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上下問答/Novel by キト

上下問答

3,215 character(s)6 mins

すべて書き手の捏造です。肉体的に篤寛に至るまで。特にハイライトはありません。
・話題としてはR15相当
・本編後if/日車術師設定
・付き合ってる/肉体関係あるっぽい/陰鬱日車

ファンパレはじめました
限定の天井っておいくら?装備的なものは別枠ガチャですか?何もわからない

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 一定数の同性カップルにおいて、もし実際の事に至った場合にどちらの穴を使うか?という問題は時に非常に繊細なものとなる。日下部にとってもそれは、今のところ先送りにしているだけの大きな問題だった。日下部自身も、パートナーの日車も、現在の関係に至るまでは互いに自分はヘテロだと考えていたし、異性相手だとしても自分の尻を使って遊ぶような性癖は持ち合わせて来なかった、それははっきりと確認している。
 既に二人は、相手へ抱えたあからさまな欲を、互いに触れ合うことで慰め合う関係にはあった。しかしここから先の行為に進むか、日車はそれを望んでいるのか……それを確かめる一言を、日下部からはなかなか切り出せないでいた。

「日下部。君は俺とセックスしたいと思うか」
 ある夜の夕食の後。教養バラエティ番組の流れるテレビを前にぼんやりとしていた日車から、不意になんでもない世間話のように放たれた台詞。後片付けに皿を洗う手を動かしていた日下部は完全に気が抜けていて、その言葉を一度で理解できずに無言のまま日車の横顔を凝視した。見つめた先の瞳が動いてちらっとこちらを見て、視線がかち合うとすぐにテレビへ戻された。
「……二度言わせないでくれ」
 表情こそ変わらないものの、視線を落とした日車に日下部は我に返って慌てた。セックス。性器の挿入を伴う性行為。今まで日下部が先送りにし続けてきた話題が日車の口から先に、しかもこんなに突然出てくるとは思っていなくてかなり面食らった。急いで手を洗って、どこに座るべきか一瞬迷って、結局日車の隣に腰を下ろしてテレビを止めた。鳩が豆鉄砲を食らったらこんな心境なんだろうなと思った。
「いや、そりゃな……けど抜き合いで充分じゃねーの?俺ら別にどっちも女役やりてえって訳でもなし」
 先に述べたようにお互いそれは把握しているはずの事だった。
「そう、だから、」
 日車は黙った。視線は落とされたまま、机の上をうろうろと彷徨っている。それから軽く目を閉じ、小さく息を吐き、また目を開くと真っ直ぐに日下部を見た。
「君、俺を抱けるか?」
 所在無げにシュガーレスのミントの飴を転がしていた日下部の口の動きが止まった。その質問についてはもちろん考えた事があった。そして抱けるか抱けないかで言えばイエスだ。日下部としてはそもそも、全身弄り合ってキスして急所を擦り付け合っていながら相手の穴に挿れるのは無理です、そんな事はまず無い。というより、このまま中に突っ込みたい、と最高の瞬間に無体な考えが頭を過った事は今までに何度もある。願望が口から出てこなかったのは、日車だって同じように考えている可能性も当然あるわけで、どうするという賽が投げられた時にその結果を受け止める覚悟ができていなかったからだ。
「抱ける。でもお前別にネコじゃねーんだろ。んな無理しなくていいって」
 日車のその我慢で万が一今の関係が壊れるくらいなら、ただ抱き合うだけだって良いと日下部は思う。キスをする時、何とも良さそうに惚けている顔を見るのが日下部は好きだ。唇と舌を貪り食おうとすると必死にやり返そうとしてくる、そんないじらしさに嵌っている。過ぎた欲をかいて手放したくはない。ともかく突然こんな事を言い出すのは何か引っかかる事でもあったか。確かに互いに明日の命も知れない立場の関係なものだし、日車は考え込みやすい性質だ。今もずいぶん難しい顔をしている。日下部は日車の頭に軽く手を置いた。
「大丈夫だ、男同士のやり方は知っている。受ける側のリスクも」
「知ってりゃいいってもんじゃねえよ、お前のメンタルの話を俺はしたいわけよ。抵抗あるだろ」
「……一応確認しておくが、君は男に抱かれたいと考えた事はあるか?」
「……今んとこはない」
「そうだろうな」
「もっかい言うけどお前もそうだろ?」
 その言葉を受けて日車は再び沈黙した。日下部はしばらく優しく頭を撫でていた。日車はその手を甘んじて受け入れた。毛流れに沿って撫でていくと、日車の目が徐々に細くなり、眉間の皺や口元へ無駄に入った力が少し緩む。そのまま眠ってしまいそうな顔をしている。ああ今夜はこれで宥めすかせるかと思った頃、日車は夢から覚めたように突然目と口を開いた。
「聞いてくれるか」
「ん、何だよ」
 日車は机の上で緩く手を組む。
「俺は君に触れるのも、触れられるのも好きだ。今みたいに触れられるのも、もっと直接……俺の手や、太腿だとか、腹を使って君のペニスが大きくなるのが嬉しいと思うし、君が射精する時の息遣いや、たまに声を出すだろう、それもすごく好きだし、俺も気持ちいいと思っている。わかってくれているとは思うが」
「お、おう……」
 流石に気恥ずかしい。日車は淡々と話しているが、面と向かって意外と凄い事を言ってくれる。
「しかし君、前々から思っていたが……さっきの言い回しからしても、触り合うだけでは物足りないんだろう?」
 図星を突かれると黙るのは大人の悪い傾向だろう。日車は無言を肯定と捉えて続ける。
「だから俺は、君とセックスできたらいいと思った。もっと君が満足できる関係になりたかった。それで、実現するとしたらどうするだろう、と考えてみた。君がどちらの役割を本心で望むかは流石にわからなかったから、君に抱かれる事、君を抱く事、両方考えてみて……俺はおそらく、もし君が女性だったとしても、君を抱けなかったと思う」
「……何でよ?」
 思わぬ方向の告白に日下部はまた面食らった。小さくなった飴が喉に落ち、そのまま飲み込んでしまった。日車はまた俯いた。何となく一回り小さくなったように見える。
「わからないんだ。誰かを抱く、というか、襲う、というか。自分の欲を相手にぶつけてどうこうする、という感覚が、俺にはもうわからない。想像の中で君に手を出そうとする、もちろん害意は全くない、君に奉仕したいという意図しか俺にはない、それを自分が一番よくわかっていながら……想像の君と目が合うと、もうそこから体が一切動かなくなってしまう。お前は何をしようとしたんだ、そんな声が頭で繰り返されて……どうしようもなくなる」
 この男は死滅回游で少なくとも百二点を獲得した男だ。合計二十二人を殺した。だが日下部の知る所によれば、そのうちの百点は「返り討ちにした」もので、殺さなければ殺される状況で手に入れた得点だ。呪霊どもは放っておいても襲ってくるし、宿儺との決戦も極めて破滅的な理由で参加していた。今日の呪霊や呪詛師の討伐も、仕事として請われているからガベルを振るっているだけで、彼自身の激情を持って暴力を振るったのは、彼が贖罪を求め続けている最初の二点が最後なのだろう。以降は多分、彼の棘はすべて自分自身を痛めつけ続けている。
「そこからは、君に抱かれる事をずっと考えてみた……それは上手くいった。自分の中に君を受け入れるイメージは抵抗なくスムーズにできた。思えば、いつも君からたくさんキスをしてくれているし、俺が触れたいと思っていたらいつの間にか君から触れてくれているからだろうな。俺にも欲はあるから、それに応えることはできている、と思う……まあ、君にとっては不足があっただろうが。それでさっきも言ったが、俺の体を使って君がもっと良くなってくれるなら、とても嬉しい。だから君がもし、大きな……熱量を持って、俺にぶつかって来てくれるのなら。きっと俺もそれに返せるんじゃないか、そう考えた。役割については君から請われれば相応の努力をするつもりだったが、君が受け入れる側を特に望んではいないとさっき再確認できた。だから日下部、君さえ良ければ、」
 日車は顔を上げて日下部を見た。静かな眼差しは普段と変わりないように思えたが、組まれた手指の関節はいつの間にか白く色を失くして微かに震えている。
「俺を犯してくれ」

Comments

  • 菅流@芋づる式
    October 27, 2025
  • ふゆむし

    臆病なくらい大事に日車さんを愛する日下部さんと、恥じらいながら一生懸命に想いを伝える日車さんにすごく萌えさせていただきました 理想の篤寛をありがとうございます💕

    October 5, 2025
  • 小夜双☆スカィWeb
    September 28, 2025
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