話を取り出せば、ピコピコと光が点滅していた。
「携帯鳴ってんぞ。」
「ん、ああ、すまない。メールだ…」
 パッと携帯を開けば、甚爾からメールが1件入っていた。何かあったのだろうか、とメールを開く。本文には短く『ゴムはしてもらえよ』とだけ書かれていた。意味を理解した瞬間、ピシッと額に青筋を浮かべた。
「なんだって?」
「何でもない。」
 先ほどまで楽しそうな笑みを浮かべていたのにもかかわらず、突然不機嫌になってしまった日車を不思議に思いつつ、また、書物へ目を向けた。問答が続き、気づけば日が落ち、あたりは暗闇に包まれていた。
「うげっ、いま何時だァ?」
「…すまない、夢中になりすぎた。食堂は…間に合わないな。」
「いいよ、部屋にカップ麺あるから。お前はちゃんと食うもんあんの?」
「固形の栄養食と飲むゼリーがあるから問題ない。」
「それは飯とは呼ばない。待ってろ、お前の分も持ってきてやるよ。」
 そう言って日車の部屋を後にした。インスタント麺も栄養食も似たようなもんだろう、と思いつつ日下部が戻って来るのを待った。しばらくすると、またノックの音が聞こえ、扉を開けた。そこには両手にお湯を注いだカップ麺とその上に、レンジで温めるご飯が二つ乗っていた。目を丸くしつつ、部屋に招いた。
「醤油とみそ、どっちがいい?」
「…醤油だな。」
「ん、おらよ。」
 目の前のカップ麺を見てまたもや目を大きくした。カップ麺は通常サイズではなく、大盛と大きく書いており、その上のお米にもでかでかと大盛と書かれていた。
「…多くないか?」
「は?そんなもんだろ。」
 箸を手渡され、礼を言いつつ受け取った。
「…考えてみれば…カップラーメンを食べるのは初めてだ。」
「マジで言ってる?」
「ああ、このレンジで温めるタイプのご飯も初だな。」
 どこのお嬢様だよ、と言いつつ箸を割った。小さく、手を合わせ「いただきます」と呟くと、日下部同様に箸を割った。一生懸命に食べ進めていくが、やはり量が多く、なかなか減らない。もう限りなく満腹に近い日車を見かね、日下部が声をかけた。
「大丈夫か?」
「……問題ない。」
 いただいたものを残すわけにもいかず、懸命に口に運んだ。とっくに自分の分を平らげた日下部は呆れたように笑い、日車からラーメンとご飯を取り上げた。
「無理すんな。」
「……すまない。」
 しょんぼりと肩を落とす日車に苦笑を漏らした。日車が食べきれなかった分もすっかり平らげてしまった。日下部の食べっぷりには驚かされた。その後、二人で共同の洗い場に行き、カップを丁寧に洗い片付けた。
「長い時間付き合わせてしまってすまなかった。勉強になった。」
「おう。まあ、あんま詰め込みすぎんなよ。」
「…ありがとう。また頼む。」
 柔らかな笑みを浮かべる日車に対し、日下部は照れ臭そうに頭を掻いた。日下部と分かれてしまう事を名残惜しく思いつつ、それぞれ部屋に戻って行った。部屋に戻り、自分以外誰もいない部屋に少し寂しさを覚えつつ、寝支度を始めた。つい先ほどまで日下部が座っていた座布団を片付ける気になれず、そのまま置いておく事にした。二人で過ごした時間を思い出す度、じんわりと沸き上がる暖かなこの感情が分からず、知らないふりをし寝床についた。

Comments

  • May 10th
  • Natukaze
    Mar 29th
  • ☆ST

    最高すぎる… この組み合わせで学パロ最高ですね! 新たな知見を得た。

    November 9, 2024
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