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君の味が知りたい/Novel by かずき

君の味が知りたい

1,453 character(s)2 mins

事後タバコを吸っている日車の話。
普段吸ってない人がタバコ吸っている姿ってなんかいいよね。

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乱れた身体を清めて戻ってきた日下部が寝室に戻ると、先にシャワーを済ませて部屋に戻っているはずの日車が見当たらない。ベッドは綺麗に整えられているが人間がいるような膨らみはなかった。視線をベッドより先に向けると、カーテンがハラハラと風になびいておりベランダに繋がる窓が開いている。その向こうに見慣れた後ろ姿が見えた。ベランダに出ようとしたら置いているサンダルを履かれてしまっていたため、外履きをわざわざ持ってくるのも面倒くさかった日下部はあとで拭けばいいかと裸足のままベランダに出た。
ようやく探し人を見つけたと思ったらそこにはしばらく嗅いでいなかった香りが舞っており、できれば思い出したくなかった煙たさがあった。
「吸う人だったの?」
そこには口から白い煙を吐き出し、横目に日下部を見やる日車がいた。日車が喫煙者だとは聞いたことはないしこれまで吸っている姿を見たこともない。だがはじめて吸うという感じもなくその姿にぎこちなさはなかった。
「いや、今は吸ってない」
「ん?吸ってるじゃないの」
「弁護士のときに相手に合わせてたまになら吸ってた。喫煙者同士だと相手が心を許してくるから情報収集にちょうどよくてな。酒とタバコは相手が油断する」
弁護士のときどれだけ大変だったかはよく知らない。だが、検察と違って己の足でなんでも探らなければいけないというのはなんとなくわかる。重要参考人が必ずしも全員が善人ということなんてあるわけもなく。そうなるといかに相手の懐に入るかが重要になってくるわけで、その手段として相手の嗜好に合わせるというのは常套手段だったのだろう。
「じゃあ今はいらないんじゃないの」
弁護士を辞めて、辞めざるを得ず、呪術師になった現在の日車にはこの手段は必要ないように思う。それに今、日車の目の前にいるのは日下部だ。尚更その必要性がない。
「……君が吸っていたと聞いてな」
「なに?俺のこと油断させて何がしたいの?」
もう十分心は許しているし油断もしているというのに。日車の見慣れない姿はより魅力的に目に映った。普段は自身の下で愛らしく啼いている姿とは打って変わって、たまにならこうして男らしい仕草をする想い人を眺めるのも悪くないなと、タバコを吹かす日車の横顔を日下部はうっそりと見惚れた。しかし、その視線に気が付いた日車がずっと横を向いていたのに、日下部の方へくるりと向き直り、へらりと口角を上げて悪戯な笑みを見せる。あ、しまった。と日下部が思ったのも束の間、次の瞬間部屋着の胸ぐらを掴まれ日車の方へ引き寄せられると、食むように唇を塞がれた。口内には日車が吸っていたタバコの香りが広がり鼻から抜けていく。何度か舌を遊ばれたあと満足したのか日車は離れていった。
「どうだ久しぶりのタバコの味は?」
「また吸いたくなるからやめてくれる」
日車の悪戯に顔をしかめる日下部をよそに、ククッと日車が嫌味に微笑む。それが気に入らなかった日下部は、部屋に戻って自分のコートのポケットから棒付きキャンディーを取り出す。フィルムを剥ぎ取り再びベランダに戻ると、日車の手からタバコを取り上げ、日下部は日車の口にキャンディーを突っ込んだ。
「今の俺の味はそれだ。覚えとけ」
一瞬面食らった表情をした日車だったが、あぁくだらないことをしてしまったな。と、顔に集まる熱を誤魔化すため手で目元を覆うと、コロリと舌で飴を転がす。吸い慣れないタバコの苦味はあっという間に消えてなくなる。これは苺味。さて明日は何味だろうか。

Comments

  • 花緑
    Apr 28th
  • 小夜双☆スカィWeb
    Apr 27th
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