[篤寛]居酒屋あつや。・18[現パロ]
いつもの篤寛がタメ口で話すようになるお話。冒頭しみずさんとの会話有。今回カプ色強め(多分)。誤字脱字は後日修正します。
2024/06/02:色々とおかしなところを直して誤字脱字修正済。時々タメ口聞いてましたね。すみません。
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「清水、聞きたいことがある」
「はぁ、私で答えられることなら聞きますけど」
「恋人とはどこまでいったら恋人と呼べるんだ?」
「…」
「清水?」
「…あ、すみません。意外な射撃だったので驚きました。というか、日車さんやっぱりそういう人いたんですね」
「やはり聞かなかったことに……」
「しませんよ?」
「ぐぅ」
というわけで、清水の聞きたい聞きたいから逃れられなかった日車は、その日は仕事終わりに飲みに付き合わされることとなり、その場で根掘り葉掘り詮索される羽目となったのだった。
その翌晩。
少々手汗が気になりつついつもの暖簾をくぐる。
中から「らっしゃいませ〜」とやる気があるのかないのか分からぬ声の後、来たのが日車だと分かるなり相好を崩して「日車さん! こっちこっち!」といつものカウンター席へと通された。
「釣果があったんで刺身にしても美味いアジがありますよ。でも俺のおすすめは敢えてそれを塩焼きにすることですね」
「それでは、それにしてもらおう」
「ハハ! あんたのそういうとこ好きだよ」
その言葉に日車の心臓がきゅんとする。
いつから「嫌いじゃないね」から「好きだよ」に変わったか覚えていない。
それほど自然に変わっていった。
案外とそんな風に徐々に恋人らしさが出てくるものなのかとも思うが、温泉旅行に行っても尚、日車は日下部と距離を感じている。
なんとなく、一番触れたい部分を触れさせてもらえていない気がするのだ。
それがとても悲しいし寂しい。
突き出しにポテトサラダが出て来て、一杯しか飲めないビールをポテトサラダでちびちびと飲む。
ポテトサラダが食べ終わる頃にふた品目の突き出しが出て来た。きんぴらごぼうだ。
口に入れて咀嚼するとピリッとした辛味とじんわりとした野菜と牛蒡独特の泥臭さに調味料がうまく混ざって美味い。
ビールが進んでしまう一品である。
日車が既に半分以上ビールを飲んだ頃、アジの塩焼き定食が出て来た。
因みにこの近所の買い出しに同行した日以降、日車はパンを頼んだことがない。
未だにウジウジとあの若い店主と日下部のやり取りを気にしているのだ。
大人気ないと自分でも思うが、それでも納得いかないし気分が悪いものは悪い。
食事する時くらい良い気分でいたいので、パンはアレ以降封印しているし、この日もこのことはここまでと区切りをつけて食べ直しにかかった。
並べられた定食を見れば、何やら具材と混ざった春雨と、トマトと何か丸くて縦に長い白いものが混ざったものと、しじみの味噌汁と、白米と、それに味の塩焼きが乗っていた。
相変わらずどれをとっても美味しそうだ。
日車はしじみの味噌汁を一口飲んでそのしじみの味の濃さに驚き、二口目を飲んで次に行く。
春雨はカレー味だった。
中々ピリッと香辛料が効いていて、レトルトのものを真似して日下部が作ってみたという。
この春雨のお客さん一号が自分だと聞き、日車はニヤける口元を隠さねばならなかった。
日下部はそんな日車を笑いながら飽くことなく見つめ、日車が落ち着いた頃合いにアジの塩焼きを勧める。
箸を入れるとサクッと皮が鳴り、皮を剥いでいけば綺麗な白身が出てきた。
身はふわふわとほくほくの半々くらいで甘く、味わい豊かだ。
日車はワタが好きな方だったが、店ではワタは取り除かれている。
今度の休日こそ釣り堀なりなんなりしてアジを釣って調理してもらおうと、これからの意気込みを感じながらアジの塩焼きを食べ終えた。
残り少ないビールで肉じゃがを食べ終えて、何か白いものとトマトが混ざったものを突く。
一口食べるともちもちした甘味とトマトの酸味が口いっぱいに広がり、直ぐにビールが欲しくなる。
日車は少し切なげに日下部を見やると、日下部は仕方ないとばかりに二杯目のビールを出してくれた。
日車はそれも特別感があって嬉しかったが、今はこの不思議な食べ物だ。
「これは……なんだ? 美味い」
「ああ、ニョッキをトマトで炒め煮したものです。美味かったなら良かった」
「ああ、美味い、ビールが進むが、日本酒かワインでも良いな」
「そうかもしれんですね。因みにニョッキはジャガイモで出来てます」
その言葉に日車が目を丸くすると、それに日下部はニカリと笑って「もちもち食感の秘密ですよ」と教えてくれた。
二人だけの秘密がまた出来たと日車は心の中でガッツポーズを取る。少し浮かれているかもしれない。
それからニョッキを食べ終える。
白米と味噌汁を交互に箸を進めて食べ終える頃には、ビールはすっかりなくなり日車も心地良い酔いで気が緩み、「昼間、名前で呼び合って、もっとその……」とポロっと口に出していた。
日下部は少し驚いたものの直ぐに目を細め、「良いぜ? これからは昼間寛見って呼んで良いんだな?」と不敵に笑う。
そのどこか肉食獣めいた笑みに日車はしかしニヤリと「日下部、好きだ」などと応え、それには日下部も狼狽え知り合いが聞いていないか店内を見渡した。
生憎と今日は雨が降っているため客足は少ない。
それが功を奏したらしい。
しかし、それもこの店の常連が二人を見守っているので、このことが店の常連全体に知られるだろうことは想像に難くない。
日下部は天井を見ながらあ"〜〜〜と唸って頭をガリガリと掻いた後、ボソリ、「俺も好きだよ」と顔を少し逸らして応えたのだった。
それと、翌朝事務所に着くなり清水に詰問……質問される日車がいたが、日下部も日下部でどこから聞いたか教え子たちに同じようなことを茶化され言い逃れできなくて日下部は逆ギレ、日車はダンマリを決め込んだという。