[篤寛]昼間の居酒屋あつや。・9[現パロ]
2025/01/22:推敲済。
完全に寛目線。篤が寛甘やかしてるだけのお話です。既に名前呼び捨てしている二人です。誤字脱字報告ありがとうございます。推敲は後日致します。
読んで下さりありがとうございます。
更にコメント、スタンプ、いいね、ブクマをくださる方がたには感謝しかありません。
重ねてありがとうございます。
読んでくださった方々に少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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寒い。
今日は朝から底冷えするような寒さで、薄ら雪まで降っていた。
いくら東北出身だとはいえ、ここずっとそんな寒さには身をおいたことがなかった上、あまり思い出したく無いことまで思い出してしまい仕事中幾度か上の空になってしまった。
部下の清水以外に人と対面する仕事がなかったのでまだ良かったが、これが裁判中ならば大きな過ちに繋がりかねない。
いくどめかのため息を呑み込み足元から少し視線を上げると、毛並みが整えられ少し太った猫がこちらを見て「なぁーん」と鳴いた。
「すまないが、君にあげられる餌は持っていないんだ」
言い訳がましく、実際猫の餌どころか自分の食事すらないのだが、その猫に僅かでも目線を合わせようとその場でしゃがむと、猫はまた「にゃーん」と再び鳴いて、まるでついて来いとでも言うように背を向け歩き出す。立ち上がり、ふらりと猫の後を追いかける。
自分でも馬鹿げたことをしている自覚はあった。しかし、なんとなく目的なく猫の跡を追ってみても良いのではなどと思ってしまったのだ。
猫の跡をふらふらと当て所もなくついていく。
やけに見知った路地裏に入り込んだ猫は、勝手知ったると言った風に裏の方へ消えていった。猫はどこだと目線を彷徨かせれば、良く見知った顔に迎えられた。
「なーにやってんの、寛見」
「猫が」
「ねこ〜? ああ、あいつか。…つーか身体冷えてんじゃねーのか? ちょっと中入れ」
「しかし」
「しかしもかかしもないでしょーに、こんなに冷えちゃってまあ」
篤也が私の頬に手をやり、「つめてーな、おい」と眉間に皺を寄せる。
なんだか悪いことをした気になってしまったのと、なんとなくこの温かい手にホッと安堵するのとで、所在無げに身体を震わせてからスリ、と頬に置かれた手に擦り寄った。
驚いた顔をする篤也が唸った後に曇天を見上げる。
「あんた良いからうちはいんなさいよもう」
「いや、それは……」
「あーもう、来なさいってば。どうせ家にも酒しかねーんでしょーが。うちで飯食ってついでに風呂入ってあったまったところで泊まってけ」
「…すまない」
「行くぞ」
とうの昔に拾われてしまっていた私は、その暖かさに屈して大人しく篤也の跡を追いかけるのだった。
「取り敢えず炬燵入ってこれ食っててくれ」
「ありがとう」
手洗いうがい顔洗いが済み、炬燵に入り足が少し痺れるような感覚の後、じんわりと感覚が戻るにつれ暖かさがしみていく。
目の前に置かれたのは籐籠に入ったみかんと皿に盛られたポテトチップスとお茶だった。
一先ず熱いお茶で体の中から温めて喉を潤した。思っていたよりも喉が渇いていたらしく、直ぐに湯呑み一杯飲み干してしまった。
めざとく見つけた篤也がおかわりを注ぎ、「んじゃ簡単なもんしか作れねーけど」と厨房へ行き、時折こちらをちらと見やって食事を用意してくれていた。
ポテトチップスの一枚を摘んで口に運んで咀嚼すると、少しねっとりとした甘じょっばさが口内に広がる。これは、なんだ?
「美味いな」
「それな、里芋とじゃがいも。寛見が今食ったのは里芋の方だな。美味いだろ」
「ああ。初めて食べる」
「さつまいものも美味いだよなぁ。ま、それはまた今度な」
「楽しみだ」
もう一枚に手を伸ばしたところで、篤也も一品作り終えて私の元へと戻る。
ことん、と置いた皿の中には、いつか食べた「なんちゃって粉吹き芋」だった。
「これは、確かじゃがいもととうもろこしを片栗粉で和えたものだったか」
「お? 覚えてたのか」
「君に食べさせてもらったものは覚えている」
「おう、そうか」
そう言って顔を逸らす篤也の耳がほんのり赤い。
どうやら照れているようだ。
この男は、本当に私を甘やかすのが上手いな、などと口元を緩めながら片栗粉で和えたじゃがいもととうもろこしを口に運ぶ。
「やはり君の作る料理は美味いな」
「そりゃ、一応居酒屋っつーかメシ出すところだからな」
「フ、それは確かに」
篤也はそれ以上照れると困るとでも思ったか、それとも単純に私のためにまた違うものを作ってくれるためかその両方か、また厨房に行ってしまう。
食べ勧めていると、チリンと音がして、何かと音のした方、住居スペースへ繋がる階段の方から、すらりとした美しい黒猫が現れた。
鈴のついた赤い首輪をしたその猫はどうにも人馴れしているようで、するりと足元へ擦り寄ってくる。
外で見かけた猫をなんとなく思い出し、もしかしたらこの猫もあの猫も、篤也の優しさに惹かれたのかもしれないなどと思った。
なんとなく胸がもやもやとしていたら、篤也が私の眉間に人差し指を当てる。
「眉間、皺寄ってんぞ」
「猫が」
「ああ、懐かれたか」
「いつのまに猫なんて拾ったんだ」
「いつのまにっつってもなー」
なんとなく面白くなくて篤也から目を逸らして猫を撫でる。
毛並みが随分と良く、きちんと手入れされているのが分かってなんだか余計に腹がたった。
「はいよ、熱いうちに食えよ」
「…」
「なんだ。おかんむりか? なーに。何がそんな気に食わねーの」
「エビグラタンか。…マカロニ……」
「白米がねぇからな、今夜。炭水化物はマカロニで補ってくれや」
「…美味いが……」
猫の世話は焼く癖に……。
ボソッと吐いた自分の言葉に驚いたし、その言葉を聞いて驚いた顔をした篤也にも驚いた。
と同時に、じわじわと羞恥で顔に熱が集まり、篤也の顔をまともに見られなくなる。
私は、あろうことか、猫に嫉妬したのか……。
「ふ、クク、ふは」
「笑うな」
「はは、だってよぉ」
「そのニヤけ面をはっ倒すぞ」
「おー怖ッ、…ふは」
「…クソ」
「かーわいーの」
「…コーンスープが飲みたい」
「お、運が良いな。あるぞ、ちゃんととうもろこし茹でて生クリームで煮込んで漉したの」
そう言っていそいそと甲斐甲斐しく食事の世話をされてはぐうの音も出ない。
足元では猫がじゃれついている。
よく見ればまだ幼い子猫だ。
私はこの小さな子猫に嫉妬したのか……。
コーンスープを飲み終え風呂をいただき丁寧にドライヤーまでかけられてしまった私はというと、もう文句どころか憎まれ口すら出てこず、言われるがまま布団に入り、翌朝篤也に見送られて放射冷却で一段と冷える外気に触れて、ため息を呑み込み今夜も猫は来るだろうかなどと沸いた頭を冷やされた思いをしたのだった。
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- 小夜双☆スカィWebDecember 19, 2024