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[篤寛]バレンタインデー。(居酒屋あつや。・15)[現パロ]/Novel by narrプロフ必読1\1加筆。

[篤寛]バレンタインデー。(居酒屋あつや。・15)[現パロ]

3,296 character(s)6 mins

2024/02/18修正。
どうにもシリーズが回重ねる毎にキャラがやったことをど忘れしていきますOTL
どうか広い心でサラッと読んでいただきたく……教えてくださる方ありがとうございます……m(_ _)m

遅ればせながらバレンタイン。
良い歳した男だけどと思いながらチョコ贈り合う二人がいても良いよねというお話。

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 先日日車は部下の清水にチョコレートを貰った。
 ホワイトデーは期待していますよなどと笑顔で言われ、その時ようやくその日がバレンタインデーというチョコレート会社が仕掛けたイベントであることを思い出したのだが、生憎とその日から数日チョコレートもプレゼントも買えずにあの店にも行けなかった。
 仕事が忙しかったのだ。
 それにこの年でチョコレートを気持ちと共に贈るのもどうなんだと日車の中で躊躇いが生じた為、最早これからチョコレートを買うという行為も躊躇われる。
 しかし、もう来てしまった。
 デパートの地下にある食品売り場、即ちデパ地下と呼ばれる場所で、まさにバレンタインチョコレートを買いに来たのだ。
 売れ残りといえど味は同じだ。
 だが贈る側としても贈られる側としても、バレンタインという思い人へのプレゼントを売れ残りで済ますというのは人としてどうなのかと、日車はこの際最初から用意していたが当日には行けなかったから渡せなかったなどの理由をつけて渡してしまおうかなどとなかなかに卑劣だなと自分でも思うことをしようとした。
 そしてそれを翌日清水に話したら日車は烈火の如く叱られた。
 そして盛大にため息を吐かれ、かくかくしかじかとお説教とお小言と、これが本題か助言をもらい、その際紹介された清水のお勧めの店へと向かったのだった。


 日下部は春一番が吹いてもまだ仕舞っていない炬燵の中で、のんべんだらりとせんべいを齧っていた。
 一昨日はバレンタインデーだったと、教え子の悠仁が何個貰っただ嬉しげに言うのを話半分で聞きながら日車のことを考えていた。

俺にはくれねぇのかな……。

 こんな年にもなってと日下部は思うでもないが、同時にチョコレートでなくとも他に贈り物を交換するのもありだとは思うなどと少し不満である。
 とはいえ、この年で加えて男性同士であるし、既に数日前に過ぎたイベントだ。
 今更とやかく言うつもりはない。
 言うつもりはないが、やはり考えてはしまう。
 実を言えば既に日下部は日車にちょっとした贈り物を用意してあった。
 しかし、自分一人だけがイベントに浮かれて渡すのもなんだか悔しいし恥ずかしい。
 そう。恥ずかしいのだ。
 三十半ばを過ぎてバレンタインデーにきゃっきゃうふふする男というものは、側から見たらかなり恥ずかしいものではないかと日下部は思ってしまい、更には日車にも引かれてしまうのではと渡せないでいるし、そもそものところここ数日顔を見ていない。
 電話もメールもアドレスは教えてあるが、殆ど、いや、今まで日車はそれらを一度も使ったことがない。いや、一度はある。しかし迷子になった一度きりの、そのたった一度。それだけだ。日下部から連絡することはあるのにだ。そこら辺も日下部には引っかかる。
 もしや自分だけが浮かれていて、実はもう日車は自分のことはなんとも思っておらず、そのせいで店にも顔を出し辛くなっているのではと思いため息を吐いたその時だった。携帯から着信音がした。
 この時間帯だと教え子はない。
 皆仕事中だ。
 考えられるのは今日たまたま休みの日である人間だが、教え子の中にはいない。
 ならば卸の業者か自治体の人間辺りか? と携帯を見れば、「日車さん」と出ている。
 ちょうど今日車のことを考えていたので、日下部は驚いたなんてものではない。
 大袈裟に言うと心臓が飛び出るくらい驚いた。…少し大袈裟過ぎか。兎に角それほど驚いたので、何拍か遅れてから電話に出た。

「どうした? 日車さん」
『あ、ああ。…その、…今から君の家へ行っても良いだろうか」
「へ? は?」
『ああ、いや、その、ダメならば構わない。大したことは無いんだ……』

 その言葉に日下部は、「いやいやいや来て来て来て日車さんなら大歓迎!」と意気込んで答えたのだった。


 いつもの入り組んだ路地裏を日下部に言われた通りに家まで辿った日車は、裏口の呼び鈴を鳴らし暫し待った。
 しかし、いつまで経っても日下部が顔を出さない。
 コンコンと控えめにノックするとドタドタと足音が聞こえてきて、ガチャっとドアが開けられた。日下部だ。
 何故か、視線が合わせられない。
 とりあえず日下部の喉元辺りを見つつここで渡してしまって帰っても……と日車がカバンから本日の目当てのものを出そうとすると、ガチッと日下部が日車の手首を掴んで中に引き入れてしまう。
 その顔と顔の距離が近くてそんな年でも無いのに無駄にドキドキしつつ、「離してくれないか」と小さな声で日車が言うと、日下部がハッと今更自分が日車の手首を掴んでいたことに気づいてパッと火傷したように離した。

 顔が……見れない……

 互いにそんなことを思いつつ、そっと持ってきたものを差し出して、ボソッと「よければ」と日車は部下の清水にこれならと勧められた包装紙に包まれた目を逸らしたまま渡す。
「では」と逃げようとする日車を日下部は「待ってくれ」と言葉で制し、「実は」と用意していた贈り物、大きいものと小さいもの二つを振り向かせて渡した。

 ここで開けたいが気恥ずかしい……!!!

 二人の心が再び一致した。
 と言うわけで、本日はこれで解散となり、帰ってからそれぞれ中身を見て、感想は心の中に仕舞っておくこととなったのだった。


 数日後、日車は仕事帰りにいつもの入り組んだ路地裏を日下部の教えの通りに辿って居酒屋の暖簾をくぐった。
 今夜も日下部の威勢のいい声に迎えられ、いつもの席に通される。
 この間も今日も良いことがあったので、少し良い酒を持ってきていた。
 酒に合う肴があればと思って日下部を伺うと、ニッと笑われて、「オーダーメイドのボンボンチョコレート美味かったですよ」と言われる。
 日車も日車で、「あのぬいぐるみはふわふわしていて人をダメにするな」と微笑んだ。
 それから本日は魚がお勧めとのことで、それに素直に従うことにする。
 そしてポテトサラダとビールが出てきて、先ずはビールを一口飲んでポテトサラダを突いた。
 いつものポテトサラダにはりんごではなくみかんが入っていた。筋が綺麗剥かれて食感が良く、みかんの甘酸っぱさとお酢の酸っぱさの加減がちょうど良い。
 次に小松菜の胡麻和えが出てきて、胡麻のプチプチとした食感と小松菜のシャキシャキとした食感と甘味を楽しむ。
 暫し待って出てきたのは、なんと刺身定食だった。
 マグロとブリの刺身だ。  
 マグロは赤身で鮮やかで目にも美味そうで、ブリは寒ぶりか、脂が乗っていて思わず日車は喉を鳴らす。
 それに、日下部はニヤリと笑って「さ! 食って食って!」と勧めてきた。
 五目肉団子とカボチャの煮込みも美味そうだし、ほうれん草と油揚げの味噌汁も白米も美味そうで、日車は持ち込んだ酒は日下部の前にヤボかと出すのをやめて、それから一口一口じっくり噛み締めて食べ進めたのだった。


 食べを終えると日車はもう食べられないと満足のため息を吐き、日下部に微笑む。
 会計をと入ってきた時と同じ場所に立ち、財布を取り出した。
 その時チャリ、と音がする。
 日下部がオッという顔をして、「付けてくれたのか」と嬉しそうに尋ねた。
 それに日車が「折角貰ったからな」とこちらも嬉しそうに笑う。  
 そして本日も惣菜二点とビールと刺身定食、合わせてきっかり五百円で食べ終えた日車は、やはりもっと金を取った方が良いと思いながら帰路を行き、家に着くとキーホルダーが付いた鍵を取り出し鍵を開け、ドアを開けるとそのキーホルダーをじっと見つめた。
 部下の清水に聞いたところ、このキャラクターはジャッジマンと言い、中々に人気があって売り切れることもあるらしい。

 そんなものを貰ってしまっては、これから毎日店に通っても足りないでは無いか。

 そんなことを、しかし日車はとても上機嫌でそのキーホルダーをそっと撫でて、「バレンタインデーも良いものだな」などと呟くのだった。

Comments

  • shida
    February 17, 2024
  • なべ

    せんべいをかじりながら、俺にはくれねぇのかな。ってなってる日下部さんが可愛かったです♪

    February 17, 2024
  • 小夜双☆スカィWeb
    February 16, 2024
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