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Vol.577「沖縄と本土、どちらが辺境か?」

(2026.6.9)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…5月30日に開催した沖縄LIVEは大成功だった。思えば『沖縄論』を出版してから21年にもなる。その翌年に沖縄に招かれて行った講演会に、1300人もの観客が詰めかけたというのも、懐かしいような、信じられないような思い出だ。さて、近年『愛子天皇論』『神功皇后論』と描いてきて、日本の歴史や伝統と「男尊女卑」について考える機会が多いため、わしは「沖縄の男尊女卑」についても気になった。沖縄は、全国的に見ても男尊女卑の傾向が強いと言われている。だが率直にいえば、わしは沖縄が「男尊女卑」だと言われても、いまいちピンとこないのだ。なぜなら沖縄県は離婚率が22年連続全国1位で、女性はあっさり離婚して実家に戻るし、自分で働いて自活できるからだ。一方で、沖縄の親族制度である門中(むんちゅう)は、厳格に男系血縁が重視されて、祖先祭祀や位牌継承が行われているということもよく聞く。一般的な社会生活においても「同じ門中と分かれば仕事も進みやすい」というほど影響力が強いそうで、これは確かにシナ儒教の影響を感じさせる。ところが調べていくと、沖縄はむしろ、シナ文明の影響が極めて少ない島だったのだ!沖縄に「男尊女卑」文化が広まった意外な原因とは!?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…国会では、〈1〉女性皇族が結婚後も皇室に残る案と〈2〉旧宮家の男系男子を養子に迎える案について、法制化に向けて取りまとめられようとしている。どうやら「養子となった男子は皇位継承権を持たないが、男の子が生まれればその子は皇位継承権を持つ」というもので、愛子天皇を阻止し、一般国民だった男を皇族と入れ替えてゆき、やがて天皇にするという内容であることが明らかになった。そんな中、「現在未婚の男系男子がいる」とされている旧4宮家(竹田、賀陽、久邇、東久邇)を復興させようと狂乱のペテン活動に邁進している竹田恒泰が、YouTubeで生放送を行っていたので視聴した。「当事者」とも言える竹田は語ったこと、それは聞いているこちらの三半規管が破壊されそうな珍説の数々だった!!
※特別寄稿・茅根豪…日本国憲法は死んだのだろうか。砂川事件の統治行為論や集団的自衛権の解釈改憲などを見れば、その立憲主義的な機能が低下しているのは明らかだ。さらに男系男子養子案という憲法14条違反が文理上明らかな法案が検討されそうな状況からも分かる通り、具体的な行為規範としてもその実効性を失いつつある。私たちは、立憲主義や天皇が空気のように存在するものではないことを忘れ過ぎた。これらを守るには、常に生活の一部として意を割いておく必要があるのだ。今から紹介する議論を知れば、経済不況だから政治や天皇なんて考える余裕がないとは言えなくなる。それは昭和21年の国会で行われた。沖縄が占領され、原爆が2発落とされ、国土が焼け野原だった時期に、令和の私たちの想像をはるかに超える熱い議論があったのだ。


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1. ゴーマニズム宣言・第606回「沖縄と本土、どちらが辺境か?」

 5月30日に開催した沖縄LIVEは大成功だった。
 思えば『沖縄論』を出版してから21年にもなる。
 その翌年に沖縄に招かれて行った講演会に、1300人もの観客が詰めかけたというのも、懐かしいような、信じられないような思い出だ。

 さて、近年『愛子天皇論』『神功皇后論』と描いてきて、日本の歴史や伝統と「男尊女卑」について考える機会が多いため、わしは「沖縄の男尊女卑」についても気になった。
 沖縄は、全国的に見ても男尊女卑の傾向が強いと言われている。
 沖縄LIVEに応募した沖縄の人のメールの中にも、自分は長男なので、先祖の位牌を継がなければならないと言われて育ってきたというものもあった。
 だが率直にいえば、わしは沖縄が「男尊女卑」だと言われても、いまいちピンとこないのだ。
 なぜなら沖縄県は離婚率が22年連続全国1位で、女性はあっさり離婚して実家に戻るし、自分で働いて自活できるからだ。
 実際に沖縄を訪れた際も、市場では元気なおばあばっかり働いていて、逆に男が大して働いていないという印象があった。

 こんな感覚は、わしの郷里の九州ではありえない。
 九州では女性が結婚するとなれば、両親から「あなたは小林家の嫁になるのだから、もう帰って来てはいけませんよ」などと言われて送り出され、嫁入りした先の家に一生尽くすことを求められる。その後はもっぱら家の中に入って家事をすることが使命となり、外に出て働くなんてことは考えられない。ましてや女性が離婚して帰って来ようものなら、「出戻り」と言われて白い目で見られてしまう。
 これは、女性があっけらかんと離婚して実家に帰って来れる沖縄とは全く感覚が違う。
 とはいえその一方で、沖縄の親族制度である門中(むんちゅう)は、厳格に男系血縁が重視されて、祖先祭祀や位牌継承が行われているということもよく聞く。
 一般的な社会生活においても「同じ門中と分かれば仕事も進みやすい」というほど影響力が強いそうで、これは確かにシナ儒教の影響を感じさせる。
 古来沖縄に「姉妹には霊力がある」という信仰や、女性祭祀者を重視するなど、女性を尊ぶ社会基層があったことは確実で、後からシナ儒教の男尊女卑が入ってきたはずである。
 ではシナ儒教的男尊女卑はいつ、どのように沖縄に入ってきたのだろうか?

 従来、古代の沖縄では女性が霊的・祭祀的権威を担い、政治的権力は男性が担っていたという説明がなされてきた。
 だが、もはやこのような説明では納得がいかない。
『神功皇后論』で描いたように、最新の古代史研究では、本土の古墳の被葬者の約半数が女性だったということが、人骨の鑑定や副葬品の状態から判明している。
 また、邪馬台国の女王・卑弥呼が祭祀のみの存在で、政治的実権は弟が握っていたとする従来の通説は、実は明治の男尊女卑の風潮の中で作られたものだということも、義江明子氏が明らかにしている。
 それなのに古代の沖縄においてだけ、女性は祭祀、男性は政治と分離されていて、女性の権力者は存在しなかったとは、そう考える方が不自然である。

 ただ問題なのは、本土の歴史書が8世紀の『古事記』『日本書紀』に始まるのに対して、沖縄における初の歴史書はずっと遅い17世紀の『中山世鑑』であり、それ以前の沖縄側の同時代的な文献史料は非常に限られるということだ。
 特に古代史となると、文献史料は本土やシナ側のわずかなものしかなく、もっぱら考古学に頼るしかなくなる。
 そしてさらに問題なのは、沖縄には本土のような「古墳文化」が存在しなかったということである。
 沖縄では死体を埋葬せずに安置して自然風化させる「風葬」が行われており、酸性土壌によって副葬品も明瞭に残らない場合が多い。そのため政治権力者の人骨を特定すること自体が難しく、ましてやその性差などわかりようもなく、あとはさらなる考古学や鑑定技術の進化を待つしかないというのが現状なのだ。
 とはいえ、女性首長の存在を実証する考古学的資料が乏しいということを根拠に、女性首長はいなかったと証明されるわけではない。むしろ、霊的権威を持った女性が政治的権力を握ることもあった可能性は否定できないというのが、現時点での学術的見解ということになる。

 では沖縄には、どこから男尊女卑思想が入ってきたのか。
 沖縄は距離的にシナに近いから、そこから直接入って来たのかと思いそうだが、それは違う。沖縄はむしろ、シナ文明の影響が極めて少ない島だったのだ。
 シナ文明の日本本土への伝来は、まずは稲作が最初で、それに続いて金属器、文字、そして仏教や儒教などが、時間をかけて徐々に流入してきた。
 ところが沖縄は水稲農耕に適さない土地だったため、まず稲作が伝来しなかった。そしてその後も、それほどシナ文明の流入はなかったのだ。
 本土では稲作の伝来とともに「弥生時代」に移行するが、沖縄には「弥生時代」はなく、縄文時代の延長のような狩猟・採集文化が、本土の平安時代に当たる頃まで続いた。これを「貝塚時代」という。
 この時代にシナ文明の影響を受けなかったことによって、沖縄独特の文化の基礎が育まれたのである。

 岡本太郎は、日本の「伝統」の中心とされる京都・奈良の文化は、もともとシナ・朝鮮から取り入れたものであり、日本の歴史において「文化」とは「外国のものが素晴らしいと、ひたすら外から文物を取り入れてきた」ものだと喝破。沖縄にこそ日本の原点があると唱えた。
 そして沖縄の「本土復帰」に当たっては、「沖縄が本土に復帰するなんてかんがえるな。本土が沖縄に復帰するのだ」と訴えたのである。
 古代沖縄はシナから「文字」すら受け入れなかったため、古代の文献史料はほとんどない。
 また、沖縄は「仏教」も受け入れなかった。琉球王国が成立してシナ王朝との交流が始まってから、王府が積極的に仏教文化を取り入れたことはあったが、庶民の間に本土のような檀家制度や葬式仏教といった形で根付くことは、ついになかった。
 そんな沖縄で、シナ儒教の男尊女卑だけが浸透したなんてことは、ありえるわけがないのである。

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昭和51年『東大一直線』にてデビュー、大ヒットとなる。昭和61年『おぼっちゃまくん』連載開始。アニメ化もされ、主人公が喋る「茶魔語」が子供たちの間で流行語となり社会現象となる。平成4年、社会問題に斬り込む世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。現在も新作漫画を鋭意執筆中。
Vol.577「沖縄と本土、どちらが辺境か?」|小林よしのり
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