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夕暮れの空が徐々に夜へと傾いていく。黄昏時には魔物が潜むとはよく言ったものでこの時間帯になるといつも幻視に惑わされる。救おうとして取り零した者達、そして自ら手をかけた者達の怨嗟の声が鳴り響き、無数の長く黒い手が暗がりからこちらへと伸びてくる。
「嘘つき」「お前のせいで」「いいご身分だな」「薄情者」
その通りだ。
「人殺し」
その通りだ。俺は。
「死んで償え」
そうだな。分かった、分かったから、俺もそちらへ行くから待ってくれ。
呼ばれる方へと身体を向けたその時だった。
全く何やってんですかあんた。後ろから声がして右手を掴まれる。
「……日下部?」
振り向くと見慣れた顔があった。どこをほっつき歩いてるかと思えば。それより魚食いませんか?イサキ。
……イサキ?
今日は結構釣れたんですよ。今から帰って捌くんで手伝ってください。
ふらっと立ち話でもするみたいに現れて、まるで昔からの馴染みみたいに俺の手を引いて。釣りってなんだ。何なんだこの男は。尚も暗がりを見遣ろうとすると無骨な掌で目元を覆われる。まだあちらに行くには早いんじゃないですかね。
「……魚なんて捌いた事がないんだが」
じゃあ教えるんで覚えてくださいよ。掌が離れ視界が開ける。目の前にはにやりと笑う彼の顔があった。揺り戻すかのように背中を軽く叩かれる。さ、行きましょう。
呆気に取られながらもつい頷いてしまう。気が付けばこの飄々としたペースに呑まれてしまう。いつも。
……すまない。いずれはちゃんとそちら側へ行くから、だからもう少しだけ待っていてくれるだろうか。
声のする方に背を向けて薄暗い道を並んで歩き始める。ふたつの長い影を引き連れながら。
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- 小夜双☆スカィWebAugust 10, 2023