[篤寛]居酒屋あつや。・19[現パロ]
なんとか修正を試みましたが酔っ払いでメンタル弱いのは変わりありません。ごめんなさい。まずかったらガツンと教えて下さいm(_ _)m
※いつもの篤寛に五+夏+家+七+灰+伊+虎が段々出張り出すのと寛がメンタル弱いのでいやんな方は回れ右して見なかったことにして忘れて下さい。尚、虎君は結局飲んでいません。※
前のものまでにコメント、スタンプ、いいね、ブクマありがとうございます(^人^)!
何より、貴重なお時間を割いていただき恐縮すると同時にもっと上手く萌えが書けていたらなぁと反省しきりです。それでも私なりに頑張って書いたものですので、読んでくださった方に少しでも楽しんでいただければ嬉しいですm(_ _)m!!!
- 18
- 12
- 582
雨が上がったと思ったら、今度は夏の暑さのような厳しい一日となった。雨の日はどうしたって鬱々してくるし、暑いと暑いで身体が辛い。特に仕事でたまの隙間時間が億劫だった。
陽が高くなり、夕方となった今でも未だ太陽がアスファルトへと熱を与え煌々と照り返している。今夜も寝苦しい夜となるだろう。
日車はグッとため息を飲み込んだ。
こんな日はあの店で美味いビールと美味い料理を食べるに限る。
日車は前を向き、清水と別れた十字路の反対方向へ足を向け、件の気の置けない店へと足早に向かったのだった。
「らっしゃ〜い」
暖簾をくぐると相変わらず気が抜けているのか入っているのか分からぬ挨拶の後、日車の顔を見た途端目を輝かせてカウンターのいつもの席へと促す日下部に日車は微笑み頷きながら応える。
腰を下ろすと同時におしぼりが渡され、ここで顔を拭いたら完全におじさんまっしぐらだなと、手を拭くだけで思いとどまった。
ハンカチで拭えきれない額の汗が不快だが、その内にビールとお通しがことんことんと目の前に置かれてそちらにじっと目を向ける。
先ずはビールを喉に叩き込んで、お通しの糠漬けを箸で突いた。
きゅうり、にんじん、玉ねぎが入っていて、日車は父方の祖母のことを思い出して懐かしむ。
浅漬けや糠漬けもどきはスーパーでも売っているが、きちんと糠床を作って漬けたものはなかなか見かけない。
料理が壊滅的な日車が糠漬けなど面倒なことが出来る筈もなく、そういえば糠は肌艶に良いから糠漬けを作るなどということをこの間清水が言っていたなと思い出した。
出来たら是非少しで良いから分けて欲しい。
「これはあつ、…日下部が?」
うっかりいつもの癖で名前呼びしてしまうところだったと慌てて訂正すると、日下部がふはっと照れ臭そうに笑った。
その笑顔がなんだか飼い主の前で口を開いたレトリーバーのようで、そういえばあの犬はいつも笑ったような顔をしているななどと日車は思いながら、日下部の返答を待つ。
「店の裏口の三和土に糠床仕込んだ樽が置いてある。今度かき混ぜてみるか? 結構クセになる感触だぞ?」
「それは是非体験したいな」
今夜は雨が先程まで降っていたせいか客がいつもより大分少ない。
その代わりとばかりに、座敷の方で宴会騒ぎをしている見覚えのある顔が見えた。
これは見なかったことにしよう、と日車はさっと視線を日下部へと戻す。
今度はビールを唇だけ湿らすように飲みながら、いつの間にか食べ終わってしまっていた糠漬けの皿からカツンと箸が虚しくぶつかる音がした。
日車がそれにがっかりしていると、お通しの二品目がやって来る。
今度は玉ねぎたっぷりの魚の南蛮漬けのようで、見ているだけで涎が口内へ溢れてきた。
「昨日釣りに行ってな。釣果があったんでそれを漬けといた。日車も行ければ良かったんだが……」
「生憎仕事だった。…釣ったのはアジか? 南蛮漬けは面倒だと聞く。揚げたり漬けたり、他にも作業が色々とあるんだろう? こんなもの俺だけが独占して食べてしまって良いのか?」
「だって特別だかんなぁ」
「と、特別、か。そう、か。そうか……」
照れくさいが、嬉しい。
それにこのジメジメムシムシした空気で溺れる中、程よい甘さと塩気と鷹の爪の辛味と何よりお酢で、揚げたのを漬け込んだというのに口の中がさっばりするし、次から次へと箸が進む。
「うん。美味い」
「そりゃ良かった。…あー……、でな? 今夜は出すもん決まってんだわ。素麺と天ぷら。まぁ、他のもんが良いってんなら作るけどよ」
「いや、頂こう」
「そういうとこ好きだぜ?」
「ッ、…そういうことは店の外で言ってくれ……」
「はは! 照れんな照れんな! んじゃチャチャっと作っから待っててくれ!」
「…敵わん……」
日車はカウンターテーブルに突っ伏したまま、手をひらひらと振って応える。
その時背後から爆発的な笑い声が聞こえ、それは日車が座敷席の方を向くなりサワサワとおさまっていった。
少々、いや、かなり不快だ。
じとりと睨むと、ひらひらと手を振る五条の姿。
(…。失敗したな……)
次いで夏油、家入、七海、灰原、伊地知、更には虎杖まで加わり、日車に対して何やら手招きをしてくる。
途轍もなく行きたくない。
しかし、ここで行かないと更なる傷を負いそうな気がした。
日下部がすまなそうにしているのが何やら物悲しくもかわいそうである。
日車は清水の大舞台の上から飛び降りる覚悟をもって座敷席へと向かった。
座敷席のテーブルの周りは酷いものだった。
酒とお菓子の空袋と酒瓶が散乱していて、テーブルの上にはまだ唐揚げやいつかのナポリタンやラーメンや餃子などの食べ残しのパックが残っており、やはり空の酒瓶とそれにまだ開けていない酒瓶とが一緒にわんさとある。
「はぁ……。君たちは一体この店で何をやっているんだ」
「宴会〜」
「親睦を深める為にね」
「この後歌姫先輩と改めて呑みに行くので待ち合わせと暇つぶしです」
「「時間外労働です」」
「夏油さんに誘われました!」
「酒飲んで良いって言われたから!」
「灰原、は良いとして……、七海と伊地知は断れなかったのか? それに虎杖未成年だろうに……」
「五条さんが着信拒否しても違う携帯で電話やメール送って来るので……」
「私のところもです……。もはやホラーですよね……って痛い痛い痛いマジデコピンはやめて下さい〜〜〜!!!」
「夏油さんに呼ばれたら行くしかないですよね!」
「? 五条先生が保護者同伴なら飲んで良いって言ってたよ?」
それぞれの応えに日車は頭が痛くなった。
頭が痛いあまりに取り敢えず伊地知を五条の手から助け出し、その場をさっさと離脱しようとする。
しかし、俺たち私たちの酒が飲めないのかとばかりに、いや寧ろお前もこの際参加しろと腕を引っ張られてその場に無理やり留められた。
こうなったら仕方がない。
ちょうど目が合った日下部へ、料理をこちらへ運んでもらえるよう目で訴える。
本当はこの場から離れられるよう助けてもらいたかったが、日下部まで被害に遭ったら目も当てられない。
だから仕方なく日車は自分だけで耐えることにしたのだ。
そうして素麺と天ぷらがお盆に載せられ持ってこられる。
「日下部、ありがとう」
「はいよ。お前ら! この人に迷惑かけんじゃねぇぞ!」
「「「「「「「は〜い」」」」」」」
日下部の背中を寂しみと切なさの中見つめながらため息を吐き、料理へと向き合う。
するとキンキンに冷えたビールの二杯目とキリリと冷えた日本酒が一下げお盆の隣に置かれた。
見れば背後からぬーっと冥冥が二マリと唇を弧に描きながらそれらを置いたのが分かる。
(怖い!!!〉
まるで幽霊か妖怪か何かに出会ってしまったように、日車はビクリと肩を揺らした。
するとどこに隠れていたのかそんな日車の様子を見ていた憂憂がクスクスと笑っている。
冥冥が品がないよと嗜めると直ぐに顔面蒼白になってやめたが、あれもなかなかに違う意味で怖い。
この姉弟は一体何者なのか、とまで考えて、これの答えには辿り着かない方が良いのだろうなと結論づけて家入に酒を失敬して冥冥からの酒は断る。
一方的に恩を売られてその後何が起こるか分かったものでは無かったからだ。
しかし、冥冥や憂憂と違ってここに今集っている面々が、これほどまで、それこそ日車の前から通っていたなら何年何十年の差だ、通い詰めて彼らと付き合う内にはっきりと分かることが一つだけは確実にある。
それは、日下部のことを皆好いていて、尊敬し、この店を第二、第三の我が家、少なくとも自分の居場所だと思っていると言うことだ。
それは彼らが存分にリラックスして心底楽しそうな様子を見ていれば分かる。
(篤也は愛されているのだな。良いことだ)
その時チリッと胸に何か刺さった。
その小さな棘は、今後あらゆる場面で効果を発揮するのだが、それはまだ日車には分からぬ話である。
今は取り敢えずと胸の痛みを無視して素麺をひとすくい食べ、みょうがの天ぷらをツユに付けて食べた。
みょうがの天ぷらは初めて食べるがなかなか美味い。
また素麺を啜り、次は紅生姜の天ぷらを食べる。これも初めて食べたが、美味い。
(口の中がさっぱりしてみょうがといい紅生姜といいこの季節にぴったりだな)
天ぷらを惜しむように食べながら素麺ともども食べ終えると、家入から結構な量酒を飲まされた日車は、ふと自分の居場所もここにあるのではないかと思い始め、日下部の元へと向かった。
「おいおい、飲み過ぎじゃねぇか?」
「酔っていない」
「それ酔っ払いの常套句」
「いや、日下部の前で飲まなければ殆ど酔わないんだ」
「…マジか」
「マジだ。だからこの後急激に酔いが回ると思う」
「ちょ、なに偉そうに宣言してんのぉ?!」
「心の準備は必要かと」
「誰にとってだ!」
そんな問答をしつつ、日車はいつものカウンター席に座ろうとするが、ころんとすっ転んでしまう。
背後と前方から心配する声が聞こえた。
それよりも日車はもう眠くて眠くて、けれども日下部の顔は見ていたくて、なんとか落ちようとする瞼を維持すべく努力するがままならない。
次第に頭が真っ白になって何も考えられなくなり、けれども必死で意識を保とうと日下部の名を呼んだ。
日車は辺りが騒ついたのにも気づかず、他でもない日下部が側にいる実感が欲しい。
また名前を呼ぼうとすると背中をさすられ支えられ、瞼の上に分厚い手が置かれ、その温かさに漸く安心して、日車はすうっと眠りに吸い込まれていったのだった。
翌朝、日車、冥冥、憂憂を除く全員が日下部の前で土下座させられながら説教と口止めをされているのを、日車はなんとも言えない居た堪れなさの中見守り、終わりの合図だったのか日下部がパンッと手を叩いた途端皆それぞれ立ち上がって歯を磨きに行った。
それからシャワーを浴びるものは浴びて、尚日車はもうとっくに全て終えている、それから各々パンに何か塗ったり載せたりしてトースターに載せ、程よく焼け次第取り出して自分の皿に盛ってテーブルにつく。
そうしてゆで卵一個と牛乳とコーヒー、それに希望者には砂糖が配られると、朝食の始まりの挨拶を日下部が告げたのだった。